ユンギボの映画日記

ユンギボ(@yungibo)によるあらすじ紹介、ネタバレなしのレビュー、解説・考察をお届け‼

『アメリカン・アサシン』

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『アメリカン・アサシン』を観賞。

冒頭からビーチで恋人にプロポーズ。満面の笑みの元、OKをもらい、死亡フラグが立った瞬間、機関銃をそこら中に撃ちまくるオジさんたちが出現。イスラム過激派の乱暴な無差別テロにより、フィアンセになりたてホヤホヤの恋人を失う主人公。
そこから、根暗野郎にトランスフォーム。電光石火の早さで、復讐の為、殺人スキルを猛特訓。それが転機となり、CIAにスカウトされるというサクセス・ストーリー。
ネイビーシールズ出身の鬼教官による地獄特訓を受け、晴れて仲間入り。鬼教官の指揮下の元、初ミッション参加。所が、プルトニウムを盗んで、核兵器の製造を目論む……という景気がいいにも程があるテロリスト集団に遭遇。さらにそのバックには、鬼教官の元弟子で、今は残忍テロリストへ華麗な転職を果たしたラスボスの存在がチラ見え。核のカウントダウンを止める為、主人公と鬼教官が奔走するヒヤヒヤ展開へ。

どーも過去のスパイ・アクション映画からの既視感ある設定だらけなんですが、原作は2011年のヴィンス・フリンさんの書いた人気シリーズのミッチ・ラップ シリーズ。テレビドラマ『24 -TWENTY FOUR-』のコンサルタントを務めたお方。その為、「スパイ」「CIA」「テロリスト」の単語が出てくる映画が好きな人には確実に楽しめる内容です。

主演は『メイズ・ランナー』シリーズの濃い割りにファニーな顔立ちが勇ましいディラン・オブライエンくん。とにかく、アクション・シーンがキレッキレ。
そんな若造に負けるかと鬼教官を演じる元バットマンマイケル・キートンも引き締まったボディで、現役バリバリ感なフェロモンを撒き散らしています。

上司の命令を無視するスタンドプレーが結果的に上手くいき、調子に乗りまくる主人公。中東のテンプレなテロリスト像。そういった、アメリカンに歯向かう者への報復には手段を選ばない大味な展開などを受け入れられるかで、作品の評価が変わってくると思います。良くも悪くもトランプ時代のスパイ映画。


『アメリカン・アサシン』
★★★☆☆
星3つ

【観劇】『虹のかけら ~もうひとりのジュディ』

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スパイラルホールにて、Keiko Toda 60years Anniversary『虹のかけら ~もうひとりのジュディ』を観劇。

本作は戸田恵子の60歳を祝い、盟友=三谷幸喜が構成・演出を手掛けた一人芝居。

本作は、映画『オズの魔法使』のドロシー役でアイドル的人気を博したミュージカルスター=ジュディ・ガーランドの生涯の実録エピソードで構成。それをジュディ・ガーランドではなく、ジュディの付き人&専属の代役として長年、寄り添った「もう一人のジュデイ」ことジュディ・シルバーマンの目線で描いてる所がミソ。

戸田恵子が、シルバーマンの日記を朗読。少女から大人の女性まで演じ分ける戸田恵子の朗読芝居もさすがなのですが、さらに、ジュディ・ガーランドが出演したミュージカル映画の楽曲まで熱唱。朗読と歌&ダンスが交互に展開していく様は、思いの外、スリリング!! しかも、ミュージカル好きじゃなくとも、聴いたことあるであろう名曲揃い。

栄光の影に隠されたジュディ・ガーランドの破天荒な私生活、没落していく人性。そして、シルバーマンのガーランドに対する愛情と憎しみの入り交じった感情が浮き彫りになっていく……というストーリーもグッときます。

それだけでも、豪華コラボなのですが、ピアノ&ベース&ドラムの生演奏つきの贅沢仕様。

『世界でいちばん長い写真』

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『世界でいちばん長い写真』を観賞。

消極的な少年がパノラマ写真機を通して、様々な人々と関わり、成長していく一夏の思い出=童貞映画!

