ユンギボの映画日記

ユンギボ(@yungibo)によるあらすじ紹介、ネタバレなしのレビュー、解説・考察をお届け‼

4/13『娼年』

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娼年』を観賞。

爽やかイケメン俳優=松坂桃李くんが男の娼婦になるというインパクト大な作品。

たまたま知り合ったマダムが男の子の売春クラブを経営しており、説明なしの強制スカウト。試験セックスにチャレンジ。女性やセックスをナメまくってた主人公はギリギリ合格。そこから女性とセックス探究の日々が始まる。……って、ストーリーは色んなお姉さんたちが主人公を求めてイクというシンプル・ライン。

そんな事より、濡れ場のシーンがとにかく細かい!! もう、それだけの映画といった感じ。大事な部分が見えてないだけで、セックスの工程ははっきり解るレベル。もはや、AV!!

それをCM出身のカメラマンが撮影を担当した事により、シャレオツ映像でカスタマイズ! 下品にならない配慮は抜群。

監督は『ボーイズ・オン・ザ・ラン』や『愛の渦』などで映画監督も手掛け、劇団ポツドールで作・演出している三浦大輔石田衣良の原作を演劇畑の濃厚な演出で大人の悲喜交々を描ききってます。

クライマックスの賛否が分かれそうなヤリすぎ映像演出は、逆にダサいので止めてほしかった派です。

石田衣良の原作本を演劇界で人気の三浦大輔が描くシャレオツ・AV映画という女性へターゲットを絞った企画は大成功だと思います。


娼年
★★☆☆☆
2つ星

4/9『ウインストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』

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『ウインストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』を観賞。

本作は冒頭から、「世界一の嫌われ者」と言われていたウインストン・チャーチルがイギリス首相に就任。所が、時代は1940年の第二次世界大戦の真っ只中。戦況は、もうすでに絶体絶命のピンチ! さぁ、どーするチャーチル?! ……といった実話ベースな内容。
この映画で描かれているのは、首相就任前日から27日間の出来事。その間、悩み苦しむチャーチル。すぐ周りにブチキレるチャーチル。奥さんにデレデレなチャーチルジョークを飛ばすユーモラスなチャーチル。そして、イケイケだった頃のヒトラーにケンカを売るまでが描かれます。
本作でアカデミー賞を受賞した辻一弘が6ヶ月も研究に費やして完成させた超絶リアルな特殊メイク。それを受け、元祖カメレオン俳優=ゲイリー・オールドマンが本人完コピ芝居で演じてます。もう素晴らし過ぎます!!
さらに、衣装は実際にチャーチルの衣装を仕立てていたブランド。セットの戦時作戦室も忠実に再現し、チャーチルが動き回る国会議事堂は、本物のウェストミンスター宮殿で撮影。壮大な規模のエキストラもノーCG……という書き出したら常気を逸したレベルのこだわりよう。この本物志向と監督であるジョー・ライトによるエッジ効いた、白く靄がかった映像センスが見事にコラボ。寓話的美しさの中で人間=チャーチルが浮き彫りになっており、クライマックスの感動を煽り立ててます!
ジョー・ライト監督いわく、「この映画はある意味で国民と距離の離れたところにいた彼(チャーチル) が、庶民の声を代表するようになるまで、その声を発見する旅を追う映画なんだよ」との事。
短期間のエピソードに集約した脚本なので、予備知識が無くとも解りやすいですが、フランスのダンケルクに追い詰められ、絶体絶命のイギリス軍のエピソードは、去年、クリストファー・ノーランが『ダンケルク』という映画化済み。本作に登場するキーマン=国王ジョージ6世はコリン・ファースアカデミー賞を受賞した『英国王のスピーチ』の主人公。そこら辺の映画を予習していくと、さらに作品の世界観に入りやすいかもしれません。

