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ユンギボの日記

ネタバレなしの映画感想日記。

『ブリーダー』感想

さっき、新宿シネマカリテで『ブリーダー』を観賞。
『ドライブ』(2011年)が大ヒットしたニコラス・ウィンディング・レフン監督。彼が、1999年に発表したデンマーク時代の監督第2作目が本作。やっとこさの日本公開ですよ。最近は新作の『オンリー・ゴッド』で観念的世界観を爆発させ、映画ファンたちをキョトンとさせたレフン監督がまだまだネクスト・タランティーノと呼ばれていた頃のちょっとユーモラスなクライム・サスペンス映画が本作なんです。と思ってたら、タガの外れた飛んだオタク映画でしたよ。
デンマークのスラム感ある下町で、夜な夜な集まって映画上映会をしてる愛すべきボンクラたちの全くテイストの違う2つのエピソードが同時進行で描かれていきます。
主役の1人が今やテレビ・シリーズ『ハンニバル』でサイコパスの代名詞的なキャラクター=レクター博士役を演じ、上品なイケメンっぷりを存分に振りまいていたマッツ・ミケルセン。本作では、まさかのレンタルビデオ屋で働く映画オタク役なんです。部屋には『マッドマックス』や『ドラゴンへの道』『タクシードライバー』などのポスターがワサーっと貼られており、オタクとしては信用できるが、悲しいくらい全然、イケてない人物。
そのオタクっぷりが完全にどーかしてるレベル。客にオススメを聞かれ、店内に置いてあるビデオの監督名をひたすらマシンガンのよーに羅列。客をドン引かせる素敵さ。それに対して客が「ポルノはある?」と返した時の露骨な落胆っぷりが微笑まし過ぎて笑えます。
そんな彼も恋をしてるんですね。来店した女の子に惚れ、勇気を振り絞って掛けた言葉が「キミ、『カジノ』借りたよねー?」って(笑)。ちなみに、彼女は『アルマゲドン』くらいしか知らない読書好き女子。さらに、彼女が気を使って「好きな作品は?」と聞いてくれたのに、即答で『悪魔のいけにえ』って。しかも、よく見たら『フランケンシュタイン』や『プラン9・フロム・アウタースペース』(エド・ウッドのB級カルト映画)のTシャツ着てるし!
レンタル屋の店長にも
「『猿の惑星』シリーズで1番、好きなのは?」
「1作目。」
「じゃあ、『13日の金曜日』では?」
「3作目。」
「おいおい、ウソだろー? だって……」
「お前なー!! 映画の話以外できないのか?!!」
とキレられ、自分の話かとドキッとしましたよ。

一方、そんなオタクの映画友達はクラブでチンピラたちのガチなドツキ合いを目撃した事から、不安に駆られ銃を調達。どんどんヴァイオレンスな世界へ堕ちていく、こちらは打って変わって超シリアスなエピソードが同時進行で描かれます。
不安に駆られ、過剰防衛していく様はチャールズ・ブロンソンが過度な自警団化していく『狼よさらば』やデ・ニーロが武装化していく『タクシードライバー』にソックリ。しかも、妊娠している彼女にイラつき、手を上げてしまい、彼女のチンピラ兄貴にチクられるシーン。これは『ゴッドファーザー』のコニーが亭主の暴力をソニーに伝えるシーンと同じじゃないですか! さらに、チンピラ兄貴が階段で待ち構えてる描写は『ゴッドファーザー PARTⅡ』のビトーが初めて人を殺すシーンに激似! どこまでオタクなんだ、レフン!!

要は、映画オタクの日常ってのはレフン監督自身の日常で(ちょっと一般的ではないですが)、その日常の裏では、銃を手に入れた事からチンピラ兄貴と物騒な対立関係になっていく友人のようなデンマークの下町の日常があるんだ……という映画なんだと思います。そーゆー意味では出世作『プッシャー』3部作や『ドライブ』と同じテーマを内包しているんです。

ちょっと中盤がダラダラしてますが、登場人物たちが歩いてる画に、それぞれタイプの違うロック音楽を被せ、キャラ紹介をしてしまう力業、先の展開を暗示させるよーに画面全体が赤一色になる演出など、単純ながら意外と新鮮でスタイリッシュな演出にセンスをビンビンに感じさせてくれます。何で今までソフト未発売、日本未公開だったんだー。果たしてソフト化されるのだろーか……。

『ブリーダー』
★★★☆☆
星3つ