ユンギボの映画日記

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「飛べば、見える。」世界一カッコイイ豚の空物語『紅の豚』(#76)

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顔だけ豚の男が飛行艇(水面に着陸できる機体)で空を飛ぶだけで、もう面白いです。ボクは宮崎駿監督作品の中で、本作が一番好きです。その理由は、激シブかつユーモラスな主人公の魅力です。豚だと言う事が細かく追求されないミステリアスさ。
さらに、主人公の声を担当する森山周一郎さんの低音ボイスにも、グッときてしまいます。

本作は、1930年代のイタリア・アドリア海。空の盗賊=空賊により、金貨と女学生たちが拉致される事件が発生。そこで豚の主人公です。主人公の名はポルコ・ロッソ。彼は元イタリア空軍の退役軍人であり、今はフリーの賞金稼ぎ。要請を受け、金貨と女学生たちを助けるのです。

空賊の飛行艇を破壊。素直に投降しない空賊に対し、「金貨は半分やる。女学生たちを返せ」とモールス信号で伝えるんです。もう「金貨なんかくれてやる」なんですね。
一方の空賊たちの「ボス、(金貨が)修理代だけでも残って良かったですね」「バカヤロー! 志を高く持て!!」というヤリトリも笑えます。大好きなシーンです。

その後、小さな島にあるホテル・アドリアーノを営むポルコの昔馴染みの女性ジーナが登場します。彼女とのヤリトリで、ジーナの戦闘機乗りの夫が戦死した事が伝えられます。それを聞くとポルコは首から下げてたナプキンを取り、グラスに酒を注ぎます。豚なのに格好いい!! 豚なのに切ない!!
ポルコの声を担当する森山周一郎さんが凄いイケメンに演じています。そのギャップよ!!
森山周一郎さんは、刑事ドラマ「刑事コジャック」の主人公テリー・サヴァラスが有名です。悪役っぽい善玉アウトローをクールに演じていました。
その他にもチャールズ・ブロンソンジャン・ギャバンなど格好いい男たちの吹替えをしています。ボクの中の「カッコイイということは、こういうことさ。」を作り上げた人でもあります。

ポルコに毎度、フルボッコに合っていた空賊たちはアメリカ人の飛行艇パイロットのカーチスを雇います。用心棒みたいなもんですね。カーチスはポルコの不意をついて、ポルコは飛行艇を追撃。

普通なら、このカーチスというキャラも悪役です。が、この男こそコミカル。女に目がなく、自信過剰。トボけた笑いを振り撒きます。
声を担当するのは、大塚明夫さん。バラエティやドキュメンタリーのナレーターとしても活躍。ゲーム「メタルギア」シリーズの主人公スネークの声も有名です。吹替え映画も数多く担当。ニコラス・ケイジやスティーブン・セガールクライヴ・オーウェンサミュエル・L・ジャクソンなどなど、もう大塚さんの声じゃないと認識できないレベル。
そんな大塚さんのコミカル演技というのも大変、楽しいです。

ボロボロになった愛機をミラノの馴染みのある工房へ持ち込みます。そこで、馴染みの職人ピッコロとその孫娘ファオが登場。まだ17歳のフィオが設計すると知り、一度は帰ろうとするポルコ。しかし、フィオの熱意に設計を任せます。
ここでも名言が!! 「睡眠不足は良い仕事の敵だ。それに美容にも良くない」です!! これは、本当によくモノマネします!! 「ポルコ、最高だぜ!!」と思わず腕を上げてしまいます。

ポルコは、ミラノでもう一人の人物に会います。それは空軍時代の戦友。ファシスト政権により、目をつけられているポルコ。2人は映画館でコソコソ会うんです。この密談って格好いいですよねぇ〜。『パトレイバー2』の車の中の密談の次に好きな密談シーンです。

秘密警察が近づいてきている事を知ったポルコ。まだテスト飛行もしてない愛機と逃亡を決意。それを知ったフィオは、飛行艇の調整をする為、“人質”として同行すると言い出します。
そのシーンでのポルコがまた格好いいなんです。機関銃を一機外し、フィオの乗れるスペースを作らせます。続けて「マゴマゴしているとバァちゃんたちまで着いてきそうだ」とギャグを言ってみたりするのです。キャ~!!

このミラノからの脱出シーンのアクションが大変にカッコイイのです!! なかなか飛び上がらない飛行艇が街中の川を猛スピードで進みます。たまたま通り掛かった船を避け、橋の下を潜り、歩道へ大量の水しぶきを放ちながら!! そして、ポルコの「上がれぇ〜」というセリフと共に勢い良く機体が中に上がります!! 燃えるぜ!!
ホッとしたタイミングで、ポルコの戦友の飛行艇が近づいて来ます。「この先、待ち伏せされてるぞ。逃げ道を教える」とサインを送ってきてくれます。この旧友からの助けもグッときますね!!

アドリア海の隠れ家に戻ると当然、飛び出して来る空賊たち。切りだった崖の裂け目から華麗に(?)登場したカーチス。皆がポルコをフルボッコにしようとする中、フィオが素敵な提案。“ポルコの飛行艇の支払い&カーチスとフィオの結婚“”を掛けた決闘が開催される運びに。

その晩、ポルコがフィオに語る不思議な経験談。まるで幻想のような、夢のような。このシーンはポルコの死んでいった仲間たちへの思い、今の自分への思いが伝わってきます。名シーンです。

そして、クライマックスはポルコとカーチスの一騎打ちへと雪崩込んでいきます!!

宮崎駿 監督による演出ノートには「疲れて脳細胞が豆腐になった、中年男のためのマンガ映画」と記しています。脳ミソの代わりに豆腐が入っているようなボクにはピッタリの映画。

宮崎監督は、本作の続編を作りたいと度々、語っており、ポルコ役の森山周一郎さんもそれを望んでいたようです。それが叶わないまま、先日、2月8日に亡くなられてしまいました。『紅の豚』ファンとしては非常に残念であり、森山周一郎ファンとして、悲しくてなりません。
それでも、本作が生まれた事、今でも観れる事に感謝しております。


星5つ
★★★★★