パンフレットは、キャストや監督のインタビュー、作品の時代背景など、基本情報を網羅。お勉強にもなる一冊でした。



『ウインストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』
★★★★★
満点5つ星

3/11『15時17分、パリ行き』

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15時17分、パリ行き』を観賞。

2015年の夏にヨーロッパで起きた過激派イスラム国による列車の中での無差別テロ=タリス銃撃テロ事件。本作は、その事件で犯人を取り押さえ、乗客554人を救った3人の青年を描いた作品なんです。実話映画ってことです。
でも、そんな前情報が要らない。知らなくても問題ない映画です。どちらかと言うと青春ストーリー。
テロを阻止して英雄になる3人のワルガキな子供時代から始まります。そんでテロを防ぐ所までをなんと94分とコンパクトにまとめてます! それが凄い!! コンパクトなのに余すところ無し!!
落ち着きが無さすぎて、学校の先生からADD(注意欠陥障害)と決めつけられた子供時代。サバゲーで遊びほうけ、軍隊入隊へ憧れ、挫折。
英雄とは程遠い普通に普通すぎる3人の成長物語。
削ぎ落し、シェイプアップされた脚本。テンポの良いスピーディーな編集。押さえる所は押さえた演出。あっという間に映画の世界観へ引っ張りこまれ、彼らのどんな経験がテロを未然に防いだのかが描かれる訳です。
そして、驚くは、本作の主演の3人は役者ではなく、本人なんです。実際に事件を経験した本人が本人役。しかも、ロケ地も出来るだけ同じ場所で撮影したらしく、クライマックスの列車のシーンは、事件当時と同じ車両という程の再現精神。故に漏れ出てるリアリティー。
監督はクリント・イーストウッド。87歳にして、トリッキーな作戦で映画を作ります。そして、そのギャンブルに勝った男。

パンフには、イーストウッドが作品に着手するまでや、キャスティングのエピソード、主演の3人のインタビューなど、本作を知る為の情報が全部、載ってて買いの一冊でした!


『15時17時、パリ行き』
★★★★☆
星4つ

3/11『シェイプ・オブ・ウォーター』

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シェイプ・オブ・ウォーター』を観賞。

もう半魚人が映画界へ帰ってきた……というだけでテンションの高揚を抑えきれないですが、まさかの第90回アカデミー賞で4部門を受賞ですよ。時代はモンスターですね!!

とは言え、半魚人が主人公って訳ではないんです!
主人公は、口のきけない幸薄な40代の女性。「航空宇宙研究センター」という研究施設で夜間清掃の仕事をしてます。その施設内の水槽で半魚人を発見。勿論、半魚人も言葉を喋れない。だから、手話を教えて、会話にチャレンジ。これが意外に上手くいって、どんどん意思の疎通が取れるようになって来るんです。ね? もう面白いでしょ?

でも、施設の管理をしている軍人が半魚人にハードな虐待をしてるんです。半魚人を助けようとするヒロイン。それを手伝ってくれるのが、コミカルな掃除婦メイトの黒人のおばちゃん&隣の家に住んでるゲイのおじいちゃん。1960年代を舞台に、当時としては、マイノリティな人々が半魚人助けに悪戦苦闘!!

ヒロインと半魚人のハートフルな関係を中心に、半魚人奪還作戦を決行するというダークなおとぎ話になっております。その中で、半魚人はどこから連れて来られたのか? 半魚人は何なのか?(または、何のメタファーなのか?) という謎が徐々に明らかになっていく仕掛け。

パシフィック・リム』ではハリウッドで怪獣VS巨大ロボットを描き、『パンズ・ラビリンス』ではゴシック・ホラーな悪趣味嗜好を余すところなく映画の中へ閉じ込めた。そんな「我らのトトロ」こと、ギレルモ・デル・トロ監督がアカデミー賞の監督賞を獲る日が来るとは!! そんなオタク界の成功者=デル・トロ監督に感謝!!

シェイプ・オブ・ウォーター
★★★★☆
4つ星

3/11『グレイテスト・ショーマン』

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グレイテスト・ショーマン』を観賞。

カンバーバッチと並んで女性が無条件に好きなものこそ、ミュージカル。もはや、ウーマン・スプロイテーション(女性搾取)映画と呼びたい昨今のママゴト・ミュージカル。今作も、実在の人物であるサーカスの生みの親=P・T・バーナムさんの半生をミュージカル映画化した映画。

まさに、女性の好きなものをムリクリ詰め込んだ挙げ句、ストーリーを激薄にシェイプアップ。女性人気の高い主演のヒュー・ジャックマンに始り、今時のダンスとPV風の映像……ともはやノリはYouTube。どのシーンのミュージカル・シーンも長めのPVを見せられてる気分。

