ユンギボの映画日記

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死んだ妻と瓜二つの女性が誘うサスペンス・ミステリー映画『愛のメモリー』(#69)

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本作がどのくらい知名度があるのか、よく解りませんが、他の人と話していて話題に出た記憶がないですね。
スカーフェイス』や『アンタッチャブル』、『ミッション・インポッシブル』のブライアン・デ・パルマの初期のサスペンス・ミステリー。“ヒッチコキアン”という言葉があります。『サイコ』や『めまい』、『北北西に進路を取れ』、『引き裂かれたカーテン』など数々の名作を残した“サスペンスの巨匠”アルフレッド・ヒッチコック監督。映画ファンの間では、ヒッチコック・フリークの事を“ヒッチコキアン”と言ったりします。

本作のブライアン・デ・パルマ監督も有名なヒッチコキアン。『愛のメモリー』の頃は、熱烈なヒッチコック・オマージュを惜しげも無く作中へ投下。映画好きからすると、そーゆーのを探す楽しみもあります。

さて、やっとストーリーの紹介です。
主人公は、不動産会社の社長。ある日、強盗により妻とまだ小さい娘を誘拐されてしまいます。挙げ句、殺されてしまいます。
時は経ち、16年後。まだ妻と娘の事が忘れられない主人公。仕事でイタリアへ行きます。フェレンツェの教会で妻と瓜二つの若い女性に出会います。2人はデートを重ねていきます。

冒頭からテンポ良く誘拐事件が発生。観客の興味をカツアゲ。勢い良く事件の詳細を見せ切ります。もうそれだけでも主人公に感情移入。よく出来た脚本ですね。
この脚本を書いたのは、マーティン・スコセッシ監督の『タクシードライバー』『レイジング・ブル』や高倉健ロバート・ミッチャム共演、シドニー・ポラック監督の『ザ・ヤクザ』でも脚本を担当したポール・シュレイダー。その後、『ハード・コアの夜』や『ミシマ:ア・ライフ・イン・フォー・チャプターズ』などの監督作品を作った方です。

ブライアン・デ・パルマポール・シュレイダー名画座ヒッチコックの『めまい』を観て、「こんなん作ろうぜ」と脚本を執筆。演出も目一杯ヒッチコックに寄せました。
特に、ブライアン・デ・パルマの得意技であるスプリット・レンズを多用。スプリット・レンズとは、クローズアップ・レンズと素通しのレンズが一枚に合体。画面の左右で、奥と手前の被写体、両方にピントを合わせる事が出来ます。それが何なのか? セリフを喋る手前の人物と、画面奥で起きている出来事を同時に一画面で見せられるのです。
本作の場合、奥と手前の二人の人物の芝居のヤリトリを同時見せ。ミステリーを牽引する演出に使われています。

もう一つ、撮影の特徴があります。それは、ソフト・フォーカスです。ソフトフォーカスとは、画面をモヤがからせる事で柔らかい印象を与えます。例えば、昔の映画だと女性を美しく綺麗に見せる為に使われていたりしました。本作では、死んだ妻と瓜二つの女性をソフトフォーカスで撮影。幻想的に表現。主人公の心情をビジュアルで見せています。

本作でのヒッチコックへのオマージュと言えば忘れてはならないのが音楽。本作の音楽を担当するのは、『ハリーの災難』から『めまい』『北北西に進路を取れ』『サイコ』『鳥』『マーニー』など、8本ものヒッチコック映画の音楽を担当。しかし、『引き裂かれたカーテン』でケンカ別れ。その他、アメリカ特撮の父であるレイ・ハリーハウゼン作品やフランソワ・トリュフォー監督の音楽を担当。アメリカを代表する映画音楽の作曲家なんです。
本作で脚本を担当するポール・シュレイダーが脚本を書いた『タクシードライバー』が最後のセッションになります。
本作では、ほぼ全編、スコアが鳴り響きまくり!! ミステリアスで幻想的な本作を盛り上げています。

クライマックスでの真相判明。ラストの名撮影など、見どころは尽きない本作。なんすですが、妻ソックリ女性と主人公のデートシーン満載な中盤が結構、退屈。集中力が切れてしまいました。

あとヒロインが主人公の家を訪れて、前妻の情報を収集する設定は、ヒッチコックの『レベッカ』を思い出し、センチメンタルな気持ちになりました。

星2つ
★★☆☆☆