ユンギボの映画日記

ユンギボ(@yungibo)によるあらすじ紹介、ネタバレなしのレビュー、解説・考察をお届け‼

2017.04.29 『バンコクナイツ』

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2017.04.29

バンコクナイツ』を観賞して来ました。

 3時間がとにかく長い!! そして、登場人物が多い!! でも、有名な役者が出てないから、誰が誰だか。話の脈略も無いから、話も追えない。辛かった!! 正直、ドラマとかで観たかった。

 でも、そんなの関係ないのが本作の魅力。ストーリーとかどーでもいー訳ですよ。

 タイトル通り、舞台はバンコクの日本人専門の歓楽街。タイ人娼婦とタイに暮らす日本人の恋愛というか腐れ縁のような関係をベースにタイの人々の日常や風習がシチュエーション的に描かれていくんです。そこにはタイに移り住んだ日本人たちの金や性への私利私欲が渦巻いてるんです。だけど、押し付けがましくは見せません。なんとなーくで、嫌ぁーな感じでチラ見せ。逆に重たいっていう。

 本作の富田克也監督は製作のキッカケを

「“タイ”をたぐりよせることによって得た、「アジアの中の日本」という視点から始まった」

と語っており、これはとても面白いですね!

日本人って隣の人が自分の事をどのように思っているかは気にするのに、隣の国の人がどう思っているかは気にしませんもんね! そーゆー意味でも『バンコクナイツ』は見る価値のある映画なんですね。

 さらに心に刺さるのは映像の美しさ。何気ない日常が美しい。夜の歓楽街。畑の続く道。場末感のあるバー。そんな風景が美しいんですね。

 本作は準備期間は4年。監督は脚本を書いてる段階から、ちょこちょこバンコクへ取材に行き、撮影に入る1年前にはもうバンコクに移り住んでいたというからトンデモない映画ですよ。そのお陰で土着の匂いがプンプン感じられます。それだけあって、本当にタイの色んな顔を映し出しているんですよ。

 しかも、劇中に登場するタイの人々は本当にそこで生活する人々(要は素人さん)にほぼ本人役みたいなキャラを演じさせているから、もはやドキュメンタリーのようでもあるんですね。さらに、音楽も現地のミュージシャンの曲や歌を使用。これは旅行にいった気分になれますね。

 さらに驚いたのは本作のパンフレット!! 「本編に出てきたっけ?」というようなタイの歴史や風習、習慣について細かく触れられているんです。「ちょっとした観光ガイド本かな?」ってくらいの充実の内容。写真も豊富で劇中の美しい場面のスチールも収録されています。これは久々に凄いパンフでした!!

バンコクナイツ』

★☆☆☆☆

星1つ

2017.04.16 『お嬢さん』

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ポスター

公開:2017年(韓国)

原題:Ah-ga-ssi

英題 : The Handmaiden

監督:パク・チャヌク

キャスト:キム・ミニ、キム・テリ、ハ・ジョンウ、チョ・ジヌン、キム・ヘスク、ムン・ソリ

上映時間:145分

作品概要:『オールド・ボーイ』、『シークレット・ガーデン』などの作品で知られるパク・チャヌク監督が、イギリスの人気ミステリー作家サラ・ウォーターズの小説「荊の城」を原案に、物語の舞台を日本統治下の朝鮮半島に置きかえて映画化した驚くべき傑作。

(C)2016 CJ E&M CORPORATION, MOHO FILM, YONG FILM ALL RIGHTS RESERVED

 

2017.04.16

『お嬢さん』を観賞して来ました。このブログでレビュー書きます。韓国発のエロ映画でした。エロい。とにかく、エロい。レズ映画です。ユリユリです。みんな好きなんでしょ?

ちなみに、1961年の三島由紀夫 原作・若尾文子 主演の同名映画とは別物です。

ミステリーとしても面白い映画でした! なんせ原作は「このミステリーがすごい!」で1位になった『荊の城』!

しかも、本作は『JSA』とか『オールド・ボーイ』のパク・チャヌクだからシリアス演出お手の物。ちなみに、原作の『荊の城』はBBCのドラマで映像化されてるんです。それを見たパク・チャヌン監督が「こんなん全然、つまんねー! 俺の方がもっと面白く作れるし!!」と映像化したのが本作なので、気合が違います。他の韓流映画とは全然、違います‼ どちらかと言うと中国映画のよう。

 

あらすじ・ストーリー・内容(ネタバレなし)

舞台は日本が占領していた頃の朝鮮。だから、韓国の俳優しか出てこないのに日本語のセリフばかり。日本人の役も韓国の役者さん。詐欺師の女が金持ちのお嬢さんの屋敷へメイドとして潜入。騙して金を奪うつもりが、感情移入してしまい、ユリ展開へ。バレちゃうんじゃないのというサスペンスとお嬢さんに惹かれていく人間ドラマ。所が、潜入ミッションのラストの結末、「えっ?! どーゆー事?!」ってシーンで唐突に場面が変わるんですよ。何だ?何だ?と思っていたら、本作は3部構成だったんですね。

 

動画予告編


映画『お嬢さん』予告

 

感想・評価・考察・解説

第1部は詐欺師の変装したメイドの目線。第2部では話をさかのぼり、お嬢さんの目線で同じ話をやり直すアナザーストーリー。ここで新たな新事実が発覚。第3部はすっかり2人に感情移入できちゃった状態で、「この後、2人はどーなっていくんだろう?」という、“その後”のお話。

もう目が離せなくなるドンデン返し展開の連続! 観てるコチラもヒヤヒヤ!! そして、エロい。とにかく、エロい!! ヒロインのお嬢さん役のキム・ミニがとにかくエロい!! 様々な衣装が登場しますが、全てエロい‼ 全身から溢れ出す清楚で儚げな雰囲気!! それでいて脱ぎっぷりの良さ!!
後半はかなり過激なレズプレイ満載でセックス・シーンだらけです。でも、エロ文芸テイストなのでエロの中に美しさありって感じのお洒落エロ!!

それだけではなく、お嬢さんは屋敷の地下室で行われている伯爵に朗読会へ強制参加させられているんです。卑猥な言葉がバンバン出てくるエロ小説を読ませて見世物にしてるんです。しかも日本語で。だから、日本のテレビではNGなワードがバンバン出てきます。ねっ? 伯爵、悪い奴でしょ?

