ユンギボの映画日記

ユンギボ(@yungibo)によるあらすじ紹介、ネタバレなしのレビュー、解説・考察をお届け‼

【未DVD化】アイドル映画の皮をかぶったトンデモ映画『ザ・オーディション』(#55)

f:id:stanley-chaplin-gibo:20210217074231j:plain
『ザ・オーディション』ポスター

往年のアイドルグループ=セイントフォーによるサクセスストーリー映画『ザ・オーディション』。なんですが、これが芸能界のウラ側を暴露したようなヘビーな映画なんです。

本作は、セイントフォーがデビューした1984年11月公開の作品。同年同月にシングルとアルバムが連続で発売しているので、デビュー合わせの公開って事ですかね。

元ロックグループで一世を風靡したものの、今はマネージャーとして働く主人公。なかなかのポンコツでスタジオのセットぶっ壊すチン騒動からスタート。
でも主人公は、業界に反撥しながらも、いつか自分のアイドルをデビューさせる夢を持っています。初めて観た時はピンときてなかったのですが、再観賞して、これは結構、切ない事に気づきました。元々は売れっ子ロッカーがマネージャーという渋々、裏方に回っている訳ですからね。
しかも、周りから「ハンパ者」と言われ、自分でも「何も成し遂げられてない」と自答する主人公。そんな心の内が語られます。そんな小市民の主人公が芸能界という圧倒的にデカい敵へ向かっていく訳です。
ストーリーは、主人公が社長と揉めた事からアイドルグループのメンバー集めを開始。4人のメンバーをスカウト。ダンス練習。筋トレ。歌唱レッスン。修行の日々がスタート。

本作の面白いのは、冒頭はドタバタ喜劇風。メンバー集めから修行シーンまでは、アイドルグループが形になっていくサクセスストーリー。そして、レッスンの合間で夢を語り合うメンバーたちの姿はまさに青春映画。所が、レコード発売を揉み消され、オーディションの日々へと話が移ると、どんどんディープになっていきます。裏で大手事務所による大人の力を駆使した妨害。暗躍。陰謀へと発展。
彼女たちの個々のドラマや主人公の恋愛エピソードも追加。自腹でレコーディングなどの活動をしてきた上、オーディションへの賄賂まで要求されます。それでも裏切る審査員たち。芸能界が権力者たちによって作られているのが、よく解ります。

そして、主人公はとんでもない傷を追う事になります。クライマックスを迎える頃には、もはやただのアイドル映画の枠を超えた壮絶な展開が鎮座しているのです。

一度はVHSで発売されたとのの、DVD化やBlu-ray化されていない本作。昔のVHS版で観賞していたのですが、今回はCS日本映画専門チャンネルにて放送されていたので録画。本作の新城卓監督の初期作品はことごとく観るのが難しいのが残念。パル企画で製作された『オキナワの少年』なんかは傑作だと思うのですが、未だソフト化されず。


星4つ
★★★★☆

1985 セイントフォー ザ オーディション ビデオ発売 日本ビデオ映像株式会社 CM JAPAN


出演
セイントフォー岩間沙織浜田範子、鈴木幸恵、板谷祐三子)/世良公則志穂美悦子
監督
新城卓
原作
脚本
中岡京平/川村俊明
公開・放送年
1984
放送時間
127分
www.nihon-eiga.com