ユンギボの映画日記

ユンギボ(@yungibo)によるあらすじ紹介、ネタバレなしのレビュー、解説・考察をお届け‼

“難解すぎる”押井守監督が干された『天使のたまご』(#38)

f:id:stanley-chaplin-gibo:20210212045142j:plain
今さら『天使のたまご』を観賞。本作は、1985年製作された押井守 監督のOVA(オリジナル・ビデオ・アニメ)作品。押井守 監督作品が好きなボクですが、“難解”という前評判に尻込みしてました。ちなみに、押井監督は、『ダロス』で世界で初めてOVA作品を作った人。

今回、観賞してビックリ!! 全然、解かんない!! これは“難解”ではなく、“ストーリーを追うような作品ではない”が正解かと。アンドレイ・タルコフスキーアレハンドロ・ホドロフスキーみたいな類の映画。
なんせ、本作の製作後、押井守 監督は「難解な映画を作る監督」というレッテルが貼られ、一時的に干された程との事。

とは言え、見どころが無い訳でも、面白くない訳でもありません!!

卵を抱え、一人で生きる少女。森を歩き続け、街を彷徨ううち、一人の青年と出会う。2人は共に行動をするようになります。街では“魚”と呼ばれるシーラカンスのような魚の影を追う人々。街に降り始める雨。繰り返される「あなたはだぁれ?」「この卵は何の卵?」というセリフ。

夜の街並み。フランス地方をモデルとしたという古い建物の数々。影を黒く塗り潰したくらい明確に描かれたコントラスト。細かく描き込まれた作画。まるで、クトゥルフ神話やゴシック・ホラー、あるいはドイツ表現主義の映画を思わせる世界観。まさに、迷宮に迷い込んだ気分です。

キャラクターデザインをした天野喜孝クールなキャラ。主人公2人の声を担当する根津甚八兵藤まこ による朗読のような語りのセリフ(71分の作品で初めてのセリフまで24分も掛かった!!)。

「卵」や「ノアの方舟」など、数々登場するモチーフたち。聖書の隠喩。抽象的に表現されたメタファーは、聖書であったり、現代観をファンタジーで比喩したものと思われます。それらが何を表すのか考えながら観るのも一興。

ボク的には、“卵を抱えた少女”がラストで卵を割ってしまう事から、生まれながらに持っていた“卵”を割ってしまう事で大人になるみたいな事かなと。あと、“影の魚を追う人々”は現代人がモチーフ。“形のない存在”を追うのに右往左往。

まぁ、色々と書きましたが、押井版『8 1/2』みたいなモノで、押井守 監督以外、誰も理解できない気もするんですが。


星2つ
★★☆☆☆