あと、等身大の人形とお嬢さんを天井から吊るしてセックスを模してる風のシーンがあったんですけど、あれは全く解んなかった(笑)

 パンフは肝心なシーンの写真少なめ、解説あっさり路線だったので、本作を気に入った人だけが買えば良いと思います。

『お嬢さん』

★★★★☆

星4つ

 

 

2017.04.16 『哭声/コクソン』

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2017.04.16

『哭声/コクソン』を観賞して来ました。

 閉鎖的な村を舞台に偏見と噂話の溢れる中、自らの家族をぶち殺す事件が連発。挙げ句、死人がゾンビよろしく生き返ったり、悪魔祓いに祈祷対決と超オカルトな内容。土着質な作風は昔の角川映画を思い出させますね。韓国製の超スリラー・ホラー映画です。韓国で大ヒット。日本人俳優から國村隼が出演。しかも韓国で賞を獲りまくりですよ。凄いですね。『ブラック・レイン』でリドリー・スコットの作品に出て、『キル・ビル』でタランティーノ北野武の作品から黒沢清園子温三池崇史是枝裕和。『シン・ゴジラ』にも『寄生獣』にも『進撃の巨人』にも『ちはやふる』にも『相棒』にも出てくる。次回作には『ジョジョ』と『鋼の錬金術師』って、もう笑ってしまうわ。

 しかし、これは大変な作品でして。何が大変って意味が解らない。……というか、意味が解らないように作ってあるんですね。これはキューブリックの『シャイニング』と同じ作りですね。キューブリック監督はあえてオチを意味不明にする事で見終わった後にも恐怖を維持させようとしたんです。謎が残るから怖いってやつ。

 とは言え、全く意味がないムチャクチャな作り方をしてるのかと言うとそんな事はないんですね。いや、ないらしいです。本作のナ・ホンジン監督いわく、キリスト教で身近な人が死んだ時に神の不条理みたいな事を考えまくって本作を作ったとインタビューで答えてます。だから、「イエス・キリストの復活を現代風に解釈した」とか「コクソン(村の名前)をイスラエルに見立てて作った」と話してました。実は色んな所にキリスト教のモチーフが混在しているんです。でも、絶対わかんねーよって話ばかりなので、そーゆー話は見終わった後にでも町山智浩さんの話とかキリスト教ウンチクの得意な人のブログでも読んで下さい。

 そーゆーバックボーンを抜きにして見ると、なかなか面白いB級映画。まず主人公がバカ!! 町の警官なんです。映画の冒頭、殺人事件が起きたと連絡が来るんです。所が、お母さんに「朝飯を食って行け」と言われておとなしく食べていく。そんで上司に「遅いぞ」と怒られてる。どうですか? 好感度高いボンクラですよね?

そんな主人公がエグい地獄絵図に出くわしてしまうんですけどね。

 そもそも、この映画に出てくるキャラクターって、善人だと思ってた人間が悪い奴っぽくなっったり、良い事だと思ってやった行動が悪い事に繋がったり、そんなんばっかり。これまた監督いわく「ある瞬間には「善」と思えた相手が、10分後には「悪」に変わってしまう。20分経つと隠された意外な一面が判明し、また違う表情が見えてくる。何度も何度も繰り返し「あなたはどう思う?」と問い続ける映画になっているんだ。」との事。実際、劇中でも「お前がそう思うならそうなんだろう」というセリフが頻繁に出てきます。宗教家の作る映画は説教臭い映画が多いですね。

 そんな事よりも、ボクが凄いなと思ったのは、こんなにも意味不明な映画が韓国で大ヒットしたって事ですよ。

パンフの小倉紀蔵京都大学教授)の解説によると、韓国ではシャーマニズムが一般的に社会の生活に溶け込んでいるとの話でした。劇中に登場する祈祷師とか家族の様子がおかしいとシャーマンに相談してみるという描写なんかがリアルなんでしょうね。撮影に6ヶ月も掛けた本作は、その祈祷のシーンで使う小道具とか美術も本物を集めており、実際の儀式で使われる物ばかり。雨や霧のシーンなんかは本当に天候が変わるのを待ったという頭おかしい体制で作られてます。それだけに細かい所まで見応え抜群。本物感が伝わってきます。そこら辺もヒットの要因なんでしょうね。

 パンフは上記の小倉先生の解説やプロダクションノート、監督や國村隼のインタビューが掲載されていますが、「映画秘宝」のインタビューより薄め。映画を観賞した人の疑問にも答えてくれない内容なので、ネットサーフィンで調べた方が納得のいく答えが見つかりやすいと思います。

『哭声/コクソン』

★★☆☆☆

星2つ

2017.03.11 『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』

f:id:stanley-chaplin-gibo:20170530124958j:plain2017.03.11

『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』を観賞。

アニメですけど知ってますか?
テレビ・シリーズ2期分を一気見。流れ込むよーに劇場へ。壮絶すぎたテレビ・シリーズからの続編という流れでの劇場版で、そのまま続きとして始まるストーリーと各キャラとの再会にまずテンション上がります。

テレビ・シリーズではヘルメットのような機械を頭に着けて、ゲームの世界に入るって設定だったんですよ。それで仮想現実(ゲームの世界)の中で友情を培ったり、恋愛したり、命懸けの戦いしたり……って「現実とどれだけ違いがあるんだ?!」って感じだったんです。
でも、本作では機械を着けて街を歩くと、機械越しに敵キャラが登場したり、生活している街並みがゲーム世界の風景に変わって見えたり……って設定なんです。今、流行りのVR(仮想現実)から更に進化したAR(拡張現実)の世界。VRが現実にあるだけにリアルな設定に感じました。そんなVRゲームで街を歩いてると敵キャラが出てきたりして……って、これポケモンGOじゃん!

さらに敵を倒すとマックやローソンで使えるポイントが貰える……っていう設定まで。協賛の会社が充実してます。怖いくらい現実に則したシチュエーションに思わずゾッとしましたね。

ゲーム内でレア・キャラとして登場する女の子は戦闘中、ボカロのように歌ってくれてて……って、これは初音ミク!?

そんな感じで、次々おこる謎の敵キャラの出現。新たなに仕組まれたゲーム世界の登場。それらのミステリー要素で引っ張りつつ、タイトル通りのソードバトルもてんこ盛り。確かに、ミステリー要素のオチとかはテレビ・シリーズに負けてはあるものの、バトル・アニメの皮を被りつつ、サブカルや次世代コンテンツを大量投入……という凄まじいアニメ作品なんです。


『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』
★★★☆☆
星3つ

2017.03.11 『ラ・ラ・ランド』

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2017.03.11

ラ・ラ・ランド』を観賞。

 アカデミー賞6部門受賞の大ヒット作品なので、もはやボクごときが(しかも今更)話す必要があるのかという……。

 ストーリーは、最悪の出会いをしたはずの男女が再会し、惹かれ合っていく切ない路線の恋愛模様を四季の中で描いていく……といった感じのロマンチックで歌と踊りとのカラフル・ミュージカル映画です。なもんで、見どころは主演のエマ・ストーンライアン・ゴズリングスの歌とダンスと演技。これが凄い!