この映画、主人公の従姉の結婚式のシーンから始まるんです。主人公と従姉の会話から回想シーンになって、結婚のキッカケが語られていく。それは、主人公が高校生の頃の一夏の話なんです。
ボンクラ高校生の主人公が、従姉の働く古道具屋で古めかしいカメラを発見。調べてみると、改造パノラマ写真機と解るんです。そこで、色々と撮ってみたり、研究したりしている内にハマってくんです。
それが周りの同級生たちの知る所となり、話がどんどん膨らんで、「学園祭の全校生徒の集合写真を、このパノラマ写真機で撮ろう」となっちゃう。
これは、主人公にとっては一大事なんですよ。なぜなら、主人公は消極的を通り越してコミュ障レベル。なのに、リーダーに祭り上げられるという。
そんな中で、今まで関わる事のなかったキャラの濃い同級生たちと実行委員をやって、甘くて苦い青春を経験していくんですね。

1つ言っておくと、実行委員の中に科学部の男の子が出てくるんですけど、爆笑です。「こーゆー変なしゃべり方する奴、いたよね!」っていう抜群に愛嬌のある童貞キャラなんですよ! 無表情で、ちょっと強がってる風に話す感じがツボです。

というか、ドキュメンタリーかなって思っちゃうくらい、出演者の皆さん、みんな芝居が上手いんですよ。すごい自然で。それに合わせて、前半は手持ちカメラを多様してて、やり過ぎてて、ちょっと気持ち悪くなるんですけど。

特に、写真部のツンケンした部長役の松本穂香ちゃんがすごく良い!! 学園モノに有りがちな「成績も良いしっかり者キャラ」なんです。いつも主人公を叱ってる優等生。で、なんなら主人公に思いを寄せてたりする訳なんですが。
そんなテンプレ・ヒロインが、クライマックスであんなに泣ける行動に出るとは思いませんでしたわ! いざ、集合写真を撮るってタイミングで走り出したときは、鳥肌が立ちました。もう大号泣ですよ!!


『世界でいちばん長い写真』
★★★★☆
星4つ

『馬の骨』

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『馬の骨』を観賞。

夢破れ自分を見失ったおっさんと地下アイドルからシンガー・ソングライターを目指す女の子のロッキー系ヒューマン・ドラマ。

そもそも、元祖オーディション番組「イカ天」で審査員特別賞をもらったロックバンドの名前が「馬の骨」なんです。主人公のおっさんは、「馬の骨」のボーカルだったんですけど、今や金ナシ夢ナシな日雇い警備員。この主人公が抜群にボンクラで、同僚の若いアンちゃんにバカにされ、仕事放棄。走って逃げたと思ったら、ワンカップ片手に道端で寝ちゃってるシーンなんかもう泣けてきます。

また、もう一人の主人公は、地下アイドルからシンガー・ソングライターを目指すヒロイン。絶妙に歌が下手で、発作的にアイドルグループを辞める展開は絶望的でしたが、クライマックスのライヴ・シーンではまるで別人。演じる小島藤子は半年間ギターの特訓を受け、本番に挑んだとの事。透明感のある歌声を披露。

そんなヒロインに出会った事で、主人公はバンドの再結成というミッションにチャレンジ。ヒロインは、歌&ギターの特訓を重ね、ライヴ成功にチャレンジ。2人のチャレンジが同時進行で交差する中、主人公を恨む元同僚やヒロインに近づこうとするアイドルオタクなど、スムーズには行かないスポ根展開。

血を流しながらライヴ・ハウスへ向かう主人公に感涙!! 本作の監督&脚本&主題歌の作詞作曲&出演を兼ねる桐生コウジは自伝的な物語を見事、エンタメ映画として昇華。そう、今作は『ロッキー』であり、『ライムライト』でもあるんです!!


