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ユンギボの日記

ネタバレなしの映画感想日記。

『クリーピー 偽りの隣人』感想

2016年6月27日(月)、『クリーピー 偽りの隣人』を観賞して来ました。

ホラー映画のイメージが強い黒沢清監督ですが、履歴書を見てみると『DOORⅢ』や『キュア』などサスペンス・スリラー作品でも、のっぴきならない作品を世に送る血まみれ優等生。今作は久々の原点回帰。
主人公の夫婦が引っ越して来る所から始まるんですけど、早々に隣人役の香川照之がヘン!! 予告編とか観た人は解ると思うんですけど、怪しいと言うか胡散臭いと言うかヘン!! 支離滅裂な事を言ってたと思うと、やたら冷静に理屈の通る事を言ってたり、本音なのかウソを言ってるのかもよく分からない。
犯罪心理学者の主人公を西島秀俊。奥さん役を竹内結子が演じてて、美男美女のおしどり夫婦と思ってたら、おやおや。旦那役の西島秀俊もヘン!! 未解決の一家失踪事件の調査を依頼されて、唯一の生き残りである長女役を演じる川口春奈に話を聞きに行ったりするんですけど、話を聞きながら興奮し出したり、事件の調査を「趣味」とか言い出して、デリカシーがちょっとあれなんですね。
この事件調査のエピソードと謎の隣人が距離を縮めてくるエピソードが同時進行で描かれていき、気が付いたら、あっぱらぱーな世界へ放り込まれてる畳みかけサスペンス。未解決の一家失踪事件だけでも謎が多いのに、隣人の動向の怪しさが謎をポコポコ発生させていくんですね。それでいて、「このシーン、オチに絡んでくるんじゃないかね?」みたいなシーンもいくつかあるんですけど、全然、関係なかったりする。やれやれ。
香川照之の正体が段々と明らかになってきてからの後半はもはやダークファンタジー。『悪魔のいけにえ』とか『死霊のはらわた』とかと一緒です。あり得ないけど、怖いから見ちゃう。面白いから見ちゃう……って世界。でも、前半がリアル志向だったから「こんなのウソだよー」とかと突っ込んで冷める気分では無くなってる辺りが上手いですよね。

上手いと言えば、本作のロケ地やセットが素晴らしいですよ。主人公の住む家は奥多摩らしーんですけど、すたれた感じとか、傍を通る高架橋(電車だか高速だか解らないですけど、人々が通り過ぎる場所であーゆー事件が起きているという人知れず感)とか。後半に登場する部屋とか、もう『カリガリ博士』とかの世界で、不気味でしたー。
あと、本作は横長のシネマスコープ・サイズなんですね。ウディ・アレンの新作『教授のおかしな妄想殺人』もシネマスコープで、「小規模な作品ほどシネマスコープが合ってると思うんだ」みたいな事をインタビューでアレンは言ってましたが、その事も念頭に入れて観てると意図が解らなくもないなと。

本作のパンフは厚みがあって読み応え抜群。監督・西島秀俊竹内結子の対談が掲載されてるのに、それと別でインタビューも収録されてる辺り、グッときましたね。スタッフの証言や現場レポート、樋口泰人×柳下毅一郎の対談、黒沢作品過去作解説など黒沢清ファンは買いの一冊でした。中でも宮台真司さんの心理学からの解説には脱帽。



『クリーピー 偽りの隣人』
★★★☆☆
星3つ