ユンギボの映画日記

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6/10『ビューティフル・デイ』

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ビューティフル・デイ』を観賞。

極端な説明を排したハードボイルド調な作風とシリアスな展開。突然のブラックなユーモラス。ジャンルも観客の感情もゴッチャゴッチャにする孤独な男の戦い映画。

主人公は闇のお仕事請負人。上院議員から「娘を売春宿から救出してくれ」というシンプルな新規案件を引っ提げ、完璧な仕事を淡々とこなしていく主人公。
チンピラたちをハンマーで野蛮に殴り殺して、見事、上院議員の娘を救出……と思ったら、突然、行き先不明の逃走劇に発展!! 状況は混乱を極め、観る者を飽きさせません!

さらに、主人公には軍人時代に見た陰惨な風景のトラウマや子供の頃に虐待を受けたトラウマもあり……というトラウマの総合総社のような人物。ゆえに、フラッシュバックする過去&妄想の中で己と戦っているんです。
とにかく、細かい説明は抜きだぜ!というドンブリ男飯のようなストーリー展開。とか言いつつ、本作のリン・ラムジー監督は女性。実はきめ細かい演出をさりげなく味付け。
老いた母親と二人暮らしという主人公のバックボーン。そんな描写の中には、ボケが始まっているらしい母親とのコミカルなヤリトリ。そこはかとない愛情を垣間見る事が出きます。

主人公を演じるのは、3度のオスカーにノミネートされた割りに、『インヒアレント・ヴァイス』ではヒッピー探偵、『教授のおかしな妄想殺人』で完全犯罪にとりつかれた大学教授と、もはや怪演という言葉がシックリくるホアキン・フェニックス。本作でも、だらしないながらも筋肉質な肉体に、自殺願望丸出しで、もはやサイコパスにしか見えない風貌。なのに、少女を救おうとする複雑が具現化したようなキャラで、彼の魅力が炎上しています。見事にカンヌ国際映画祭で主演男優賞を授賞!!

レディオヘッドジョニー・グリーンウッドによるホラー映画のような音楽。監督の元カレで監督いわく「阿吽の呼吸」と語るカメラマンのトーマス・トウネンドによるエッジの効いた映像。そして、リン・ラムジー監督のスピーディーな脚本……と様々な要素が良い方向へ転がり、独特な空気を醸し出す傑作です!!

パンフは、監督&ホアキンのインタビュー、コラム記事、さらに原作との変更点など、様々な角度から本作を紹介。本作のファンなら買いの一冊。


ビューティフル・デイ
★★★★★
満点5つ星