 本作のライ・ゴズはジャズに拘りがあり過ぎて売れないピアニスト役。さすが演技派。その為に3か月かけてピアノを猛勉強。吹き替えなしの演奏を披露。エマの方も『キャバレー』でブロードウェイへのデビュー済。本作ではオーディションを受けまくる売れない女優役。そーなんです。本作のタイトル『ラ・ラ・ランド』とはロサンゼルス(主にハリウッド)の愛称。夢を追う者の都。夢(将来)と現実(恋愛)のドラマになっているんです。もう切ないですね。

 主役2人が踊るダンス・シーンの数々は本当に素敵なシーンばかりなんですが、実はそれらも過去のハリウッド製ミュージカル映画へのオマージュ。過去のグッとくるシーンの集大成的な構成なんです。これは強力ですね。普段、ミュージカル観ない人も思わずグッときてしまうのではないでしょうか?

 たとえば、2人が街を一望できる丘の上で踊るダンス。これは『バンド・ワゴン』のフレッド・アステアの振り付けにソックリ。踊りながら空へ飛んでいく幻想的な演出はウディ・アレンの『世界中がアイ・ラブ・ユー』のクライマックスだし、その他にも『雨に唄えば』や『巴里のアメリカ人』のジーン・ケリーを思わせるダンスも。そんな過去の名優たちを意識したライ・ゴズの細身なスーツも素敵。今、タイトルを出した『バンド・ワゴン』が1953年公開の作品。『雨に唄えば』は1952年。『巴里のアメリカ人』が1951年。そう、この映画は50年代のミュージカル映画の総集編的な作品なんです。

 今作は今や珍しくなったシネマスコープ(1:2.52のワイドスクリーンという横長の画面比率)での上映。1950年代のハリウッド製ミュージカル映画は、全体で行われているダンスを引き画でも迫力ある構図で見せる為にこのシネマスコープで上映されていたのです。テレビが台頭する以前の華やかなだったハリウッド全盛の上映を追体験できるのも劇場で今作を見る恍惚ポイント。

 そこまでしてミュージカル映画を徹底的に復活させたデイミア・チャゼル監督は、このジャンルを選んだ事を以下のように語っています。

「僕にとって個人的なテーマを扱っている。人生と芸術、現実と夢をどう釣り合わせるか。また、特に芸術との関係と人間関係とをどう調和させたらいいのか。本作では音楽と歌と踊りを使って、そんな物語を語りたかった。ミュージカルは、夢と現実との間の綱渡りを表現するのに適したジャンルだと思うよ。」

 監督の語る通り、歌とダンスで華やかに演出された前半から中盤に掛けての夢見る2人。それもクライマックスに近づくにつれて、静かなトーンと暗い画作りになっていき、現実を受け止めた2人には号泣必至の切ないラストが待っているんですね。その構成も上手しです。

 パンフはカラー写真多めで映画の内容を思い出すには持って来いですが、個人的にはもっと写真集ばりに写真が欲しかったです。イントロダクションやインタビューなど製作背景の記事は多め。作品解説は少なめな初心者対応な印象。濃くも薄くもない内容。

ラ・ラ・ランド

★★★☆☆

星3つ

2017.03.05 『ナイスガイズ!』

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2017.03.05

『ナイスガイズ!』を観賞。

 本作はコメディタッチのミステリーアクション映画なんですが、脚本がゴチャゴチャしてて、映画の質は大して高くないと思いました。しかし、注目ポイントや楽しめる要素は結構ある作品なんですねー。

 本作は70年代を舞台にしたノワールなテイストたっぷりのバディムービーなんです。ライアン・ゴズリング演じるクズとしか言えない探偵。ラッセル・クロウ演じる力任せの脅迫まがいな示談屋。そんな2人が失踪したポルノ女優を追う……というお話。

 まず、70年代を舞台にしているから、まるで当時のアメリカにタイムスリップしたかのような時間旅行感を楽しめます。そのくらい再現度が高いんですね。ヒッピーカルチャーと流行りの音楽。衣装やセット、小道具などにレインボーモチーフやサイケデリックカラー大量投入。当時の雰囲気がたっぷり再現されてる面白さ。当時のザ・アメ車といった(今からだと)クラシックカーばかり注目してるだけで楽しめます。さらに、バックで流れてる音楽はアース・ウィンド・アンド・ファイアービー・ジーズ、キッス、ザ・テンプターズなどなど誰もが聴き覚えあるヒット曲のオンパレード(アース・ウィンド・アンド・ファイアーのソックリさんたちまで出てくる悪ノリ)。

 本作の監督は『リーサル・ウエポン』や『ラスト・アクション・ヒーロー』の脚本を書いたシェーン・ブラック。懐かしいですね! 製作者は『リーサル・ウエポン』や『ダイ・ハード』、『マトリックス』、最近だと『シャーロック・ホームズ』(ロバート・ダウニー・Jr.版)など、シリーズ作品のプロデューサーを多く担当してるジョエル・シルヴァー。つまり、1980年代に『ダイ・ハード』や『リーサル・ウエポン』などのシリーズ・アクション映画を作ってた人達が「次は1970年代を舞台にノワールものを現代に復活させてやる!」という意気込み抜群なのが本作なんですね。しかも、主人公の探偵が『ダイ・ハード』のマクレーン刑事を思い出させる「ついてない男」という設定。さらに2人で1人的なダメ男たちの設定も『リーサル・ウエポン』にソックリなんですよ! 過去作品を自らパロディにしているという悪ノリ感をタンマリ感じる事が出来ます。

 思い出して下さい! 80年代のアクション映画を! ほぼ例外なく低偏差値映画ばかりですよ! ノーテンキでアッパラパー。ストーリーらしいストーリーは思い出せないけど、何だか笑ったなー……くらいの感想だけが残る作品ばかり。ボクなんか何度も観てるはずなのに『リーサル・ウエポン3』なんて全く覚えてないですよ!

