ユンギボの映画日記

ユンギボ(@yungibo)によるあらすじ紹介、ネタバレなしのレビュー、解説・考察をお届け‼

【演劇】月刊「根本宗子」第13回『夢と希望の先』

月刊「根本宗子」第13回『夢と希望の先』を9月30日(金)に、下北沢・本多劇場で観劇して来ました。

最近、全然、演劇を観に行く習慣も無くなり、観に行ってもクソみたいな作品ばかりではあるのですが、こんなに面白い演劇を観れたのは久々です。

ステージ上には、同じアパートの部屋のセットが2つ。上には田舎の家の縁側という3つの空間が用意されています。そんなセットの中で、田舎で生まれ、役者を目指し、東京に憧れる主人公の女の子の「田舎での少女時代」「上京したての時期」「東京生活10年目の30代」という3つの時代をスピーディーに同時進行で見せていく刺激的な作品でした。
圧倒的な勢いで羅列されていくセリフの数々。やり過ぎなキャラクター達のテンション芸のような勢いは大爆笑。それでいて「主人公の事を何でも分かっている幼馴染の親友」と「上京してからの新しい友達」のせめぎ合いや、「希望に満ちた夢」と「彼氏とのルンルン生活」の天びん等、主人公のとっていく選択が泣けます。しかも、「その10年後」の時代での主人公の後悔も同時に描かれるので、とにかく泣けてきます。
それらの人間ドラマがグチャグチャになっていくタイミングで歌唱シーンが入り、これまた歌詞の内容がグッとくる上に明るい楽曲だったりするものだから主人公の孤独を高めつつも、どよ~んとさせ過ぎずに、シーンをエモーショナルに高めていくという演出があっぱれ!
クライマックスでは、いよいよ回想劇のフォーマットが崩壊。夢を諦め、希望を完全に失った「10年後の後悔だらけの主人公」が「上京まもない自分」にヤジを飛ばし、逆に過去の自分に励まされるという、ステージ上だからダイナミックな演劇的ミラクル技が発動! 名曲「トゥモロー」を出演キャスト総出で熱唱の元、幕を閉じる感動のフィナーレ!
初めて本多劇場で面白い作品を観ました! 嫌いだった下北沢さえもちょっと好きに思える程、面白かったです!

若い頃の主人公を演じる橋本愛ちゃんが上手かった。あのナチュラルな芝居、凄いですね。気張らずに見せるナチュラル演技。『あまちゃん』の不良娘役で出演していた時、ブラックなジョークを言って共演していた登場人物(キョンキョンだったかなー)をドン引きさせておいて「ハハ、うそうそー」と変わらぬテンションで返すシーンがあったのですが、そのナチュラルさは衝撃的で、『寄生獣』の頃には、ほぼ全シーンがアドリブに見えました。今回、そんなに注目してませんでしたが、凄い役者さんなんだなーと思いましたわー。
そして生:長井短! もはや怪物です! 膨大なセリフ量を吐き散らすシン・ゴジラっぷりはモンスター以外の何物でもありません。クセになります。

パンフレットは出演者紹介プロフィールと本作の作・演出の根本宗子さんと本作の書き下ろしポスターを担当した浅野いにおさんの対談。好きなら買いの値段の割りに薄味パンフでした。

『夢と希望の先』
★★★★★
星5つ