ユンギボの映画日記

ユンギボ(@yungibo)によるあらすじ紹介、ネタバレなしのレビュー、解説・考察をお届け‼

『タイタニック』ヒット後のディカプリオが選んだ異色のロード・ムービー『ザ・ビーチ』(#46)

f:id:stanley-chaplin-gibo:20210214090348j:plain
本作は、『スラムドッグ$ミリオネア』でアカデミー賞8部門を受賞したダニー・ボイル監督の2000年の作品。当時は、『トレインスポッティング』がヒット。ユアン・マクレガーキャメロン・ディアス共演の『普通じゃない』でハリウッド進出。『タイタニック』ヒットで、注目の的になったレオナルド・ディカプリオを主演に作られたのが本作。そんな背景を頭に入れて観ると、なかなか感慨深い作品です。


バンコクへ旅行に来たディカプリオ演じる青年リチャード。せっかく海外へ来たのに、観光客まみれの風景にウンザリ。そんな中、ホテルの隣室だったマリファナ中毒者から“ザ・ビーチ”の場所が記された地図をゲット。旅で知り合ったフランス人カップルと“ザ・ビーチ”を探すと決意。トントン拍子に進んで、地図に記された島まで辿り着きます。

冒険談としてのワクワクはここまで。ここから先はダークな世界観へ。

見つけたのはヒッピーのコミュニティのような村。限られた人々で自給自足の生活をするコミューン。美しい海。自由気ままな生活。楽園のような場所が“ザ・ビーチ”だったのです。この村にはルールがあります。この島には、ヒッピー村エリアとマリファナ畑を経営するマフィアのエリアとで二分しているんです。その為、島の情報は他言無用。徹底的に秘密にし、住民を増やさないという事。
その為、村を守る隙のない女リーダーがいるんです。その女リーダーとリチャードは、町に買い物へ行く事に。その際、リチャードが“ザ・ビーチ”の場所を教えてしまったバカ観光客たちとバッタリ再会!! 女リーダーが居るというのに、「あの時は面白い情報を教えてくれて、ありがとな!! オレらも、これから行ってみるわ!! ガッハハハ!!」とか言い出したもんだから大変!!

女リーダーを演じるのは、マーベル映画『ドクター・ストレンジ』や『コンスタンティン』『ナルニア国物語』など、異界のキャラを演じる事の多いティルダ・スウィントン。あの整った爬虫類顔でディカプリオを睨むシーンに、思わずヒヤリ。まるで裏の裏まで見透かされているよう。一気に物語はシリアス雰囲気に包まれていきます。

本作の中で、ディカプリオはマリファナ中毒シーンや、まるで当時の自分をセルフパロディのような調子に乗るキャラを演じています。その尖った作風は選んだのも、当時のアイドル人気から脱却を目指していたのだと思います。実際、『タイタニック』のヒット直後のディカプリオの元には大量のオファー&脚本が届き、その中から選んだのが本作。その後、ディカプリオはマーティン・スコセッシの元、演技派俳優の道を模索していきます。そう軌跡を思い起こしながら本作を観ると感慨深いものです。

また、本作での旅行シーンをハイライト・パッチワークで繋いだスタイリッシュな編集。マリファナで追い詰められていく主人公の妄想シーンの画作り。まだ若くイケイケだったダニー・ボイルの映像センスをビンビンに感じる事が出来ます。

そんな本作でしたが、興行的にも評価面も惨敗。その後の『28日後…』ヒットまで、ダニー・ボイル低迷時代に入ります。ディカプリオは、『あのころ僕らは』という低予算映画に出演。その二年後、スコセッシ監督の『ギャング・オブ・ニューヨーク』とスティーヴン・スピルバーグの『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』まで出演作品はありませんでした。


星3つ
★★★☆☆