『馬の骨』
★★★☆☆
星3つ

『ニンジャバットマン』

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『ニンジャバットマン』を観賞。

ワーナー・ブラザースによるDCフランチャイズにより、クールジャパンとバットマンが奇跡のコラボ。

集められたメンツが凄いんです。アニメ版『ジョジ』のポップなOPを手がけた制作会社「神風動画」の水崎淳平が監督。『アフロサムライ』の原作者である岡崎能士がキャラデザイン。チャンバラ活劇が見せ場である劇団新感線の座付き脚本家である中島かずきが参加。この豪華すぎる日本クリエイターたちが圧倒的技術力と悪ノリをスパークさせたのが本作なんです。

バットマンが殺さずの誓いの元、過去の悪党たちが収監されたアーカム精神病院。その中の悪党が開発した転移装置により、バットマンと悪党たちは戦国時代の日本へタイムスリップ! 戦国日本でカルチャーショックを受けるシーンは爆笑。さらに、バットマンより2年も先にタイムスリップしていた各悪役キャラたちは、各地の戦国大名たちと入れ替り、打倒バットマンなクレイジー過ぎる兵器を用意しているんです。その後も大風呂敷は広がる一方。あと出しに次ぐあと出しで、ハチャメチャにも程があるクレイジーな展開はやり過ぎレベル。

そして、アメコミ・ファンでも頭がパンクしそうな登場キャラの多さも圧巻! 今まで、映像化では省略されてきた原作ファンには感涙のサブキャラたちが一挙登場という派手なサプライズ付き。ジョーカー、ハーレイ・クイン、ポイズン・アイビー、トゥー・フェイス、ベイン、ペンギン……という実写映画登場キャラは勿論、デス・ストロークゴリラ・グロッドまで登場。バットマンサイドもロビン、レッドロビン、ナイトウィングなどが登場。もうキャラの洪水ではあるんですが、各キャラの説明はなし。雰囲気で善玉or悪玉を見分けてねという茶目っ気の元、キャラ以上に盛り沢山なストーリーへ注力。常識を逸脱した唖然のクライマックスへひた走ります。



『ニンジャバットマン

★★★☆☆

星3つ

『ランペイジ 巨獣大乱闘』

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ランペイジ 巨獣大乱闘』を観賞。

怪獣映画ファンと巨大生物ファンと両方のファンのハートをカツアゲする巨大生物のプロレス映画。

去年、公開された『キングコング 髑髏島の巨神』はモンスターバースというシリーズで、今後、『GODZILLA ゴジラ』のゴジラキングコングが闘う『Godzilla vs. Kong』という作品の製作が決まってます。そこで、怪獣王対決が始まる前に、巨大生物対決を実現させてやれ!というのゴキゲンな掛け声が聞こえてきそうな映画が本作。

遺伝子操作により、キングコングのようにデカいゴリラとオオカミ、その2匹より更にデカいワニが登場。街中で三つ巴の闘いを繰り広げるという、まるで中学生が考えたようなストーリーをまんま映像化。

3匹の巨獣なんて人類には手も足も出ないと思いきや、マッスルボディの持ち主、ドェイン・ジョンソンが霊長類学者という嘘にも程がある設定で登場。しかし、そこはただの学者な訳はなく、元陸軍特殊部隊&元国連の反密猟部隊というセガールのような肩書き付き。巨獣たちとガチで対等に闘うギャグみたいなクライマックスは必見です!

