ユンギボの映画日記

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デ・パルマ監督の未公開初期短編映画は犯罪ミュージカル『ウォートンズ・ウェイク』(#73)

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スカーフェイス』や『アンタッチャブル』のブライアン・デ・パルマ監督、初期の日本未公開映画が本作。『愛のメモリーBlu-rayの特典映像で入っています。こんなレアな作品が観れるのは、大変に嬉しいです。

本作は、1962年の28分の短編映画。無声映画なんですが、全編にシーンを説明するような歌が挿入されています。ヘンテコな犯罪コメディです。原題は『Wotons Wake』。

なんと本作の主人公は犯罪者。しかも殺人。女性の首を締めたり、ガソリンをかけて焼いたり。
その主人公の名前がタイトルにあるウォートンズ。鼻がピノキオのように長く、長髪。濃ゆいアイシャドー。目はギョロっとしいます。怪人のような男へ変装しているのです。
人を殺し、屋根の上を移動。隠れ家へ帰り、女性の下着で戯れ、恋人との時間を過ごすウォートンズ。

それでいて、ルールも知らないチェスに興じたりもします。唐突な展開や設定も含め、シュールで笑えます。

目線カット、俯瞰アングル、足元だけのカット、近づいてくる影、シルエットのみの不気味な画。アルフレッド・ヒッチコック監督のファンを公言するブライアン・デ・パルマ監督らしい撮影。ドイツ表現主義風のバランスの崩れた美術。

さらに、ウォートンズのビジュアルは怪奇ホラーへのオマージュも感じられます。クライマックスの追い詰められていく展開や画作りも『フランケンシュタイン』や『カリガリ博士』、イングマール・ベルイマン監督作品のよう。

粗削りとは言え、まさにデ・パルマ印の一本。本作を知った上で、メジャーのデ・パルマ映画を観るとまた違った側面が感じられます。

星2つ
★★☆☆☆
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