ユンギボの映画日記

ユンギボ(@yungibo)によるあらすじ紹介、ネタバレなしのレビュー、解説・考察をお届け‼

『君の名は』

『君の名は』を9月30日に、ユナイテッド・シネマズ浦和で観賞して来ました。

過去作は全部、観てるけど、1本も面白いと思った事のない新海誠監督の新作を観て来ましたよ。
冒頭のプロローグでの男女のモノローグが交互に絡み合う少女漫画のような演出に萎えたものの、オリジナル劇場アニメ映画としては珍しくオープニングが!!
オープニングって、やっぱテンション上がりますね。
そこから、「東京に憧れる田舎の女子高生」と「東京の高校に通う男子高生」の体が入れ替わる設定は、大林宣彦監督の『転校生』じゃないですか!
でも、『転校生』よりクリーンアップされてるのは「東京と田舎と別の場所」と「体の入れ替わりは週に2日くらいのペース」という設定。その設定のお陰で、お互いの生活を垣間見る程度になっており、『転校生』より多少お気楽だし、主人公の2人がお互いに感情移入していく無理のない展開に。しかも、「夢だと思ってたら……」「周りの友人たちの反応」から徐々に体の入れ替わりが判明していくミステリー展開で世界観に引き込まれます。
ケータイというナウいヤング・ツールで日記を書き合い、お互いの交換日を補完。音楽の力を借りつつ、細かい所はナレーションで説明という潔さ。協力体制でクリアしていく日常に片思い応援ミッション追加。新鮮なリアクションの中、新しい環境に順応していく主人公たちをスピーディーに見せていく演出が楽しいです。そして、衝撃の身体交換の終止符。「とんでもなー展開だなー、おい!」と思ってたら、ここから急速に失速。どんどんつまらなくなる。
ゴールの見えない中の主人公の闇雲な行動に突き合せれる羽目に。広げ過ぎた大風呂敷にご都合主義の後出し設定とお茶を濁された感のある綺麗な映像でダラダラと集約。数々の?マークを置き去りにして、運命というロマンチックで強制終了。
東京との対比に由緒正しき神社の跡継ぎ生活という民俗学な世界観をブレンド。SF(少し不思議)の世界へ誘う現実の延長線上な世界観が脱ジブリで面白く、細田守ほど無理がないのが興味深いです。
しかし、ちょっと前まで恋愛漫画の王道ネタだった「入れ替わり設定」と「少女漫画演出」のコラボ技は今のヤングたちには新鮮だったりするんですかねー。

主人公2人の声を担当する白石上萌音ちゃんと神木隆之介くんも勿論、素晴らしいのですが、主人公のバイト先のヤリマン先輩役の声を担当する長澤まさみが全然、長澤まさみに聞こえない素晴らしさ。クソ・タレントを起用して作品をメチャクチャにする洋画の吹き替え版と違い、芝居のできる役者さんの起用は好感が持てますね。

『君の名は』
★★★☆☆
星3つ

【演劇】月刊「根本宗子」第13回『夢と希望の先』

月刊「根本宗子」第13回『夢と希望の先』を9月30日(金)に、下北沢・本多劇場で観劇して来ました。

最近、全然、演劇を観に行く習慣も無くなり、観に行ってもクソみたいな作品ばかりではあるのですが、こんなに面白い演劇を観れたのは久々です。

ステージ上には、同じアパートの部屋のセットが2つ。上には田舎の家の縁側という3つの空間が用意されています。そんなセットの中で、田舎で生まれ、役者を目指し、東京に憧れる主人公の女の子の「田舎での少女時代」「上京したての時期」「東京生活10年目の30代」という3つの時代をスピーディーに同時進行で見せていく刺激的な作品でした。
圧倒的な勢いで羅列されていくセリフの数々。やり過ぎなキャラクター達のテンション芸のような勢いは大爆笑。それでいて「主人公の事を何でも分かっている幼馴染の親友」と「上京してからの新しい友達」のせめぎ合いや、「希望に満ちた夢」と「彼氏とのルンルン生活」の天びん等、主人公のとっていく選択が泣けます。しかも、「その10年後」の時代での主人公の後悔も同時に描かれるので、とにかく泣けてきます。
それらの人間ドラマがグチャグチャになっていくタイミングで歌唱シーンが入り、これまた歌詞の内容がグッとくる上に明るい楽曲だったりするものだから主人公の孤独を高めつつも、どよ~んとさせ過ぎずに、シーンをエモーショナルに高めていくという演出があっぱれ!
クライマックスでは、いよいよ回想劇のフォーマットが崩壊。夢を諦め、希望を完全に失った「10年後の後悔だらけの主人公」が「上京まもない自分」にヤジを飛ばし、逆に過去の自分に励まされるという、ステージ上だからダイナミックな演劇的ミラクル技が発動! 名曲「トゥモロー」を出演キャスト総出で熱唱の元、幕を閉じる感動のフィナーレ!
初めて本多劇場で面白い作品を観ました! 嫌いだった下北沢さえもちょっと好きに思える程、面白かったです!

若い頃の主人公を演じる橋本愛ちゃんが上手かった。あのナチュラルな芝居、凄いですね。気張らずに見せるナチュラル演技。『あまちゃん』の不良娘役で出演していた時、ブラックなジョークを言って共演していた登場人物(キョンキョンだったかなー)をドン引きさせておいて「ハハ、うそうそー」と変わらぬテンションで返すシーンがあったのですが、そのナチュラルさは衝撃的で、『寄生獣』の頃には、ほぼ全シーンがアドリブに見えました。今回、そんなに注目してませんでしたが、凄い役者さんなんだなーと思いましたわー。
そして生:長井短! もはや怪物です! 膨大なセリフ量を吐き散らすシン・ゴジラっぷりはモンスター以外の何物でもありません。クセになります。

パンフレットは出演者紹介プロフィールと本作の作・演出の根本宗子さんと本作の書き下ろしポスターを担当した浅野いにおさんの対談。好きなら買いの値段の割りに薄味パンフでした。

『夢と希望の先』
★★★★★
星5つ

【演劇】疎開サロン『牡丹灯篭 お札はがし』

疎開サロン『牡丹燈篭 お札はがし』を9月25日(日)に上野桜木・市田邸にて観劇して来ました。

古い日本家屋を会場に会談の公演というのは味わい深いです。

5畳ほどの部屋を二間つなげた形にして座椅子と丸イスを置き、客席に見立てているんです。そこから、廊下と室内の一部、庭がステージという変わったステージ。それはインパクトのあるものでしたが、本番が始まり、もうそれ以上にインパクトのある事は起きないくらい退屈な劇でした。その代り、噛みまくる役者陣と蛇足演出のオンパレード。
中でも、手作りの小さな襖にマジックミラーを取り付け、わざわざ芝居をしている役者の前に持ってくる演出が蛇足でした。わざわざ、芝居している役者さんの前に小さな襖を持ってる人がいるというシュールな画。
挙げ句、クライマックスの芝居場では幽霊が琵琶を弾いているという演出で笑い(しかも、ほぼ失笑)が起きる程スベリ倒しっぷり。まぁ、クライマックスでは、お神輿に幽霊が乗って現れる等、派手さがあるので良いですが、中盤はホントに眠かった。