巨獣たちの登場しない前半は、DNAがどーしたとか、遺伝子がどーしたとか、ロック様の何もない日常とか、巨獣と優しきマッチョが出来上がっちゃった言い訳のよーなシーンが続くので退屈なんです。でも、中盤で巨獣たちが街へ到着するので、ご安心下さい。

フリン・ピクチャー社の創始者で、本作を製作するボー・フリンは
「巨獣たちを夜のシーンや雨や曇り空の下に隠すようなことはしたくない。映画全体をとおして、変異し乱闘する彼らを陽の光に照らし出したい、彼らが引き起こしている破壊を青空のもとに映し出したいと思った」
と言う解ってる人物。そのゴージャスな発言の通り晴天の中、暴れまくる巨獣たちには大興奮。

細かい設定を考え始めたら逆に負けな巨獣エンタメ大作を観て、ゴジラキングコングの闘いに夢を馳せて待ちましょう!!


ランペイジ 巨獣大乱闘
★★★☆☆
星3つ

『兄友』

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『兄友』を観賞。

少女マンガを実写化した学園ラブ・コメ。

先月まで放映されていたドラマ版は主人公の2人が付き合い始めて以降のエピソード。本作はその前談。そう、この2人、本作の序盤で普通に付き合っちゃうんですよ!
えっ?! 普通、ラブコメって、2人が付き合うまでのお話じゃないの? そんなんで、その後の展開は大丈夫? ……って思いますよね!?
そこが、本作の主題なんですよ! 2人とも付き合い出したは良いけれど、ウブ過ぎて手も繋げない。それ所か、お互いの下の名前も呼び合えない。もうピュアを通り越してコミュ障な域。

お互いの為を思っての行動が絶妙な裏目に出てしまい、2人共、疑心暗鬼モードへ突入。そんなタイミングで、お互いの恋敵が現れて……という悪い事は重なる展開へ。付き合うまでのハッピーな妄想の先で待ち受けていた人間不信レベルな現実とのギャップ映画なんです。

ドラマ版と同時撮影だったという事もあり、テレビ向けのライトなノリがノーテンキに観れる作風で、もはや映画とは呼べない代物に。そん中で全力コミカルの横浜流星くんと松風理咲ちゃんが微笑ましかったです。

周りのキャストも、松岡広大くん、古川毅くんとイケメンたちが乙女のハートをカツアゲ。声優の福山潤による恋の指南シーンもオプション追加で、腐女子のハートまでカツアゲですわ!
しかし、オジさんは何も奪われる事なく、ただただ苦悩をつづった自己満モノローグに吐き気さえ感じましたわ。映画みたいなゴミ!


『兄友』
☆☆☆☆☆
星0つ

『ばあちゃんロード』

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『ばあちゃんロード』を観賞。

映画美学校のプロットコンペティションで最優秀賞を受賞したプロットを元に製作されたのが本作。

主人公は結婚が決まったヒロイン。その事を疎遠になっている祖母へ報告に行くと、歩けなくなって、施設で気弱な偏屈ばあちゃんに再会。そこで、子供の頃のばあちゃんっ子魂に火が着き、「バージンロードをばあちゃんと歩く」という泣かせる目標を掲げるんです。

で、毎日、施設へばあちゃんに会いに行き、バージンロード・ミッションのクリアを目指すというストーリーになっております。

一見して、テレビのドラマ・スペシャル枠っぽいのですが、流石の貫禄を見せるのが、ばあちゃん役のベテラン:草笛光子

ばあちゃん孝行街道をひた走るヒロインがフィアンセと揉めたり、ばあちゃんのメンタル改革に乗り出したりというドラマもあるんですが、後半は、もうばあちゃんの映画。表情のみで、孫への思いや自らの体への不安を表現。

ちなみに、車イスで散歩するシーンはオール・アドリブとの事。外出にウキウキする感じで喋り倒し、それに答えるヒロイン役の文音ちゃんもグッド!

