ユンギボの映画日記

ユンギボ(@yungibo)によるあらすじ紹介、ネタバレなしのレビュー、解説・考察をお届け‼

6/15Voyantroupe第4回本公演「Paranoia Papers ~偏執狂短編集Ⅳ~」

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Voyantroupe第4回本公演「Paranoia Papers ~偏執狂短編集Ⅳ~」をサンモールスタジオで観劇して来ました。

シリアルキラーや殺人を題材にしたシリアス路線やブラック・ユーモア路線など偏った中で様々なバリエーションのオムニバスで見せていく「偏執狂短編集」シリーズの最新公演。

本公演は、【赩(きょく)の章】(上演時間:3時間15分)と【黈(とう)の章】(上演時間:2時間30分)の2つの章によるオムニバス形式。非常にボリューミーです。日によって2つの章のどちらかを上演してる訳ですが、ボクは「ぶっ通し」公演という2章立て公演を観てきました。上演時間が6時間近い、頭のおかしい興行になっております。



【黈(とう)の章】
・「毒妃クレオパトラとアルシノエ」
野心満々なクレオパトラを中心に、ピュアな妹、権力争い真っ只中の2人の男たちが繰り広げる陰謀劇。
オール日本人キャストにも関わらず、外人にしか見えないキャスティングで重厚な語り口。
物語と直接は絡んでこない蛇まみれのオネーちゃんたち、スモークたっぷりのステージ上や、アヘンにより性欲を爆発させる設定など、怪しい魅力がスパーク。
一発目から圧倒的世界観を見せつけられ、ただならぬ雰囲気。

・「レディ・ゴダイヴァとピーピングトム」
どこかの貧困にあえぐ国を舞台に、納税を自分のさじ加減で取りまくる領主。
領主の妻のドレスメイカーである女の助手の男を狂言回しにしつつ、彼の暗躍していくストーリー。その中で、納税の引き下げを求める村の代表者、世間知らずな領主の妻、挙げ句、覗きが趣味で追放された前領主など、キャラの濃い登場人物たちが右往左往するブラック・ユーモア満載な一本。
話が二転三転と転がっていく様も面白く、シェイクスピアのコメディ作品を彷彿とさせました。今公演で、1番、ボク好みな一本でした。

・「ウェストご夫妻の偏り尽くした愛情(風)」
隣人たちが、引っ越してきた夫婦のパーティーを開くものの、それが飛んでも展開に。ノーテンキなノリで殺人にまで発展するブラックすぎるコメディ。
実は以前の公演でも同じ演目を観ているのですが、今回はキャストが一新。年齢層が若くなった分、学芸会的ソフトなチープさが破天荒すぎるストーリーとマッチ。個人的には、以前の公演版よりも楽しめました。



【赩(きょく)の章】
・「俺はアンドレイ・チカチーロ」
稀代なシリアルキラーであるチカチーロの半生を舞台上で再現するという今回、1番、力を感じた作品。
青年期と成人期を別の役者が演じる事で、リアルタイムである演劇の時間的飛躍を表現。尚且つ、シリアルキラーへの覚醒まで演出している手腕に脱帽&興奮。
何が怖いって、全然、似てないと思っていたチカチーロ役の役者さんがクライマックスでソックリに見えた事。もう最後にはチカチーロにしか見えなくて唖然としました!!
ちなみに、『ロシア52人虐殺犯/チカチーロ』というテレビ映画もあるんですが、その中のチカチーロより似てました!!
ただ、犯行シーンは事前に撮影された映像を流す演出がされているんですが、その映像がチープ過ぎて!! 職業柄、この映像のチープさがハナにたついて、残念すぎました。これなら無い方が良かったレベル。

・「切り裂きジャックたるために」
チカチーロに続き、実際の連続殺人事件である切り裂きジャックを題材にした一本。なんですが、実録路線で見せたチカチーロと違い、自殺したジャックが登場……というキチガイ過ぎる設定!!
しかも、「切り裂きジャック事件は被害者は5人と言われているが、自分の犯行は4人だけ。5人目の犯人を探して、切り裂きジャックの後継者にする」という架空裁判テイスト。
並んだ被害者の売春婦たちと犯人候補生たちがジャックの前で犯行を再現していくという、これまたトンデモ展開に。
とにかく、先の読めないストーリーがスリリング&ドラマチック!!