子供の頃の貧乏生活から、身分の違いを乗り越えた結婚。変人扱いされながらもサーカスをオープン。ヒンシュクを買いながらも、地位と金を入手。挫折と成功のサクセス・ストーリーをあっさりめに描いていきます。まぁ、ここまで読むと面白そうに感じるかもしれませんが、これが面白くない。

実際のパーナムさんは「ホラ吹き」と言われる程の詐欺師まがいな人物だったらしーのですが、今作では気持ちが悪いくらい偽善者として描かれ、仕事熱心で家庭的な人。嘘臭いレベルまでの脚色。

サーカス……というか見世物小屋を始める際も、ティム・バートン映画の人物を4割くらい薄めたよーなフリークスしか登場しません。実際のフリークスを映画に登場させたブラウニングやホドロフスキーフェリーニの作品を観たことがある方には物足りなさ過ぎると思います。

PVをYouTubeで見漁ってる方は苦なく観れると思われます!!

グレイテスト・ショーマン
☆☆☆☆☆
星0個

3/11『スリー・ビルボード』

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スリー・ビルボード』を観賞。
最近、観た作品の中でも一際は面白かったのが、本作。
娘を殺され、捜査の進展がない事に腹を立てた主人公の肝っ玉かーちゃん。舞台となる田舎町の道路に3つの広告看板を出すんです。その広告には警察署長への批判を実名で掲載。所が、その警察署長は末期癌で余命いくばく。田舎町の住人たちは、みんな知ってるんですね。だから、「末期癌の署長を批判するなんて、酷い!」と大ヒンシュク! マスコミに取り上げられるわ、広告の賛成派と反対派で小さな村がモメモメになるわの大騒動!!
重たい映画かと思いきや、掘り下げられた登場人物たちとギリギリの痛快ブラック・ユーモア、スリリングな展開で、第90回アカデミー賞の作品賞、脚本賞編集賞など、6部門にノミネート。
主人公に批判される警察署長も悪人かと思いきや、家庭を大切にし、部下を思いやる常識人。演じるは名優というより怪優の方がしっくりとくるウディ・ハレルソン。ボスの貫禄と家庭的な好感度をバランス良くミックス。
そんな警察署長を尊敬しまくってる村のボンクラ警官が大変な奴。昼間からマンガばっか読んでは怒られてる。挙げ句、「クビだ! 銃とバッチを返せ!」と言われたら、「あっ、バッチありません。無くしちゃいました!」って言っちゃうバカ。挙げ句、荷物がマンガだけってのも爆笑。でも、彼には彼でまたドラマチックな展開が用意されてるんですねー。
主人公を演じたフランシス・マクドーマンドは、一見して強そうだけど、その内に様々な思いを閉じ込め、圧倒的な名演技でアカデミー賞主演女優賞を獲得。
ボンクラ警官役のサム・ロックウェルも素直になれない複雑なキャラクターで観客のハートをカツアゲ。アカデミー賞助演男優賞を受賞。
心のスキマがギクシャクした登場人物たちが批判広告事件を発端に様々な思いが交錯。もう先読み不可能なドラマへ発展していくスリリングな構成。もう目が離せない傑作でした!

本作のパンフは、キャストのインタビューや批評、監督の過去作品のおさらい、ロケ地解説まで満足の出来だったので、映画の余韻やバックボーンを楽しみたい方には、とてもオススメです!

スリー・ビルボード
★★★★★
満点5つ星

『チームジャックちゃんが読んだシンデレラ公演 Cendrillon サンドリヨン』

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チームジャックちゃんが読んだシンデレラ公演 Cendrillon サンドリヨン
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チームジャックちゃんが読んだシンデレラ公演 Cendrillon サンドリヨン
本日、『マーメイドブーツ』に続いて、『チームジャックちゃんが読んだシンデレラ公演 Cendrillon サンドリヨン』を観劇。

あらすじ・ストーリー(ネタバレなし)

今作は童話「シンデレラ」の裏側的なストーリーなんです。みなさん、ちゃんと覚えてます?

だから、ヒロインのシンデレラ置いてけぼりなんです。でも、それが面白い!! シンデレラの意地悪な姉たちの心情にフォーカス。 人間ドラマを掘り下げ、 感情移入できてしまうレベルまでジャストフィット!! 貴族階級の中で渦巻くプライド、陰謀と暗躍。なかなか先が読めない展開!! そして、ひねりの効いた衝撃のラスト!!

