ユンギボの映画日記

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全く気が抜けない賞金稼ぎたちの珍道中西部劇『続・夕陽のガンマン』(#47)

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『続・夕陽のガンマン

「続」と言いつつ、『夕陽のガンマン』の続編ではない『続・夕陽のガンマン』。

アメリカ開拓時代の西部を舞台に、3人の賞金稼ぎを描いた本作。重厚かつ壮大で、178分という大作にも関わらず、マカロニ・ウエスタン。マカロニ・ウエスタンとは、イタリア製西部劇の事。アメリカの時代劇をイタリアで作ってるという、日本で例えるとチャンバラを外国で作ってるようなB級仕様なんです。

とは言え、そんな事は関係ないくらいクオリティが高いです。それは何か?

第一に監督のセルジオ・レオーネ監督の演出力。レオーネの映画は“静寂と顔の映画”と思います。“静と動”のギャップ強め。ただ歩く姿が延々と続き、突然の銃撃シーンが始まります。全然、気が抜けません。
そして、顔のアップ。キャラクターの思考や性格を役者の顔のアップで表現。細かい芝居も見逃しません。

第二に、壮大なロケ撮影。日本ではまず有り得ない、どこまでも続く砂漠。広大な荒野。石造りの建物。役者を画面の端に配置。ロケ地のスケール感も画に綴じ込めています。

第三に、エンタメ満載の脚本。同じ賞金稼ぎとして命を狙い合う男たち。対立し合いながらも、目的の為(主に金の為)に共闘。軽口、嫌味を言い合いながらのヤリトリはユーモラス。
それでいて、失われつつ古き物への哀愁がモチーフの一つになっています。

第四に、テンポの良い編集。映画の全てのパターンが詰まってるんじゃないかと言うくらい、バリエーション豊富。切替し、目線アングル、長回し、超ロングショット……などなど。


そんな本作のストーリーを追いながら、名場面をご紹介。

賞金の掛かったイーライ・ウォラック。ウォラックを捕まえ、保安官に受け渡し、賞金を頂くクリント・イーストウッド。いよいよ町の中で、見せしめとして絞首刑が執行される瞬間。イーストウッドがライフルを撃ち、絞首刑の縄を切り落とす。実は2人は仲間。野次馬を銃で脅し、急ぎトンズラ。そんな金の稼ぎ方。

その二人が金の事で仲違い。イーストウッドがウォラックを砂漠に置いてけぼり。

やっと荒野の店に辿り着いたウォラック。押し入った店で、いくつかの銃をバラバラにして組み立て直すシーン。実はアドリブだとか。ウォラック曰く、「監督が何も説明してくれないから、適当にやるしかなかった」との事。それにしては、銃口を構えてみせたり、シリンダーの回転音を聞いたり。とってもプロっぽい。それを店主にも聞かせるのが最高。

別の相棒と金を稼いでるイーストウッドを発見するウォラック。今度はウォラックの復讐だ!! イーストウッドへ水もやらず砂漠を歩かせ続けるウォラック。眼の前で水筒をガブ飲みするウォラック。砂漠の直射日光で顔中、火傷まみれになるイーストウッド

そんなタイミングで現れた一台の馬車。中は死人だらけ。唯一の生き残りから、“大量の金貨を隠した墓”の名前を聞いたウォラック。一方、ウォラックの隙きをついて“墓石の名前”を聞き出すイーストウッド。仕方なく共闘関係を結ぶ二人。

近くで見つけた教会にて、静養。傷を治すイーストウッド。なんと教会の牧師をしていたのがウォラックの兄。両親の死や死に際に会いたがってたという話を聞くセンチメンタルなウォラック。結局、兄とはケンカ別れ。それでも、イーストウッドには「たらふく飯を食わせてくれてよー、なかなか離してくれねーんだよー」と強がるウォラック。兄とのヤリトリを隠れて見てたのに、何も言わず、葉巻を渡すイーストウッド。思わず、グッときてしまいます。

一方、前半で暗躍を垣間見せる程度だったリー・ヴァン・クリーフが登場。南軍に化けた二人に対して、北軍の軍曹に化けてたクリーフ。二人から金貨の話を聞き出します。そこから新たな旅の始まり。

クリーフはウォラックをフルボッコ。情報を聞き出し、イーストウッドと旅へ。ウォラックは別の収容所へ移送中に脱出。結局、南北戦争の戦場で二組は再会。クリーフは姿を消し、イーストウッドとウォラックは共に旅へ。

次に辿り着いたのは、橋を挟んで北軍と南軍のにらめっこが続ける戦場。このシーンはローケーションに圧倒的なスケールでセットが組まれ、もはや記録映像のようなリアリティ。

イーストウッドとウォラックは、向こう岸へ渡る為に、橋を爆破。両軍隊を撤退させ、前へ進んでいきます。この爆破シーンも凄まじく、瓦礫や石の破片がカメラに向かって吹き飛んできます。CGや特撮では出せない、ほとんど事故映像。

そんなこんなで、やっとゴールへ。そこはサッドヒルの墓地。イーストウッドに教えられた墓石の名前を探し、走り回るウォラック!! バックに名作曲家エンニオ・モリコーネによるファンファーレ!! カメラもグルグル回る!!
そして、墓石の前に現れるクリーフ。イーストウッド、ウォラック、クリーフの3人が顔を揃えます。とうとうクライマックスの決闘シーン。腰からブラ下げたガンベルト。手はいつでも銃を抜ける姿勢。ひたすら交互に映し出される3人のどアップ!! 目のアップ!! 互いの様子を伺う3人の緊張感みなぎる表情!! こだまする銃声。勝負は一瞬で決まります。

ラストはウォラックに墓を掘らせるイーストウッド。掘らせるだけ掘らしておいて、物語の序盤同様、輪にした縄を木から吊るしていたイーストウッド。銃で脅し、輪に頭を入れるよう指示。金貨の半分を馬に乗せ、走り去るイーストウッド。どんどん走り去るイーストウッドを呼び続けるウォラック。

このシーンでの「ごめんなさぁ〜い」というウォラックのセリフは吹替えを担当する大塚周夫さんのアドリブだとか。原音では名前を呼ぶだけ。吹替え映画史に残る最高のアドリブだと思います。本作では、昭和の古き良きゆる〜い体制で、他にもアドリブをこれでもかとブチ込んでいるそう。ボクのマイヘイバレットなセリフは、イーストウッドを脅す際の「心臓ほじくり出してムシャムシャ食ってやるぞ!!」です。

本作には、テレビ放送時、カットされたシーンも追加収録された《日本語吹替完声版》が作られました。今ではDVDやBlu-rayなどのソフトにも収録されています。
ウォラック役の大塚周夫さん、クリーフ役の納谷悟朗さん、北軍大佐役の小林清志さんが追加収録に参加。もう故人であるイーストウッド役の山田康雄さんの追加収録分は多田野曜平さんがクリソツで担当。どの役どころもフィックス声優の方々なので、安定のクオリティです。


星5つ
★★★★★

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『続・夕陽のガンマン』海外版


続・夕陽のガンマン The Trio [The Good the Bad and the Ugly]

THE GOOD, THE BAD AND THE UGLY 1966年 / イタリア / 179分 / 西部劇
監督
セルジオ・レオーネ

出演
クリント・イーストウッド山田康雄/多田野曜平)
リー・ヴァン・クリーフ納谷悟朗
イーライ・ウォラック大塚周夫
ほか