演出家のドヤ顔が垣間見えるオナニー演劇を見せられ、これで3,500円も取られたのが腹立たしい。

牡丹燈篭 お札はがし』
☆☆☆☆☆
星0

第9回したまちコメディ映画祭  「吹替え60周年記念上映『名探偵登場』」/「映画講義 とり・みきの吹替え“凄ワザ”講義 第2弾」

本日、東京国立博物館で第9回したまちコメディ映画祭「吹替え60周年記念上映『名探偵登場』」と「映画講義 とり・みきの吹替え“凄ワザ”講義 第2弾」を観賞して来ました。


「吹替え60周年記念上映『名探偵登場』」
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本作は『刑事コロンボ』のピーター・フォークや『ピンク・パンサー』シリーズのピーター・セラーズ、『ピンクの豹』のデイヴィッド・ニーヴン、『スター・ウォーズ』のオビ・ワン役のアレック・ギネス、さらには実録犯罪小説『冷血』を書いたトルーマン・カポーティまでが出演した豪華キャスト映画。
これが、日本語吹替え版も超豪華。フォークは勿論、コロンボでお馴染み小池朝雄。セラーズは『ピンク・パンサー』でも吹替え担当の羽佐間道夫。ニーヴンは中村正。カポーティ内海賢二。その他、高橋和枝滝口順平千葉耕市千葉繁
今回は吹替え60周年という事で、この泣ける程、豪華なのにソフト未収録な超レア吹替え版上映なんです!!
各国から集められた名探偵たちが殺人事件を解決していくミステリー……のはずなのに、次から次へと設定を無視していく(と言うか壊していく)破天荒にも程があるコメディで、それを大御所の声優陣がコミカルに演じていくのが最高です。中でも、さりげない会話のヤリトリが素晴らしく、セリフ回しの緩急で何でもないシーンでも笑わせてくれます。「名優が揃った吹替え版はこんなにも凄いのか」と驚かされました。




「映画講義 とり・みきの吹替え“凄ワザ”講義 第2弾」
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オーストラリア製作の脱力系な戦隊番組『危険戦隊デンジャー5 ~我らの敵は総統閣下~』を羽佐間道夫江原正士堀内賢雄千葉繁星野充昭甲斐田裕子、多田野曜平という超豪華な声優陣がアドリブ満載で吹替えた本作。
これが、なかなかの怪作で、見た目は現代なのに、敵の組織はナチスヒトラーの暗殺が任務というB級感。主人公たちの組織も『サンダーバード』とかの雰囲気なんだけど「連合国」とセリフに出てくるだけで何のどーゆー組織なのか説明なし。そんな連中が小学生の思いつきみたいな任務を遂行していくアホ・ストーリー。上司も頭だけ鳥の人間……なのか、鳥の被り物してるという設定なのか……。挙げ句、飛行機を吊るす糸がバレてたり、ハンズのお面レベルな被り物の敵キャラだったり、オモチャの寄せ集め感のある特撮セットの数々は低予算と言うよりチープ。脈略なく、主人公たちのチームにアニメの合成キャラが出てきた時は、もはや薬中患者の夢かと思いましたよ。
そんなオリジナル本編だけならゲロ吐く程、つまらなそうな作品をアドリブ満載の吹替えで爆笑コメディに料理してるのだから素晴らしいです。
顔はヒスパニックな役者を熊本弁で喋り倒す千葉繁さんの安定したテンション芸。江原正士さんと多田野曜平さんのその他大勢を演じ分ける演技力。また、多田野さんの様々な声優さんモノマネという芸達者っぷりやたるや。そして、羽佐間先生の口が閉まってるのにアドリブでセリフをブチ込む力業には脱帽。
『俺はハマーだ!』に『サンダーバード』を足して、『クイーン・コング』と『モンティ・パイソン』で割ったよーな完璧な仕上がりに。

上映後は、もはや吹替え映画研究家(だけど本職は漫画家)のとり・みきさんと吹替えキャストの皆さんのトーク。
恒例のとり・みきさんによる吹替え史を復習しつつ、各声優さんの本作へのアドリブ・アプローチの仕方、過去の吹替え収録現場での制作秘話までジャンジャン聞けて、大爆笑だったけど、メチャクチャ勉強になる講義でした。

よく考えるとスタローンとブラピとトム・ハンクスとチバシゲオとブシェミとハサウェイが会話してる訳ですよ。でも、全然、共演しないメンツですよ!

ソフト化と来年の講義が楽しみ過ぎます。
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第9回したまちコメディ映画祭「声優口演ライブ したコメmeets 小津安二郎【前夜祭】」

本日、毎年恒例の第9回したまちコメディ映画祭の「声優口演ライブ したコメmeets 小津安二郎【前夜祭】」を見る為、浅草公会堂へ行ってきました。

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豪華な声優陣が様々なトーキー(無声映画)作品へ生でアフレコをするという今イベント。今まで、チャップリンやキートン、ロイドときて、今年は初の邦画。しかも、小津安二郎の初期作品『淑女と髯』。

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口演は勿論、リーダーながら思いつきで語り倒す羽佐間道夫、マイペースなノリで気の良さが伝わる野沢雅子、大御所と初参加者に挟まれて、もはや司会進行ポジションの山寺宏一、声もドレスも色っぽい土井美加などなど豪華なメンツです。

口演前に自己紹介をスッ飛ばしてしまう羽佐間を進行通り、軌道修正する山ちゃん。「羽佐間先生、いつも通りだなー」なんて思ってたら、唐突にスイッチが入った如く、小津作品について語り倒し、さすがの演出家目線の映画解説を披露。実はスゲー勉強している映画愛を炸裂。
今回のイベント用の脚本を執筆された日本チャップリン協会会長の大野裕之氏による解説と程よい前解説の後、口演上映。

冒頭から下らないボケを大量投下したユーモラスな人物描写。それをコミカル全開で演じ倒す山ちゃんの演技力。
そんな中で真面目なナレーションに徹し、流石の実力を感じさせる羽佐間先生。ギャップで笑わせます。
小津オジさんによる脚本・監督の本編は、むさ苦しい風貌から周りの人たちに厄かみがられてるヒゲモジャの主人公がヒゲを剃った途端にモテ始めるというキャッチーなラブコメ風味。 それでいて、後半、外国映画のようなモダンなカットを演出しているのだから、手練手管のバリエーションに驚かされます。
ヒロインを信じられないくらいの色っぽさで演じきる野沢雅子の芸達者ぷりに、土井美加の妖艶な悪女の芝居対決はホントに鳥肌モノでした。

会場内、爆笑に次ぐ爆笑で浅草公会堂が揺れてましたよ。
今年も良いもの見させて(聞かせて)頂きました。

「大畑創映画大会」

本日、エムズ・カンティーナで上映された「大畑創映画大会」へ 行ってきました。

大畑監督作品11本+トークイベントの6時間! まさに大畑マラソン。



『大拳銃』(31分/2008年)
出演:小野孝弘、宮川ひろみ、岡部尚
廃業寸前の町工場が謎の男の依頼でピストル作りに着手。どんどん追い詰められていく町工場のオヤジがプッツンして、『タクシードライバー』化するクライマックスの力強さ&破天荒さに驚愕。凄まじさは『マッドマックス2』レベル!!

