ホラー映画というジャンルだけでなく、映画史に残る圧倒的な名作映画『シャイニング』。とにかく怖い映画です。その続編映画『ドクター・スリープ』。早速、観賞して来ました。
『シャイニング』がどれだけ名作だったのか、『ドクター・スリープ』がどれだけ凄いのかを紹介しつつ、レビュー記事を書きます。
『シャイニング』とは?
・映画『シャイニング』を簡単に予習解説
ベストセラー作家にして、ホラー小説の帝王=スティーブン・キングの長編小説3作目の「シャイニング」。雪山のホテルで一冬を過ごす家族の恐怖体験談を描いた本作。キング原作の小説は、ミステリーやホラーなどのジャンルを見事にストーリーテリング。巧みに、人間ドラマもコラボ。それゆえ、『キャリー』や『ミザリー』、『ペット・セメタリー』、『スタンド・バイ・ミー』、『ショーシャンクの空に』、『グリーンマイル』などなど、幾作も映画化されています。小説「シャイニング」は、100万部を超えるキングの代表作に。
そんなキングの「シャイニング」を映画化したのは、完璧主義で名の知れた天才監督スタンリー・キューブリック。キューブリック監督は、キング原作の「シャイニング」から家族ドラマを無視。恐怖描写のみを取り出し、オリジナル要素も追加して、さらにホラーを凝縮。キューブリックの計算され尽くした映像美もあって、映画は大ヒット。様々な著名人が影響を告白。
所が、そんな中、映画『シャイニング』を大批判した方がいます。それが、原作者のスティーブン・キングなんです!! キングは、中心テーマである家族ドラマを大幅カットされた事に激怒。“エンジンのないキャデラック”と見た目だけで、中身がない事を比喩。積極的に公言。映画が評価されているだけに、このエピソードは語り草に。そんな映画『シャイニング』のストーリーとは?
・映画『シャイニング』のあらすじを簡単に紹介
冬の間、雪に閉ざされてしまうロッキー山脈の展望ホテル(オーバールックホテル)。そのホテルの冬場の管理人をする事になったジャック、その妻のウエンディと5歳の息子のダニー。
所が、ホテルの前任者の管理人は、奥さんや2人の娘たちを斧で殺害。みずから猟銃で自殺した事が発覚。このホテルに住み着く、この世ならざる存在の気配が……。どんどん様子のおかしくなっていくジャック。
そんな中、実はダニー少年は、超能力“シャイニング”の持ち主。同じくシャイニングの持ち主であるホテルのコック=ハロランは、ダニーの危機を察知。助けに向かうのですが……。
キューブリック監督による映画版『シャイニング』
映画『シャイニング』が4Kで復活!!
シャイニング 北米公開版 4K ULTRA HD&HDデジタル・リマスター ブルーレイ (2枚組) [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
- 発売日: 2019/10/30
- メディア: Blu-ray
- この商品を含むブログを見る
キング制作によるテレビシリーズ版『シャイニング』
キングの原作小説「シャイニング」
- 作者: スティーヴンキング,Stephen King,深町眞理子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2008/08/05
- メディア: 文庫
- 購入: 2人 クリック: 9回
- この商品を含むブログ (46件) を見る
『ドクター・スリープ』のあらすじ・ストーリー(ネタバレなし)
1980年のフロリダ。『シャイニング』の事件から生き延びたウェンディーとダニーの親子。逃れたはずのホテルの霊たちに悩まされてるダニー。
さらに40年の月日が経過。大人になったダニー改め、ダン。彼はトラウマを抱え、アルコール依存症に。流れ着いたのは、ニューハンプシャー。ホスピスの仕事を得たのをキッカケに死期の近い老人たちをシャイニングの能力で癒してあげるように。
一方、世間では、子供たちの失踪事件が多発。その犯人は、シャイニングの能力者で構成された集団「真の絆(トゥルー・ノット)」のメンバーたち。彼らは、シャイニングの能力者(特に純粋な力を発揮できる子供)の生気を吸って、不老不死を維持。ヴァンパイアのような存在なんです。
ダンの住む街から、約30キロも離れた街に住む女子中学生アブラ。彼女もシャイニングの持ち主。シャイニングの力で、「真の絆」が少年を殺害する瞬間をキャッチ。それにより、逆に「真の絆」の新たなターゲットに。それを、またまたシャイニングで知ったダンはアブラを助けに向かいます。
果たして、ダンは「真の絆」たちからアブラを守れるのか?! そして、過去のトラウマと決別できるのか?!