 そんな愛すべきバカ映画たちを楽しめたアナタなら、間違いなく本作も楽しめます。勢いだけはありますから。主人公たちが現れると、兎に角、よく物が壊れる。そして、謎の組織に追われる。主人公たちもバカだけど、追ってくる連中もバカという抜群の愛嬌。

 まさに、復活の低偏差値ムービーは、ワイワイやって楽しんで、午後のロードショー行きなんです!!

『ナイスガイズ!』

★★☆☆☆

星2つ

2017.02.27『ルパン三世 カリオストロの城』4DX版

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2017.02.27

誰もが認める名作『ルパン三世 カリオストロの城』が4DXで上映と聞いて、喜びいさんで観賞して来ました。

ご存じ『ルパン三世』劇場版第2作目にして、宮崎駿監督作品1作目。怪盗というより義賊化した善人=ルパン三世クラリス姫を守る為、王家に伝わる財宝を巡って戦う冒険活劇アニメ。(←我ながら上手く纏めた!)

そんな不朽の名作を4DX化! だから、座席が動くし、煙も出る。これは、宮崎駿によってドタバタ冒険活劇ナイズされた本作にはピッタンコカンカンな仕様ではないか!! ……っと思っていたら、そんな事なかった。やっぱり、制作時にそーゆーつもりで作ってないもんだから、不必要なタイミングでガンガン座席が動いて集中できない残念仕様。

確かに、最初こそ、飛んだり跳ねたりと動き回るキャラクターたちの動きに連動したアトラクションの数々はワクワクを盛り上げるのだけど、「アトラクションを楽しみたい気持ち」より「作品をじっくりみたい気持ち」の方が圧勝! 4DXにするには作品のクオリティーが高すぎたんですな。


でもですね、やっぱり、この名作をシネコンの大スクリーンで見れるのは格別で、スピーカーから流れる山田康雄や納谷悟郎、石田太郎など稀代の豪華声優陣の声は興奮しまくりです。みんな故人ですからね。そーでなくても小林清志井上真樹夫の若い張りのある声にはトキメキを隠せません!!

ラストの銭形の「いや、奴は飛んでもないものを盗んで行きました。……あなたの心です」というグッとくる名セリフが有名ですが、ボクはそこよりも、その前のルパンのセリフをグッときます。ルパンに着いていこうとするクラリスに対して
「バカな事を言うんじゃないよ。また闇ん中へ戻りたいのか? やっとお日様の下に出られたんじゃないか。なっ? お前さんの人生はこれから始まるんだぜ? オレのように薄汚れちゃいけないんだよ。 ……あっ、そうだ! 困った事があったらね、いつでも言いな! おじさんが地球の裏側からだって、すーぐに飛んできてやるからなぁ~!」
このアウトローなおじさん感! 要はベテラン感ですよ!

宮崎駿のキャラクターがよく動きまくる作画やシンプルな冒険活劇的なワクワク感。やはり、映画館で観るのと、テレビで観るのは全然、違いますね!!

カリオストロの城

(作品には)★★★★☆星4つ

(4DXには)★★☆☆☆星2つ

【2016年ベスト&ワースト映画ランキング】

もう4月なんですけど、去年、観た映画でランキング作りました。例の如く、2016年日本で公開された映画で作ってます。

【ベスト・ランキング】
1位:『残穢
ホラーでありながらミステリーとしても良く出来ている近年稀に見る傑作な脚本!! 監督の過去作『呪いのビデオ』シリーズや実在の人物をモデルにしたメタフィクションの世界観が現実と虚像を翻弄させる!!

2位:『ヘイトフル・エイト
タランティーノの悪ノリ映画、ここに極まり!! 映画の方程式さえ崩壊させる力業があっぱれ……と言うか唖然のレベル!! サスペンスであり、ミステリーであり、人間ドラマでもあり、キャラ映画でありつつ、西部劇でもある!!

3位:『帰ってきたヒトラー
現代ドイツにヒトラー復活というブラックコメディは毒が効きすぎる破天荒な傑作!!

4位:『団地』
主演はなんと岸部一徳!! 内容はユーモラスでオフビートな団地コメディ。笑える上に懐かしさもある破天荒な傑作!! 岸部一徳がこんなに可愛いなんて!!

5位:『ブリッジ・オブ・スパイ
さすがのスピルバーグ!! シンプルな撮影テクニックをこれでもかとブチ込んで、冷戦時のスパイ攻防戦をシリアスにストーリーテリング!!

6位:『二度殺された妻』
韓国映画の新機軸!! タイムパラドックスを巧みに使い、過去と現在の殺人事件をドッキング!! 全く気の抜けない怒濤の展開へスピーディーに誘う!!

7位:『ピンクとグレー』
作中劇と回想シーン、現在進行形のエピソードとを怪奇な構成でまとめ上げたオンリーワンな作品!! 2人の若者の成功と挫折を語り倒す抜群のセンス!!

8位:『ゾンビ・スクール』
ゾンビ映画は飽きた」「ゾンビ苦手」そんな人にもオススメできるブラックコメディ満載のゾンビ映画!! ちびっこゾンビたちとバカな大人たちのユーモラスな戦いは抱腹絶倒!!

9位:『フェイク』
ドコまでが真実でドコからがヤラセなの? なんて疑問も下らなく思えてくるドキュメンタリーで見せる人間の面白さ!!

10位:『青春100キロ』
AV女優とハメ撮りしたいという夢を叶える為、戦うボンクラ男にまさかの涙する。悪ノリする監督。純粋すぎるボンクラ。待ち構える女神はAV女優。こんなドキュメンタリー観たことない!!

ちなみにの11位以降:『ヒメアノール』『この世界の片隅に』『ヤクザと憲法』『シン・ゴジラ』『イット・フォローズ』『ドロメ 男子篇』&『女子篇』『極秘捜査』『さらば あぶない刑事』『クリーピー』『神様メール』


【ワースト・ランキング】
1位:『スーサイド・スクワット』
2位:『黒崎くんの言いなりになんてならない
3位:『僕だけがいない街
4位:『ミケランジェロ・プロジェクト』
5位:『ライチ☆光クラブ
6位:『女が眠る時』
7位:『少女椿
8位:『キャロル』
9位:『ダーティ・コップ』
10位:『バイバイ、おっぱい』