・「ウェストご夫妻の偏り尽くした愛情(闇)」
上記の「風」編と同じストーリーながら、キャストと演出を一変。オフビートというよりゾンビのような演技と薄暗い照明でダークなトーンに。
ただ、演出の意図がさっぱり解らなかったです。要は、このバージョンを作った意味が解らなかったですね。
元の脚本が良かっただけに悪変させてる印象でした。ボクが「風」バージョンに引っ張られてるのか、「風」バージョンを観てないと楽しめないような気がしてしまいます。
今公演で1番、つまらなかったです。


以上の6本立てになりました。
舞台ならではの生々しさがダイレクトに伝わってくる公演ですので、舞台好きにも無条件にオススメできます。

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6/11『ゲティ家の誘拐』

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『ゲティ家の誘拐』を観賞。

巨匠=リドリー・スコット監督による実録誘拐事件をサスペンスフルに映像化。

1973年のローマ。美少年が男たちに誘拐される所から始まります。誘拐されたのは、”世界一の大富豪”と言われた石油王のジャン・ポール・ゲティの孫。身代金は1,700万ドル(当時のレートで約50億円)。……というタイトル通りなお話。

しかし、この事件でセンセーショナルだったのは、ゲティさんが「金は一銭も払わない」と発表した事。実はゲティさん、超ドケチだったんです。それでは困ると誘拐された少年の母親はゲティさんに「金を出せ!」と訴えるんですけど、取り合ってもらえません。
そこで、ゲティさんの依頼を受けた元CIAの男とお母さんが犯人グループと交渉にあたるエピソードと犯人グループの元で監禁されてる少年のエピソードが同時進行で展開。

本作の脚本を担当したデヴィッド・スカルパ
「最も難しかったのは全体のバランスで、スリラーとシェイクスピア的な家族ドラマの間を行ったり来たりする構造をめざした」
との事。おっしゃる通り、重厚な語り口の中で、ハラドキな緊張感あふれたサスペンスになっておりました!

さらに、本作には製作時のドタバタも話題になりましたね。2017年12月に全米公開が決まった状況で、10月にゲティさん役のケビン・スペイシーのセクハラ問題が発覚。急遽、10億円かけて、クリストファー・プラマーを代役にして再撮影。わずか9日間でゲティさん出演部分の追加撮影を行い、何とか公開に間に合った訳です。そんな事件があったにも関わらず、むしろ、プラマーは88歳でのアカデミー賞の演技部門ノミネート者で歴代最高齢記録を更新。

急な代役を頼まれたプラマーは
「撮影日数は限られていたが、ありがたいことに私は記憶力が良く、次から次へと撮影を進行してくれるので、連続して演技ができ、(中略)全体の流れがスムーズで助かった」
「リドリー(本作のリドリー・スコット監督)はビジョンがはっきりしており、頭の中ですでに編集をしているので何度もテイクを重ねる必要がなかった。」
と謙虚に語ってます。

お母さん役のミシェル・ウィリアムズ
「朝、撮影現場に着くと、『さあ仕事が始まるよ。カメラはこのアパートの至る所に隠されている。最初はここから始めてもらって、終わりはあそこかな。リハーサルもカメラを回しながらやろうか?』って具合に仕事を進めることが多かった。気に入ったカットが撮れると、『さあ、次はどこだっけ?』ってどんどん先へ進めて、1~2テイクで終わらせちゃうの!」
リドリー・スコット監督の現場を語ってます。

当のリドリー・スコット監督は
「映画会社がケビン・スペイシーをゲティ役に推してきた時は、うーんと思ったが、クリストファー・プラマーはイメージどおりだった。」
クリストファー・プラマーのおかげで全然違う映画になった。スペイシーのゲティはひたすら冷酷なだけだった。しかしプラマーには心の奥に隠した温かさ、寂しさ、人間味がある。ユーモアもね。おかげで、本当に哀れな男として深みが出た。」
と本当はプラマーが良かった発言をしてるんです。

ちなみに、元CIAのゲティさんお抱え調査員を演じるマーク・ウォールバーグにも一悶着あったんです。ウォールバーグは追加撮影に対して、通常のギャラである150万ドル受け取っていたんです。でも、お母さん役のウィリアムズのギャラは1000ドル以下。スコット監督はほぼノーギャラ。そんなギャラ格差事件が明らかになり、ウォールバーグはヤバいヤバいと、追加撮影分のギャラ=150万ドルをセクハラ撲滅運動「Time's Up」の基金に寄付。何とか収まりました……という。
そーゆーうるさ過ぎるバックボーンを知ってみると、やたらに感慨深い一本になっておりました。


『ゲティ家の誘拐』
★★★☆☆
星3つ

※写真は特殊メイクごてごてのケビン・スペイシー版と代役のクリストファー・プラマー版。
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6/10『ビューティフル・デイ』

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ビューティフル・デイ』を観賞。

極端な説明を排したハードボイルド調な作風とシリアスな展開。突然のブラックなユーモラス。ジャンルも観客の感情もゴッチャゴッチャにする孤独な男の戦い映画。

主人公は闇のお仕事請負人。上院議員から「娘を売春宿から救出してくれ」というシンプルな新規案件を引っ提げ、完璧な仕事を淡々とこなしていく主人公。
チンピラたちをハンマーで野蛮に殴り殺して、見事、上院議員の娘を救出……と思ったら、突然、行き先不明の逃走劇に発展!! 状況は混乱を極め、観る者を飽きさせません!