ヒロイティックなストーリーを、照明で細かく盛り上げた演出も効果バツグン!!

みんなの知ってる話をオレジナルにトランスフォーム。こーなってくると、「えーと、確かシンデレラのストーリーって、この後、こーなったはずだからー」と自分の記憶と照らし合わせる脳内ストレッチ作業も楽しいものです。『ハムレット』の超脇役の2人を主人公にした『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』という戯曲を思い出しました。今でいう二次創作ですよね!! 『スター・ウォーズ』のスピンオフ『ローグ・ワン』も言ってしまえば二次創作ですよ!? 否定的な人もいますが、ボクは、オリジナルへのリスペクト&ファンの夢のコラボ技にいつも興奮させられます。その感覚に近い印象です。
しかも、なかなか小さめな会場なのに、貴族とか舞踏会とか、そこそこのスケール感。だから、それが贅沢な距離感として感じられました。やってる事は蜷川幸雄の古典劇的なスケールですからね。これをこのサイズに凝縮した舞台というのもなかなかレア。しょうもない抽象劇でお茶を濁す小演劇が多い中、結構なチャレンジだと思いますね。最近、仕事で中規模くらいの演劇を観に行く事もあるんですけど、久々に良い舞台を観れた気持ちになりました。

ちなみに、本作はダブルキャストになってて、出演者のほとんどが入れ替えになっているのですが、ボクが観劇したのは「ねずみチーム」バージョン。
どの役者さんもハマッてて、他のキャスティングが思いつかないレベルだったので、別キャストバージョンも気になる所。

プログラム

ただ、プログラムだけが薄い割りに高い(涙の2,000円)。同人誌のようなペラペラな上に、役者陣へのどーでもいーQ&Aで中身も薄い。役者陣の芝居も上手だっただけに、個人的には
役へのアプローチや過去プロフィールという定番コースが欲しかったです。それならトートバックを買っとけばよかったと後悔。

最近の小演劇にゲンナリしている方には、おススメしたい作品でした。

http://signalworks.xsrv.jp/Cendrillon/

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3/11『ブラックパンサー』

ブラックパンサー』を観賞。

マーベルのアメコミ映画シリーズにも関わらず、単独主演映画という事で、シリーズ新参者にも優しいストーリーになっておりました。

世間的にはアフリカ近くの小国の王様。でも、その正体はパワードスーツに身を包んだヒーロー=ブラックパンサー
昔、ブルース・リーが流行ると黒人版クンフー映画とばかりに『黒帯ドラゴン』とか、設定を黒人に置き換えた亜流映画があったりしたものです。それでいくと、今作は黒人版『007』+『アイアンマン』という豪華仕様。父親の突然の死による王権争いをチャチャっと片付けながら、闇の武器商人の取引を追うという破天荒な展開でおもてなし。

地下の秘密基地。天才開発者の妹(この子が悪フザケ感満載でイイ)が開発した秘密武器の数々はまさに『007』に登場してもおかしくないものばかり。しかも、ロジャー・ムーアがボンドしてた頃の荒唐無稽なアイテムばかり。アメコミ映画との相性抜群。

イケメン黒人が主人公という事もあり、ブラック・ファッションな衣装も決まってます。黒人が白人をバシバシ倒していくノリは『黒いジャガー』。ブラック・スプロイテーション・ムービーなどの70年代のイケイケ感が漂います。
それでいて、主人公の部族に代々続くシキタリや儀式など、胡散臭い土着設定はハイテク要素とのギャップ萌えになっており、主人公の素敵をより引き立ててます。

まぁ、ストーリーは大変に大味で、よく考えると「?」な所もあるにはあるんですが、こーいった形で黒人ヒーロー復活はまさにお祭り騒ぎ。

★★☆☆☆
星2つ

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http://marvel.disney.co.jp/movie/blackpanther.html

2月14日『霊的ボリシェヴィキ』

f:id:stanley-chaplin-gibo:20180302235706j:plain霊的ボリシェヴィキ』を観賞。

これは新鮮な心霊ホラーでした!
『リング』シリーズの脚本、『恐怖』では脚本・監督を務めたホラー番長の一人、高橋洋監督による新作インディーズ映画。

人の死を目撃した事のある人物たちが廃墟へ集められ、一人一人、怖い話をしていくんです。百物語ってやつですね! もう大人たちが廃墟で怪談話をしているってだけで怖いんですけど、これが実験だというんですね。