メガホンを取った青春映画で秀作を生み出し続けている篠原哲雄監督。エンタメ映画としては弱いのですが、なんて事ないよーなストーリーをロケ地の美しさ、ヒロイン役の文音ちゃんの凛とした表情など、良い所をより綺麗な演出でまとめ上げていました。


『ばあちゃんロード』
★★☆☆☆
星2つ

『四月の永い夢』

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四月の永い夢』を観賞。

恋人を亡くした主人公の日常を静か&丹念に描いた、いかにもインディーズな邦画。

冒頭から、かなり丁寧に主人公の女性の日常が描かれていくんです。すごーく丁寧に一つ一つの事柄が描かれていく。定食屋でのバイト。図書館へ行ったり。映画館へ行ったり。

決して解りやすい映画ではないんですが、ちゃんと観てると、徐々に彼女の元カレが死んだ過去が解ってくるんですね。

本作の潔いというか、面白いのは、安易に回想シーンなどで死んだ彼氏とのエピソードを語るよーな事はしないんです。むしろ、元カレがどんな人物で、主人公が具体的に何で悩んでいるのかも語られない。
そんな中、バイト先の常連客の青年から言い寄られてもハッキリとした態度を取らない。友人が仕事を紹介してくれても断る。 なんで?! どーして?! 一体、どんな彼氏で、どんなエピソードがあったの?!

で、この映画の上手い所は、そのヒントっぽいものが全編に散らばってるんです。名画座で1942年公開の『カサブランカ』という映画を観に行ってたり、主人公の部屋にやたらと古めかしいデザインの物が多かったり。もしかして、それは死んだ彼氏との? なんて考えると、メチャクチャ過去に囚われてるよーに観えてくるから不思議ですよ!

そして、主人公の元に届いた死んだ彼氏からの手紙により、過去をふっ切る旅が始まるんですね。

透明感&凄く繊細な表情で、過去を引きずりマクリスティーな主人公を演じるのは、朝倉あきが素晴らしいんです。なんなら、ちょっと少女っぽさも醸し出してますからね!

いかにも日本より外国の芸術系映画祭で栄える作品だと思っていたら、日本での公開前に、世界四大映画祭の第39回モスクワ国際映画祭のメインコンペティション部門に正式出品。国際映画批評家連盟賞とロシア映画批評家連盟特別表彰のダブル受賞を果たしてました。

エンタメ映画のような見せ場がある訳ではないですが、静かに一人でしっとりムービーを観たい方にはオススメの一本!!


四月の永い夢
★★☆☆☆
星2つ

『孤狼の血』

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孤狼の血』を観賞。

これは久々に楽しめるヤクザ映画です!!

警察とヤクザの癒着モノというフォーマットを取りながら、話は二転三転のスリリングなサスペンス。豪華キャストな上、警察とヤクザの間で生きるしかなくなった男の生き様を見せつける傑作でした。

若手刑事の松坂桃李くんが暴力団担当のベテラン刑事=役所広司とバディを組まされるんです。でも、その先輩刑事は、殴る!蹴る!!被害届を出しに来た女とヤッちゃう!!昼間からパチンコへ行く!!恐喝する!!気楽に賄賂を受け取る!!ヤクザに因縁をつけて脅す!!不法侵入する!! もうヤクザよりも正しい極道街道を走る限りなくヤクザな刑事!! 勿論、本物のヤクザとも仲良し。

所が松坂くん、途中で気づいてくるんですよ。対立関係にある二つのヤクザ組織の間を行ったり来たりしている役所広司が抗争を未然に中和しているのでは? あれ? このパイ先、実は良い人なのでは? ……と、最初は嫌悪気味だった松坂くんも段々と感情移入していく師弟関係へ。さらに、そんな松坂くんにも実は……という秘密もあり。
そして、ヤクザにボコボコにされた所を手当てしてくれた薬局のオネーちゃんとのロマンスもあり。抗争開始のカウントダウンにハラハラ。もう山盛りかつ贅沢な一本に!

