ユンギボの映画日記

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あまり語られない泣けるマフィア映画『バラキ』(#65)

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ボクはマフィア好きというワケではないのですが、「ゴッドファーザー」シリーズや「仁義なき戦い」シリーズなどが大好きです。家族や一族間の葛藤。血縁関係は無くとも、擬似的な家族モノ、兄弟モノでもあります。任侠です。仁義です。バディものでもあります。組織の中での生き方を模索する登場人物たちは、自分の生活とオーバーラップ。映画の中のように、生きる死ぬのレベルでなくとも気を引き締めて生きようと思います。

ゴットファーザー」シリーズや「仁義なき戦い」シリーズほど有名ではないのですが、確実に名作なのが本作『バラキ』です。
本作は、「仲間を裏切ったらブッ殺す」という“血の掟”を破り、マフィア組織内の全てを証言したジョゼフ・ヴァラキさんの実話。

物語は、逮捕されたヴァラキさんが、刑務所へ入る所からスタート。FBIに過去を告発する構成で回想シーンへ。
イタリア移民のヴァラキさん。職探し中に、マフィアの運転手の職を発見。敵対組織の暗殺ミッションでプチ活躍。ボスにお気に入りに。と同時に、敵対し合っている組織同士で抗争が勃発。どんどん死んでいく幹部たち。どんどん出世していくヴァラキさん。正式な組員へ加入。ボスの娘と結婚。
組織内で仲間が出来たり、信用できない奴が現れたり。ボスとは親子のような関係になったり。

主人公のヴァラキさんを演じるのは、チャールズ・ブロンソン。へチャムくれた顔面力とマッチョなボディというギャップ萌えの持ち主。ある程度、上の世代の方は「ん~マンダム」の人です。当時50代のブロンソンが、髪を黒くしたり白くしたりして、若い頃から晩年までのヴァラキさんを演じ分けています。顔はずっとシワクチャだったけど。
半殺しの目に合った友人を「楽に死なせてやる」とトドメを刺す描写があるんですけど、メチャクチャ泣けるんです!! ブロンソンの表情は変わらないけど、ちょっと涙目なんです。顔がへチャムくれてるせいか、妙に悲しく見えて、泣けるんですよね!!

また、ヴァラキのボスで、実在したヴィト・ジェノヴェーゼ役を演じるのは、名優リノ・ヴァンチュラ。冷静で冷酷な存在感たっぷりのボスを演じています。

そんな本作ですが、元になっているのは、1963年、アメリカでの公聴会でヴァラキさんの告発“バラキ公聴会”。さらにそれをまとめた「マフィア/恐怖の犯罪シンジケート」という本が1968年に出版されました。本はベストセラー。早速、「007」シリーズのテレンス・ヤング監督が映画化権を購入。電光石火で映画化しようとしましたが、問題が。当時はヴァラキさんもジェノベーゼさん、他に登場するマフィアの方々もご健在。報復の可能性もあったので、製作できず。
動きがあったのは、1971年後。ジェノベーゼにヴァラキと相次いで獄中死した事で、映画化の話が再スタート。
フェデリコ・フェリーニなどの映画を作る名プロデューサーのディノ・デ・ラウレンティスが担当。1972年の3月にニューヨークで撮影スタート。ニューヨークマフィアから脅迫を受け、仕方なくローマへ。
それでも1972年の11月には公開されているので、本当に死ぬのを待って、ソッコーで作ったんですね。

本作の、他のアメリカのマフィア映画と違うのが、正義感に駆られての告発ではない点。刑務所にいるヴァラキさんに、FBIが「お前は死ぬまで刑務所だぞ。シャバのカミさんと子供は無事に生きていけるかなー?」と脅されるんです。家族の為に告発するんですね。その描写は映画内でも描かれています。
劇中では、このFBIとのヤリトリと過去の回想が交互に展開。最初は口論ベースだったヴァラキさんとFBIの関係。徐々に友情のようなものが芽生え、ラストの2人の後ろ姿にグッときます。

今回は吹替え版にて観賞。ブロンソンの声をフィックスの大塚周夫さん。そして、大塚さんと二分して、もう一人のブロンソンのフィックス声優でもある森山周一郎さんが、リノ・ヴァンチュラを担当。さらに羽佐間道夫さんや小林清志さんなど、洋画吹替えファンにもオススメの一本です。


星5つ
★★★★★