彼らの目的は、百物語をして、霊的パワーを集めて、"この世"と"あの世"をつなげよーとしてるんです!!
「"あの世"と繋がるとどーなるのか?」、「この会の主催者は何者なのか?」などなど。謎や謎で話を引っ張りつつ、怪奇描写で肝を冷やす展開なんですが、なんと言ってもヒロイン役の韓英恵がミステリアスでグッド!!
話が進むにつれ、どーやら、とある事件に巻き込まれた過去があるよーだ……と解ってくるのですが、それがトンデモなクライマックスへ加速されていくんですね。

今までのテイストをフルシカトした衝撃のラストの展開は『エヴァ』並に謎を置き去りに。それが、意味不明となるか、クセになるかで賛否が別れる一本!!

パンフは薄い割りに、映画本編の謎解きブックとしても勿論、監督の頭の中まで垣間見える情報量の多さ!!

https://spiritualbolshevik.wixsite.com/bolsheviki

『ミスミソウ』

f:id:stanley-chaplin-gibo:20180302091625j:plainミスミソウ』を観賞。

中学生のエスカレートしたイジメが地獄の復讐劇へ発展するバイオレンス!! 『バトル・ロワイアル』を思い出しますね!! 田舎の中学生は怖い!!

とにかく、舞台となる村の閉塞感が怖い!! ひたすら田舎だし。雪降ってて寒いし。やる事がない。吐き出し口のない怒り。そんで怒りの矛先は、東京から引っ越してきた主人公の女子中学生へロック・オン!! 冒頭からドン引きするようなイジメの毎日。イジメっ子たちもキャラが濃く、イジメ・ボルテージがエスカレート!!
「これは酷い」と思っていたら、ここまでがただのプロローグ!!

だって、度を超えた悪フザケはヒロインの家族までド派手に飛び火!!
そこからの主人公の復讐劇はまるでマカロニかセガール映画か!! 雪が血で赤く染められていく破壊力!! 道徳心のネジのゆるんだ登場人物たちによる残忍スプラッター描写の連続は、さながらバイオレンス中学生版『死亡の塔』状態!!

「こんなキチガイみたいな映画、誰が撮ったんだ!」と思っていたら、残酷王子の内藤瑛亮監督で大変に納得。切株映画好きの悪趣味趣向をまんべんなく自作へ投影。

結果、復讐や過剰なバイオレンスが前面に出ているゆえに、「人を思いやる気持ち」がダイレクトに染みるスカッとした一本になってました。


ミスミソウ
★★★☆☆
星3つ

http://misumisou-movie.com/sp/

『おもてなし』

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『おもてなし』を観賞。

どーも、冒頭の東京の風景から何だか独特なんですね。それもそのはず、監督は台湾人のジェイ・チャン監督。本作は日本と台湾の合作映画。ソフィア・コッポラヴェンダースの映画などそーですが、なぜ外国人監督の撮った日本の風景って、独特の雰囲気が漂うのでしょーね?

内容は、経営不振の琵琶湖畔の旅館を買収し、結婚式場へ改装する為にやって来た無気力系合理主義なボンボン役のワン・ポーチエ。旅館の一人娘で、前職への未練がありながら、改装にキレるわがままネーちゃん役の田中麗奈。そんな2人が喧々諤々しながら、共に「おもてなし教室」で強制修行へ。徐々に日本の"おもてなし精神"を学んでいく事で……という非常に説教臭いストーリー。

とは言え、抑え気味のやりすぎない演出により、最近の邦画にありがちな「ムダにコミカル」になってない所が好感度高し!
それにより、過去を引きずる2人のエピソードやお互いにシンパシーを感じていく展開も無理なく、リアルに感じる事が出来ました。

まぁ、ストーリー展開や設定に関しては既視感だらけではあるんですが、写真のような綺麗な映像、安定した演出と役者陣のリアルな演技により、なんかちょっと良いもの見たな感を得られる作品。
気合を入れて観に行くというより、たまたま入った映画館でやってたら、意外な拾い物したというタイプ。


『おもてなし』
★★☆☆☆
2つ星

http://omotenashi-movie.net/

1/3『オリエント急行殺人事件』

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オリエント急行殺人事件』を観賞。

まさに古典中の古典である名探偵エルキュール・ポアロ。それをケネス・ブラナーが監督だけではなく、主演までする日がくるとは!!