広島弁で荒れ狂う役所広司が最低なんだけど、酷い程、カッコイイ!! ヤクザからも警察側からも陰口を叩かれつつ、良い人とも悪い人とも取れる絶妙なバランス。
敵対しているヤクザの皆様も超豪華メンツ。インテリヤクザ江口洋介。胡散臭い組長の石橋蓮司。『仁義なき戦い 広島死闘編』の千葉ちゃんのコスプレで登場の竹野内豊。情報屋の右翼組員にピエール瀧(安定の右翼顔)。物語の中心になるクラブのママ役を圧倒的な肝っ玉で演じる真木よう子

もうテロップの入れ方、編集の仕方から『仁義なき戦い』や『県警対組織暴力』のオマージュまでブチ込まれていて、非常に正しい深作欣二リスペクトもスパークしてます!! 深作欣二ファンには無条件にオススメ!!


孤狼の血
★★★★★
満点5つ星

5/3『犯罪都市』

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犯罪都市』を観賞。

警察組織VSヤクザ組織の抗争というレトロな物語を肉弾戦メインで描いた韓国発のアクション痛快サスペンス映画が日本到着!

本作の魅力はなんと言っても主演のマ・ドンソク! レスラーのような巨体と眩しそうな眼差し。本作でドンソクが演じるのは、強行犯係のリーダー。ナイフを持ったヤクザも拳ひとつのワンパンチで解決。コワモテなビジュアルとは裏腹に、ちょっと香水をつけただけで同僚にイジられる愛されキャラ。

そんな主人公の管轄に、ナイフや斧を使った残虐スキルを遺憾なく発揮するヤクザ組織が登場。地元ヤクザをグサグサ刺したり、体の一部をストンと切り落としたり、極悪非道な方法でやりたい放題。

悪役のボス役を演じるのは、アイドルグループ出身のユン・ゲサン。体を鍛え、体重を増やすというデ・ニーロ・アプローチにより、マッチョ体型にトランスフォーム。元アイドルとは思えないキレのあるアクションでイカれたヤバい奴を怪演。
かくして、正義のマッチョ=ドンソクVS残酷マフィア=ゲサンという韓流好きのオバちゃんも裸足で逃げ出す夢のタイトルマッチが実現!

そして、この映画、とにかく飛道具が出てこないんです。武器と言えば、ナイフや斧、割れたガラスの破片、己の拳。肉弾戦に全力投球映画なんです。
新感染 ファイナル・エクスプレス』や『MASTER マスター』の韓国を代表するホ・ミョンヘン武術監督によるスリリングなアクションの数々。武術家でも格闘家でもない、実際の刑事の戦闘を追求したリアルなアクションは、ボクシングや柔道、護身術などが豪華コラボしたようなハイスペックなものに。

それと、本作は壮絶なアクションだけではなく、主人公と周辺人物とのヤリトリがユーモラス&キャラを浮かび上がらせるのが上手いんです。主人公の行きつけの飲み屋で手伝いをしている子供とのハートフルな交流。ハード過ぎる職務にメンタルが擦り切れ部署移動した後輩のアフターフォロー。女性を相手にすると童貞のようにモジモジ。きめ細かい気配りのできる心優しき野獣っぷりは必見。

本国でのヒットを受けて、すでに2作目の企画もスタートしてるとの事。

犯罪都市
★★★★☆
星4つ

5/3『タクシー運転手 約束は海を越えて』

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『タクシー運転手 約束は海を越えて』を観賞。

今年、ボクのトップ10に入るであろう傑作を見つけて来ました!

舞台は1980年。主人公は韓国のソウルで働く小市民のタクシー運転手。この愛すべきお調子者なキャラを名優ソン・ガンホが寅さんの渥美清風味のひょうきんさで演じてる訳です。
滞納した家賃を払うのに、大家から金を借りようとするクダリは爆笑必至。愛くるしいソン・ガンホだから出来る憎めないキャラなんです。
滞納した家賃を払う為、大金と引換えに、事情も知らず乗せたドイツ人記者。その目的は、デモ活動により封鎖された村への取材だったんですね。ここから危険な旅が始まります。まさに命懸けでした。
脚本的に上手いのが、ドイツ人記者を目的地へ送るミッションと同時にシングルファーザーである主人公の11歳の娘との約束を果たす為に早く帰るというタイムリミットも用意されてるんです。それが、主人公のキャラのバックボーンをより掘り下げるのに効果テキメンなんですね。
そして、言葉の通じない2人のギスギスした旅は、デモ隊も市民も見境なく攻撃する軍の横暴の前で熱い友情へトランスフォーム。男泣きな感動のラストを迎える訳です。