Trick or Treat』(30分/2013年)
出演:比嘉梨乃、黒田有彩フォンチー
何かを企んでる女子大生2人が政治家の娘に近づいていく前半はショーもないサスペンスかと思ったら、クライマックスは狂気と涙のテロリズム爆発!
いよいよ、頭おかしい!

ハカイジュウ PV』(1分/2012年)
出演:緒沢あかり、仁科貴
僅か1分のハカイジュウ登場シーンに唖然とする程のインパクト。この映像を作ったのに大畑監督に実写化本編の企画が上がらないのが不自然!

「大畑監督×田野辺尚人(『別冊映画秘宝』編集長) トーク 」
2人の出会いから、田野辺キャップが語る当時の大畑監督。そして、大畑監督を過小評価してる邦画界への切り口鋭利な田野辺節。大畑監督の映画元体験と影響を受けた作品談、田野辺キャップの映画への情熱と冷静な分析力が爆笑と共に語り倒し。勉強になりました!

『ラップ現象』(3分/2006年)
これはレア! 過去に一度だけイベント上映されたという学生時代の初監督作品。詰め込まれたユーモラスと突然の無意味なヴァイオレンス。ラップの使い道の変化……と後の作品で登場する大畑監督のエッセンスがギューギューでした!

怪談新耳袋『庭の木』(5分/2010年)
出演:高月彩良、おぞねせいこ、篠原篤
5分という小話な尺ながら、コミカルに不気味を語る独特の語り口が斬新。笑って見ながら、ラストでゾッとする世界観はシッカリ大畑色。

リアル鬼ごっこライジング『佐藤さんを探せ!』(33分/2015年)
出演:竜跳、川口和宥、篠田涼也、仁科貴
小学生たちと連続殺人犯の出会いからミスリードを誘い「まさか、そーきたか!!」の後半の展開。まともに見えて、やってる事がキチガイな殺人犯へのサスペンスが子供の純粋悪へとシフト・チェンジする後半にテンションアップ!

鬼談百景『一緒に見ていた』(8分/2016年) 
出演者:淵上泰史、屋敷紘子、緒沢あかり
逆怨み幽霊の登場にユーモラスとホラーが同居。地味に嫌な恐怖描写で作品の世界観へグイグイ引き込む演出力バツグンな短編。

鬼談百景『赤い女』(14分/2016年) 
出演者:高田里穂、加弥乃、比嘉梨乃
都市伝説的なエピソードを先の読めないドンデン返しで料理する大畑演出。女子高生たちのキャピキャピ感が悲鳴に変わる落差演出は『悪魔のいけにえ』級。

「大畑監督×内藤瑛亮(映画監督)トーク」
同じ映像学校出身だったり、同じ企画に参加してたり、同じ映画祭を回っていた事もあり、リラックスした雰囲気のトーク。2人の共通エピソードから、お互いの映画への展望。そして、暴露大会化。居酒屋ノリで笑いの絶えないトークでした。


『NONE』(25分/2015年)
出演:石川絢子、酒井杏奈、勝地翔太
統合失調症」や「集団ストーカー」、さらに謎の宗教めいた組織の登場と俳優学校内の実習作品とは思えない現代の闇テーマを魅力的に披露。長編化企画があるという更に魅力的な作品。今までで1番、力の入ったストーリーテリングの手管に大畑監督の実力を感じました。

ABCオブデス2『Ochlocracy』(5分/2015年)
出演:森田亜紀、小野孝弘、仁科貴、芦原健介
コミカル系ゾンビで裁判劇という斜め上の設定で押し通す短編。ホントにこーゆー三谷幸喜とかがやりそうな事を三谷幸喜より面白く撮るのだから、たまりませんなー。

『へんげ』(54分/2011年)
出演:森田亜紀、相澤一成、信國輝彦
大傑作! まさに、ホラー要素もサスペンス要素もオカルト要素も詰め込み、まさかの特撮へ着地するというワガママが過ぎるぜな一本。本日、ラストの作品にしては満腹感がハンパないッス!
大畑監督、もう食べられません。

「大畑監督×森田亜紀(女優) トーク」
何作も監督の作品へ出演している森田さんだからこそ明かせる気心知れた裏話&壮絶な撮影秘話の数々。いやいや、『へんげ』でお腹いっぱいだと言ってるのに、割りとハードなパフェとかのデザートを出された気分。
最後は『NONE』出演の若手俳優陣も登段し、華やかなラストを迎え、本日、終了。


先着10名にプレゼントされたポスターに大畑監督と森田さんのサインをもらいました。喫煙所で我が憧れの田野辺キャップと談笑できました。こんな「大畑創映画大会」 を満喫してる人はいないんじゃないかと思うくらいの満足感。
帰りにTSUTAYAで『劇場版 稲川怪談かたりべ』を借りて帰宅しました。

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『「描く!」マンガ展 ~名作を生む画技に迫る―描線・コマ・キャラ~』

本日、川崎市民ミュージアムで『「描く!」マンガ展 ~名作を生む画技に迫る―描線・コマ・キャラ~』という企画展示を見てきました。

手塚治虫を始め、赤塚不二夫石ノ森章太郎藤子不二雄A水野英子あずまきよひこさいとう・たかを島本和彦竹宮惠子平野耕太PEACH-PIT陸奥A子諸星大二郎などなどベテラン漫画家さんたちの原画をもう惜し気もなく展示。各漫画家さんたちが漫画界に与えた影響を解説しながら、漫画の歴史と主に絵のタッチの変化を辿っていく有意義極まりない展示でした。さらに、田中圭一先生による解説文章が細かい細かいで、ちゃんと読みながら&見ながらで回ったら、2時間でも足りないレベルでした!
開館から行ったのに、土曜日なんで人も多かったです。

もう1つ人の多かった理由が、今日は田中圭一先生と夏目房之助先生の「ものまねマンガ談義 線上の模倣者」というトークイベントがあったんですねー。こちらも満席。

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夏目先生のアカデミックな漫画論と田中先生のパロってる間に発見した経験論が白熱。気がつけば
手塚治虫の女性キャラはとにかくエロい」➡
「なぜ、手塚はエロいのに、直系の石ノ森章太郎の女性キャラはエロくない?」➡
「『ワンダースリー』のポッコ隊長がとにかくエロい。ウサギなのにエロい」➡
「ポージングがエロい」「いやいや、線がエロい」
という中学生みたいな居酒屋感あふれる会話を田中&夏目両先生が実際に単行本を見比べたり、描いてみたりして、談義するという夢のような雑談光景。会場内、大爆笑!

