ユンギボの映画日記

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『SHARING』(ロングバージョン)&(アナザーバージョン)感想

2016年5月5日(木)にテアトル新宿で『SHARING』のアナザーバージョン(99分)を。5月6日(金)にはロングバージョン(117分)を観賞して来ました。

劇場で観賞しながら、「これは、なかなか観れない斬新な作品を観てるぞ」という気持ちになりました。
というのも311東日本大震災をホラーというか怪奇なダークファンタジーとして撮った作品でして、劇中、都内でのみ話が進行していくので、一見、不謹慎にも思えたのですが、当事者でない日本人の心境をサラリと描き倒した印象があります。
東日本大震災で恋人を亡くし、それ以来、恋人の幻を見る心理カウンセラーの女性と東日本大震災で被災した人を演劇で演じる事になった女子学生の2人を主軸に、ちょっとズレた日常が描かれていきます。心理カウンセラーの女性の方は、「震災の前に予知夢を見た」という人々の研究をしていて、まるっきり震災での出来事を消化できてなく、トラウマから脱出できたない訳です。方や、演劇少女の方は「被災者の気持ちになって演じる事なんて出来る訳ない」と仲間たちと衝突し、孤立化していくんです。「震災をどう受け取るか?」「被災者の気持ちに寄り添えるのか?」みたいなテーマがチラホラと垣間見えて、その問題提議と向き合ってないボクの胸に突き刺さったりします。
それでいて今作が説教臭くないのは、謎の男子生徒のドッペルゲンガー登場、ドコまでが夢か分からない構成、「神は本当にいるのか?」的モチーフ、虚像の記憶など、様々な要素をブチ込み、着地点不明な興味の引っ張っり方にあるんです。デヴィッド・リンチとか黒沢清な雰囲気ですよ。重厚なホラーテイストな音楽も最高でした。迷宮のような大学の入り組んだ構造を上手く使ってる演出もグッド!
個人的には、「現実の話かと思ったら、演劇の作中劇でしたー」とか「現実に起きた事かと思いきや夢でしたー」という構成や震災という現実にあった出来事を映画の中で語り、また、その映画の中で演劇として再構築している辺り、ウディ・アレンの『スターダスト・メモリー』やゴダールの映画を思い出しましたけど、まぁ、意識されてないでしょー。
ただ、観ている時に気になっていた「冒頭のイマジナリーラインを越えてる理由」や「画面に写ってない物の音」や「一眼レフカメラによる手持ちのぎこちなさ」「カット割りの乱暴さ」等の本筋と関係ない所なんかに観賞しながら意味を見出そうとしてたものだから、集中力を妨げられました。まぁ、そこら辺の事は、どーやら「こだわり」があったらしく大体、パンフレットに答えが載ってましたが。
ちなみに、アナザーバージョンはロングバージョンの主人公2人の話のみに構成したバージョンでして、ドペルゲンガーが出てこなかったり、アナザーバージョンにしか出てこないシーンがあったりします。が、主人公2人の話に集約したアナザーバージョンは他の摩訶不思議シーンをカットしてある為、1つ1つシーン(特に会話シーン)が長くなった印象でダレました。別に見なくて良かったとまで思いました。
ロングバージョンのハッピーエンドなのかバッドエンドなのかも分からない衝撃的なラストもグッときました。
あと、ホント、会話のシーンだけサクサク進んでくれたら……。


『SHARING』(ロングバージョン)
★★★☆☆
星3つ

『SHARING』(アナザーバージョン)
★★☆☆☆
星2つ