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ユンギボの日記

ネタバレなしの映画感想日記。

『シン・ゴジラ』(MX4D版)(2D通常版)感想

2016年8月10日(水)、『シン・ゴジラ』(MX4D版)を越谷レイクタウンで。8月12日(金)はユナイテッド・シネマ浦和で(2D版)を観賞して来ました。

始まって早々から、豪華キャストによる長ゼリフを1カット&細かいカット割りでポンポン進めていくテンポの良さ。これは、まるで岡本喜八監督のオールスター映画『日本のいちばん長い日』のような演出。テロップの出し方までソックリ。『日本のいちばん長い日』は昭和天皇玉音放送までのメチャ多い登場人物たちと、メチャややこしい状況を勢い任せのハイテンポで語り倒していました。が、本作では謎の巨大生物=ゴジラの出現⇒対策に追われる政治家たちや科学者、自衛隊などのメチャ多い登場人物たちと刻一刻と進展し続ける状況を圧倒的なハイテンポで語り倒してましたね。「怪獣が出たら日本政府はどのように行動するか?」をひたすらリアルに描いた本作のポリティカル。

モンタージュのような編集で時系列を追っていくという点では、本作の総監督である庵野秀明監督が総監督を担当した『ガメラ3 邪神覚醒』のメイキングビデオ=『GAMERA1999』を思い出しました。本作の監督&特技監督である樋口真嗣監督が『GAMERA1999』の中で「ガメラの呪縛」に頭を抱えていた姿を見ていただけに、本作のCGゴジラとかは感慨深いものを感じました。ちなみに、本作のキャッチコピーは「現実対虚構」ですが、『GAMERA1999』の最後には「虚構と現実、そして夢は続く。」というテロップが出ます。続いた夢の先が本作という事ですかね。

庵野監督は大の岡本喜八ファンを公言しており、自作の『トップをねらえ!』では岡本監督の『激動の昭和史 沖縄決戦』を丸パクリした程。実際、ゴジラの正体をハンパに残し、冒頭で行方不明になった科学者の顔写真は岡本喜八監督の生前の写真を使ってるんですわ。本作にも倒壊した東京のシーンの中に『激動の昭和史 沖縄決戦』と同じ構図のカットがありましたよ。オタクですねー。
もっと言うと、庵野作品は押井守監督も意識してるよーに思います。押井監督の劇場版『パトレイバー』もキーになる重要人物がヒントを残し、冒頭で疾走。その後、登場人物たちがヒントを解読しようと、あーだこーだするミステリー展開でしたが、それは本作と同じ展開。庵野監督の過去作『式日』は「誕生日である明日が訪れない少女の話」でしたが、これは押井監督の劇場版『うる星やつら ビューティフル・ドリーマー』の「いつになっても文化祭当日を迎えない話」と一緒ではないですか。庵野監督は『ビューティフル・ドリーマー』と同じテーマを『式日』で庵野流に語りなおしたよーに思います。実は、庵野監督はテレビシリーズの『うる星やつら』や押井監督の『天使のたまご』に原画で関わってた過去があります。どーゆー間柄か知りませんが、押井監督の『スカイ・クロラ』が公開される際には庵野監督が予告編の演出をしています。著名な映画監督が多数、出演している本作(塚本晋也監督、犬童一心監督、原一男監督、緒方明監督、松尾スズキ監督)。押井守監督にもオファーがあったのでは?

逆に庵野監督ならではなのが、こだわりの引き画のレイアウト。さらに『ラブ&ポップ』や『式日』等でよく見る変わった所からのアングルも健在。『ラブ&ポップ』では電子レンジの中から、『式日』では電車の模型からのアングルがありましたが、本作では受話器やキャスター付きの椅子やパソコン画面からのアングルと相変わらずの変わり者目線が楽しかったですね。

そんな庵野監督の映画愛溢れる本作ですが、勿論、子供向け映画になる前の第1作目の『ゴジラ』オマージュも。まずゴジラの造形も初代ゴジラを踏襲したもの。太い足、細めの体、丸っこい頭は完全に原爆のキノコ雲風味に戻されてるんです。初代『ゴジラ』は1954年公開作品。戦後の焼け野原から9年しか経ってない時代に公開され、その設定も水爆実験による突然変異という設定でしたが、今作のシン・ゴジラ放射能による突然変異設定。3.11を経験した今の日本は戦後の恐怖に引き戻されてしまったですね。ゴジラにより被災した東京の街並みや避難所に集まる人々なんて、まるで東日本大震災の映像。
つまり、シン・ゴジラは災害や放射能の象徴。なもんで、どこか神々しい感じがしました。生き物らしくない。手が小さい。てか、手を使わないんです。神様っぽくないですか? 手をかざすだけで思い通りなる神っぽさ。そんで、胸の辺りの筋の間が赤いんですよ。切り傷みたい。体の中に核を仕舞い込んでて、今にも爆発しそうな感じなんです。でも、全然、あせった様子は無いんです。むしろ、ノッシノッシ……とゆっくり歩いてくる。体中、傷だらけなのに全然、平気な感じとかも神っぽいなー……って思いました。
庵野監督だからか、どこか『エヴァ』っぽい感じもあるなー」とかって思っていたら、『エヴァンゲリオン』の曲が使われてるじゃないですか!! 『エヴァンゲリオン』が新たに作り直された時、『新劇場版』になったよーに、『シン・ゴジラ』の「シン」って「新」「真」「神」って意味以外に「庵野秀明ゴジラ」って意味もあるんじゃないのかって話!! だから、庵野監督が『風の谷のナウシカ』を作ったら『シン・ナウシカ』ですよ!!
でも、安心して下さい。ちゃんと伊福部昭の作曲した「ゴジラのテーマ」も使われてるし、過去作品では自衛隊の出撃シーン等でよく使われていた「怪獣大戦争のマーチ」まで解ってるネなタイミングで使われています!! もう、思わず泣いちゃいましたよ。。。。