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さすがの夏目先生。手塚治虫の過去発言やエピソードを交え、手塚の意識や心境の変化を考察していくんですね! 「こーゆー考え方をしてるのか!」と思わず膝を叩きましたよ!
夏目先生による60年代手塚タッチ&田中先生による70年代手塚タッチのコラボから始まり、手塚死後の2000年代以降のマンガの流行り絵あるある……と2人共、サクサク描ける人たちなんで、悪ノリがアカデミック!!
メチャクチャ勉強になりました。

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余韻に浸りながら図録を読もうと思います。

ニコラス・ウィンディング・レフンの幻の初期作品『ブリーダー』

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COPYRIGHT 1999 (C) KAMIKAZE APS.ALL RIGHTS RESERVED.
本日、新宿シネマカリテの特集企画「カリコレ2016/カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2016」で『ブリーダー』を観賞。レビュー書きます!!
『ドライブ』(2011年)が大ヒットしたニコラス・ウィンディング・レフン監督。『ドライブ』公開時には、世界のキタノこと北野武 監督(ビートたけし)に「映像がオレと似ているんだよ。カット割りにしても、よけいな説明をはぶいて想像させるんだよ。(映画評論家の)町山智浩にも言われたよ」と言われてましたね。
そんなレフンが、1999年に発表したデンマーク時代の監督第2作目が本作。やっとこさの日本公開ですよ。最近は新作の『オンリー・ゴッド』で観念的世界観を爆発させ、映画ファンたちをキョトンとさせたレフン監督がまだまだネクスト・タランティーノと呼ばれていた頃のちょっとユーモラスなクライム・サスペンス映画が本作なんです。と思ってたら、タガの外れた飛んだオタク映画でしたよ。

あらすじ・ストーリー(ネタバレなし)

コペンハーゲンの町はずれで暮らすチンピラのレオ。妻に妊娠を告げられ、不安からストレスを募らせていきます。レオの友人である内気な映画マニアのビデオショップ店員レニー。デリカショップで働くレアを映画デートに誘うことに成功。所が、デート直前にひるんでしまいます。一方、レオの義兄ルイスは、妊娠を喜ぶ妻に暴力を振るうようになったレオに不信感を抱き、さらなる暴力でレオを追いつめていきます。

予告編動画


Bleeder Trailer


キャスト・監督・スタッフ

監督は、デンマークコペンハーゲン出身のニコラス・ウィンディング・レフン。父アナス・レフンは、ラース・フォン・トリアー監督作で助監督などを務めていました。8歳の時に家族で米ニューヨークへ。アメリカン・アカデミー・オブ・ドラマティック・アートと母国の映画学校に通い、いずれも退学。96年、監督・脚本作『プッシャー』で監督デビュー。2作目に製作したのが、本作『ブリーダー』(99)。本作でベネチア国際映画祭、3作目で初の英語作品でもある『FEAR X フィアー・エックス』(原題『Fear X』)(03)はサンダンス映画祭で上映。『プッシャー』の続編2本を発表し、『ブロンソン』(08・日本劇場未公開)や『ヴァルハラ・ライジング』(09)でヨーロッパを代表する新鋭の映像作家として注目を集めます。ライアン・ゴズリング主演の『ドライヴ』(11)でカンヌ国際映画祭の監督賞を受賞。ゴズリングとは新作サスペンスホラー『オンリー・ゴッド』(12)でもタッグを組みます。妻は初期3作に出演したリブ・コーフィックセン。
本作の主役の1人が今やテレビ・シリーズ『ハンニバル』でサイコパスの代名詞的なキャラクター=レクター博士役を演じ、上品なイケメンっぷりを存分に振りまいていたマッツ・ミケルセン。本作では、まさかのレンタルビデオ屋で働く映画オタク役なんです。


今すぐに アマゾンで観れるマッツ・ミケルセン出演作

『007/スペクター』

007 スペクター (字幕版)

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  • 発売日: 2016/02/24
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『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』



解説・感想・批評・評価

デンマークのスラム感ある下町で夜な夜な集まって映画上映会をしてる愛すべきボンクラたち。全くテイストの違う2つのエピソードが同時進行で描かれていきます。
主人公の部屋には『マッドマックス』や『ドラゴンへの道』『タクシードライバー』などのポスターがワサーっと貼られてます。オタクとしては信用できます。が、悲しいくらい全然、イケてない人物。そのオタクっぷりが完全にどーかしてるレベル。客にオススメを聞かれ、店内に置いてあるビデオの監督名をひたすらマシンガンのよーに羅列。客をドン引かせる素敵さ。それに対して客が「ポルノはある?」と返した時の露骨な落胆っぷりが微笑まし過ぎて笑えます。
そんな彼も恋をしてるんですね。来店した女の子に惚れ、勇気を振り絞って掛けた言葉が「キミ、『カジノ』借りたよねー?」って(笑)。ちなみに、彼女は『アルマゲドン』くらいしか知らない読書好き女子。さらに、彼女が気を使って「好きな作品は?」と聞いてくれたのに、即答で『悪魔のいけにえ』って。しかも、よく見たら『フランケンシュタイン』や『プラン9・フロム・アウタースペース』(エド・ウッドのB級カルト映画)のTシャツ着てるし!!
レンタル屋の店長にも「『猿の惑星』シリーズで1番、好きなのは?」「1作目。」「じゃあ、『13日の金曜日』では?」「3作目。」「おいおい、ウソだろー? だって……」「お前なー!! 映画の話以外できないのか?!!」とキレられ、自分の話かとドキッとしましたよ。
一方、そんなオタクの映画友達はクラブでチンピラたちのガチなドツキ合いを目撃。不安に駆られ銃を調達。どんどんヴァイオレンスな世界へ堕ちていきます。こちらは打って変わって超シリアスなエピソードが同時進行で描かれます。不安に駆られ、過剰防衛していく様はチャールズ・ブロンソンが過度な自警団化していく『狼よさらば』やデ・ニーロが武装化していく『タクシードライバー』テイスト。しかも、妊娠している彼女にイラつき、手を上げてしまい、彼女のチンピラ兄貴にチクられるシーン。これは『ゴッドファーザー』のコニーが亭主の暴力をソニーに伝えるシーンと同じじゃないですか!! さらに、チンピラ兄貴が階段で待ち構えてる描写は『ゴッドファーザー PARTⅡ』のビトーが初めて人を殺すシーンに激似!! どこまでオタクなんだ、レフン!! 海外では、レフンの初期のドキュメンタリーもあるそうなんですが、気になります。
要は、映画オタクの日常ってのはレフン監督自身の日常で(ちょっと一般的ではないですが)、その日常の裏では、銃を手に入れた事からチンピラ兄貴と物騒な対立関係になっていく友人のようなデンマークの下町の日常があるんだ……という映画なんだと思います。そーゆー意味では出世作『プッシャー』3部作や『ドライブ』と同じテーマを内包しているんです。ちょっと中盤がダラダラしてますが、登場人物たちが歩いてる画に、それぞれタイプの違うロック音楽を被せ、キャラ紹介をしてしまう力業、先の展開を暗示させるよーに画面全体が赤一色になる映像など、ホラー映画の名作『サスペリア』風。単純ながら意外と新鮮でスタイリッシュな演出にセンスをビンビンに感じさせてくれます。アルトマンの『ギャンブラー』も思い出させます。何で今までソフト未発売、日本未公開だったんだー。いつの間にか無料動画やニコニコとかのnetflix配信とかで出てそうな、ソフト化も難しそうな……。

追記:『オンリー・ゴッド

日本公開時には小島秀夫 監督とイベントに出てましたね。2020年夏に販売の「Death Stranding(デス・ストランディング)」にはレフンも出演するとか。
レフンも来日インタビューで「『ドライヴ』を観たミスター・スズキ(鈴木清順監督)から連絡をもらったことがきっかけとなって、『東京流れ者』(鈴木清順監督、1966年の作品)のリメイクを作ってみないかという話があったんだ。でも、自分にとってあの作品はとても大好きな作品だし、あのリメイクを作るなんて畏れ多くて、一旦その企画はなくなったんだ。ただ、引き続き東京で映画を撮ってみたいという思いは残っている。東京が映画の舞台として魅力的なのは、世界から完全に“孤立”しているように思えるところだね。こうして日本にいると、他の世界から隔離されているような気持ちになれる。おもしろいドラマというのは、そういう場所から生まれると思うんだ」とコメント。メチャクチャ面白そうですね!!
本作ものちにDVD化されました!! これで幻の映画を脱出ですね!!

