現代日本の子供たちを取り巻く闇社会のリアルとは? 映画『子どもたちをよろしく』
アメリカではリアル思考に特化してメガヒットした映画『ジョーカー』。高評価の背景には、アメコミ原作ながら、貧困により悪の化身となっていく主人公を描いた社会批判要素も。それを受けてとは思いませんが、日本でも貧困に喘ぐ、低所得家庭をダークに描いた映画『子どもたちをよろしく』が公開。今回もネタバレなしレビューをお届け!!
あらすじ・ストーリー
子どもたちを取り巻く社会の闇一瞬、ハートフルなタイトルとは裏腹にダークすぎる本作のストーリーをご紹介。デリヘル嬢とそのデリヘル店で働く送迎ドライバーの中年男。2人の物語が同時進行していく本作。ヒロインは、ドライバーに悪態つく性格の悪いデリヘル嬢と思いきや家族の稼ぎ頭。父親は酔っぱらってDV系オヤジ。母親は父の言いなり。弟は暴力親父と一触即発。
一方、中年ドライバーの方は、中学生の息子と二人暮らし。家は汚く、画に描いたような極貧生活。ガスや水道も止まる貧乏生活ながら、デリヘル店長から借金してはパチンコに注ぎ込む毎日。この二つの家庭、実はご近所。デリヘル嬢の弟とドライバーの息子が同級生なんです。自分の姉がデリヘル嬢とは知らない弟。ドライバーの息子を仲間たちと「お前の親父、デリヘルのドライバーやってんだろー?」とイジメているんです。所が、姉の部屋の前でデリヘル名刺を発見。「お姉ちゃんがデリヘルやってんのか?」と勘の良すぎる疑惑を持つように。その後、2人の中学生がドッペルゲンガーのような分身に見えてくる演出が秀逸。二つの家庭が、今の状況に至るまでの背景をセリフなどで小出し提示。ストーリー進行と共に、徐々にバックボーンが解ってくる展開。救いもなく、終始、ストーリーが重たすぎる本作。それにも理由が。
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感想・批評
演技派の出演者が勢ぞろい!!
熱量の高い本作の企画本作は、文部科学省で長らく子どもたちの実態と向き合ってきた寺脇研&前川喜平による元文部科学省コンビによるコラボ企画。
子どもたちを取り巻く社会のリアルな闇を提示する為に製作。そこへ『ワルボロ』の隅田靖監督が合流。また内容が内容だけに、若手中心ながら演技力あるキャスト陣も集結。
デリヘル嬢にギャンブル依存ヒロインのデリヘル嬢を演じるのは、Netflixの園子温監督作品『愛なき森で叫べ』へも出演している鎌滝えり。本作の脚本を読んで「この役を演じるのは自分だ」と立候補。オーディションで見事、本役をゲット。デリヘル店ドライバーを演じるのは、自主映画から大作まで垣根なく活躍する川瀬陽太。ギャンブル依存の父親を演じ、頭を下げて金を借りる表情が心を締め付けてきます。
さらに、家出した母親の帰りを待ち続けるドライバーの息子役の椿三期、姉にデリヘル嬢疑惑を向け追い込まれていく弟役の杉田雷麟……とフレッシュなキャストが熱演を披露。本作出演者たちが今後、スターになっていくかも。
ドキュメンタリータッチの演出!!
リアルな低所得家庭あるある登場する設定にはテンプレ感も感じますが、リアルな低所得家庭あるあるシチュエーションも満載。こういった日本の現状を知らない人たちへ伝えられるだけでも価値ある一本。
映画『子供たちをよろしく』は、2月29日より全国公開となります。パンフレットや前売りチケット情報は公式サイトを!!
星★★★☆☆
映画『子どもたちをよろしく』
キャスト
出演:鎌滝えり 杉田雷麟 椿三期 川瀬陽太 村上淳 有森也実
スタッフ
監督・脚本:隅田靖 企画:寺脇研 前川喜平
企画・製作「子どもたちをよろしく」製作運動体 配給:太秦 2019 年/日本/カラー/
上映時間105 分
元文部科学省 寺脇研×前川喜平 企画!
http://kodomoyoroshiku.com/
2020 年 2 月 29 日(土) ユーロスペースほか全国順次公開!
インタビュー
隅田靖 監督
【インタビュー】映画『子どもたちをよろしく』の隅田靖 監督が語る現代日本の子どもたちを取り巻く貧困/映画『子どもたちをよろしく』2/29公開