ユンギボの映画日記

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邦画カルト映画の最高峰『鉄砲玉の美学』(#12)

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叩き売りで日銭を稼いでいた小物の主人公。所がヤクザの鉄砲玉になるという条件で即席チンピラへ昇格する本作。組から金と鉄砲を受け取り、大喜び。

とにかく成り上がる為、度を超えたワイルドで奮闘。勢い任せの無計画男を粗野に熱演する渡瀬恒彦

最初はボンクラ感満載な主人公。大阪の大組織の後ろ盾を得て、肩で風切り、宮崎の地で遊び惚ける中盤シーン。小競り合いになった地元ヤクザ。兄貴分からの「好きにして良い」とのお許しを得ても、殺す事さえ出来ずに逃げ出してしまう情けなさ。小市民っぷり。思わず、感情移入してしまう好感度。

また濡れ場シーンまで切ない。宛てがわれた美女と体を交し。そんな最高なはずのシーンで映し出されるのは、貧乏時代の回想シーン。レストランでのバイト時代。路地裏。ゴミを出そうと裏口から顔を出す主人公。裏路地から見た表通り。行き交う楽しそうな若者。笑顔のカップル。それをボーっと見つめる主人公の顔との切り返し。和式トイレでしゃがみ込んでのオナニー。
そんな悲惨な過去の回想が、現在の美女とのベッドシーンとオーバーラップ。最高に切ないセックスシーンに仕上がっています。

金と女を手に入れた生活。自分の誕生日にドライブデートを計画。女の為にチキン料理を用意。悲しい程に純粋な浮かれっぷりが、あぁ、切ない。

村川透 監督の『蘇る金狼』に影響を与えたという無情なラスト。まさに、男の哀愁たっぷりな本作は、カルト・オブ・カルトの秀作なんです。

星4つ
★★★★☆
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