ちなみに他の観賞作品:
『解夢―ゲム―』
『エヴォリューション』
ヒッチコック/トリュフォー
ローグ・ワン
ドント・ブリーズ
『ミュージアム』
『ソーセージ・パーティー』
『エブリバディ・ウォンツ・サム!!』
ホドロフスキーの虹泥棒』
『スクープ』
『平成ジレンマ』
『ケンとカズ』
『無垢の祈り』
ザ・ビートルズ〜EIGHT DAYS A WEEK』
『君の名は』
「大畑創監督映画祭」
『ブリーダー』
『貞子vs伽椰子』
『A2完全版』
『教授のおかしな妄想殺人』
デッドプール
キャプテン・アメリカ/シビル・ウォー』
『SHARING (ロングバージョン)』
『SHARING (アナザーバージョン)』
『怪談 せむし男』
『マジカル・ガール』
バットマンVSスーパーマン
『マッドマックス(4DX版)』
『尾崎支配人が泣いた夜』
サウルの息子
『オデッセイ』
ボクソール★ライドショー恐怖の廃校脱出!』
『グリード』
エクス・マキナ
『日本で一番悪い奴ら』
『華魂 幻影』
『レヴェナント』
『64 -ロクヨン- 前編』
『64 -ロクヨン- 後編』
『鬼はさまよう』
『コップ・カー』
『香港、華麗なるオフィス・ライフ』
『ヤング・アダルト・ニューヨーク』
『ライト/オフ』
ズートピア
『マン・アップ』
ジャングル・ブック
エスコバル
『「僕の戦争」を探して』
『アイ・アム・ヒーロー』
『10クローバーフィールド・レーン』
『ボーダーライン』
『ミュータント・ニンジャ・タートルズ:影 ―シャドウズ―』
『秘密』
マネーモンスター
『ペット』
『壊れ始めてる、ヘイヘイヘイ』
『罪とバス』
『父の結婚』
『はなくじらちち』
『樹海』
『下衆の愛』
『風に濡れた女』
ジムノペティに乱れる』
『リップヴァンウインクルの花嫁』
『白鯨との闘い』
『独裁者と小さな孫』
『ディーン 君がいた瞬間』
『少女は悪魔を待ちわびて』
『グッドナイト・マミー』
『ファンハウス』
アサイラム 監禁病棟と顔のない患者たち』
アイヒマン・ショー』
ヘイル、シーザー!
『ノック ノック』
『ロック・ザ・カスバ』
『ディア ダニー 君へのうた』
『ズーランダーNo.2』
『殺されたミンジュ』
『マネー・ショート 華麗なる大逆転』
『ファング一家の奇想天外な秘密』
『素敵なウソの恋まじない』
『禁断のケミストリー』
『ヴィジット 消された過去』
コンフェッション ある振付師の過ち』
『ウーマン・イン・ブラック2 死の天使』
『脱脱脱脱17』
『孤高の遠吠』
Dream Theater
『数多の波に埋もれる声』
『美女捨山』
『狂犬』
『親切ですね』
『いろんなにおいのワカモノだ』
『Dance!Dance!Dance!』
『金の鍵』
『MAX THE MOVIE』
『恐怖!セミ男』
『お墓参り』
『怪獣の日』
『お母さん、ありがとう』
アルビノの木』
キリマンジャロは遠く』
『彦とベガ』
次男と次女の物語』
『いいにおいのする映画』
『THORN』
『ACTOR』
『フールジャパン 鉄ドンへの道』
『ひつじものがたり』
『若者よ』
『雲の屑』
『ゴーストフラワーズ』
ちはやふる(上・下)』
『レジェンド』
『日本で一番悪い奴ら』
シェル・コレクター
『Mr.ホームズ』
『スパイ』
『スポットライト 世紀のスクープ』

『ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK』

ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK』を10月1日、MOVEXさいたまで観賞して来ました。

本作はビートルズのツアー時代を描いたドキュメンタリー映画になります。でもね、ただのドキュメンタリーではないんですよ。本作はビートルズの46年ぶりの公式映画。この「46年ぶり」というのがどーゆー事なのか? そもそも「ツアー時代」という言い方が不思議じゃないですか?
実は、ビートルズは13年間の活動期間の中の1963年~1966年までの3年間しかライブ活動をしてないんです。この3年間の間に世界中を回ってるんですけど66年には完全にライブを止めちゃうんです。それは何故なのか? メンバーたちにとって、ライブとは何だったのか? ……って所に焦点を当てた作品になっております。

過去のライブ映像の素材とインタビュー映像を組み合わせた構成で、勿論、ポールとリンゴへのインタビューは新緑。ジョンやジョージなど故人は過去素材を流用してるんですが、これはほとんど『ザ・ビートルズ アンソロジー』の流用。『アンソロジー』というのはビートルズ解散後の1995年から発売された8巻構成でメンバーの誕生から解散までを丁寧に追った総尺7時間以上のドキュメンタリー! もっと言えば、細かいインタビューで一会場づつ振り返る『アンソロジー』の方がツアー時代を振り返るにしても、内容的にも構成的にも濃いですよ!
そいじゃあ、本作はツアー時代を短く纏めただけの『アンソロジー』ショート版なのか? 新緑インタ以外、『アンソロジー』を見た人間には見る価値なしなのか?
勿論、そんな事はありません!

そんな事ないポイント①
本作制作の為、ネットで世界中の人々に「ビートルズのライブ映像あったら教えて」と呼びかけ、過去最大のアーカイブ映像を収集。要は当時、観客が隠し撮りしていた映像までも掻き集めたという事です。それにより、テープが擦り切れるほど見ていたライブ映像でも、別アングル(しかも客席からの)が追加されているんです!

そんな事ないポイント②
最新の技術で映像と音をクリーンアップ!
映像は当たり前だの4K化! さらに今作の為、新たに整音技術を開発。素人が当時のカメラで撮影した映像を元に、新たに音を加える事なく演奏や歌声が聞こえるようにしたそうです!  ビートルズのプロデューサーであるジョージ・マーティンの息子=ジャイルズ・マーティンいわく「正直に言ってしまうと、当時のライブ会場にいて聴くよりも、この映画で聴いた方がちゃんと聞こえるというレベル」だそうです。スゴ技過ぎて理屈が解りませんが、凄い! つまり、ビートルズのライブを疑似体験できるんですよ! 凄くない?!

そんな事ないポイント③
様々な人たちへの追加インタビュー!
エルヴィス・コステロビートルズ映画(『ビートルズがやって来る! ヤァ!ヤァ!ヤァ!』『ヘルプ! 4人はアイドル』)のリチャード・レスター監督。伝説の日本武道館コンサートの際、ビートルズに密着したカメラマン=浅井慎平のインタビュー(日本公開版のみ日本公演のシーンが長めに収録されているサービス仕様だそうです)!
挙句にライブ会場で泣き叫ぶ映像が発見されたシガニー・ウィーヴャーが当時を振り返ったり、ウーピー・ゴールドバーグが母と行ったライブの貧困時代の泣けるエピソードを披露したりとメンツが豪華!

