ユンギボの映画日記

ユンギボ(@yungibo)によるあらすじ紹介、ネタバレなしのレビュー、解説・考察をお届け‼

2017.5.27 『ろんぐ・ぐっどばい 探偵 古井栗之助』

f:id:stanley-chaplin-gibo:20170611233759j:plain

2017.5.27

『ろんぐ・ぐっどばい 探偵 古井栗之助』を観賞。

まず映画好きな人間がみんな、ロバート・アルトマン監督の1973年公開の『ロング・グッドバイ』って映画が好きなんですよ。で、本作はこの映画にオマージュを捧げたというか、インスパイアされた作品なんですね。

監督はピンク映画界の鬼才=いまおかしんじ監督です。いまおか監督と言えば、ピンク映画でも、ちょっとファンタジーな世界観の作品が多いですね。お洒落なんですよね。だから、女性も見やすいというか、女性ファンも多いですね。「私、ピンク映画も見るんですよー」とか言うサブカル女は大体、「いまおかしんじとかー」って言いますね。まぁ、それはいいんですけど。ピンク映画として作った映画が評判になって一般の劇場でも公開されたりしてますね。最近では一般映画も監督してたり、その他にも山下敦監督とかの脚本も書いてたりしますね。まさに鬼才ですね。

本作は、そんないまおか監督の一般映画。『ロング・グッドバイ』の世界観はそのままに日本へ置き換えたような映画なんですけど、基本的には林海象の世界観にソックリでした。『私立探偵 濱マイク』の世界観ですね。親が失踪していて施設育ちとかね、おねーちゃん達のいる店(恐らくデリヘルの事務所か何かですかね)に顔が効いたり。あと『傷だらけの天使』の岸田今日子みたいな人も出て来ますね。教会を運営していて、人探しとかの仕事を主人公に回したりしてるんですね。「うるせー、ババァ」とかって罵り合ったりしてね。最近はこーゆーハードボイルドものって無くなってきましたね。『探偵物語』とか。似ていて当たり前。全部、大元はアルトマンの『ロング・グッドバイ』なんですね。松田優作は『探偵物語』をやる時、かなり『ロング・グッドバイ』を意識してるんですよ。なにせ、映画を暗記して、1人で演じられたってくらいですからね。『鮫肌男と桃尻女』の浅野忠信とかも、もしかしたら影響を受けてるかもしれないですね。『ロング・グッドバイ』はNHKで日本に舞台を移したドラマ版を作っていて、その時の主人公を浅野忠信が演じてますね。

そもそも『ロング・グッドバイ』ってレイモンド・チャンドラーって作家の書いた「長いお別れ」が原作なんです。フィリップ・マーロウという探偵の登場するシリーズの一遍です。同じマーロウの作品でも「大いなる眠り」って小説がハンフリー・ボカート主演で映画化(映画のタイトルは『三つ数えろ』)されてます。あと有名な映画化作品はロバート・ミッチャムがマーロウを演じていた『さらば愛しき女よ』ですね。この時のミッチャムのぼやきが最高でした。大好きです。

原作は1920年代とかなんですけど、アルトマンの『ロング・グッドバイ』は製作された1970年代が舞台になってます。全体的にベトナム戦争中の暗い雰囲気。ヒッピーとかがワラワラ出てきます。上裸のおねーちゃん達が踊ってたりするんです。この時のマーロウ役はエリオット・グールド。同じアルトマン監督の1970年の『M★A★S★H マッシュ』では朝鮮戦争を舞台にヒッピーなアメリカ兵役でしたね。『ロング・グッドバイ』のナヨナヨしたしょぼくれた感じは原作ファンからは大不評でした。スーツとかもヨレヨレで。ただ映画ファンからは好評。コーエン兄弟とかウェス・アンダーソンとか好きですよね。原作の翻訳は村上春樹がやってますね。「影響を受けた」と言って。

本作も、そんな『ロング・グッドバイ』の好きな気持ちが画面に溢れ出ていましたよ。他作品と見比べながら観ると、色々と比較できて面白いですね。

『ろんぐ・ぐっどばい 探偵 古井栗之助』

★★☆☆☆

星2つ