確かに、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー出身のケネス・ブラナーなら、何作ものシェイクスピア劇を監督してきたし、最近では『マイティ・ソー』といったアメコミ映画まで監督する許容を身につけたのだから、適任かもしれないと劇場へ。

今作の魅力はポアロ役をブラナー本人が演じる上に超豪華キャスト!!
ペネロペ・クルスウィレム・デフォージュディ・デンチミシェル・ファイファージョニー・デップまでが参加している。
そもそも、ブラナーの演じる主人公のポワロがユーモラスでなんとも魅力的!!

案の定、オールスター・キャストの共演はそれだけで胸が高鳴る程に華やかで、密室である列車の中で殺人事件が起きた後などは、みんな本当の事を言ってるよーな、それでいてウソを隠してるよーな、絶妙な怪しい芝居で心を鷲づかみにされる。ほとんど会話劇の本作を見せきる名優たちの共演は流石なのだ!!

さらに、目を見張るカメラワーク!!
列車が発車する前のシーン、駅構内での奇跡のタイミングな超長回し!! グイグイと見せられていく。
限られた空間である列車の中でのカメラワーク。どれも素晴らしい。
ずっと狭い車内での閉鎖感からの、クライマックス近くでの列車外シーンの解放感!!
よもや、名匠の域に達したブラナーにとっては、全て計算づくなのだ!!

オリエント急行殺人事件
★★★★☆
星4つ

http://www.foxmovies-jp.com/orient-movie/sp/

『ルイの9番目の人生』

f:id:stanley-chaplin-gibo:20180227095629j:plain昨日、『ルイの9番目の人生』を観賞して来ました。

とっても面白かった!!
サスペンスともホラーともスピリチュアルとも言えないジャンルの車線変更が先読みを不可能にし、なおかつユーモラスでダーク・ファンタジーな雰囲気と文学の香りまで漂わせる傑作!!

9歳の男の子=ルイが崖から落ちる事件が勃発。パンチの効きすぎる冒頭。昏睡状態になってしまったルイを見守る美人ママとエロ医者。どーも雲行きが怪しい。

そこから、物語はまさかの昏睡状態のルイのモノローグで過去を回想。パパとママの子供には酷すぎる関係、現在の美人ママとエロ医者の現在が交互に描かれ、幽体離脱的に物語を俯瞰で見ていく主人公のルイ。

「失踪指したパパは今どこに?」「ルイが崖から落ちたのは、事故か殺人か?」「美人ママとエロ医者の関係」「ルイは何を考えていたのか?」などなど、次から次へと謎が大漁発生!!
ルイや美人ママ、エロ医者など様々な人物の目線で語られていく事で徐々に謎が明らかになっていくミステリー仕立ての構成で、もはや瞬き不可!!

一見して重たくなりそうなモチーフを子供が主人公ならではのユーモラスに描写で見せていくのも面白いんです。終わる頃には、ルイのファンになってしまいます!!
挙げ句、モンスターまで登場!!
そして、心臓に悪いホラー演出まで!!
と言うか、中盤はもうほとんどホラー!!
誰が予想できるか!!


監督は残酷王子ことアレクサンドル・アジャ!!
今まで、オリジナル超えリメイク・ホラー作『ヒルズ・ハブ・アイズ』で恐怖と寿命をカツアゲ。下品なモンスターパニック『ピラニア3D』では笑いと痛々しい描写とほんの少しの勇気をくれた。

子供の成長物語風な本作のポスターに「どーした、アジャ?!」と思ってしまったが、安定のアジャ・クオリティ。残忍描写はほぼ封印して、ストーリーテリングに徹した前作『ホーンズ 容疑者と告白の角』と今作に圧倒的なアジャの進化を感じます!!

映画秘宝」のインタビューでは、「デ・パルマのファン」と公言。「今作では、ヒッチコックを意識した」との事で、グッジョブ、アジャ!!