さらに、主人公には軍人時代に見た陰惨な風景のトラウマや子供の頃に虐待を受けたトラウマもあり……というトラウマの総合総社のような人物。ゆえに、フラッシュバックする過去&妄想の中で己と戦っているんです。
とにかく、細かい説明は抜きだぜ!というドンブリ男飯のようなストーリー展開。とか言いつつ、本作のリン・ラムジー監督は女性。実はきめ細かい演出をさりげなく味付け。
老いた母親と二人暮らしという主人公のバックボーン。そんな描写の中には、ボケが始まっているらしい母親とのコミカルなヤリトリ。そこはかとない愛情を垣間見る事が出きます。

主人公を演じるのは、3度のオスカーにノミネートされた割りに、『インヒアレント・ヴァイス』ではヒッピー探偵、『教授のおかしな妄想殺人』で完全犯罪にとりつかれた大学教授と、もはや怪演という言葉がシックリくるホアキン・フェニックス。本作でも、だらしないながらも筋肉質な肉体に、自殺願望丸出しで、もはやサイコパスにしか見えない風貌。なのに、少女を救おうとする複雑が具現化したようなキャラで、彼の魅力が炎上しています。見事にカンヌ国際映画祭で主演男優賞を授賞!!

レディオヘッドジョニー・グリーンウッドによるホラー映画のような音楽。監督の元カレで監督いわく「阿吽の呼吸」と語るカメラマンのトーマス・トウネンドによるエッジの効いた映像。そして、リン・ラムジー監督のスピーディーな脚本……と様々な要素が良い方向へ転がり、独特な空気を醸し出す傑作です!!

パンフは、監督&ホアキンのインタビュー、コラム記事、さらに原作との変更点など、様々な角度から本作を紹介。本作のファンなら買いの一冊。


ビューティフル・デイ
★★★★★
満点5つ星

6/10『ファントム・スレッド』

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ファントム・スレッド』を観賞。

1950年代のロンドン。舞踏会に着ていくような豪華絢爛なドレスを作る鬼才のデザイナーを主人公に、男女のイビツな恋愛関係をサスペンスたっぷりに描いたのが本作。

主人公は、ドレス作りの鬼才のデザイナー……というか、もはや奇人レベルの変り者。単調で静寂な日常の中でドレス作りを淡々と進めていのが彼のやり方。
そんな男が、テーブルにぶつかるレベルで仕事の出来なさそうなウエイトレスの女と出会うんです。そこからは、電光石火の勢いで、我が家へ招き入れ、共同生活が始まります。ですが、この女が抜群に空気を読めない女だったんです。
皆が感じた事あるであろう、空気読めない奴の空気を読まない行動って、かなり恐怖ですよね! それをサスペンスとしてアクセルMAXで描いたのが朝食のシーン。

毎朝、静かな朝食の場でデザイン画を描き溜めるのが、デザイナーの習慣。そこで、カチャカチャ音を発てながら朝飯を食って、デザイナーの集中力を削ぎ、イラつかせます。
挙げ句、デザイナーの身の回りの世話をする妹に「あの人、神経質なのよ」と言い放つ有り様! ただ飯を食うだけのシーンで、こんなにヒヤヒヤするのか!!
※この映画、コメディじゃないですからね!

空気は読めないなりにも、私のことを愛して欲しい精神に従順な彼女は乱暴すぎる素直をスパークさせていきます。次々と「だから止めとけって!」と思う行動を繰り返していくんです。
「これじゃあ、デザイナーも愛想尽きるぜ」と思っていたら、後半、まさかの流れに!!
常気を逸した行動に、もう目が話せない展開に!