ブリーダー [DVD]

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  • 発売日: 2018/04/03
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今すぐに アマゾンで観れるニコラス・ウィンディング・レフンおすすめ作品

レフンの苦悩の日々!! 妻や娘も登場するドキュメンタリー映画『マイ・ライフ・ディレクテッド・バイ・ニコラス・ウィンディング・レフン

鈴木清純を思わせるサスペンス・ドラマ

オンリー・ゴッド

オンリー・ゴッド

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レフン流で描くモデル業界の女たちのドロドロドラマ『ネオン・デーモン

ネオン・デーモン(字幕版)

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  • 発売日: 2017/06/12
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レフンの真骨頂=サスペンスとユーモラスのコラボで実在の犯罪者を描く『ブロンソン

ブロンソン (字幕版)

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  • 発売日: 2013/11/26
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レフンはここから!! 伝説の初期三部作「プッシャー」シリーズ

プッシャー (字幕版)

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  • 発売日: 2017/03/09
  • メディア: Prime Video
プッシャー2 (字幕版)

プッシャー2 (字幕版)

  • 発売日: 2017/03/09
  • メディア: Prime Video
プッシャー3 (字幕版)

プッシャー3 (字幕版)

  • 発売日: 2017/03/09
  • メディア: Prime Video

【イベント】夏のコミケ2016

2016年8月14日(日)、夏のコミケ2016へ行って参りました!!

10時00分頃
起床するなり、Twitter田中圭一先生がコミケでブースを出してる事を知り、潔く映画館へ行く予定を全キャンセル。行き先をビッグサイトへ軌道修正。
一昨年くらいの夏のコミケにも行った過去の経験から混むと解っていたので、YouTubeで検索。情報収拾。各局ニュース番組の動画を観賞。
メッチャクチャ混む事を再認識。
「始発で向かう奴らが居るのだから、14時くらいに会場入りすれば、ガチの人達と入れ違いでスムーズに入れる」と計算。

13時30分頃
出発。

14時30分頃
国際展示場駅ビッグサイトの最寄り駅)へ到着。
思ったより人が少なく、風もあって涼しい。時間を遅らせたのは正解だったと確信。駅から出るのも非常にスムーズ。
前文撤回。重要事項につき繰り返す。前文撤回。ビッグサイトに入るまでが人の山。オタクたちは周りに気をとられたり、ケータイをイジるので忙しく、とにかくブツかって来る。大量の紙袋による体当り爆弾。恐るべき、現在のカミカゼ! 退破(心が)。
心を穏やかに保つのだ、パダワン。

14時40分頃
会場入り口周辺でコスプレ祭り絶賛開催中の模様。兎に角、前がつっかえて、少しずつしか進軍できず。各方向からの隊列(……いや、もはや列でもない)が鉢合わせ状態。まるで真冬の八甲田山のよう(暑いけど)。
どーやら、アマチュアカメラマン軍団とコスプレイヤー軍団による紛争がおきている様子。その事による渋滞と思われる。
「大丈夫。こーゆー時は人の列について行けばスムーズに会場へ入れるはず。」
と着いて行ったのが、コスプレ祭り行きの列だった。入り口前で迷子。

14時50分頃
無事、会場内へ進軍。一目散に田中先生のブースの位置を確認。西館へ向かう。しかし、どのコスプレも全く何のコスプレなんだか解らなかったなー。あずき色のジャージ上下を着ていた女の子は何のコスプレなのだろーか?

15時00分頃
会場内、全く解らず、迷子。こうなると方位磁針も何の役にもたたない。何とか目視のみで田中圭一先生のブースへ到着。
この日1番のスムーズさでお目当ての本を購入。大変、恐縮しながら他のお客さんと雑談していた田中先生を捕まえて、サインをねだる。快くサインをしてくれた田中先生に感謝しながらブースを後に。

15時10分頃
「もう帰っても良いんだけど、せっかく来たんだし……」と辺りをウロウロ。

15時20分頃
飽きた。そもそも、何のマンガかアニメかも解らないのに、見て回ったって何にも興味が沸かない。
とりあえず、「せっかく……」の気持ちを大切に東館への進軍を決意。

15時30分頃
東館へ到着。
よもや、西館と同じよーな風景だが、閉会が17時までのせいか、せっかちに片付けてしまっているブースも結構、目に入る。そんな中を散歩。

15時31分頃
迷子。

15時33分頃
飽きた。

15時40分頃
喫煙所で一服。

15時45分頃
帰ろう。

その時、とっさに「そもそも、閉会は17時まで何だから、16時まで残ってる人間は最後まで居るのだろう。今なら駅は空いてるぞ!」と素晴らしく勘を働かせて駅へ向かう。

16時00分頃
激混みでした。遠くに見える駅に人が入りきっていない。溢れかえっている。恐ろしい。

16時01分頃
早々に諦めた。
一駅先の東京テレポート駅へ向かう事を決意。

16時10分頃
歩き始めて驚愕。東京テレポート駅へ向かう道中、コスプレイヤー軍とアマチュアカメラマン軍の戦場の真っ只中に迷い混んでしまったではないか。小生は勿論、武器(カメラの事)を持っていない(それ所か手ぶら)ので戦線離脱。見学程度に見て回る。もはや、戦争と言うよりカーニバル。

16時50分頃
ダラダラ寄り道しながら戦地を見て回った為、到着が遅くなってしまった。だが、さすがにもう人は少ないはずと予想。

16時52分頃
満員!! 全力で満員!! 全く電車に乗れない。

17時10分頃
3本分、待って乗車。

18時10分頃
無事に帰宅。
5時間弱の旅でした。

『シン・ゴジラ』(MX4D版)(2D通常版)感想

2016年8月10日(水)、『シン・ゴジラ』(MX4D版)を越谷レイクタウンで。8月12日(金)はユナイテッド・シネマ浦和で(2D版)を観賞して来ました。

始まって早々から、豪華キャストによる長ゼリフを1カット&細かいカット割りでポンポン進めていくテンポの良さ。これは、まるで岡本喜八監督のオールスター映画『日本のいちばん長い日』のような演出。テロップの出し方までソックリ。『日本のいちばん長い日』は昭和天皇玉音放送までのメチャ多い登場人物たちと、メチャややこしい状況を勢い任せのハイテンポで語り倒していました。が、本作では謎の巨大生物=ゴジラの出現⇒対策に追われる政治家たちや科学者、自衛隊などのメチャ多い登場人物たちと刻一刻と進展し続ける状況を圧倒的なハイテンポで語り倒してましたね。「怪獣が出たら日本政府はどのように行動するか?」をひたすらリアルに描いた本作のポリティカル。

