ユンギボの映画日記

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【観劇】Voyantroupe第4.5回本公演『Paranoia Papers ~偏執狂短編集ⅣΣ~』【橡(つるばみ)の章】&【橡(つるばみ)の章】

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本日、Voyantroupe第4.5回本公演『Paranoia Papers ~偏執狂短編集ⅣΣ~』の「橡(つるばみ)の章」&「橡(つるばみ)の章」をサンモールスタジオで観劇。
誰に頼まれた訳でも、誰かに許可をもらった訳でもないのですが、ストーリー的なネタバレはしないように覚書を残します。



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【橡(つるばみ)の章】
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①「こちら側の世界―Sabbath―」
1本目からパンチが効いてます。何故なら、本作が裸祭りだからです。何かの儀式という事は解るのですが、それが何の儀式やら明確な説明はありません。もはや、ここまで説明ないと、あーだこーだ言う事さえ不粋な気がします。何なんですかね、これは?
ただ、もうビジュアルの演劇といった印象。映像だとキスシーンや濡れ場シーンを観ても、大したインパクトは無いですよね。それが、演劇となると違います。目の前で生身の人間がキスをする、裸になる……って、思った以上の破壊力があります。
それを受けて、映像だとパンチ不足でも、世の中には、そういった性質を活用した様々な演劇があります。寺山修司みたいに文章的セリフの妙を見せる演劇。セリフ回しと舞台装置が役者の熱量とコラボする唐十郎。圧倒的な芝居圧力とビジュアルの絢爛さで見せる蜷川幸雄。或いは、役者の動きや言葉遊びでテーマをメタファーでコーティングした野田秀樹
それで言うと、本作はビジュアルの演劇なんです。モチーフやセットなどのビジュアル力。その中で役者が、まさに丸裸になる生々しさ。これぞ、演劇力という見ちゃいけないものを見てしまった感。映画『アイズ・ワイド・シャット』の儀式のシーンを生で観たようでした。



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②「アーサーシャウクロスは戦いたい」
本作は、ベトナム帰還兵でPTSDを患い、連続娼婦殺しを犯したアーサーさんのお話。物語は子供時代のアーサー少年の話からスタート。叔母さんからの虐待&母親の愛の喪失。それらが、大人になったアーサーにどのように影響を及ぼすのか?
時間は一気に飛んで、戦時下のベトナムベトナムの女性たちをレイプするアメリカ兵たちは完全に道徳観念を崩壊させています。
そんなベトナムでの地獄絵図と帰還後のテレビでの討論番組が交互に描かれ、ベトナムでの帰還兵たちの行いをジャッジしていく訳です。ウーマンリヴ活動家たちに責められる帰還兵たち。
討論番組シーンはプロジェクターにより投影されている映像演出で見せていくんですが、この映像がとにかく雑。最初は、投影番組という設定さえ飲み込めませんでした。本公演で一番、不満が残る箇所でもあります。
アーサー役は男優なんですが、アーサー少年役に女優をキャスティングしてるのが絶妙。子供時代をファンタジックに描き、そのギャップでベトナム時代を生々しく感じられます。また、夢うつつなシーンでアーサーとアーサー少年が語り合う事も可能にしており、自問自答と迷走を表現。
何やらメタっぽい描写も多々あるのですが、正直、全ては理解できませんでした。さらに、意図的かもしれないのですが、ダレ場が多く、集中力が切れてしまいました。
演劇なので、舞台セットには限界があるはずなのに、逆に創造力を刺激。映画『7月4日に生まれて』や『キリング・フィールド』辺りの泥臭い路線のベトナム戦争がフラッシュバック。脳内合成されながら見てました。



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③「 日本に置き換えております<ナポリの豊年祭のこと<「悪徳の栄え」より<マルキ・ド・サド著 」
マルキ・ド・サドの「悪徳の栄え」が原作という事で観ながら、あぁ、そう言えばそーゆー話だったな……と思いながら観劇。
完全に集中力が切れて中で始まったのが本作。
話はとうとう満州ときた。ヨーロッパ的ビジュアル、ベトナムアメリカを描き、3本目で満州というビジュアルチェンジはオムニバスだから楽しめる良さ。集中力もやや回復。
貴族たちによる、残虐遊びとそれに巻き込まれた人々は、一周してユーモラス。
中でも、普段は清楚なお嬢様キャラだけど、人が残虐な目にあってるとエクスタシーを感じるという、このジャンルを好きな人間なら大好物の人物が登場。エクスタシーが残虐描写が共にエスカレートしていくコラボ技にテンション上がりまくります。それだけでも大分、滑稽でコミカルなんですが、さらに周りの人間も巻き込まれていく不条理な笑い。誰も笑ってなかったけど、ボクだけ吹き出し笑い連発。不謹慎かもしれませんが、あまりにも勢いのありすぎる悲劇は喜劇的に見えるもので、突然、バタバタ人が死んでいく本作に、思わず笑ってしまいました。
その中で人間の道徳心や残虐性みたいなものを問うような物語だったはずなんですけど、流石に脳ミソの許容範囲がオーバー。疲れてしまい、ほとんど忘れました。ごめんなさい。