そんな事ないポイント④
ビートルズVSアメリカという構図!
アメリカに憧れてやってきた若いビートルズと真実のアメリカの姿。中でも、座席が人種ごとに別けられた南部の会場でのメンバーによるコンサート拒否事件が衝撃的。
さらに、ジョンの「ビートルズはキリストよりに有名になった」発言やブッチャー・カヴァー騒動など、ビートルズがツアーに嫌気がさすまでの当時の彼らの心境とケネディ大統領、キング牧師暗殺やベトナム戦争といったアメリカの時代背景がミックスして描かれているんですね。

そんな事ないポイント(おまけ)
本編終了後、1966年のシェイ・スタジオ公演が30分以上のノーカット版で特別上映!
しかも、本編同様、4Kで音もクリーンアップされて。正直、本編よりも興奮しました!
もはや、何年も前の映像なのに、ライブビューイング状態でしたよ!

確かに、『アンソロジー』ほど濃くないし、グッとくるポイントも低めですが、綺麗すぎる上に今まで見た事ないライブ映像を大スクリーンで観れる機会は超レア!! まさに、ビートルズ・ライブへタイム・スリップしたかのような映像体験。 劇場観賞必見作品!!

パンフは厚みも内容も薄かったですけど、寄稿メンツのナイス解説は読みごたえあります。あと、レコードサイズなのがカッコイイです。

ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK』
★★★☆☆
星3つ

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『スーサイド・スクワッド』

スーサイド・スクワッド』(吹き替え版)を昨日、イオン・シネマズ浦和美園で観賞して来ました。

アメコミ映画……それも悪役を集めたチームというアメコミ悪役版『エクスペンダブルズ』。
本作の監督はデヴィッド・エアー。『フェイクシティ』で汚職まみれの悪徳警官を、『エンド・オブ・ウォッチ』ではロサンゼルス市警を主人公に下町ギャングの現実をヴァイオレンスでエキサイティングに描いた監督。『フューリー』では1台のアメリカ軍の戦車チームをナチスの軍隊と戦わせた血も涙もないお方。自身もロサンゼルスのサウス地区で犯罪と隣り合わせな日常を全身で浴びながら育ち、海軍へ入隊していた過去もある映画監督にしてはデンジャラスすぎる経歴のオーナー。こんなにも本作に打ってつけの監督はいないと思わせるのに余りある人物なんです。期待値上がります!

所が、前半から悪役チームの各メンバーを30分も掛けてチンタラ紹介。チームを率いる政府の官僚がポンミスで魔女が復活させてしまい、いちいちキャラの濃いメンツを大した争いも無しに、使い捨てミッションへ送り込む。なんだ、このヘボい展開は。ゆるゆるです。挙げ句、大してそんなエピソードも無かったのに、血も涙もないはずの犯罪者集団の間には謎の友情が芽生えて、みんなで一致団結して魔女退治という穴だらけの後半。やれやれですよ。どーなってるんだ、エアー監督!!

エアー監督は第二次世界大戦を舞台に囚人たちの危険ミッションを描いた名作『特攻大作戦』を意識したとインタビューで答えています。確かに、設定は似てます。しかし、『特攻大作戦』はリー・マービン演じる行動が荒い事この上なく、何をしでかすか分ったもんじゃない上官の血も涙もないシゴキに耐える囚人たちの男泣き映画であり、その最も重要な要素が本作には欠落しているんですよ。
しかし、本作の男泣きはエアー監督のインタビューから。監督はインタビューで
「こういう映画を作る時は、スタジオ側はあれこれ口を出してくる。監督は色んなルールブックを渡されて、それに従って映画を作らされることになるんだ。そして、編集の段階になると、スタジオに作品を取り上げられてしまう。こうした映画の作り方が、今では当たり前になってしまっている。」
と答えてるんですね。
こ……これは、大のアメコミ・オタクのザック・スナイダー監督が『マン・オブ・スティール』をカタルシスの無いスーパーマン映画に改変された疑惑やジョン・ファブロー監督が『アイアンマン』&『アイアンマン2』の成功の後、『3』を蹴ってインディーズ映画に戻った問題を想起させます。エアー、ボロクソ言って、すまん! オイラが悪かった!!
悩みすぎるスーパーマンがだらだら自分探しをする『マン・オブ・スティール』。自己中ヒーロー同士の意味不明な対決を描いた『バットマンVSスーパーマン』に続き、DCコミックはまたもや駄作を世に送りましたよ!
キャラクター映画なのに、各キャラのバックボーンは描けば描く程、全体のバランスが悪くなり、ウィル・スミスは悪党役でもウィル・スミスだし、ハーレークイーンのキュートさにオンブにダッコ。ジョーカーはハーレイをどんな状況でも助けに来る王子様キャラに悪変されている始末。だが、魔女による理想の世界を幻として見せる謎の技が炸裂するシーンのハーレイの一途すぎる夢に涙。唯一、良かったのは、アレックス・ロスジョーカーとハーレイがダンスを踊るビジュアルを再現した映像がホントにグッときました!!

まぁ、結局の所、色んな意味で涙なしには見れないのが本作なのです。
くたばれ、DC!! 頑張れエアー!!

パンフレットは監督・キャストへのインタやシリーズおさらい、イントロダクションとそこそこ豊富な内容だが、作品の世界観を表現したカラフルなグラフィックが見事。それだけ見ていても飽きないです。