本作で神経質すぎるデザイナー役を演じるのは、やり過ぎ役作りで有名なダニエル・デイ=ルイス
実在の脳性麻痺の画家を演じた『マイ・レフトフット』では車イスで生活。モヒカン族を演じた『ラスト・オブ・モヒカン』では、6ヶ月間かけてサバイバル術を習得。『ボクサー』ではプロボクサーと週3回のスパーリングを3年続けた……という、仕事熱心なお方。本作でも、ニューヨーク・シティ・バレエ団の衣装監督に弟子入り。裁縫から立体裁断、寸法の仕方などを習得。最終的には、ブランドもののスーツを複製できる腕前に。
そんな安定の演技力で3度目のアカデミー賞主演男優賞を授賞。

前半の豪華絢爛ながらも、おっとりした展開は多少、退屈。ですが、そこを活かして、エッジを効かせた後半のサスペンスは見事。ヒッチコックの『レベッカ』を意識したという作風でアカデミー賞作品賞も授賞してます。

パンフはスタッフ&キャストのインタビュー記事は少なめではあるものの、映画が出来るまでを追って紹介しているので、バックボーンを知るには打ってつけの一冊でした。

ファントム・スレッド
★★★★☆
星4つ

6/9『万引き家族』

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万引き家族』を観賞。

万引きする家族のお話です。万引き、良くない! でも、万引きのシーンはそんな多くないんです。家族のシーンはいっぱいです。
そんな家族が、親に虐待を受けているとおぼしき女の子を連れて来ちゃう。万引きですよ! 要は、家族を万引きしてくるんですよ!

で、観てたら徐々に、家族のように生活している一家が、実は血の繋がりのない他人って事が解ってくるんですね。
キャストは疑似パパ役にリリー・フランキー。疑似バアちゃん役に樹木希林。疑似ママ役で安藤サクラ。近所の駄菓子屋のオヤジ役に柄本明。……と、オフビート芝居な芸達者揃いで、ドキュメンタリー畑の是枝監督のリアル思考を満足させる面子。ゆえに、社会派ヒューマンドラマの本作にコミカル&ユーモラスを与え、見易くしてくれてます。
そんな中、オーディションで選ばれた演技初挑戦の子役の2人がナチュラル芝居で主役を演じています。

リリーさん演じる疑似パパは、「お店にある物はまだ人の物になってないから盗んでOK」という俺ジナルな教育方針の持ち主。ジリ貧の家計を助ける為、子供たちに高等万引きテクを教えてるんです。
その教育方針を素直に信じてた主人公の少年でしたが、ある事をキッカケに万引きが犯罪だと自覚。罪悪感&戸惑いがスパークして、行き先不明のストーリー展開となって、後半、ゴロゴロ転がっていきます。そして、全くの他人と思っていた家族がどのように疑似家族化したのか? そこから彼らの関係が明らかになっていきます。

本当の家族の元を離れたときに着てた服を小滝あげするシーンや、家族で花火を見上げるシーンなど、日本の土着文化感も交えつつ、絵空事っぽい画作りやマンションに囲まれたボロ家のロケ地など、寓話風味な仕上がりに。

そーゆー描写のせいかは知らないですけど、カンヌ映画祭で21年ぶりの日本人監督によるパルムドール(最高賞)を授賞した本作。

パンフはパルムドール授賞前に作られたせいか、その話には触れてないのですが、監督の着想や各スタッフ&キャストのインタビューにより、独特の現場での是枝演出が垣間見える内容。様々な読み解きのできる本作へのコラム記事も良かったので、オススメです。


万引き家族
★★★★☆

5/31『デッドプール2』

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デッドプール2』を観賞。

前作にも増して悪ノリ、アクション、ストーリーがボリュームアップした続編。まさか、ブラック・ジョーク満載のアクション・ヒーロー映画で泣いてしまうとは……。

前作では、運命の女性に出会った主人公のデップー。しかし、今回のデップーは次のステップ→家族作りに憧れるんです。しかし、ソッコーでその夢を絶たれたデップーは絶望。死ないのが彼の特殊能力なのに自殺にチャレンジする程(勿論、死ねません)。所が、たまたま出会ったポッチャリ系怒れるティーンなミュータントの少年と出会い、彼を更生させようと思い立つんです。しかし、そんなタイミングで未来からやってきた戦闘ソルジャー=ケーブルが登場……。

後半戦はケーブルの目的が明らかになり、捕まった少年の救出作戦と、さらなる強敵の登場、デップーが一緒に戦う仲間たち=Xフォースを結成……と目まぐるしいストーリー展開。

今回も様々なメタファーやパロディ満載。とりあえず、観客に話し掛けるメタ描写、「007」シリーズのパロディなオープニングが爆笑なんですが、1番はやはり敵キャラのケーブル。『アベンジャーズ』では最大の悪役サノス役のジョシュ・ブローリンが演じてるんですね。これは、サノス対デッドプールの夢のコラボです!!

