ユンギボの映画日記

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2017.04.16 『哭声/コクソン』

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2017.04.16

『哭声/コクソン』を観賞して来ました。

 閉鎖的な村を舞台に偏見と噂話の溢れる中、自らの家族をぶち殺す事件が連発。挙げ句、死人がゾンビよろしく生き返ったり、悪魔祓いに祈祷対決と超オカルトな内容。土着質な作風は昔の角川映画を思い出させますね。韓国製の超スリラー・ホラー映画です。韓国で大ヒット。日本人俳優から國村隼が出演。しかも韓国で賞を獲りまくりですよ。凄いですね。『ブラック・レイン』でリドリー・スコットの作品に出て、『キル・ビル』でタランティーノ北野武の作品から黒沢清園子温三池崇史是枝裕和。『シン・ゴジラ』にも『寄生獣』にも『進撃の巨人』にも『ちはやふる』にも『相棒』にも出てくる。次回作には『ジョジョ』と『鋼の錬金術師』って、もう笑ってしまうわ。

 しかし、これは大変な作品でして。何が大変って意味が解らない。……というか、意味が解らないように作ってあるんですね。これはキューブリックの『シャイニング』と同じ作りですね。キューブリック監督はあえてオチを意味不明にする事で見終わった後にも恐怖を維持させようとしたんです。謎が残るから怖いってやつ。

 とは言え、全く意味がないムチャクチャな作り方をしてるのかと言うとそんな事はないんですね。いや、ないらしいです。本作のナ・ホンジン監督いわく、キリスト教で身近な人が死んだ時に神の不条理みたいな事を考えまくって本作を作ったとインタビューで答えてます。だから、「イエス・キリストの復活を現代風に解釈した」とか「コクソン(村の名前)をイスラエルに見立てて作った」と話してました。実は色んな所にキリスト教のモチーフが混在しているんです。でも、絶対わかんねーよって話ばかりなので、そーゆー話は見終わった後にでも町山智浩さんの話とかキリスト教ウンチクの得意な人のブログでも読んで下さい。

 そーゆーバックボーンを抜きにして見ると、なかなか面白いB級映画。まず主人公がバカ!! 町の警官なんです。映画の冒頭、殺人事件が起きたと連絡が来るんです。所が、お母さんに「朝飯を食って行け」と言われておとなしく食べていく。そんで上司に「遅いぞ」と怒られてる。どうですか? 好感度高いボンクラですよね?

そんな主人公がエグい地獄絵図に出くわしてしまうんですけどね。

 そもそも、この映画に出てくるキャラクターって、善人だと思ってた人間が悪い奴っぽくなっったり、良い事だと思ってやった行動が悪い事に繋がったり、そんなんばっかり。これまた監督いわく「ある瞬間には「善」と思えた相手が、10分後には「悪」に変わってしまう。20分経つと隠された意外な一面が判明し、また違う表情が見えてくる。何度も何度も繰り返し「あなたはどう思う?」と問い続ける映画になっているんだ。」との事。実際、劇中でも「お前がそう思うならそうなんだろう」というセリフが頻繁に出てきます。宗教家の作る映画は説教臭い映画が多いですね。

 そんな事よりも、ボクが凄いなと思ったのは、こんなにも意味不明な映画が韓国で大ヒットしたって事ですよ。

パンフの小倉紀蔵京都大学教授)の解説によると、韓国ではシャーマニズムが一般的に社会の生活に溶け込んでいるとの話でした。劇中に登場する祈祷師とか家族の様子がおかしいとシャーマンに相談してみるという描写なんかがリアルなんでしょうね。撮影に6ヶ月も掛けた本作は、その祈祷のシーンで使う小道具とか美術も本物を集めており、実際の儀式で使われる物ばかり。雨や霧のシーンなんかは本当に天候が変わるのを待ったという頭おかしい体制で作られてます。それだけに細かい所まで見応え抜群。本物感が伝わってきます。そこら辺もヒットの要因なんでしょうね。

 パンフは上記の小倉先生の解説やプロダクションノート、監督や國村隼のインタビューが掲載されていますが、「映画秘宝」のインタビューより薄め。映画を観賞した人の疑問にも答えてくれない内容なので、ネットサーフィンで調べた方が納得のいく答えが見つかりやすいと思います。

『哭声/コクソン』

★★☆☆☆

星2つ