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ユンギボの日記

ネタバレなしの映画感想日記。

『バットマンVSスーパーマン ジャスティスの誕生』(4DX3D )感想

2016年4月6日(水)、ユナイテッドシネマ豊洲で『バットマンVSスーパーマン ジャスティスの誕生』を4DX/吹き替え版で観賞して来ました。

映画としては出来損ないだけど、アメコミ・ファンへのサービスは過剰な1本でした。
本作は「スーパーマン」モノの前作である『マン・オブ・スティール』の続編でもあり、クリストファー・ノーラン監督の『ダークナイト』のバットマン・シリーズとは別モノという位置づけが、まず分かりにくいですよね。アメコミ・ヒーローものを短い期間で大量生産し過ぎなんですね。更に付け加えると、原作やアメコミを知らない人は「?」となるんじゃないかと思うシーンが幾つかある始末ですよ。
それには色々な原因が考えられますが、1番の問題は本作の監督であるザック・スナイダーが冷静さを失う程のアメコミ・オタクだという事です。
そもそも、「バットマンVSスーパーマン」とか言ってるけど、原作のコミックの中では結構、共演したり戦ったりしてるんです。その決定版なのが『ダークナイト・リターンズ』ってコミック。タイトルがカブってるけど、映画『ダークナイト』とは全く別物のお話です。ザック・スナイダー監督はアメコミ・オタクでは有名で、過去には前作『マン・オブ・スティール』を始め、『ウォッチメン』や『300(スリー・ハンドレット)』とかのアメコミ原作映画を作ってきた人。インタビューでも「『ダークナイト・リターンズ』の影響がメチャクチャ大きいよ」とか語ってますが、本作を観てみたら、「まんまじゃねーかよ!」という話でした。
コミック『ダークナイト・リターンズ』でのバットマンは老人でヒーロー活動を引退しており、悪が根絶できないと悩んで、もの凄い葛藤するんですね。ここら辺のリアルな悩めるヒーロー像をクリストファー・ノーラン監督は映画の中に持ち込み、作ったのが『ダークナイト』シリーズなんです。すぐにウジウジ悩むから何で悩んでたのか忘れましたけど。法では取り締まれない悪人たちを根絶……と言うか文字通り叩きのめす為に老人バットマンはアイアンマン並みにパワーアップさせたアーマースーツを着て、活動再開。しかし、その前に立ちはだかるのは政府の下請けに成り下がったスーパーマン。このコミックには、法の名の下に正義を守るスーパーマンと時には法を犯しても悪党を始末するバットマンの対決が描かれているんです。
だから、本作に登場する対スーパーマン用のアーマースーツなんて、「あっ! コミックに出てきたやつだー!」とテンション上がる訳です。写真で見てた観光地を実際に訪れた感覚。
更にテンション上がったのはベン・アフレック演じるゴツくてデカいバットマン! ティム・バートン版のマイケル・キートンやノーラン版のクリスチャン・ベールの演じる神経質な偏屈系のバットマンのイメージが強い人には、ちょっとあれかもしれないですが、コミックのバットマンは割りと力技の人でゴツいんです。ジョエル・シューマッカー版のヴァル・キルマージョージ・クルーニーの男臭いを通り越して野獣臭い方が近い印象だったんです。
最初、ベン・アフレックのような大根役者がキャスティングされた時はYシャツに醤油をかけられた気分でしたが、これがなかなかイイネ! 飛び道具をあまり使わない! とりあえず、力いっぱい殴る! 「あっ、コミックに出てきたバットマンだ!」と感激しました。