スーサイド・スクワッド
★☆☆☆☆
星1つ

『君の名は』

『君の名は』を9月30日に、ユナイテッド・シネマズ浦和で観賞して来ました。

過去作は全部、観てるけど、1本も面白いと思った事のない新海誠監督の新作を観て来ましたよ。
冒頭のプロローグでの男女のモノローグが交互に絡み合う少女漫画のような演出に萎えたものの、オリジナル劇場アニメ映画としては珍しくオープニングが!!
オープニングって、やっぱテンション上がりますね。
そこから、「東京に憧れる田舎の女子高生」と「東京の高校に通う男子高生」の体が入れ替わる設定は、大林宣彦監督の『転校生』じゃないですか!
でも、『転校生』よりクリーンアップされてるのは「東京と田舎と別の場所」と「体の入れ替わりは週に2日くらいのペース」という設定。その設定のお陰で、お互いの生活を垣間見る程度になっており、『転校生』より多少お気楽だし、主人公の2人がお互いに感情移入していく無理のない展開に。しかも、「夢だと思ってたら……」「周りの友人たちの反応」から徐々に体の入れ替わりが判明していくミステリー展開で世界観に引き込まれます。
ケータイというナウいヤング・ツールで日記を書き合い、お互いの交換日を補完。音楽の力を借りつつ、細かい所はナレーションで説明という潔さ。協力体制でクリアしていく日常に片思い応援ミッション追加。新鮮なリアクションの中、新しい環境に順応していく主人公たちをスピーディーに見せていく演出が楽しいです。そして、衝撃の身体交換の終止符。「とんでもなー展開だなー、おい!」と思ってたら、ここから急速に失速。どんどんつまらなくなる。
ゴールの見えない中の主人公の闇雲な行動に突き合せれる羽目に。広げ過ぎた大風呂敷にご都合主義の後出し設定とお茶を濁された感のある綺麗な映像でダラダラと集約。数々の?マークを置き去りにして、運命というロマンチックで強制終了。
東京との対比に由緒正しき神社の跡継ぎ生活という民俗学な世界観をブレンド。SF(少し不思議)の世界へ誘う現実の延長線上な世界観が脱ジブリで面白く、細田守ほど無理がないのが興味深いです。
しかし、ちょっと前まで恋愛漫画の王道ネタだった「入れ替わり設定」と「少女漫画演出」のコラボ技は今のヤングたちには新鮮だったりするんですかねー。

主人公2人の声を担当する白石上萌音ちゃんと神木隆之介くんも勿論、素晴らしいのですが、主人公のバイト先のヤリマン先輩役の声を担当する長澤まさみが全然、長澤まさみに聞こえない素晴らしさ。クソ・タレントを起用して作品をメチャクチャにする洋画の吹き替え版と違い、芝居のできる役者さんの起用は好感が持てますね。

『君の名は』
★★★☆☆
星3つ

【演劇】月刊「根本宗子」第13回『夢と希望の先』

月刊「根本宗子」第13回『夢と希望の先』を9月30日(金)に、下北沢・本多劇場で観劇して来ました。

最近、全然、演劇を観に行く習慣も無くなり、観に行ってもクソみたいな作品ばかりではあるのですが、こんなに面白い演劇を観れたのは久々です。

ステージ上には、同じアパートの部屋のセットが2つ。上には田舎の家の縁側という3つの空間が用意されています。そんなセットの中で、田舎で生まれ、役者を目指し、東京に憧れる主人公の女の子の「田舎での少女時代」「上京したての時期」「東京生活10年目の30代」という3つの時代をスピーディーに同時進行で見せていく刺激的な作品でした。
圧倒的な勢いで羅列されていくセリフの数々。やり過ぎなキャラクター達のテンション芸のような勢いは大爆笑。それでいて「主人公の事を何でも分かっている幼馴染の親友」と「上京してからの新しい友達」のせめぎ合いや、「希望に満ちた夢」と「彼氏とのルンルン生活」の天びん等、主人公のとっていく選択が泣けます。しかも、「その10年後」の時代での主人公の後悔も同時に描かれるので、とにかく泣けてきます。
それらの人間ドラマがグチャグチャになっていくタイミングで歌唱シーンが入り、これまた歌詞の内容がグッとくる上に明るい楽曲だったりするものだから主人公の孤独を高めつつも、どよ~んとさせ過ぎずに、シーンをエモーショナルに高めていくという演出があっぱれ!
クライマックスでは、いよいよ回想劇のフォーマットが崩壊。夢を諦め、希望を完全に失った「10年後の後悔だらけの主人公」が「上京まもない自分」にヤジを飛ばし、逆に過去の自分に励まされるという、ステージ上だからダイナミックな演劇的ミラクル技が発動! 名曲「トゥモロー」を出演キャスト総出で熱唱の元、幕を閉じる感動のフィナーレ!
初めて本多劇場で面白い作品を観ました! 嫌いだった下北沢さえもちょっと好きに思える程、面白かったです!

若い頃の主人公を演じる橋本愛ちゃんが上手かった。あのナチュラルな芝居、凄いですね。気張らずに見せるナチュラル演技。『あまちゃん』の不良娘役で出演していた時、ブラックなジョークを言って共演していた登場人物(キョンキョンだったかなー)をドン引きさせておいて「ハハ、うそうそー」と変わらぬテンションで返すシーンがあったのですが、そのナチュラルさは衝撃的で、『寄生獣』の頃には、ほぼ全シーンがアドリブに見えました。今回、そんなに注目してませんでしたが、凄い役者さんなんだなーと思いましたわー。
そして生:長井短! もはや怪物です! 膨大なセリフ量を吐き散らすシン・ゴジラっぷりはモンスター以外の何物でもありません。クセになります。

パンフレットは出演者紹介プロフィールと本作の作・演出の根本宗子さんと本作の書き下ろしポスターを担当した浅野いにおさんの対談。好きなら買いの値段の割りに薄味パンフでした。

『夢と希望の先』
★★★★★
星5つ

【演劇】疎開サロン『牡丹灯篭 お札はがし』

疎開サロン『牡丹燈篭 お札はがし』を9月25日(日)に上野桜木・市田邸にて観劇して来ました。

古い日本家屋を会場に会談の公演というのは味わい深いです。

5畳ほどの部屋を二間つなげた形にして座椅子と丸イスを置き、客席に見立てているんです。そこから、廊下と室内の一部、庭がステージという変わったステージ。それはインパクトのあるものでしたが、本番が始まり、もうそれ以上にインパクトのある事は起きないくらい退屈な劇でした。その代り、噛みまくる役者陣と蛇足演出のオンパレード。
中でも、手作りの小さな襖にマジックミラーを取り付け、わざわざ芝居をしている役者の前に持ってくる演出が蛇足でした。わざわざ、芝居している役者さんの前に小さな襖を持ってる人がいるというシュールな画。
挙げ句、クライマックスの芝居場では幽霊が琵琶を弾いているという演出で笑い(しかも、ほぼ失笑)が起きる程スベリ倒しっぷり。まぁ、クライマックスでは、お神輿に幽霊が乗って現れる等、派手さがあるので良いですが、中盤はホントに眠かった。

