ユンギボの映画日記

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『FAKE』感想

2016年6月22日(水)、『FAKE』をユーロスペースで観賞して来ました。

本作はゴーストライター騒動の後の佐村河内守さんを追ったドキュメンタリーですけど、覚えてますか? 耳の聞こえない作曲家の佐村河内さんが作曲した曲には新垣さんというゴーストライターがいた……って騒動。...あの頃、会見の様子をテレビ見て、矢継ぎに飛び交う質問に対して「一人一人、話して下さい!」「聞こえてるじゃないですか?」のクダリに爆笑してましたよ。まぁ、その爆笑していた〔あの頃の自分〕がどれだけマスコミの情報操作の中で踊らされていたのか……っていう話なんです。笑っていた人間には、ちょっとチクチクくる話でした。
正直、「で、実際の所、どーだったのよ?」って聞きたいじゃないですか?「本当は耳が聞こえるんじゃないの?」とか「実際の作曲作業の話は?」とか「ゴーストライターの噂のある新垣さんとは、今、どんな感じよ?」とか。そーゆー疑問が、マンションの一室で洞窟に籠ってるよーな生活をしている佐村河内さん夫婦へ密着するストーリーの中で小出しに出てくるんです。だから、段々とそんなに興味の無かった夫婦の生活をついつい見入っちゃうんです。
テレビ局のお偉いさん達が「うちの番組に出てくださいよー。悪いようにはしませんからー。」みたいなウソ臭さプンプンの出演依頼の様子とか、新垣さんがバラティ番組に出てるのを静かに見つめる佐村河内さんの様子とか見せながら、気になってた疑問を本作の森監督が聞いていくんです。で、ちょっとずつ解っていくんです。気になるでしょ?
それでいて、夕飯には手を着けずに豆乳ばかり飲んでいる佐村河内さんに森監督が「豆乳、好きなんですか?」tって聞くシーンとか、「森さん、タバコ吸いに行きましょう」と佐村河内さんがマンションの喫煙所と化しているベランダへ誘うシーンは爆笑でした。佐村河内さんが我々の予想をはるかにフライングするユーモラスなキャラクターなんですよ。猫と本域でジャレてたり、頬っぺたをポコポコ叩いて音楽を奏でたり。ついつい笑っちゃうシーンが多々あるんです! 会場内、大爆笑!! それでいて、森監督が「奥さんの事、好きですか?」というダイレクト過ぎる質問をするシーンとかは大号泣ですよ。
みんなが気になってる話題を笑わせたり、泣かせたりしながら見せていくドキュメンタリーって最強じゃないですか?
気が付くと、最初に気になってた疑問とかは途中で、どーでもよくなってて、「そんな事より、この夫婦はどーなっていくんだ?」という方へ興味が移っちゃうんですね。そんな感じで、森監督もバンバン仕掛けていくから、「次は何を仕掛けるんだ?!」みたいな興味も沸いて観ていると、劇場の観客強制ポカーンの衝撃ラストへ流れ込んでいくんです。みんな呆然としてましたよ。
もう、ことごとく事実確認を見せない演出が一貫してるんです。カメラの前で起きること以外の過去エピソードは、あくまでも佐村河内さんサイドの証言だけで構成されてるから、騒動のバックボーン全容解明が明らかになってるよーで実はピンボケ気味。「佐村河内さんはこう申しておりますが、あなたはどー見ますか?」っていうのを観客に考えさせる演出なんです。怖いですね、森達也。絶対、密着とかされたくない。ホラー映画みたいですよ。


『FAKE』
★★★★☆
星4つ