無料予告編動画
映画『ドクター・スリープ』本予告60秒 2019年11月29日(金)公開
キャスト・監督
ユアン・マクレガー
大人になったダニーを演じるのは、イギリス出身のユアン・マクレガー。ダニー・ボイル監督作『シャロウ・グレイヴ』や同監督のヒット作『トレインスポッティング』で世界的にブレイク。1999年の『スター・ウォーズ エピソード1 ファントム・メナス』では、若き日のオビ=ワン・ケノービ役に抜擢。『エピソード2 クローンの攻撃』、『エピソード3 シスの復讐』と同シリーズへ連続出演。その他、ミュージカル映画『ムーラン・ルージュ』、ティム・バートン監督作『ビッグ・フィッシュ』、20年ぶりの続編『T2 トレインスポッティング』、実写版『美女と野獣』、プーさんの実写版『プーと大人になった僕』などなど代表作、話題作は多数。主演も兼ねた映画『アメリカン・バーニング』で長編監督デビュー。最近では、テレビシリーズの「スターウォーズ」で、オビ=ワン・ケノービ役に復帰する事が話題になっています。
どんな荒唐無稽な役どころでも、哀愁とリアリティーを纏わせ、魅力的に具現化してきたマクレガー。本作でも、哀愁たっぷりにやさぐれ芝居を披露。大人になったダニー=ダンを生々しく表現。観客の感情移入をリード。
そんなマクレガーも本作のオファーを受けた時には、「興味を持ったが、同時に、果たしてうまくいくのかなとも思った」との事。ただ、物語の内容を知って、「これは新しいアイディアで、スティーヴンは今作でこの世界を拡大したんだよ。そこも『シャイニング』と違うところだ。」と出演を決意。
マイク・フラナガン監督
監督・脚本には、ホラー映画『人喰いトンネル』や『オキュラス 怨霊鏡』、『ソムニア 悪夢の少年』で巧みなストーリーテリングっぷりを発揮したマイク・フラナガン監督。テレビ・シリーズ「ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス」のヒットも記憶に新しいですね。すでに、キング原作のNetflix映画『ジェラルドのゲーム』といった作品を手がけてきたフラナガン監督。不満が残る『シャイニング』以降、自作の映画化作品には必ず口出ししてきたキングの信用はバッチリの人物なんです。
自他共に映画オタクであり、キングのファンも公言するフラナガン監督。本作の製作にあたって、意識した事が。それは、「僕の中にはキングの小説を忠実な形で映画化すべきだという強い思いがある。それと同時にキューブリックの映画版を崇拝する気持ちもある。この作品に取り組み始めた当初、自分の中でそのふたつの思いがぶつかり合っていた」と告白。しかし、本作を観たキングからは意外な惨事が。キングはインタビューにて、「マイクのこの映画はふたつのことをやている。まず、これは小説「ドクター・スリープ」の見事な映画版であること。そしてまた、スタンリー・キューブリックの映画『シャイニング』の素晴らしい続編であることだ。」とコメント。フラナガン監督も「(映画本編を観終わり)エンドロールが始まった時、キングは僕の肩に手を置いて、「良い仕事をしてくれましたね」と言ってくれた。それを聞いて僕は気絶してしまった(笑)」とキングとの試写を回想しています。それだけではなく、映画『シャイニング』のスタンリー・キューブリック監督(1999年に死去)の遺族も映画を気に入り、お褒めのお手紙を頂いたとの事。
フラナガン監督は、どのようにして、小説「ドクタースリープ」の映画化と映画『シャイニング』の続編をバランス良く成功させる事が出来たのでしょうか?
