ユンギボの映画日記

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『さらば あぶない刑事』感想

2016年3月11日(金)、シネマサンシャイン池袋で『さらば あぶない刑事』を観賞。

ネットのレビューなんか見てると、『あぶ刑事』を観た人は「タカとユージがカッコ良かったー!」とか言うんですよねー。ボクも言います。タカとユージがとにかくカッコ良かった!!
2人のPVかと思いましたよ。内容なんかメチャクチャで、もう忘れましたけど、とにかくカッコよかった。

今作のタカとユージの2人はもう定年なんですね。登場時は新米刑事だった仲村トオルが2人を追い越して上司になってるんだけど、全然、相手にされないコミカル・シーンがツボでしたね。
でも、それは表向きの関係で、裏では2人の事を想う仲村トオルには泣けました。
で、定年までの3日間の間に事件を解決しないといけないサスペンス要素や、普段は杖をついてるのに、ハイキックがインパクト大の悪役=吉川晃司など見所いっぱいです。

でも、やはり、そもそもの話。タカとユージのカッコ良さを引き出した監督の作風に尽きますよね。
映画が始まってすぐ、何故か...eiga

暗い廊下で柴田恭兵が踊ってる! なんだ、コレ?! でも、その軽やかで色気があってカッコイイ! そこへ独房の中でヤクザから情報を聞き出した舘ひろし登場。
何故かタキシードで外した蝶ネクタイを襟からぶら下げたまま。なんだ舘ひろしの昭和に忘れてきたよーなダンディズムは! そこ必然性は無いがカッコイイ!
冒頭5分で、この調子。その後、デデーンとタイトルが出るんです。オープニングから空撮にタイトル・ロゴ&キャスト・クレジットをまさか平成になって名画座でもない劇場で観れる日が来るとは! 思い出される東映プログラム・ピクチャー臭さに懐かしの涙ですよ!
もう、これは監督のハッタリ宣言ですよ。「リアリティー? 必然性? 知らねーよ! この映画はそーゆー映画なの! あり得ない奴ばかりが暴れる映画なんだよ!」っていうね! それでも、「こーゆー奴いる訳ないじゃん」と思わせない「映画の嘘」が抜群に上手いんですよ。
それもそのはず。まだ東映が破天荒すぎる「映画のウソ」で観客のハートをカツアゲしていた頃、数々の名作を世に送り出していたのが今作の監督=村川透監督なんです。もはやレジェンド的な存在の人なんです。
ボクが小学校の頃、家に帰ると松田優作のドラマ『探偵物語』の再放送をやってて、そのソフトでスタイリッシュなカッコ良さにシビれたもんですよ。その中でメイン監督の1人が村川透監督だったんですね! 村川透松田優作コラボに夢中だったボクは『最も危険な遊戯』『殺人遊戯』『処刑遊戯』の「遊戯シリーズ」や『蘇る金狼』、『野獣死すべし』を体中に浴びて生活してた訳ですよ。
「遊戯シリーズ」はプロフェッショナルな殺し屋が主人公。『蘇る金狼』の主人公なんて三億円事件の真犯人で、その金を元手に大手企業を上り詰めていくという話ですからね。もう村川透と言えば、観客をワクワクさせる為なら、どんな有り得ない事も巧みな「映画のウソ」で信じ込ませる天下一品の「映画のウソつき」ですよ!
で、それらの作品を東映の子会社である東映セントラルアーツで量産してたんですね。その頃のセントラルアーツのカラーは強烈で、その後の様々な作品、製作者たちに多大な影響を与えた訳ですよ。ちなみに、ドラマ版がヒットした後に映画版で続編を制作した先駆けも『あぶ刑事』が最初。
そのセントラルアーツが『あぶ刑事』シリーズも作っており、しかも、当時のプロデューサーである黒澤満さんが本作の製作総指揮も担当してるんです。
撮影も村川監督と組んでた仙元誠三カメラマン。この人も生ける伝説みたいな人で、特に手持ち撮影で有名。松田優作の動き回るアクティブなハード・アクションを手持ちカメラで追い掛け、余す所なくフィルムに収めてました。
今作でも柴田恭兵が敵のアジトへ踏み込んで行くアクション・シーンを手持ちで追い掛けてて、すっげー懐かしい気持ちになりましたよ。テンション上がる、上がる!!
昔からの顔触れにもう一人。脚本家の柏原寛司。この人も『探偵物語』のメイン・ライターの一人で、他にも『傷だらけの天使』や『大都会』から『名探偵コナン』や『ルパン三世』まで様々な伝説的作品に関わってる脚本家ですよ。
監督:村川透、脚本:柏原寛司、製作:黒澤満、撮影:仙元誠三という往年の超超ちょー豪華で濃ゆすぎるメンツがバシッと揃ったのが、本作なんです!
これは、言い過ぎでも何でもなく、このレジェンドたちが今までに生み出した作品群、日本映画界に与えた影響を考えると、彼らの新作を劇場で観れるって事は、日本映画の歴史を目撃するよーなモンですよ!! 事件なんですよ! 幸せ過ぎる。
「昔、流行ったドラマの続編でしょ?」と言って、プログラム・ピクチャーの邦画を観た事も無いエセな自称映画ファンにこそ観てもらいたい作品ですね。日本には、これだけ凄いレジェンド達がいるんだぞ!!
アクションに特化した作品作りをしてきたセントラルアーツらしい、ケレンに満ちた傑作でしたよ!
柴田恭兵が犯人を追いかけるシーンで「ミュージック・スタート!!」と叫ぶと音楽が流れ始め、定年とは思えない猛ダッシュするシーンには驚きましたね! これって『モテキ』じゃん! 『モテキ』でサブカルをパロディ化、『バクマン。』でサブカル文化自体を映画作品化し、もはや、自身がサブカルになった大根監督と同じセンスって、村川監督、どんだけ感性が若いんだよ!!
また、ハーレー手放しのりでショットガンを撃つノースタントの舘ひろしの現役感!!
ホントにこれで終われるのか『あぶ刑事』!?


『さらば あぶない刑事
★★★★★
5つ星