その他、新キャラ続々にも関わらずのバランスの良さ。BGMの選曲センス。挙げ句に、デップー役のライアン・レイノルズの過去作やデップーの黒歴史まで茶目っ気たっぷりにイジり倒しています。そこまでして、1作目や「X-MEN」シリーズを観てない人も楽しめる親切設計。

パンフは、スタッフ&キャストのインタビューを元に各コンテンツを紹介する豪華仕様で、おふざけ無しの真面目な作りで、読み応えたっぷり!
裏話を知りたい方へオススメの1冊。


デッドプール2』
★★★★★
満天5つ星

『アメリカン・アサシン』

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『アメリカン・アサシン』を観賞。

冒頭からビーチで恋人にプロポーズ。満面の笑みの元、OKをもらい、死亡フラグが立った瞬間、機関銃をそこら中に撃ちまくるオジさんたちが出現。イスラム過激派の乱暴な無差別テロにより、フィアンセになりたてホヤホヤの恋人を失う主人公。
そこから、根暗野郎にトランスフォーム。電光石火の早さで、復讐の為、殺人スキルを猛特訓。それが転機となり、CIAにスカウトされるというサクセス・ストーリー。
ネイビーシールズ出身の鬼教官による地獄特訓を受け、晴れて仲間入り。鬼教官の指揮下の元、初ミッション参加。所が、プルトニウムを盗んで、核兵器の製造を目論む……という景気がいいにも程があるテロリスト集団に遭遇。さらにそのバックには、鬼教官の元弟子で、今は残忍テロリストへ華麗な転職を果たしたラスボスの存在がチラ見え。核のカウントダウンを止める為、主人公と鬼教官が奔走するヒヤヒヤ展開へ。

どーも過去のスパイ・アクション映画からの既視感ある設定だらけなんですが、原作は2011年のヴィンス・フリンさんの書いた人気シリーズのミッチ・ラップ シリーズ。テレビドラマ『24 -TWENTY FOUR-』のコンサルタントを務めたお方。その為、「スパイ」「CIA」「テロリスト」の単語が出てくる映画が好きな人には確実に楽しめる内容です。

主演は『メイズ・ランナー』シリーズの濃い割りにファニーな顔立ちが勇ましいディラン・オブライエンくん。とにかく、アクション・シーンがキレッキレ。
そんな若造に負けるかと鬼教官を演じる元バットマンマイケル・キートンも引き締まったボディで、現役バリバリ感なフェロモンを撒き散らしています。

上司の命令を無視するスタンドプレーが結果的に上手くいき、調子に乗りまくる主人公。中東のテンプレなテロリスト像。そういった、アメリカンに歯向かう者への報復には手段を選ばない大味な展開などを受け入れられるかで、作品の評価が変わってくると思います。良くも悪くもトランプ時代のスパイ映画。


『アメリカン・アサシン』
★★★☆☆
星3つ

【観劇】『虹のかけら ~もうひとりのジュディ』

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スパイラルホールにて、Keiko Toda 60years Anniversary『虹のかけら ~もうひとりのジュディ』を観劇。

本作は戸田恵子の60歳を祝い、盟友=三谷幸喜が構成・演出を手掛けた一人芝居。

本作は、映画『オズの魔法使』のドロシー役でアイドル的人気を博したミュージカルスター=ジュディ・ガーランドの生涯の実録エピソードで構成。それをジュディ・ガーランドではなく、ジュディの付き人&専属の代役として長年、寄り添った「もう一人のジュデイ」ことジュディ・シルバーマンの目線で描いてる所がミソ。

戸田恵子が、シルバーマンの日記を朗読。少女から大人の女性まで演じ分ける戸田恵子の朗読芝居もさすがなのですが、さらに、ジュディ・ガーランドが出演したミュージカル映画の楽曲まで熱唱。朗読と歌&ダンスが交互に展開していく様は、思いの外、スリリング!! しかも、ミュージカル好きじゃなくとも、聴いたことあるであろう名曲揃い。

栄光の影に隠されたジュディ・ガーランドの破天荒な私生活、没落していく人性。そして、シルバーマンのガーランドに対する愛情と憎しみの入り交じった感情が浮き彫りになっていく……というストーリーもグッときます。

それだけでも、豪華コラボなのですが、ピアノ&ベース&ドラムの生演奏つきの贅沢仕様。

『世界でいちばん長い写真』

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『世界でいちばん長い写真』を観賞。

消極的な少年がパノラマ写真機を通して、様々な人々と関わり、成長していく一夏の思い出=童貞映画!