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【聴(ゆるし)の章】
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①「千年狐狸精蘇妲己凌遅演義
一本目から豪華絢爛な圧倒的ビジュアル。優美なモチーフと不条理なストーリー。見ているだけで、思わずウキウキしてしまいます。
本作は中国王朝。王と王妃は残忍夫婦。そこへ父を捕虜に捕られた別国の兄弟が父の奪還へ現れるんです。さらに、兄弟の弟の想い人である女性は王妃のオモチャ同様の扱いを受けているという最悪な状況。
誰がどこまでを裏読みしているのか解らない人間不信ドラマ。王妃の残酷趣味がどこまで行くものなのか予測不能なスリリングさも追加!!
王と王妃のチャラチャラした喋り方と堅苦しい他のキャラたちとのギャップはコミカル。それが後半には狂気へと早変わりする演出の巧みさ。
舞台背景ムシでファンタジーとしても楽しめる一本です!!



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②「魔女狩り処刑人PL」
タイトルの物々しさとは裏腹に演劇らしからぬオフビートなセリフ回しでスタート。まるでアドリブのようなノリがリアル。
ただ、そこで行われているのは魔女狩りの審問。もはや我慢不可な拷問を繰り返し、「魔女かどうか」を問うゲンナリ描写。しかも、拷問はエスカレートしていき、その中での人間ドラマが描かれていきます。
お役所仕事のように審問を進める審問スタッフたち。受ける方の魔女容疑者たちは、勿論、命に関わるので絶叫。当たり前のように本作でも舞台は血だらけ。血を出すシーンを集めてるのではないかと思うレベル。そんな中、富豪の娘がワガママ放題。尋問官たちがそれに翻弄されるのが笑えます。
とは言え、ここまで観劇してると、もうビジュアルのインパクトが薄く感じてしまいました。もう目が慣れてきてるとしか考えられないですよ。



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③「向こう側の世界―Missa―」
【橡(つるばみ)の章】での「こちら側の世界―Sabbath―」の姉妹編的な本作。何故なら、登場人物が「こちら側~」での儀式を壁に空いた穴から覗いているという設定(ただ何故か、役者は地面に目をやっているのですが)だからです。
穴を覗く彼氏を止めようとする彼女の、本公演では一番、短いオマケ的な作品でした。
舞台に投影されるプロジェクター映像で隣の部屋の説明をしているんですが、これまた主人公の主観のはずなのに、カメラアングルが俯瞰だったり、横位置だったり、アップで切り出されたりと、バラつきが気になり過ぎて、ほぼ全くといっていい程、頭に入ってきませんでした。すいません。



全作品に共通した話。とにかく、本公演はボリューミーで、残忍とビジュアル力のつるべ落とし的公演。こんな趣味が極端に分かれそうな演劇をここまで全力でやってる公演はあまりないと思うので、演劇初心者から演劇ファンまで、是非とも観劇して欲しい作品ばかりです。いや、もはや体験というレベルのアトラクション感さえあります。これを何回もやってる役者さんたちには頭が上がりませんよ。
ただ、プロジェクター映像と芝居で見せる描写の使い分けが解りませんでした。これを何故、映像で見せるの?という疑問が払えません。
あと、端の席は完全なハズレでした!! ボクの席は上手前方だったのですが、役者さんの立ち位置と被ってしまい、プロジェクターの映像や中央の芝居がほぼ完全に見えなかったです。それだけ役者の動きが少ないという事でしょうか。かなりのシーンを見逃してしまいました。チケット代に見合わないし、ちゃんと見たかったし、結構、ストレスなので下手か中央がオススメです。これから行く人は注意してください!!
文句も書きましたが、やはり結論は「観に行って良かった」と思えましたし、オススメの公演です。