今作の悪役は、スーパーマンの宿敵=レックス・ルーサー。過去の映画版ではジーン・ハックマンやケビン・スペンシーなどオッサン俳優たちが演じてきた役どころですが、本作では天才と童貞を演じさせたら右に出るものはいないジェシー・アイゼンバーグと若返り設定。バットマンベン・アフレックで高齢化させた分、若造に振り回される中年たちにも見えなくはないのですが、ある種の対比になっているのでしょう。スーパーなパワーなんて無いくせに姑息な作戦でスーパーマンを翻弄し、権力や地位を手に入れようと目論むネズミ男的な人物として描かれてきた宿敵ルーサーのキャラ。ですが、本作ではチャラチャラした混沌を好む目的不明のクレイジーな天才肌にシフトチェンジされています。このキャラ設定がジェシーの演技もあって『ダークナイト』のジョーカーと丸かぶり。これを「ルーサーはこんなキャラじゃない!」と思うか、「さすがザック! 味付けにジョーカー風味まで足すのか!」と思うかで大分、好みの別れる所ではあります。過去のルーサーが汚い大人や悪徳政治家のシンボルだった事を考えると、悩みまくりの陰気な2大ヒーローの敵役に金と権力と女をはべらす若者=リア充が悪フザケの延長で悪事を働くというのは、ザックのオタクレーダー的には非常に正しいですね。
ジョーカーと言えば、バットマンの基地(バット・ケープ)の中にジョーカーに落書きされたと思われるバットマンのスーツが飾られてるのがチラッと見えるシーンがありましたが、あれは20年もバットマンとして戦ってきた本作の設定を活かしたザックのオタク・サービスでしょう。
ただ、本当の意味でザックのオタク・アイデンティティーが爆発(脱線)するのは、唐突に加勢してくれるイカした美女=ワンダーウーマンの浮きまくりの登場シーン。もはや、作風さえ変わってしまう訳です。バットマンとスーパーマンの「お前の連れか?」というヤリトリがモテない男子学生に変わる瞬間でもあります。過去に『エンジェル・ウォーズ』という作品でオタク事故を起こしたザックの発作と思うと微笑ましささえ感じました。そんなザック・スナイダーのフライングしたアメコミ愛が「とりあえず、アレも入れよう。コレも入れよう。」の連発でストーリーにまとまりが無くなり、破綻。バットマンの話をしてたかと思うとスーパーマンの話になってて、ルーサーのエピソードと謎の美女もチラ見せしつつー、低偏差値の腕力怪獣も出してー……と、とにかく長い映画になってしまったんですね。アイデンティティー探しに悩むヒーロー像ってのもノーラン以降の流行りパターンだし、国家にとってのスーパーパワーを持つヒーローの脅威問題も『アイアンマン』や『ウォッチメン』とかで手あかが付いてます。展開も2大ヒーローものの有りがちパターンだしで、ストーリーは予想できるレベル。しかも、全編通して暗い。バットマンはダークヒーローだから暗くても良いですが、スーパーマンはノーテンキな程、明るいヒーローだったはずなのに。唯一、面白い要素はスーパーマンを神と比喩した宗教エッセンスだったんですけど、それもストーリーには大して絡んでこずで。そもそも、「スーパーマンがビルを吹っ飛ばしたりして戦ってる間に巻き添えで死んでる人間もいるんだ!」という『ガメラ2』な設定からスーパーマン不信が始まったはずなのに、その問題もうやむやにされた感があります。
ザックお得意の写ってる物はオールCGだけど手持ち撮影風のリアリティーで対抗演出や突然のスローモーションによるエモーショナル演出も効力薄めな結果に。

4DXに関しては、アクション・シーンが単調なせいもありますが、4DX効果も単調で乱気流に突っ込んだ飛行機くらいの揺れがずっと続いてる感じでした。むしろ、ちょっと酔いました。
ただ、日本語吹き替えは大作にも関わらず浮ついたタレントを起用せず、ちゃんと実績のある声優さんばかりだったので、安定のクオリティーでした。こーゆー吹き替え映画ばかりだと良いのですが。
パンフは監督・キャストのインタビューやイントロダクション、初期設定アートコンセプト、過去作品紹介、長谷川町蔵渡辺麻紀さんにより批評なんかが掲載されてましたが、大量の写真で水増しされた薄めの印象。情報もネット検索程度なので、本作ヒットの方のみお勧めレベルでした。

バットマンVSスーパーマン ジャスティスの誕生』(4DX・吹き替え版)
★★☆☆☆
星2つ