この映画、主人公の従姉の結婚式のシーンから始まるんです。主人公と従姉の会話から回想シーンになって、結婚のキッカケが語られていく。それは、主人公が高校生の頃の一夏の話なんです。
ボンクラ高校生の主人公が、従姉の働く古道具屋で古めかしいカメラを発見。調べてみると、改造パノラマ写真機と解るんです。そこで、色々と撮ってみたり、研究したりしている内にハマってくんです。
それが周りの同級生たちの知る所となり、話がどんどん膨らんで、「学園祭の全校生徒の集合写真を、このパノラマ写真機で撮ろう」となっちゃう。
これは、主人公にとっては一大事なんですよ。なぜなら、主人公は消極的を通り越してコミュ障レベル。なのに、リーダーに祭り上げられるという。
そんな中で、今まで関わる事のなかったキャラの濃い同級生たちと実行委員をやって、甘くて苦い青春を経験していくんですね。

1つ言っておくと、実行委員の中に科学部の男の子が出てくるんですけど、爆笑です。「こーゆー変なしゃべり方する奴、いたよね!」っていう抜群に愛嬌のある童貞キャラなんですよ! 無表情で、ちょっと強がってる風に話す感じがツボです。

というか、ドキュメンタリーかなって思っちゃうくらい、出演者の皆さん、みんな芝居が上手いんですよ。すごい自然で。それに合わせて、前半は手持ちカメラを多様してて、やり過ぎてて、ちょっと気持ち悪くなるんですけど。

特に、写真部のツンケンした部長役の松本穂香ちゃんがすごく良い!! 学園モノに有りがちな「成績も良いしっかり者キャラ」なんです。いつも主人公を叱ってる優等生。で、なんなら主人公に思いを寄せてたりする訳なんですが。
そんなテンプレ・ヒロインが、クライマックスであんなに泣ける行動に出るとは思いませんでしたわ! いざ、集合写真を撮るってタイミングで走り出したときは、鳥肌が立ちました。もう大号泣ですよ!!


『世界でいちばん長い写真』
★★★★☆
星4つ

『馬の骨』

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『馬の骨』を観賞。

夢破れ自分を見失ったおっさんと地下アイドルからシンガー・ソングライターを目指す女の子のロッキー系ヒューマン・ドラマ。

そもそも、元祖オーディション番組「イカ天」で審査員特別賞をもらったロックバンドの名前が「馬の骨」なんです。主人公のおっさんは、「馬の骨」のボーカルだったんですけど、今や金ナシ夢ナシな日雇い警備員。この主人公が抜群にボンクラで、同僚の若いアンちゃんにバカにされ、仕事放棄。走って逃げたと思ったら、ワンカップ片手に道端で寝ちゃってるシーンなんかもう泣けてきます。

また、もう一人の主人公は、地下アイドルからシンガー・ソングライターを目指すヒロイン。絶妙に歌が下手で、発作的にアイドルグループを辞める展開は絶望的でしたが、クライマックスのライヴ・シーンではまるで別人。演じる小島藤子は半年間ギターの特訓を受け、本番に挑んだとの事。透明感のある歌声を披露。

そんなヒロインに出会った事で、主人公はバンドの再結成というミッションにチャレンジ。ヒロインは、歌&ギターの特訓を重ね、ライヴ成功にチャレンジ。2人のチャレンジが同時進行で交差する中、主人公を恨む元同僚やヒロインに近づこうとするアイドルオタクなど、スムーズには行かないスポ根展開。

血を流しながらライヴ・ハウスへ向かう主人公に感涙!! 本作の監督&脚本&主題歌の作詞作曲&出演を兼ねる桐生コウジは自伝的な物語を見事、エンタメ映画として昇華。そう、今作は『ロッキー』であり、『ライムライト』でもあるんです!!


『馬の骨』
★★★☆☆
星3つ

『ニンジャバットマン』

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『ニンジャバットマン』を観賞。

ワーナー・ブラザースによるDCフランチャイズにより、クールジャパンとバットマンが奇跡のコラボ。

集められたメンツが凄いんです。アニメ版『ジョジ』のポップなOPを手がけた制作会社「神風動画」の水崎淳平が監督。『アフロサムライ』の原作者である岡崎能士がキャラデザイン。チャンバラ活劇が見せ場である劇団新感線の座付き脚本家である中島かずきが参加。この豪華すぎる日本クリエイターたちが圧倒的技術力と悪ノリをスパークさせたのが本作なんです。