警察や政府がデモ隊や市民を力技で鎮圧する為、メディアに嘘の情報を流していたとか、規制線を張って、村の外と隔絶していた……など重たい実話をバランス良く落とし込んだ構成は素晴らしいの一言。

パンフには、監督やソン・ガンホのインタビューに加え、事件や時代背景のバックボーン。そして、当時のタクシー情報まで盛り沢山な内容。韓国の歴史のお勉強としも役立つ一冊でした。


『タクシー運転手 約束は海を越えて』
★★★★★
満点5つ星

5/1『勝手にふるえてろ』

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勝手にふるえてろ』を観賞。

驚くべきことに、主演の松岡茉優ちゃんが可愛いんですよ! もう、それに尽きる一本という感じがします。しかも、可愛いだけでなく、セリフ回しが抜群に上手いんですよ! 「ブスじゃないんだけどモテない子」の絶妙なバランス! とても『ちはやふる』のクイーンと同じ役者とは思えない!!

コミュ障で妄想ばかりの非モテ女子。マシンガントークで自分の思いを語り、空気も読まずに感情をすぐ顔に出してしまう。そんなヒロインを松岡茉優ちゃんが魅力的に演じてます。
冒頭の会社から帰宅途中に出会う人々(古舘寛治片桐はいり前野朋哉趣里池田鉄洋と、セリフ少なにインディーズ映画や演劇界の名優たちが脇を固める豪華さ!)に自分の思いを吐露する面白さ!
中学の頃から思いを寄せる男の子と、急に告白してきた冴えない会社の同僚。2人の男に揺れ動く少女マンガの王道パターンを現代的にリフォームした脚本もコミカル。
ただ、いかんせん、演出がかったるいんです。本当に勿体ない。ボクでも解るレベルで演出がちゃんとされてないんです。シーンとシーンの繋ぎが意識されておらず、強弱のない平坦な演出が、とにかくかったるい。なんで中盤の中だるみ感が凄いです。
ゆえに、松岡茉優ちゃんの可愛さを堪能する映画レベルに留まっている作品でした。豪華キャストで各モチーフ、セリフ回し等も良いだけに、本当に勿体ないと思いました。


勝手にふるえてろ
★★☆☆☆
星2つ

5/1『ラッカは静かに虐殺されている』

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ラッカは静かに虐殺されている』を観賞。

シリアの残酷な現状を写し出す過激なドキュメンタリーでした。
そもそもラッカとは、シリア北部の街。過激思想&武力拡大するテロ組織=「イスラム国」により、牛耳られてる街なんです。もう、やりたい放題なんですよ。イスラム国のメンバーたちは、言うことを聞かない市民を公開処刑してるんです。それが、首を切り落とし、広場で見せしめにしてたり、死体を街中に吊るしたり。恐怖で統治する酷い奴らなんです。でも、その酷い事を他の国にはバレないよーにと、ハードなメディア規制をしてるんです。そこで、立ち上がったのが、本作の主人公たちである市民ジャーナリストたちなんです。彼らは、爆撃で瓦礫と化した街や街中で日常的に起きている公開処刑(というか、もう殺人)をケータイやデジカメで撮影。ツイッターFacebookなどのSNSへアップする組織を結成。その市民ジャーナリストの組織名が「ラッカは静かに虐殺されている」なんです。