モンタージュのような編集で時系列を追っていくという点では、本作の総監督である庵野秀明監督が総監督を担当した『ガメラ3 邪神覚醒』のメイキングビデオ=『GAMERA1999』を思い出しました。本作の監督&特技監督である樋口真嗣監督が『GAMERA1999』の中で「ガメラの呪縛」に頭を抱えていた姿を見ていただけに、本作のCGゴジラとかは感慨深いものを感じました。ちなみに、本作のキャッチコピーは「現実対虚構」ですが、『GAMERA1999』の最後には「虚構と現実、そして夢は続く。」というテロップが出ます。続いた夢の先が本作という事ですかね。

庵野監督は大の岡本喜八ファンを公言しており、自作の『トップをねらえ!』では岡本監督の『激動の昭和史 沖縄決戦』を丸パクリした程。実際、ゴジラの正体をハンパに残し、冒頭で行方不明になった科学者の顔写真は岡本喜八監督の生前の写真を使ってるんですわ。本作にも倒壊した東京のシーンの中に『激動の昭和史 沖縄決戦』と同じ構図のカットがありましたよ。オタクですねー。
もっと言うと、庵野作品は押井守監督も意識してるよーに思います。押井監督の劇場版『パトレイバー』もキーになる重要人物がヒントを残し、冒頭で疾走。その後、登場人物たちがヒントを解読しようと、あーだこーだするミステリー展開でしたが、それは本作と同じ展開。庵野監督の過去作『式日』は「誕生日である明日が訪れない少女の話」でしたが、これは押井監督の劇場版『うる星やつら ビューティフル・ドリーマー』の「いつになっても文化祭当日を迎えない話」と一緒ではないですか。庵野監督は『ビューティフル・ドリーマー』と同じテーマを『式日』で庵野流に語りなおしたよーに思います。実は、庵野監督はテレビシリーズの『うる星やつら』や押井監督の『天使のたまご』に原画で関わってた過去があります。どーゆー間柄か知りませんが、押井監督の『スカイ・クロラ』が公開される際には庵野監督が予告編の演出をしています。著名な映画監督が多数、出演している本作(塚本晋也監督、犬童一心監督、原一男監督、緒方明監督、松尾スズキ監督)。押井守監督にもオファーがあったのでは?

逆に庵野監督ならではなのが、こだわりの引き画のレイアウト。さらに『ラブ&ポップ』や『式日』等でよく見る変わった所からのアングルも健在。『ラブ&ポップ』では電子レンジの中から、『式日』では電車の模型からのアングルがありましたが、本作では受話器やキャスター付きの椅子やパソコン画面からのアングルと相変わらずの変わり者目線が楽しかったですね。

そんな庵野監督の映画愛溢れる本作ですが、勿論、子供向け映画になる前の第1作目の『ゴジラ』オマージュも。まずゴジラの造形も初代ゴジラを踏襲したもの。太い足、細めの体、丸っこい頭は完全に原爆のキノコ雲風味に戻されてるんです。初代『ゴジラ』は1954年公開作品。戦後の焼け野原から9年しか経ってない時代に公開され、その設定も水爆実験による突然変異という設定でしたが、今作のシン・ゴジラ放射能による突然変異設定。3.11を経験した今の日本は戦後の恐怖に引き戻されてしまったですね。ゴジラにより被災した東京の街並みや避難所に集まる人々なんて、まるで東日本大震災の映像。
つまり、シン・ゴジラは災害や放射能の象徴。なもんで、どこか神々しい感じがしました。生き物らしくない。手が小さい。てか、手を使わないんです。神様っぽくないですか? 手をかざすだけで思い通りなる神っぽさ。そんで、胸の辺りの筋の間が赤いんですよ。切り傷みたい。体の中に核を仕舞い込んでて、今にも爆発しそうな感じなんです。でも、全然、あせった様子は無いんです。むしろ、ノッシノッシ……とゆっくり歩いてくる。体中、傷だらけなのに全然、平気な感じとかも神っぽいなー……って思いました。
庵野監督だからか、どこか『エヴァ』っぽい感じもあるなー」とかって思っていたら、『エヴァンゲリオン』の曲が使われてるじゃないですか!! 『エヴァンゲリオン』が新たに作り直された時、『新劇場版』になったよーに、『シン・ゴジラ』の「シン」って「新」「真」「神」って意味以外に「庵野秀明ゴジラ」って意味もあるんじゃないのかって話!! だから、庵野監督が『風の谷のナウシカ』を作ったら『シン・ナウシカ』ですよ!!
でも、安心して下さい。ちゃんと伊福部昭の作曲した「ゴジラのテーマ」も使われてるし、過去作品では自衛隊の出撃シーン等でよく使われていた「怪獣大戦争のマーチ」まで解ってるネなタイミングで使われています!! もう、思わず泣いちゃいましたよ。。。。

あと、泣いちゃったのは、悪い人が出てこない所ですね。これだけ政治家が大勢、出てくるのに、みんな国の為を思って、発言&行動してるんですよ。そこも『日本のいちばん長い日』同様ですね。最近だと、「政治家=悪い人間・自分の私利私欲ばかり考えてる人間」と描写されるのが当たり前じゃないですか。恐らく、こんなガチで日本の行く末を考えてる政治家なんて現実にいないんですよ。そんな現実とのギャップにより、ゴジラよりもフィクションの登場人物となってて、ボクは泣けましたね。「あー、こんなに日本の事を考えてくれる政治家っていないんだろーなー」って。

他に圧巻なのは、超豪華キャスト。長谷川博己石原さとみ松尾諭國村隼ピエール瀧樋口真嗣監督の『進撃の巨人』で共演してましたね。『進撃の巨人』ではほぼ絡みが無かった長谷川博己石原さとみですが、本作ではガッツリ絡んでますし、『進撃の巨人』ではオタクキャラを演じた石原さとみのキャラクターが違い過ぎるのも面白かったです。ピエール瀧は相変わらずの軍人役(自衛隊は軍人ではないですが)。長谷川博己を色々とサポートしてくれる役所の松尾諭はフジテレビのドラマ『デート ~恋とはどんあものかしら~』でも長谷川博己のおせっかいな友人役で共演しており、これまたパラレルワールドを覗いてるようで面白かったです。
『日本のいちばん長い日』よろしく、アホみたいに登場人物が多いので、「市川実日子松尾スズキ手塚とおるモロ師岡片桐はいり嶋田久作あたりは庵野監督の過去作品にも出ていたなー……」なんて考えがら見てるだけでも楽しかったですね。
キャストの特徴について、もう少し触れると、(上記にもあるように)塚本晋也監督、犬童一心監督、原一男監督、緒方明監督、松尾スズキ監督と本職が映画監督の人たちがチョロチョロ出演してるんです。庵野監督作品では常連と言って良い松尾スズキ監督は自身の監督作品『恋の門』で庵野監督を役者で出演させています。この『恋の門』には塚本晋也監督も役者で出演してます。塚本監督は他の松尾監督作品『クワイエットルームにようこそ』にも出演してます。犬童一心監督に関しては樋口監督の『進撃の巨人』に役者で出演しているし、一緒に『のぼうの城』を共同監督しています。原一男監督に関しては自身の公式ホームページで「庵野監督に自らを売り込んだエピソード」を語っていましたね。もともと庵野監督は原監督の『ゆきゆきて、神軍』に影響を受けた事を公言しており、対談なんかもあって、そこそこ親交もあった様子。緒方監督と本作の准監督&特技統括をしている尾上克郎は高校の同級生で、助監督をしていた緒方監督に誘われる形で石井聰互監督作品『狂い咲きサンダーロード』にスタッフとして参加。緒方監督のデビュー作『東京白菜関K者』にも参加する間柄。本作で美術を担当した林田裕至も石井聰互監督作品『爆裂都市』で一緒に仕事しているんですね。この2人との縁で出演となったのかなぁーと。

