ユンギボの映画日記

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6/15Voyantroupe第4回本公演「Paranoia Papers ~偏執狂短編集Ⅳ~」

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Voyantroupe第4回本公演「Paranoia Papers ~偏執狂短編集Ⅳ~」をサンモールスタジオで観劇して来ました。

シリアルキラーや殺人を題材にしたシリアス路線やブラック・ユーモア路線など偏った中で様々なバリエーションのオムニバスで見せていく「偏執狂短編集」シリーズの最新公演。

本公演は、【赩(きょく)の章】(上演時間:3時間15分)と【黈(とう)の章】(上演時間:2時間30分)の2つの章によるオムニバス形式。非常にボリューミーです。日によって2つの章のどちらかを上演してる訳ですが、ボクは「ぶっ通し」公演という2章立て公演を観てきました。上演時間が6時間近い、頭のおかしい興行になっております。



【黈(とう)の章】
・「毒妃クレオパトラとアルシノエ」
野心満々なクレオパトラを中心に、ピュアな妹、権力争い真っ只中の2人の男たちが繰り広げる陰謀劇。
オール日本人キャストにも関わらず、外人にしか見えないキャスティングで重厚な語り口。
物語と直接は絡んでこない蛇まみれのオネーちゃんたち、スモークたっぷりのステージ上や、アヘンにより性欲を爆発させる設定など、怪しい魅力がスパーク。
一発目から圧倒的世界観を見せつけられ、ただならぬ雰囲気。

・「レディ・ゴダイヴァとピーピングトム」
どこかの貧困にあえぐ国を舞台に、納税を自分のさじ加減で取りまくる領主。
領主の妻のドレスメイカーである女の助手の男を狂言回しにしつつ、彼の暗躍していくストーリー。その中で、納税の引き下げを求める村の代表者、世間知らずな領主の妻、挙げ句、覗きが趣味で追放された前領主など、キャラの濃い登場人物たちが右往左往するブラック・ユーモア満載な一本。
話が二転三転と転がっていく様も面白く、シェイクスピアのコメディ作品を彷彿とさせました。今公演で、1番、ボク好みな一本でした。

・「ウェストご夫妻の偏り尽くした愛情(風)」
隣人たちが、引っ越してきた夫婦のパーティーを開くものの、それが飛んでも展開に。ノーテンキなノリで殺人にまで発展するブラックすぎるコメディ。
実は以前の公演でも同じ演目を観ているのですが、今回はキャストが一新。年齢層が若くなった分、学芸会的ソフトなチープさが破天荒すぎるストーリーとマッチ。個人的には、以前の公演版よりも楽しめました。



【赩(きょく)の章】
・「俺はアンドレイ・チカチーロ」
稀代なシリアルキラーであるチカチーロの半生を舞台上で再現するという今回、1番、力を感じた作品。
青年期と成人期を別の役者が演じる事で、リアルタイムである演劇の時間的飛躍を表現。尚且つ、シリアルキラーへの覚醒まで演出している手腕に脱帽&興奮。
何が怖いって、全然、似てないと思っていたチカチーロ役の役者さんがクライマックスでソックリに見えた事。もう最後にはチカチーロにしか見えなくて唖然としました!!
ちなみに、『ロシア52人虐殺犯/チカチーロ』というテレビ映画もあるんですが、その中のチカチーロより似てました!!
ただ、犯行シーンは事前に撮影された映像を流す演出がされているんですが、その映像がチープ過ぎて!! 職業柄、この映像のチープさがハナにたついて、残念すぎました。これなら無い方が良かったレベル。

・「切り裂きジャックたるために」
チカチーロに続き、実際の連続殺人事件である切り裂きジャックを題材にした一本。なんですが、実録路線で見せたチカチーロと違い、自殺したジャックが登場……というキチガイ過ぎる設定!!
しかも、「切り裂きジャック事件は被害者は5人と言われているが、自分の犯行は4人だけ。5人目の犯人を探して、切り裂きジャックの後継者にする」という架空裁判テイスト。
並んだ被害者の売春婦たちと犯人候補生たちがジャックの前で犯行を再現していくという、これまたトンデモ展開に。
とにかく、先の読めないストーリーがスリリング&ドラマチック!!

・「ウェストご夫妻の偏り尽くした愛情(闇)」
上記の「風」編と同じストーリーながら、キャストと演出を一変。オフビートというよりゾンビのような演技と薄暗い照明でダークなトーンに。
ただ、演出の意図がさっぱり解らなかったです。要は、このバージョンを作った意味が解らなかったですね。
元の脚本が良かっただけに悪変させてる印象でした。ボクが「風」バージョンに引っ張られてるのか、「風」バージョンを観てないと楽しめないような気がしてしまいます。
今公演で1番、つまらなかったです。


以上の6本立てになりました。
舞台ならではの生々しさがダイレクトに伝わってくる公演ですので、舞台好きにも無条件にオススメできます。

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