ただ、この映画で描かれる「ラッカは~」のメンバーたちとイスラム国の戦いがとにかく観てて辛い。焦りだしたイスラム国の報復がとにかく陰惨。ある日、イスラム国のFacebookに「今、お前ん家の玄関に来てるぜ」みたいコメントと自分の家の写真がアップされてるんです。挙げ句、父親を拉致られ、殺害する瞬間の動画もアップするんです。「次はお前だぞ」とばかりに、賞金まで懸けられるんです。
もうシリアには居れなくなって、トルコやヨーロッパやドイツと亡命する羽目になるんですけど、どんどん追い掛けてくる。これ、実話ですからね! ドキュメンタリーですから! 酷いですよ!

国内から発信される情報は、イスラム国のプロパガンダ映像ばかり。ニュースで観たことある人もいると思いますが、ハリウッドからプロを呼んで、オシャレ映像みたいに作ってるんです。そのくらい、イスラム国はメディアの重要視してるから、徹底して「ラッカは~」を追い込んでくるんです。最終的には、ネカフェを閉店させ、パラボラアンテナを取り外し、国内のメンバーたちとヤリトリできないよーにしたりしてきます。全てが力業。

そんな連中と命を賭けて、SNSに真実を配信し続ける市民ジャーナリストたちの苦悩のドラマが本作の90分に凝縮されてました。

ゲームやオモチャでそそのかされた子供たちが捕まった市民の頭を撃ち抜くシーンや柵の上に平然と刺さってる生首など、ショッキングなシーン満載です。これが、この国の現実かと思うと目を背けてはいけないと思う反面、感情的には目を覆いたくなるシーンばかりなので、観賞には注意が必要かと思います。


ラッカは静かに虐殺されている
★★★★☆
星4つ

4/30『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』

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アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』を観賞。

10年目突入のDC映画。記念すべき19本目。もう、そんなけキャラ増えたら収拾つかないわ!と思いきや、ご安心ください! 見事にバランスの取れたファン映画! だって、スターク社長とストレンジが言い合い! ガーディアンズとソーが同じ宇宙船に乗ってる!キャップとブラックパンサーが共に戦う! 様々な場所であらゆるキャラたちが同時進行で夢のコラボを連打撃ち!! ファンから感動と興奮をカツアゲする豪華仕様です!!

もう冒頭から、“あるキャラ”がアッサリ殺される衝撃的な幕開け。殺したのは本作の悪役にして、今までちょっとずつしか登場していなかった大物ラスボスのサノスさん!
サノスさんの目的は、宇宙中に飛び散る6つのインフィニティ・ストーンを集め、宇宙の人工を半分にすること。何を言ってんだ?という感じですが、それが彼の信念。彼なりの正義を信じて、そーゆー極悪な目標をかかげてるんです。そう、サノスさんにも、ただの悪い奴という訳ではない深いドラマチックが用意されてます。もう不思議と後半には、ちょっとサノスさんを応援してる自分がいました。それだけ、人間臭すぎるキャラなんですわ。
その為、地球中に散っていたアベンジャーズたちや宇宙に行ってたハルク&ソーも帰還。スパイダーマンも晴れてアベンジャーズ加入。『シビル・ウォー』で行方不明になってたキャップも姿を現し、宇宙で活躍していたガーディアンズも参戦。みんなが「サノスの計画を阻止する」という目的の元に共闘するんです。
しかーし!! 1つだけでも、かなりのパワーを発揮するインフィニティ・ストーンを着々とゲットしていくサノスさん。ストーンの力を使って、セガール並に負けそうにもなりません。全てのインフィニティ・ストーンを集めると、もう指パッチンで宇宙の人工を半分にできるという話。果たして、サノスさんの指パッチンは見られるのか?!
ラストは、急にハン・ソロが石板にされて終わる『帝国の逆襲』並みに、衝撃的かつ次回への期待を残して終了。
本作と次作は同時に撮影されていたとの事。次回が楽しみ過ぎます!

アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』
★★★★☆
星4つ