あと、泣いちゃったのは、悪い人が出てこない所ですね。これだけ政治家が大勢、出てくるのに、みんな国の為を思って、発言&行動してるんですよ。そこも『日本のいちばん長い日』同様ですね。最近だと、「政治家=悪い人間・自分の私利私欲ばかり考えてる人間」と描写されるのが当たり前じゃないですか。恐らく、こんなガチで日本の行く末を考えてる政治家なんて現実にいないんですよ。そんな現実とのギャップにより、ゴジラよりもフィクションの登場人物となってて、ボクは泣けましたね。「あー、こんなに日本の事を考えてくれる政治家っていないんだろーなー」って。

他に圧巻なのは、超豪華キャスト。長谷川博己石原さとみ松尾諭國村隼ピエール瀧樋口真嗣監督の『進撃の巨人』で共演してましたね。『進撃の巨人』ではほぼ絡みが無かった長谷川博己石原さとみですが、本作ではガッツリ絡んでますし、『進撃の巨人』ではオタクキャラを演じた石原さとみのキャラクターが違い過ぎるのも面白かったです。ピエール瀧は相変わらずの軍人役(自衛隊は軍人ではないですが)。長谷川博己を色々とサポートしてくれる役所の松尾諭はフジテレビのドラマ『デート ~恋とはどんあものかしら~』でも長谷川博己のおせっかいな友人役で共演しており、これまたパラレルワールドを覗いてるようで面白かったです。
『日本のいちばん長い日』よろしく、アホみたいに登場人物が多いので、「市川実日子松尾スズキ手塚とおるモロ師岡片桐はいり嶋田久作あたりは庵野監督の過去作品にも出ていたなー……」なんて考えがら見てるだけでも楽しかったですね。
キャストの特徴について、もう少し触れると、(上記にもあるように)塚本晋也監督、犬童一心監督、原一男監督、緒方明監督、松尾スズキ監督と本職が映画監督の人たちがチョロチョロ出演してるんです。庵野監督作品では常連と言って良い松尾スズキ監督は自身の監督作品『恋の門』で庵野監督を役者で出演させています。この『恋の門』には塚本晋也監督も役者で出演してます。塚本監督は他の松尾監督作品『クワイエットルームにようこそ』にも出演してます。犬童一心監督に関しては樋口監督の『進撃の巨人』に役者で出演しているし、一緒に『のぼうの城』を共同監督しています。原一男監督に関しては自身の公式ホームページで「庵野監督に自らを売り込んだエピソード」を語っていましたね。もともと庵野監督は原監督の『ゆきゆきて、神軍』に影響を受けた事を公言しており、対談なんかもあって、そこそこ親交もあった様子。緒方監督と本作の准監督&特技統括をしている尾上克郎は高校の同級生で、助監督をしていた緒方監督に誘われる形で石井聰互監督作品『狂い咲きサンダーロード』にスタッフとして参加。緒方監督のデビュー作『東京白菜関K者』にも参加する間柄。本作で美術を担当した林田裕至も石井聰互監督作品『爆裂都市』で一緒に仕事しているんですね。この2人との縁で出演となったのかなぁーと。

ここまでで、名前を出していない主要なキャストは大杉連、余貴美子平泉成柄本明、渡辺哲、津田寛治光石研などなどとなってくるが、ジャンルを選ばず様々な作品に出てまくってるメンツですね。ただ、北野武作品出演経験者が多いのはどういう訳だろーか? 北野作品が今の邦画界からバランス良く集めているのか? 庵野監督が北野作品のファンなのか?
等と考え始めてしまいますが、もはや、脱線しまくりなので、本作の話はこの辺で。

最後に、本作のパンフは長々とストーリーを文字化、少ないインタビューが載ってる程度で、殆どのページが関連の商品広告。残念パンフ。アート・ブックを売る為と思われます。


シン・ゴジラ
★★★★★
星5つ