演出家のドヤ顔が垣間見えるオナニー演劇を見せられ、これで3,500円も取られたのが腹立たしい。

牡丹燈篭 お札はがし』
☆☆☆☆☆
星0

第9回したまちコメディ映画祭  「吹替え60周年記念上映『名探偵登場』」/「映画講義 とり・みきの吹替え“凄ワザ”講義 第2弾」

本日、東京国立博物館で第9回したまちコメディ映画祭「吹替え60周年記念上映『名探偵登場』」と「映画講義 とり・みきの吹替え“凄ワザ”講義 第2弾」を観賞して来ました。


「吹替え60周年記念上映『名探偵登場』」
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本作は『刑事コロンボ』のピーター・フォークや『ピンク・パンサー』シリーズのピーター・セラーズ、『ピンクの豹』のデイヴィッド・ニーヴン、『スター・ウォーズ』のオビ・ワン役のアレック・ギネス、さらには実録犯罪小説『冷血』を書いたトルーマン・カポーティまでが出演した豪華キャスト映画。
これが、日本語吹替え版も超豪華。フォークは勿論、コロンボでお馴染み小池朝雄。セラーズは『ピンク・パンサー』でも吹替え担当の羽佐間道夫。ニーヴンは中村正。カポーティ内海賢二。その他、高橋和枝滝口順平千葉耕市千葉繁
今回は吹替え60周年という事で、この泣ける程、豪華なのにソフト未収録な超レア吹替え版上映なんです!!
各国から集められた名探偵たちが殺人事件を解決していくミステリー……のはずなのに、次から次へと設定を無視していく(と言うか壊していく)破天荒にも程があるコメディで、それを大御所の声優陣がコミカルに演じていくのが最高です。中でも、さりげない会話のヤリトリが素晴らしく、セリフ回しの緩急で何でもないシーンでも笑わせてくれます。「名優が揃った吹替え版はこんなにも凄いのか」と驚かされました。




「映画講義 とり・みきの吹替え“凄ワザ”講義 第2弾」
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オーストラリア製作の脱力系な戦隊番組『危険戦隊デンジャー5 ~我らの敵は総統閣下~』を羽佐間道夫江原正士堀内賢雄千葉繁星野充昭甲斐田裕子、多田野曜平という超豪華な声優陣がアドリブ満載で吹替えた本作。
これが、なかなかの怪作で、見た目は現代なのに、敵の組織はナチスヒトラーの暗殺が任務というB級感。主人公たちの組織も『サンダーバード』とかの雰囲気なんだけど「連合国」とセリフに出てくるだけで何のどーゆー組織なのか説明なし。そんな連中が小学生の思いつきみたいな任務を遂行していくアホ・ストーリー。上司も頭だけ鳥の人間……なのか、鳥の被り物してるという設定なのか……。挙げ句、飛行機を吊るす糸がバレてたり、ハンズのお面レベルな被り物の敵キャラだったり、オモチャの寄せ集め感のある特撮セットの数々は低予算と言うよりチープ。脈略なく、主人公たちのチームにアニメの合成キャラが出てきた時は、もはや薬中患者の夢かと思いましたよ。
そんなオリジナル本編だけならゲロ吐く程、つまらなそうな作品をアドリブ満載の吹替えで爆笑コメディに料理してるのだから素晴らしいです。
顔はヒスパニックな役者を熊本弁で喋り倒す千葉繁さんの安定したテンション芸。江原正士さんと多田野曜平さんのその他大勢を演じ分ける演技力。また、多田野さんの様々な声優さんモノマネという芸達者っぷりやたるや。そして、羽佐間先生の口が閉まってるのにアドリブでセリフをブチ込む力業には脱帽。
『俺はハマーだ!』に『サンダーバード』を足して、『クイーン・コング』と『モンティ・パイソン』で割ったよーな完璧な仕上がりに。

上映後は、もはや吹替え映画研究家(だけど本職は漫画家)のとり・みきさんと吹替えキャストの皆さんのトーク。
恒例のとり・みきさんによる吹替え史を復習しつつ、各声優さんの本作へのアドリブ・アプローチの仕方、過去の吹替え収録現場での制作秘話までジャンジャン聞けて、大爆笑だったけど、メチャクチャ勉強になる講義でした。

よく考えるとスタローンとブラピとトム・ハンクスとチバシゲオとブシェミとハサウェイが会話してる訳ですよ。でも、全然、共演しないメンツですよ!

ソフト化と来年の講義が楽しみ過ぎます。
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第9回したまちコメディ映画祭「声優口演ライブ したコメmeets 小津安二郎【前夜祭】」

本日、毎年恒例の第9回したまちコメディ映画祭の「声優口演ライブ したコメmeets 小津安二郎【前夜祭】」を見る為、浅草公会堂へ行ってきました。

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豪華な声優陣が様々なトーキー(無声映画)作品へ生でアフレコをするという今イベント。今まで、チャップリンやキートン、ロイドときて、今年は初の邦画。しかも、小津安二郎の初期作品『淑女と髯』。

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口演は勿論、リーダーながら思いつきで語り倒す羽佐間道夫、マイペースなノリで気の良さが伝わる野沢雅子、大御所と初参加者に挟まれて、もはや司会進行ポジションの山寺宏一、声もドレスも色っぽい土井美加などなど豪華なメンツです。

口演前に自己紹介をスッ飛ばしてしまう羽佐間を進行通り、軌道修正する山ちゃん。「羽佐間先生、いつも通りだなー」なんて思ってたら、唐突にスイッチが入った如く、小津作品について語り倒し、さすがの演出家目線の映画解説を披露。実はスゲー勉強している映画愛を炸裂。
今回のイベント用の脚本を執筆された日本チャップリン協会会長の大野裕之氏による解説と程よい前解説の後、口演上映。

冒頭から下らないボケを大量投下したユーモラスな人物描写。それをコミカル全開で演じ倒す山ちゃんの演技力。
そんな中で真面目なナレーションに徹し、流石の実力を感じさせる羽佐間先生。ギャップで笑わせます。
小津オジさんによる脚本・監督の本編は、むさ苦しい風貌から周りの人たちに厄かみがられてるヒゲモジャの主人公がヒゲを剃った途端にモテ始めるというキャッチーなラブコメ風味。 それでいて、後半、外国映画のようなモダンなカットを演出しているのだから、手練手管のバリエーションに驚かされます。
ヒロインを信じられないくらいの色っぽさで演じきる野沢雅子の芸達者ぷりに、土井美加の妖艶な悪女の芝居対決はホントに鳥肌モノでした。

会場内、爆笑に次ぐ爆笑で浅草公会堂が揺れてましたよ。
今年も良いもの見させて(聞かせて)頂きました。