ユンギボの映画日記

ユンギボ(@yungibo)によるあらすじ紹介、ネタバレなしのレビュー、解説・考察をお届け‼

金塊強盗たちバイオレンスが交差‼ アート系として現代に蘇ったマカロニ・ウエスタン『デス・バレット』

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『デス・バレット』
「シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション2018」で10月19日から公開が始まるのは、 金塊強盗たちバイオレンスを繰り広げる映画『デス・バレット』。今作は、アート系のテイストで現代に蘇ったマカロニ・ウエスタンなんです!!

ストーリー・あらすじ(ネタバレなし)

3人組の金塊強盗。隠れ家へ戻る途中、メチャクチャ訳ありそうな子連れの親子を発見。行き掛かりで同乗させてしまいます。これが後半で大事な要素になってきます。
行先の隠れ家は、画家の家。美しいエーゲ海が一望できる遺跡風の隠れ家。そこへ、彼らを追って2名の白バイ警官が現れたものだから、勿論、戦慄の銃撃戦が展開!! 子連れの親子を巻き込んで徹夜のバイオレンス・アクションへ!! 隠れ家へ乗り込んだが最後、強盗犯たちに建物を包囲される警官!! 画家と子連れ親子を人質に立て籠り!!
そこへ、強盗犯たち同士のスタンドプレーも連動!! 緊張感満載の全く先の読めないシリアスな密室バイオレンスが完成!!

考察・評価

ただの密室バイオレンス映画かと思いきや……本作の魅力は、その作風。シンプルなストーリーの中で、手元や目元のアップを多用。それにより緊張感とテンポを上手いこと作り込んでいます。その作風こそ、マカロニ・ウエスタンの父=セルジオ・レオーネの作品を彷彿とさせます。
セルジオ・レオーネといえば、1960年代に『荒野の用心棒』を始めとするイタリア製西部劇をヒットさせ、世界中でマカロニ・ウェスタンブームを巻き起こした名監督。レオーネは、イタリアで公開された黒澤明の『用心棒』(1961年)に深い感銘を受け、早くもその3年後である1964年には『用心棒』を西部劇風に翻案した『荒野の用心棒』を監督。




『荒野の用心棒』をヒットさせてレオーネは、立て続けに1965年製作の『夕陽のガンマン』、1966年に20万ドルの予算を費やして大作『続・夕陽のガンマン』を製作。このクリント・イーストウッド主演の三作品は、「ドル箱三部作」と呼ばれています。その後も、1968年にパラマウントで『ウエスタン』、1971年にはロッド・スタイガージェームズ・コバーン主演の大作映画『夕陽のギャングたち』、1984年に10年以上の沈黙を破ってロバート・デ・ニーロジェームズ・ウッズ主演のギャング映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』を監督。この三作は「ワンス・アポン・ア・タイム三部作」と呼ばれています。[rakuten:dtc:11767976:detail]

マカロニ・ウエスタンとは?

イタリア製の西部劇。西部ってアメリカなのに、それをイタリア人が作ったニセ物ハリウッド映画的な作品群。例えるなら、日本の時代劇をアメリカで作って、アメリカ人しか出てこないような感じですかね。ただ、60年代から70年代には、エンタメに振り切った演出、アンチヒーローの主人公、復讐という解りやすいストーリー展開など、様々なテイストの作品が大量生産され、人気を博していました。
低予算ながら、ロケ撮影を多用。リアリティのある世界観を構築。作風は、登場人物のクロー・アップを使い、緊張感をあおりまくりました。
本作でも、目のアップの切り返しのカットなど、そのレオーネのやり方も踏まえつつ、さらにアーティスティクなオブジェや逆光によるシルエットのカットを追加。役者たちの動きに合わせたカット割り。テロップによる時間を表示。同じシーンの同時刻に別のキャラは何をしていたのかを登場人物ごとに繰り返して描く構成。そこら辺の演出は、シネフィル監督のクエンティン・タランティーノの作風を思い出させます。さらに、本作は、マカロニ・ウエスタンの多くの作品で音楽を作曲したエンニオ・モリコーネの音楽が繰り返し使われています。
まさに、本作はマカロニ・ウエスタンへのオマージュを入れまくり、犯罪アクションとしてマカロニ・ウエスタンを現代に復活させたような作品なんです!!
一見して退屈になりそうな立て籠り劇を、アートな雰囲気ムンムンの演出、テンポの良い編集、独特の画作り……あの手この手でエンタメに消化しているんだから、本作は面白い映画なんです!!