ユンギボの映画日記

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『イット・フォローズ』感想

2016年1月26日(火)、池袋シネマ・ロサで『イット・フォローズ』を観賞。

とんでも系ホラー映画でした。とりあえず、不安要素を煽る設定が3つあって、それらの相乗効果がバツグンに効いてます。


【不安要素1・ナニカを移すにはセックス】
本作のタイトルを直訳すると「それが、ついてくる」ですね。主人公の女の子が彼氏とデートして、セックスしたら、知らないオジさんが追い掛けてくるんですよ。「何を言ってるの?」と思いましたよね?
どーやらセックスして移されると、「ナニカ」が追い掛けてくるんですよ。「ナニカ」ってのは、裸のオジさんとかオバさんとか、その時々で姿が違うんですけど、脇目もふらずに主人公の所へ一直線に向かって来るから、すぐに解るんですね。そーとー怖いですよ!
絶妙に体型の崩れた人達ばかり!
ヘンに着ぐるみやCGの怪物より怖いです!
しかも、ドコから来るか解らない、急にヌッと現れる辺りして、ビタ一文たりとて気が抜けないです!
毎回、姿が違うから「あそこ歩いてるアイツ、こっちに向かってるよーに見えるけど、まさか!?」みたいなシーンばっかで観賞中、ずっとソワソワですよ。
しかも、捕まったら殺されちゃう。助かるには、また誰かとセックスして、他人に移さないといけないんですね。ただし、移した相手が殺されちゃうと、また1つ前の人に戻って来るんですよ。
リア充不幸の手紙みたいですね。
「なんだ、このムチャクチャな設定は!?」と思ってたんですけど、これがなかなか。
パンフのインタビューによると本作のデヴィッド・ロバート・ミッチェル監督は『パリ、テキサス』、『黒い罠』、あるいは、カーペンター監督の『ハロウィン』や50年版&60年版『ボディ・スナッチャー』、ホラー映画の名作『ローズマリーの赤ちゃん』、『シャイニング』などの作品に影響を受けたとの事。なるほど。言われてみれば、廃墟が多く人の少ない街並みや主人公たちが科学的にナニカを倒そうとする対決方法、ナニカから逃げるロードームービー的展開などは70年代の青春モノ+80年代のケレン味ホラーな印象を受けます。
ちなみに、舞台となるデトロイトは監督の出身地でもあります。


【不安要素2・仲間たち】
そんな主人公を助ける為、大学の同級生たちが助けてよーとしてくれるんですけど、このメンツも絶妙。
みんな割りと一生懸命、助けてくれるんですけど、その中のブスな女とかは裏で「あの子(主人公のこと)、可愛いから贔屓されるのよねー。不公平よ。」とか言ってたり。主人公の事が明らかに好きな男がいるんです。凄い良い奴なんですけど、童貞顔で絶妙にダサいんです。「お前は他人に移せないだろ?!」って奴なんです。そんで、イケメンの男が主人公を助けるのを遠くで見てたりとか。それをブスな女が不満気に見てたりとか。「お前ら、ホントに仲良いのか?!」と聞きたくなるくらい穏やかじゃないんですよ。
そんな中、ナニカを移す方法がセックスというのは、性に敏感な彼らにとって、波乱の幕開けへとなってしまうんですね。


【不安要素3・音楽】
で、この作品、全編にアナログ・シンセサイザーの不協和音めいた楽曲が各シーンとシンクロしていて怖さを引き立たせています。
音楽を担当したリチャード・ヴリーランドは初めての映画音楽作品だそーです。それでも、ホラー映画っぽい「いかにも」な曲ばかり。しかも、近づいて来てるであろうナニカの動きとリンクして、徐々に音が大きくなってきたり、唐突にダーン!!!!ってなったり、心臓に悪い。監督は音楽を盛り上げまくって、カットも細かく割り、緊張感をあおりながら実はいないよー演出も心得ているんです。
ダリオ・アルジェント監督のスラッシャー、ジャーロ映画も彷彿とさせます。


以上の3つの不安要素のコラボ技は劇場のスクリーンと音響により、割増されてたので、本作は劇場観賞をオススメします!
パンフは値段の割りに中身は薄め。でも、『007 スペクター』のパンフより売れてるらしーです。


『イット・フォローズ』
★★★★☆
星4つ