パンフはあまり中味のない内容ばかりなので、コレクターの方のみの購入をオススメします。


『ルイの9番目の人生』
★★★★★
もちろん文句なしの満点5つ星


http://louis9.jp/

【2017年ベスト映画ランキング】

よもや、2018年も1ヶ月半ほど過ぎてしまいましたから、今さらな感じではありますが、今年も2017年に公開された映画でランキングを作りました!!


【2017年ベスト映画ランキング】

第1位:『散歩する侵略者
黒沢清の地球侵略ムービー愛がスパーク!! ユーモラスであり、飛びきりのサスペンスなのに、最後はラブ・ストーリーとして着地する文句なしのキレキレ作品!!

第2位:『ガーディアン・オブ・ギャラクシー:リミックス
家族を持たない、はみ出しヒーローたち。ベスト・チョイスなBGM。いがみ合いながらチームという家族として固まっていく。泣けて、笑えて、興奮できての一級品のエンタメ映画!!

第3位:『猿の惑星:聖戦記
3作目にして、この安定のクオリティを維持!! 猿の一族のゴッドファーザーになった主人公が復讐の炎を燃やすロード・ムービー!! 男の戦いに涙のカツアゲ!!

第4位:『エイリアン:コヴェナント
リドリー・スコットさん、ありがとう!! 『エイリアン』シリーズの興奮を新たにお届けすると同時に規格外の結末に脱帽!! もう一度1作目を見返したくなる請合いです!!

第5位:『アウトレイジ 最終章
新たな怖い人たちオプション追加付きのクールなバイオレンス!! 大友のヤクザ道、終着点にして、北野映画の原点回帰!! あの乾いたバイオレンスをもう一度、見れるだけでも価値ある一本!!

第6位:『スパイダーマン:ホームカミング
正直、新たなスパイダーマンのリブートに飽き飽きしてました。でも、今回のスパイダーマンは陽気な気分の漂うボーイ・ミーツ・ガールなラブ・コメなアクション!! アイアンマンが成長してしまった今、低偏差値なスパイダーマンがボクらを救う!!

第7位:『お嬢様』
主人公の辿る数奇な運命をエロ+ユリ+見世物小屋感で秀逸なミステリーとして調理!! 人間の欲望ぜんぶ乗せがクセになるハードコア映画!!

第8位:『カフェ・ソサエティ
1930年代のハリウッドを豪華絢爛に甦らせたウディ・アレン。それでいて描いてるのは男女の出会いと別れの運命論。大人の味わいたっぷりで見せる秀逸な一品。

第9位:『 LOGAN/ローガン』
シリーズ毎、ボンクラたちのハートにジャストフィットしていたローガンとプロフェッサーの年の離れた友情。その最後の旅は家族を持たない孤独なミュータントの希望の旅。西部劇風味な味付けが心の目に残る変化球作品!!

第10位:『スター・ウォーズ/最後のジェダイ
文句は色々あるかもしれない。でも誰が何と言おうと『スター・ウォーズ』なのだ!! 結局、観ちゃったでしょ?!

2017年5月28日『スプリット』

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『スプリット』を観賞。
 
まず監禁犯役のジェームズ・マカヴォイの多重人格芝居! 怖いです! 近づきたくない!
 
冒頭から早々に主人公の女子大生たちを拉致監禁。ひたすらマカヴォイの多重人格芝居。しかも、性別も年齢もバラバラ。しかも各人格を服装やメイクなどに頼らず演じ分けるんですよ。凄いですよねー。そんなアッパラパーな人格たちとの会話に出てくる謎のヤバそうな人格=「ビースト」。あくまでも人格なので姿こそ出さないものの、みんな怯えてるんですよ! どんだけヤバい奴なんだよと!
 
同時進行で監禁されたオネーちゃんたちが脱出を試みるサスペンス要素のオプション追加。もう先のストーリー展開が全く読めないんです。まぁ、ナナメ上に着地していくのですが。
 
ただ、あまりにも地下室での話が長いの、ちょっと飽きました。シャマランの次回作に期待です!
 
でも、お芝居好きな方はマカヴォイの芝居を観るだけでも楽しいと思いますね!
今作のシャマラン監督へのインタビューによると、「僕は脚本を戯曲のように扱いたいので、セリフを変えないように要求したんだ。」との事。それに対して「彼のセリフは脚本通りなんだけど、表情や体でアドリブを加えているんだ」そーな。
 
パンフは良くも悪くも普通でした。
 
★★☆☆☆