バットマンが殺さずの誓いの元、過去の悪党たちが収監されたアーカム精神病院。その中の悪党が開発した転移装置により、バットマンと悪党たちは戦国時代の日本へタイムスリップ! 戦国日本でカルチャーショックを受けるシーンは爆笑。さらに、バットマンより2年も先にタイムスリップしていた各悪役キャラたちは、各地の戦国大名たちと入れ替り、打倒バットマンなクレイジー過ぎる兵器を用意しているんです。その後も大風呂敷は広がる一方。あと出しに次ぐあと出しで、ハチャメチャにも程があるクレイジーな展開はやり過ぎレベル。

そして、アメコミ・ファンでも頭がパンクしそうな登場キャラの多さも圧巻! 今まで、映像化では省略されてきた原作ファンには感涙のサブキャラたちが一挙登場という派手なサプライズ付き。ジョーカー、ハーレイ・クイン、ポイズン・アイビー、トゥー・フェイス、ベイン、ペンギン……という実写映画登場キャラは勿論、デス・ストロークゴリラ・グロッドまで登場。バットマンサイドもロビン、レッドロビン、ナイトウィングなどが登場。もうキャラの洪水ではあるんですが、各キャラの説明はなし。雰囲気で善玉or悪玉を見分けてねという茶目っ気の元、キャラ以上に盛り沢山なストーリーへ注力。常識を逸脱した唖然のクライマックスへひた走ります。



『ニンジャバットマン

★★★☆☆

星3つ

『ランペイジ 巨獣大乱闘』

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ランペイジ 巨獣大乱闘』を観賞。

怪獣映画ファンと巨大生物ファンと両方のファンのハートをカツアゲする巨大生物のプロレス映画。

去年、公開された『キングコング 髑髏島の巨神』はモンスターバースというシリーズで、今後、『GODZILLA ゴジラ』のゴジラキングコングが闘う『Godzilla vs. Kong』という作品の製作が決まってます。そこで、怪獣王対決が始まる前に、巨大生物対決を実現させてやれ!というのゴキゲンな掛け声が聞こえてきそうな映画が本作。

遺伝子操作により、キングコングのようにデカいゴリラとオオカミ、その2匹より更にデカいワニが登場。街中で三つ巴の闘いを繰り広げるという、まるで中学生が考えたようなストーリーをまんま映像化。

3匹の巨獣なんて人類には手も足も出ないと思いきや、マッスルボディの持ち主、ドェイン・ジョンソンが霊長類学者という嘘にも程がある設定で登場。しかし、そこはただの学者な訳はなく、元陸軍特殊部隊&元国連の反密猟部隊というセガールのような肩書き付き。巨獣たちとガチで対等に闘うギャグみたいなクライマックスは必見です!

巨獣たちの登場しない前半は、DNAがどーしたとか、遺伝子がどーしたとか、ロック様の何もない日常とか、巨獣と優しきマッチョが出来上がっちゃった言い訳のよーなシーンが続くので退屈なんです。でも、中盤で巨獣たちが街へ到着するので、ご安心下さい。

フリン・ピクチャー社の創始者で、本作を製作するボー・フリンは
「巨獣たちを夜のシーンや雨や曇り空の下に隠すようなことはしたくない。映画全体をとおして、変異し乱闘する彼らを陽の光に照らし出したい、彼らが引き起こしている破壊を青空のもとに映し出したいと思った」
と言う解ってる人物。そのゴージャスな発言の通り晴天の中、暴れまくる巨獣たちには大興奮。

細かい設定を考え始めたら逆に負けな巨獣エンタメ大作を観て、ゴジラキングコングの闘いに夢を馳せて待ちましょう!!


ランペイジ 巨獣大乱闘
★★★☆☆
星3つ

『兄友』

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『兄友』を観賞。

少女マンガを実写化した学園ラブ・コメ。

先月まで放映されていたドラマ版は主人公の2人が付き合い始めて以降のエピソード。本作はその前談。そう、この2人、本作の序盤で普通に付き合っちゃうんですよ!
えっ?! 普通、ラブコメって、2人が付き合うまでのお話じゃないの? そんなんで、その後の展開は大丈夫? ……って思いますよね!?
そこが、本作の主題なんですよ! 2人とも付き合い出したは良いけれど、ウブ過ぎて手も繋げない。それ所か、お互いの下の名前も呼び合えない。もうピュアを通り越してコミュ障な域。

お互いの為を思っての行動が絶妙な裏目に出てしまい、2人共、疑心暗鬼モードへ突入。そんなタイミングで、お互いの恋敵が現れて……という悪い事は重なる展開へ。付き合うまでのハッピーな妄想の先で待ち受けていた人間不信レベルな現実とのギャップ映画なんです。

