ユンギボの映画日記

ユンギボ(@yungibo)によるあらすじ紹介、ネタバレなしのレビュー、解説・考察をお届け‼

【演劇】『尺には尺を』感想

2016年6月8日(水)、彩の国さいたま芸術劇場で『尺には尺を』を観劇して来ました。

先日、死んじゃった蜷川幸雄の遺作になります。稽古中に死んじゃったんですね。「これが最後になるのだから、是が非でも行かなくては」と向かったので、作品の内容はノーチェックでしたが、これは「なんじゃこりゃー!」の連続でしたよ!
今作はシェイクスピアの戯曲なんですよ。全然、知らねーですね。確かに、シェイクスピアっぽいんですが、突然、シェイクスピアらしからぬシーンが出てくるんです。
フィアンセを妊娠させてしまった若い貴族が「結婚前に関係を持った罪」で死刑宣告され、投獄される設定なんですけど、これって、今で言う「できちゃった結婚」みたいなもんですよね。今の時代に、こんな法律があったら次々に死刑ですよ! 死刑執行人の募集が出ますね!
そーゆー設定なんで、シェイクスピア劇なのに、「これは『テッド』か?」ってくらい、下ネタがバンバン出てくるんです。観客はオバさんばっかでしたが、みんな大爆笑してましたよ!


で、1番、面白いのは、投獄された若い貴族の妹。修道女見習いなんです。街を納める公爵代理に兄の死刑を取り消してもらいに行くんです。そしたら、一目惚れされて、「兄の命を助けて欲しかったら、オレの女になれ!」と余計、話がややこくなる始末。でも、修道女を目指してますからね。「男性と交わるのは神の教えに逆らう事だから、お兄様は神の教えの為に死んでくれるわね。」とお兄ちゃんを困惑させるんです。このシーン最高で、兄も「婚約者と子供つくっただけだよ? これって罪じゃないよ? 罪だとしても、七つの大罪の中でも一番、軽い方だと思うなー」と何とか説得しよーとするんです。もう、このヤリトリが最高に笑えます!
この妹役を多部未華子が演じてるんです。神の教えに従順でピュアな余り、完全に空気の読めてない感じが、童顔の多部未華子にハマってましたよ!
今作の悪役ポジションである公爵代理も根っからの悪党って訳ではなく、自他共に認める真面目人間だったのに、多部未華子に会った途端、恋に落ち、職権乱用してしまう男なんです。それで、悩んだりと、これまた一筋縄ではいかないキャラを藤木直人が映像作品とは違ったメリハリ演技で、上手いんですよ!
そんで「マジかよ!」っていう、トンデモなオチへ流れ込んでいくんですね!

本公演、喜劇だけあって爆笑こいてたら、カーテンコールが閉まった後、再度、カーテンが開いてと思ったら、そこに蜷川先生の巨大写真が。しかも、あの遺影の写真。涙ガーっですよ!
ボクの両サイドに座ってたオバさんたちも泣いてましたよ!

もう蜷川幸雄の舞台が観れないと思うと、もう何を観に行った良いのだか……。

『尺には尺を』
★★★★☆