『ドクター・スリープ』解説・感想・評価・考証
・『シャイニング』オマージュ
とにかく、本作は、映画『シャイニング』のオマージュ……というか再現シーンまみれ。映画『シャイニング』を観た人間ならテンション上がる事、間違いなしの完成度の高さ!!
そもそもオープニングから、昔のワーナーのロゴ。映画『シャイニング』と同じ曲でスタート。役者こそ違えど、映画『シャイニング』のホテル内でダニー少年が三輪車を乗り回すシーンやウエンディが夫ジャックに追われるシーン等をリメイク。
映画『シャイニング』の予告編で使われた有名なエレベーターから吹き出しす大量の血やホテル広間のタイプライター、傍の灰皿のタバコまで、『シャイニング』まんま。そのホテルの内装なんかは、同じでビックリ。役者はさすがに違うものの、動きレベルで、ほとんど忠実。
フラナガン監督のインタビューによると、「(映画『シャイニング』を配給した)ワーナー・ブラザースが保管していたおかげで、僕らはキューブリックのよる設計図を全部見ることができた」と。もはや設計図レベルでのリメイク作業だった事が発覚!!
オマージュは、それだけにとどまらず。断酒会で知り合った医者の事務所は展望ホテル(オーバールックホテル)の事務所と同じレイアウト。長めのオーバーラップによるシーン変わりもキューブリックの編集あるある。セリフの引用。後半のダンが展望ホテルへ向かうシーンでは、わざわざ『シャイニング』のオープニングと同じ空撮を作り込み、ジャック・ニコルソンの演じたジャックの再現までしてきた辺りには、もはや笑ってしまいましたが(しかも、バーテンになったジャックの赤い服の色も『シャイニング』の赤いジャンパーと同色!!)。
ここまで忠実に映画『シャイニング』の世界をリバイバルしつつも、それだけで映画自体が面白くなる訳もなく。そこは、キングのテーマをフューチャーしつつ、自らの手練手管に落とし込み、人間ドラマを濃厚に描いたフラナガン監督の独自性があってこそ!! それは、いかなるものなのか?
・フラナガン監督の独自性
ここまでキューブリック監督の映画『シャイニング』をオマージュしまくった本作。
それでも、謎を小出しにしつつも、なかなか解決してくれないミステリー要素。それらを巧みに分配。巧みなストーリーテリングを発揮。
輪郭がぼんやりとし、全体像がなかなか見えてこないシャイニングの能力を映像のみで説明。相手に触れたり、相手の触れた物で、その人の過去が見えるシャイニングの能力。中でも、人の考えや頭の中へも入れる能力を映像化しつつ、作劇のミスリードまで狙ってきます。頭の中と現実を行き来するジャンプ・カットは「誰の頭の中の世界なのか」というサスペンスに加え、編集のスピーディーなテンポ作りにも一役買っています。
それらの手練手管により、キューブリックの知的さは薄まったものの、フラナガン監督のエンタメ色の強いテイストに仕上がっています。
「バケモノにはバケモノを」みたいな発想で、バケモノにバケモノばかりのホテルをというラストの対決までの展開へひたすら盛り上げていきます。
これには、キングやキューブリック監督の遺族が気に入ったのも納得の仕上がりです。
映画『ドクター・スリープ』のムビチケや前売りチケット、上映館などは公式サイトや公式ツイッターなどをチェック!!
映画『ドクター・スリープ』
公開日:2019年11月29日(金)
原作:スティーヴン・キング
監督・脚本:マイク・フラナガン
出演:ユアン・マクレガー、レベッカ・ファーガソン、カイリー・カラン
原題:『DOCTOR SLEEP』