ドラマ版と同時撮影だったという事もあり、テレビ向けのライトなノリがノーテンキに観れる作風で、もはや映画とは呼べない代物に。そん中で全力コミカルの横浜流星くんと松風理咲ちゃんが微笑ましかったです。

周りのキャストも、松岡広大くん、古川毅くんとイケメンたちが乙女のハートをカツアゲ。声優の福山潤による恋の指南シーンもオプション追加で、腐女子のハートまでカツアゲですわ!
しかし、オジさんは何も奪われる事なく、ただただ苦悩をつづった自己満モノローグに吐き気さえ感じましたわ。映画みたいなゴミ!


『兄友』
☆☆☆☆☆
星0つ

『ばあちゃんロード』

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『ばあちゃんロード』を観賞。

映画美学校のプロットコンペティションで最優秀賞を受賞したプロットを元に製作されたのが本作。

主人公は結婚が決まったヒロイン。その事を疎遠になっている祖母へ報告に行くと、歩けなくなって、施設で気弱な偏屈ばあちゃんに再会。そこで、子供の頃のばあちゃんっ子魂に火が着き、「バージンロードをばあちゃんと歩く」という泣かせる目標を掲げるんです。

で、毎日、施設へばあちゃんに会いに行き、バージンロード・ミッションのクリアを目指すというストーリーになっております。

一見して、テレビのドラマ・スペシャル枠っぽいのですが、流石の貫禄を見せるのが、ばあちゃん役のベテラン:草笛光子

ばあちゃん孝行街道をひた走るヒロインがフィアンセと揉めたり、ばあちゃんのメンタル改革に乗り出したりというドラマもあるんですが、後半は、もうばあちゃんの映画。表情のみで、孫への思いや自らの体への不安を表現。

ちなみに、車イスで散歩するシーンはオール・アドリブとの事。外出にウキウキする感じで喋り倒し、それに答えるヒロイン役の文音ちゃんもグッド!

メガホンを取った青春映画で秀作を生み出し続けている篠原哲雄監督。エンタメ映画としては弱いのですが、なんて事ないよーなストーリーをロケ地の美しさ、ヒロイン役の文音ちゃんの凛とした表情など、良い所をより綺麗な演出でまとめ上げていました。


『ばあちゃんロード』
★★☆☆☆
星2つ

『四月の永い夢』

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四月の永い夢』を観賞。

恋人を亡くした主人公の日常を静か&丹念に描いた、いかにもインディーズな邦画。

冒頭から、かなり丁寧に主人公の女性の日常が描かれていくんです。すごーく丁寧に一つ一つの事柄が描かれていく。定食屋でのバイト。図書館へ行ったり。映画館へ行ったり。

決して解りやすい映画ではないんですが、ちゃんと観てると、徐々に彼女の元カレが死んだ過去が解ってくるんですね。

本作の潔いというか、面白いのは、安易に回想シーンなどで死んだ彼氏とのエピソードを語るよーな事はしないんです。むしろ、元カレがどんな人物で、主人公が具体的に何で悩んでいるのかも語られない。
そんな中、バイト先の常連客の青年から言い寄られてもハッキリとした態度を取らない。友人が仕事を紹介してくれても断る。 なんで?! どーして?! 一体、どんな彼氏で、どんなエピソードがあったの?!

で、この映画の上手い所は、そのヒントっぽいものが全編に散らばってるんです。名画座で1942年公開の『カサブランカ』という映画を観に行ってたり、主人公の部屋にやたらと古めかしいデザインの物が多かったり。もしかして、それは死んだ彼氏との? なんて考えると、メチャクチャ過去に囚われてるよーに観えてくるから不思議ですよ!

そして、主人公の元に届いた死んだ彼氏からの手紙により、過去をふっ切る旅が始まるんですね。

透明感&凄く繊細な表情で、過去を引きずりマクリスティーな主人公を演じるのは、朝倉あきが素晴らしいんです。なんなら、ちょっと少女っぽさも醸し出してますからね!

いかにも日本より外国の芸術系映画祭で栄える作品だと思っていたら、日本での公開前に、世界四大映画祭の第39回モスクワ国際映画祭のメインコンペティション部門に正式出品。国際映画批評家連盟賞とロシア映画批評家連盟特別表彰のダブル受賞を果たしてました。

エンタメ映画のような見せ場がある訳ではないですが、静かに一人でしっとりムービーを観たい方にはオススメの一本!!


四月の永い夢
★★☆☆☆
星2つ