ユンギボの映画日記

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6/10『ファントム・スレッド』

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ファントム・スレッド』を観賞。

1950年代のロンドン。舞踏会に着ていくような豪華絢爛なドレスを作る鬼才のデザイナーを主人公に、男女のイビツな恋愛関係をサスペンスたっぷりに描いたのが本作。

主人公は、ドレス作りの鬼才のデザイナー……というか、もはや奇人レベルの変り者。単調で静寂な日常の中でドレス作りを淡々と進めていのが彼のやり方。
そんな男が、テーブルにぶつかるレベルで仕事の出来なさそうなウエイトレスの女と出会うんです。そこからは、電光石火の勢いで、我が家へ招き入れ、共同生活が始まります。ですが、この女が抜群に空気を読めない女だったんです。
皆が感じた事あるであろう、空気読めない奴の空気を読まない行動って、かなり恐怖ですよね! それをサスペンスとしてアクセルMAXで描いたのが朝食のシーン。

毎朝、静かな朝食の場でデザイン画を描き溜めるのが、デザイナーの習慣。そこで、カチャカチャ音を発てながら朝飯を食って、デザイナーの集中力を削ぎ、イラつかせます。
挙げ句、デザイナーの身の回りの世話をする妹に「あの人、神経質なのよ」と言い放つ有り様! ただ飯を食うだけのシーンで、こんなにヒヤヒヤするのか!!
※この映画、コメディじゃないですからね!

空気は読めないなりにも、私のことを愛して欲しい精神に従順な彼女は乱暴すぎる素直をスパークさせていきます。次々と「だから止めとけって!」と思う行動を繰り返していくんです。
「これじゃあ、デザイナーも愛想尽きるぜ」と思っていたら、後半、まさかの流れに!!
常気を逸した行動に、もう目が話せない展開に!

本作で神経質すぎるデザイナー役を演じるのは、やり過ぎ役作りで有名なダニエル・デイ=ルイス
実在の脳性麻痺の画家を演じた『マイ・レフトフット』では車イスで生活。モヒカン族を演じた『ラスト・オブ・モヒカン』では、6ヶ月間かけてサバイバル術を習得。『ボクサー』ではプロボクサーと週3回のスパーリングを3年続けた……という、仕事熱心なお方。本作でも、ニューヨーク・シティ・バレエ団の衣装監督に弟子入り。裁縫から立体裁断、寸法の仕方などを習得。最終的には、ブランドもののスーツを複製できる腕前に。
そんな安定の演技力で3度目のアカデミー賞主演男優賞を授賞。

前半の豪華絢爛ながらも、おっとりした展開は多少、退屈。ですが、そこを活かして、エッジを効かせた後半のサスペンスは見事。ヒッチコックの『レベッカ』を意識したという作風でアカデミー賞作品賞も授賞してます。

パンフはスタッフ&キャストのインタビュー記事は少なめではあるものの、映画が出来るまでを追って紹介しているので、バックボーンを知るには打ってつけの一冊でした。

ファントム・スレッド
★★★★☆
星4つ