ここまでで、名前を出していない主要なキャストは大杉連、余貴美子平泉成柄本明、渡辺哲、津田寛治光石研などなどとなってくるが、ジャンルを選ばず様々な作品に出てまくってるメンツですね。ただ、北野武作品出演経験者が多いのはどういう訳だろーか? 北野作品が今の邦画界からバランス良く集めているのか? 庵野監督が北野作品のファンなのか?
等と考え始めてしまいますが、もはや、脱線しまくりなので、本作の話はこの辺で。

最後に、本作のパンフは長々とストーリーを文字化、少ないインタビューが載ってる程度で、殆どのページが関連の商品広告。残念パンフ。アート・ブックを売る為と思われます。


シン・ゴジラ
★★★★★
星5つ

『貞子VS伽椰子』感想

2016年7月16日(土)、立川シネマシティズンで『貞子VS伽椰子』を観賞して来ました。

『フレディVSジェイソン』や『エイリアンVSプレデター』なんかのヤリ逃げ感あふれるアメリカ映画を見てきて、最近も『スーパーマンVSバットマン』とか見ちゃってガッカリしてましたよ。つまらないとは言わないですけど、こってりキャラ押しの薄味ストーリーはテレ東「午後のロードショー」風味。で、日本でも『貞子VS伽椰子』と聞いた時、「監督はファンに呪われて死ぬな」と心配したものですが、こんな事故物件並みに危険な作品に挑んだのが白石晃士監督と解れば話は丸っきり変わってきます。
案の定、観てみると一味も二味も……所か1万味くらい違いましたよ。全部、濃ゆい。激濃ゆ。キャラもストーリーも濃ゆすぎる。冒頭から『リング』代表=呪いのビデオの貞子、『呪怨』代表=呪われた家の伽椰子の設定をナチュラルに解説。しかも、もはや2つ共、都市伝説として風化してる設定からして好奇心をカツアゲ。前半は、「たまたま呪いのビデオを発見してしまう大学生のエピソード」と「呪いの家の近所に引っ越して来た女子高校生のエピソード」を同時進行でテンポ良く見せていき、後半以降に一つの話に纏まっていく展開が引き込まれます。
今作では設定を多少、変更しており、1番の工事は呪いのビデオの設定。『リング』では「ビデオを見た者は1週間後に死ぬ」という設定で期限が迫ってくる中、地道に呪いの原因を調べていくというミステリー展開でしたが、今作では「2日後に死ぬ」とあの世への道のりを大幅ショートカット。小学生がいきなり大学へ飛び級するくらいのスピードアップ変更により、ラストまで勢いよく見せていきます。観客の落ち着く暇を与えないくらい、スピーディーに呪われていきます。
行動力があり過ぎるが故に、呪いへまっしぐらなダブル・ヒロインは勿論、都市伝説と思っていた呪いのビデオ発見に異常な興奮を見せる大学教授、「ブラック・ジャックピノコ」をモデルにしたと言う凸凹霊媒師コンビ、お祓いの効力に異議を申し立てるとグーで殴ってくるオバちゃん霊媒師、揚げ句、呪いのビデオが入ったままのビデオ・デッキを売っておいてケラケラ笑ってる人騒がせなリサイクルショップのバイトなど、ストーリー以上に濃いキャラのオールスター。映画の登場人物としては飛び切りサイコーだけど、現実にいたら近づきたくない合格なメンツしか出てきません。
そして、肝心の、主役である貞子と伽椰子の対決シーンも超能力みたいな呪い対決かと思いきや、まさかのグーで殴るといった、かなりハードな戦い方でパンチが効いてます。心のこもった『サンダ対ガイラ』系アクションに衝撃を隠し切れませんでした。何の問題もありません。現に、伽椰子の役を演じた遠藤留奈さんのインタビューによると、
「アクションの練習に行くと、貞ちゃん(貞子)の体を這い上がるとか、髪をつかんで引きずり倒すみたいなことをやらされて、肉弾戦だと知りました。さらにエビ反りになって首を上げ、最大限に目と口を見開いてくださいとか、そこに貞子の髪の毛が入ってきて、次の瞬間爆発しますと言われてちょっと混乱しました。」
と現場を回想しております。
さすが白石晃士監督です。全く期待を裏切らない信用できる男です。
しっとり系グロテスク・ホラーに仕上がってて、まさにお祭り映画に相応しいパーティームービーでした。牛丼を食ったすぐ後にカレーを食べたような満腹感。



『貞子VS伽椰子』
★★★★★
星5つ

『クリーピー 偽りの隣人』感想

2016年6月27日(月)、『クリーピー 偽りの隣人』を観賞して来ました。

ホラー映画のイメージが強い黒沢清監督ですが、履歴書を見てみると『DOORⅢ』や『キュア』などサスペンス・スリラー作品でも、のっぴきならない作品を世に送る血まみれ優等生。今作は久々の原点回帰。
主人公の夫婦が引っ越して来る所から始まるんですけど、早々に隣人役の香川照之がヘン!! 予告編とか観た人は解ると思うんですけど、怪しいと言うか胡散臭いと言うかヘン!! 支離滅裂な事を言ってたと思うと、やたら冷静に理屈の通る事を言ってたり、本音なのかウソを言ってるのかもよく分からない。
犯罪心理学者の主人公を西島秀俊。奥さん役を竹内結子が演じてて、美男美女のおしどり夫婦と思ってたら、おやおや。旦那役の西島秀俊もヘン!! 未解決の一家失踪事件の調査を依頼されて、唯一の生き残りである長女役を演じる川口春奈に話を聞きに行ったりするんですけど、話を聞きながら興奮し出したり、事件の調査を「趣味」とか言い出して、デリカシーがちょっとあれなんですね。
この事件調査のエピソードと謎の隣人が距離を縮めてくるエピソードが同時進行で描かれていき、気が付いたら、あっぱらぱーな世界へ放り込まれてる畳みかけサスペンス。未解決の一家失踪事件だけでも謎が多いのに、隣人の動向の怪しさが謎をポコポコ発生させていくんですね。それでいて、「このシーン、オチに絡んでくるんじゃないかね?」みたいなシーンもいくつかあるんですけど、全然、関係なかったりする。やれやれ。
香川照之の正体が段々と明らかになってきてからの後半はもはやダークファンタジー。『悪魔のいけにえ』とか『死霊のはらわた』とかと一緒です。あり得ないけど、怖いから見ちゃう。面白いから見ちゃう……って世界。でも、前半がリアル志向だったから「こんなのウソだよー」とかと突っ込んで冷める気分では無くなってる辺りが上手いですよね。

