公開当時はバカにしまくっていたジョージ秋山先生の名作漫画『アシュラ』の劇場版アニメ。原作が好き過ぎるので、素直になれるか不安でしたが、とは言っても、偏見なしに観賞。
そもそも、この「アシュラ」という原作漫画が大変にドギツイんです。物語は飢饉で苦しむ江戸時代。物語の冒頭から、空腹の余り、母親が自らの息子を食べようとするシーンからスタートします。トンデモないくらいセンセーショナルですよね!!
その後、一人で生きていく事になった主人公の男の子=アシュラくん。人肉を食って、野獣のように生き残っていくんですね。そんな獣生活を送っていたある日、若狭という娘と出合い、様々な人間と知り合い、ドラマが展開していきます。それでも、物語のテーマは、「人肉を食べるか?」。そのテーマから道徳観念を問う作品なんです。
そんな話をアニメ化なんて。観てみて、これがビックリ。3Dモーションによる作画のアニメだったんです。それでも、キャラデザイン自体は手描きっぽさを意識。画の中の黒く潰れる箇所にも、斜めの線が入ってて、紙芝居っぽい雰囲気の手描き質感を発揮。それらが、思ったより上手い事、マッチしてるんですね。
アシュラのキャラデザインは原作そのままなんですが、他のキャラは(分かりやくす言うと)今風。原作は当時、ジョージ秋山先生が連載を大量にやっていたので、画のクオリティは低いのですが(その雑さも良かったですけど)、今風にした事で、かなり見やすいです。
原作だと、アシュラの父親とかが出てきて、『スター・ウォーズ』戦国版みたいになるんですけど、原作のサブ的なストーリーは削ぎ落とし。シンプルな物語にリフォーム。とても話に入りやすい映画に仕上がっていました。
しかも、主人公アシュラの声は、デェーベテランの野沢雅子さんが担当。何十年も変わらない声。もう圧倒的なクオリティでした!! 野沢雅子さんが演じる事で道徳的には全くNGなアシュラへ素直に感情移入できて、ナイスキャスティング!!
クライマックスの街の人々に追われるアシュラが吊り橋に追い詰められていくシーンのダイナミックな3D描写は圧巻。
原作を知ってると、ちょっと食い足りなり印象なので、本作を少しでも楽しめたなら、原作を読んでみるのもオススメです。
星3つ
★★★☆☆