ユンギボの映画日記

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『ヤクザと憲法』感想

2016年2月26日、ポレポレ東中野で『ヤクザと憲法』を観賞。

現代ヤクザの事務所に密着して、何だか色々とヤバめの映像を撮影したドキュメンタリーです。
オープニング、本作を撮影する「約束ごと」が紹介されます。

1、取材謝礼金は支払わない
2、収録テープ等は事前に見せない
3、モザイクは原則かけない

スゴくない?!
また、さらにスゴいのは、冒頭、事務所を案内する組員に対して、「この袋なんですか? マシンガンとか入ってるんですか?」と、やたらダイレクト&デンジャラスな質問を炸裂させる本作スタッフさんでした。
事務所の中を案内してた組員も「ちゃいますよ! (組立式)テントが入ってるんですよ~。」と応戦。
所が、更に「銃とか無いんですか?!」「他の組が襲撃して来たら、どーするんですか?!」と怖いくらい突っ込んだ質問を続けるんですね。「なっ……無いんですよー。にっ……日本で銃を持ってたら銃刀法違反で捕まっちゃうじゃないですかぁ~」という大変、正しいけど明らかに動揺してるのがリアル過ぎる返答。もう笑うしかないんですよ。
まぁ、そんな本作はチャンバラ、ドンパチや仁義なき抗争なんて東映の実録映画なシーンは一切ありません。むしろ、逆にヤクザの事務所に密着して、何もない日常を淡々と捉え、その中からテレビでは見れないヤクザの生活、バックボーン、あるあるネタを浮き彫りにしていく作品なんです。
やれ、居酒屋の女将が「警察がなに守ってくれるぅー? 組長さんはちゃんと私らの事を守ってくれるでー」とカメラに向かって証言したり。
やれ、「ヤクザの子供は幼稚園にも入れへんねん。」と訴えてみたり。
やれ、選挙の報道が載る新聞を片手にボソッと「ワシ、選挙権ないねん。」と呟いてみたり。
つまり、本作はヤクザを捉える事により、「基本的人権の尊重」をうたっている日本国憲法の矛盾をも浮き彫りにしていく所がスゴいんですね。ヤクザはあくまでもメタファーなんですよ!
このドキュメンタリーを制作したのが東海テレビというテレビ局というのが、またスゴいです。しかも、テレビ局制作の作品に有りがちな説明過多になっないんです。むしろ、少ない!
バカなテレビマンがやりがちなナレーションも音楽もない。つまり、誤魔化しの手管を使ってないって事なんですね。
撮影の対象になっているヤクザたちも赤裸々にカメラを受け入れてるですね。むしろ、ガサ入れに入った警察の横柄な対応の方が浮いて見えます。
日本の片隅でボクらの知らない世界を見せてくれる。これぞ、あぁ、ドキュメンタリー……なのです。

『ヤクザと憲法
★★★★☆
星4つ