上手いと言えば、本作のロケ地やセットが素晴らしいですよ。主人公の住む家は奥多摩らしーんですけど、すたれた感じとか、傍を通る高架橋(電車だか高速だか解らないですけど、人々が通り過ぎる場所であーゆー事件が起きているという人知れず感)とか。後半に登場する部屋とか、もう『カリガリ博士』とかの世界で、不気味でしたー。
あと、本作は横長のシネマスコープ・サイズなんですね。ウディ・アレンの新作『教授のおかしな妄想殺人』もシネマスコープで、「小規模な作品ほどシネマスコープが合ってると思うんだ」みたいな事をインタビューでアレンは言ってましたが、その事も念頭に入れて観てると意図が解らなくもないなと。

本作のパンフは厚みがあって読み応え抜群。監督・西島秀俊竹内結子の対談が掲載されてるのに、それと別でインタビューも収録されてる辺り、グッときましたね。スタッフの証言や現場レポート、樋口泰人×柳下毅一郎の対談、黒沢作品過去作解説など黒沢清ファンは買いの一冊でした。中でも宮台真司さんの心理学からの解説には脱帽。



『クリーピー 偽りの隣人』
★★★☆☆
星3つ

『A2 完全版』 感想

2016年6月22日(水)、『A2 完全版』をユーロスペースで観賞して来ました。

オウム真理教を内部から密着したドキュメンタリー『A』の第2弾で、2002年に公開された『A2』の未公開シーン追加の完全版が本作。

ラストのオチに向かって構成されていた『A』に比べて、日本のあっちこっちのオウム真理教の支部でのエピソードを垂れ流ししている『A2』は見辛かった印象があったのですが、今回、改めて観賞してみると、各支部でのエピソードが多岐にわたっている事に驚きました。
そして、超笑える。
特に、出所して来た上祐史浩の居るマンションの前で警備をする警察とデモをする右翼のヤリトリが爆笑でしたわ。
規制線の中へ入ろうとして警察に止められた右翼が、「俺らは刺したり、撃ったりしか出来ないんだから、身体検査してくれれば無力なんだから、入れろよ。」というオリジナリティー溢れる主張に爆笑。そんな右翼VS警察の間に割って入ってくる酔っ払いのオジさんにも思わず吹き出してしまいました。オウム+右翼+警察って、こんなに笑えるのかと。
あと、最初はオウムの支部に反対運動とかしてた地域ボランティアの人たちとオウム幹部たちの交流エピソードとかもグッときましたね。「事件後も町に居座るオウム支部を監視する」と支部の隣の空き地に監視テントを組んで見張ってたはずなんだけど、毎日、顔を合わせてるから、いつの間にか仲良くなっちゃっているというね。みんなワラワラ集まって来て、談笑して、地域の人たちの憩いの場になってるっていうね。監視テントの解体をオウム幹部が皆でワイワイ楽しそうに手伝ってる不思議な図には、観てるコチラまで和んでくる魅力がありました。
挙げ句、オウム幹部の引っ越しの日のシーンでは、地域のオバちゃんが「体には気を付けてね」と見送るんですけど、もう完全に孫との別れみたいになってて、グッときちゃうんですね。
中でも、1番、ツボに入ったのは、会見の準備をするオウム幹部が消臭スプレーを手に「マスコミ集まって、急にコレ(消臭スプレー)撒いたらビックリしますかね(笑)」というブラックにも程があるジョーク。
構成的には雑然としている印象は変わらなかったけど、オウム真理教の修行風景や当時、取りざたされた暴行監禁容疑事件の詳細、麻原彰晃の三女=アーチャーへのインタビューなど、見どころ満載。
ちなみに、アーチャーの出演シーンが本作の追加シーンらしーです。試写と山形国際ドキュメンタリー映画祭までは入ってたらしーのですが、アーチャーが当時、未成年だった為、カットされたそーです。
今回、観てみたら、素直に「学校へ行って勉強したかった」という姿は普通の中学生。当たり前ですが。英語で自己紹介を求められて、本名の「麗華(りか)」を使った事に対して質問され「だって、お父さんが付けてくれた名前だから……」と返す姿に涙!


『A2 完全版』
★★★☆☆
星3つ

『FAKE』感想

2016年6月22日(水)、『FAKE』をユーロスペースで観賞して来ました。

本作はゴーストライター騒動の後の佐村河内守さんを追ったドキュメンタリーですけど、覚えてますか? 耳の聞こえない作曲家の佐村河内さんが作曲した曲には新垣さんというゴーストライターがいた……って騒動。...あの頃、会見の様子をテレビ見て、矢継ぎに飛び交う質問に対して「一人一人、話して下さい!」「聞こえてるじゃないですか?」のクダリに爆笑してましたよ。まぁ、その爆笑していた〔あの頃の自分〕がどれだけマスコミの情報操作の中で踊らされていたのか……っていう話なんです。笑っていた人間には、ちょっとチクチクくる話でした。
正直、「で、実際の所、どーだったのよ?」って聞きたいじゃないですか?「本当は耳が聞こえるんじゃないの?」とか「実際の作曲作業の話は?」とか「ゴーストライターの噂のある新垣さんとは、今、どんな感じよ?」とか。そーゆー疑問が、マンションの一室で洞窟に籠ってるよーな生活をしている佐村河内さん夫婦へ密着するストーリーの中で小出しに出てくるんです。だから、段々とそんなに興味の無かった夫婦の生活をついつい見入っちゃうんです。
テレビ局のお偉いさん達が「うちの番組に出てくださいよー。悪いようにはしませんからー。」みたいなウソ臭さプンプンの出演依頼の様子とか、新垣さんがバラティ番組に出てるのを静かに見つめる佐村河内さんの様子とか見せながら、気になってた疑問を本作の森監督が聞いていくんです。で、ちょっとずつ解っていくんです。気になるでしょ?
それでいて、夕飯には手を着けずに豆乳ばかり飲んでいる佐村河内さんに森監督が「豆乳、好きなんですか?」tって聞くシーンとか、「森さん、タバコ吸いに行きましょう」と佐村河内さんがマンションの喫煙所と化しているベランダへ誘うシーンは爆笑でした。佐村河内さんが我々の予想をはるかにフライングするユーモラスなキャラクターなんですよ。猫と本域でジャレてたり、頬っぺたをポコポコ叩いて音楽を奏でたり。ついつい笑っちゃうシーンが多々あるんです! 会場内、大爆笑!! それでいて、森監督が「奥さんの事、好きですか?」というダイレクト過ぎる質問をするシーンとかは大号泣ですよ。
みんなが気になってる話題を笑わせたり、泣かせたりしながら見せていくドキュメンタリーって最強じゃないですか?
気が付くと、最初に気になってた疑問とかは途中で、どーでもよくなってて、「そんな事より、この夫婦はどーなっていくんだ?」という方へ興味が移っちゃうんですね。そんな感じで、森監督もバンバン仕掛けていくから、「次は何を仕掛けるんだ?!」みたいな興味も沸いて観ていると、劇場の観客強制ポカーンの衝撃ラストへ流れ込んでいくんです。みんな呆然としてましたよ。
もう、ことごとく事実確認を見せない演出が一貫してるんです。カメラの前で起きること以外の過去エピソードは、あくまでも佐村河内さんサイドの証言だけで構成されてるから、騒動のバックボーン全容解明が明らかになってるよーで実はピンボケ気味。「佐村河内さんはこう申しておりますが、あなたはどー見ますか?」っていうのを観客に考えさせる演出なんです。怖いですね、森達也。絶対、密着とかされたくない。ホラー映画みたいですよ。


『FAKE』
★★★★☆
星4つ