2017.03.11 『ラ・ラ・ランド』
2017.03.11
『ラ・ラ・ランド』を観賞。
アカデミー賞6部門受賞の大ヒット作品なので、もはやボクごときが(しかも今更)話す必要があるのかという……。
ストーリーは、最悪の出会いをしたはずの男女が再会し、惹かれ合っていく切ない路線の恋愛模様を四季の中で描いていく……といった感じのロマンチックで歌と踊りとのカラフル・ミュージカル映画です。なもんで、見どころは主演のエマ・ストーンとライアン・ゴズリングスの歌とダンスと演技。これが凄い!
本作のライ・ゴズはジャズに拘りがあり過ぎて売れないピアニスト役。さすが演技派。その為に3か月かけてピアノを猛勉強。吹き替えなしの演奏を披露。エマの方も『キャバレー』でブロードウェイへのデビュー済。本作ではオーディションを受けまくる売れない女優役。そーなんです。本作のタイトル『ラ・ラ・ランド』とはロサンゼルス(主にハリウッド)の愛称。夢を追う者の都。夢(将来)と現実(恋愛)のドラマになっているんです。もう切ないですね。
主役2人が踊るダンス・シーンの数々は本当に素敵なシーンばかりなんですが、実はそれらも過去のハリウッド製ミュージカル映画へのオマージュ。過去のグッとくるシーンの集大成的な構成なんです。これは強力ですね。普段、ミュージカル観ない人も思わずグッときてしまうのではないでしょうか?
たとえば、2人が街を一望できる丘の上で踊るダンス。これは『バンド・ワゴン』のフレッド・アステアの振り付けにソックリ。踊りながら空へ飛んでいく幻想的な演出はウディ・アレンの『世界中がアイ・ラブ・ユー』のクライマックスだし、その他にも『雨に唄えば』や『巴里のアメリカ人』のジーン・ケリーを思わせるダンスも。そんな過去の名優たちを意識したライ・ゴズの細身なスーツも素敵。今、タイトルを出した『バンド・ワゴン』が1953年公開の作品。『雨に唄えば』は1952年。『巴里のアメリカ人』が1951年。そう、この映画は50年代のミュージカル映画の総集編的な作品なんです。
今作は今や珍しくなったシネマスコープ(1:2.52のワイドスクリーンという横長の画面比率)での上映。1950年代のハリウッド製ミュージカル映画は、全体で行われているダンスを引き画でも迫力ある構図で見せる為にこのシネマスコープで上映されていたのです。テレビが台頭する以前の華やかなだったハリウッド全盛の上映を追体験できるのも劇場で今作を見る恍惚ポイント。
そこまでしてミュージカル映画を徹底的に復活させたデイミア・チャゼル監督は、このジャンルを選んだ事を以下のように語っています。
「僕にとって個人的なテーマを扱っている。人生と芸術、現実と夢をどう釣り合わせるか。また、特に芸術との関係と人間関係とをどう調和させたらいいのか。本作では音楽と歌と踊りを使って、そんな物語を語りたかった。ミュージカルは、夢と現実との間の綱渡りを表現するのに適したジャンルだと思うよ。」
監督の語る通り、歌とダンスで華やかに演出された前半から中盤に掛けての夢見る2人。それもクライマックスに近づくにつれて、静かなトーンと暗い画作りになっていき、現実を受け止めた2人には号泣必至の切ないラストが待っているんですね。その構成も上手しです。
パンフはカラー写真多めで映画の内容を思い出すには持って来いですが、個人的にはもっと写真集ばりに写真が欲しかったです。イントロダクションやインタビューなど製作背景の記事は多め。作品解説は少なめな初心者対応な印象。濃くも薄くもない内容。
『ラ・ラ・ランド』
★★★☆☆
星3つ