ユンギボの映画日記

ユンギボ(@yungibo)によるあらすじ紹介、ネタバレなしのレビュー、解説・考察をお届け‼

『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(4DX3D)感想

『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を4DX版で再度、観賞して来ました。

前回は吹き替え版3Dで観賞しましたが、今回、期間限定でリバイバル上映してたので、「今だ!!」とばかりに4DXですよ! やはり、4DXは凄まじいですね。
冒頭、頭が2つあるトカゲをマックスが踏みつける描写から、席を後ろからつっつく効果から始まり、ウォーボーイズたちに追われるシーンで下水みたいな所を通ると水しぶきが飛んできます。
そっから車で爆走シーンに入る訳ですが、走ってる間、ずっと揺れてましたよ。かなりリアルな感じで。この作品、ほとんどの時間、車に乗ってるから、自分もホントに車にずっと乗ってたよーな気分でしたね。
途中、嵐の中に突っ込みますね。そしたら、水しぶきですよ。雷が光ったら強烈ライトがピカッ!
クライマックスのカーチェイス・シーンでは画面にかかるくらいの煙がモクモク。

こんなに楽しいエンターテイメントは無いな! ってくらい楽しかったです。
ディズニーランドが三輪車に思えるくらい、アトラクションでした!!
これは、俄然、4DXとの相性バツグンで、むしろ、こんなに向いてる作品はないんじゃないだろーかってくらい良かったです!!!!
大満足!!!!


『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(4DX版)
★★★★★
星5つ

『さらば あぶない刑事』感想

2016年3月11日(金)、シネマサンシャイン池袋で『さらば あぶない刑事』を観賞。

ネットのレビューなんか見てると、『あぶ刑事』を観た人は「タカとユージがカッコ良かったー!」とか言うんですよねー。ボクも言います。タカとユージがとにかくカッコ良かった!!
2人のPVかと思いましたよ。内容なんかメチャクチャで、もう忘れましたけど、とにかくカッコよかった。

今作のタカとユージの2人はもう定年なんですね。登場時は新米刑事だった仲村トオルが2人を追い越して上司になってるんだけど、全然、相手にされないコミカル・シーンがツボでしたね。
でも、それは表向きの関係で、裏では2人の事を想う仲村トオルには泣けました。
で、定年までの3日間の間に事件を解決しないといけないサスペンス要素や、普段は杖をついてるのに、ハイキックがインパクト大の悪役=吉川晃司など見所いっぱいです。

でも、やはり、そもそもの話。タカとユージのカッコ良さを引き出した監督の作風に尽きますよね。
映画が始まってすぐ、何故か...eiga

暗い廊下で柴田恭兵が踊ってる! なんだ、コレ?! でも、その軽やかで色気があってカッコイイ! そこへ独房の中でヤクザから情報を聞き出した舘ひろし登場。
何故かタキシードで外した蝶ネクタイを襟からぶら下げたまま。なんだ舘ひろしの昭和に忘れてきたよーなダンディズムは! そこ必然性は無いがカッコイイ!
冒頭5分で、この調子。その後、デデーンとタイトルが出るんです。オープニングから空撮にタイトル・ロゴ&キャスト・クレジットをまさか平成になって名画座でもない劇場で観れる日が来るとは! 思い出される東映プログラム・ピクチャー臭さに懐かしの涙ですよ!
もう、これは監督のハッタリ宣言ですよ。「リアリティー? 必然性? 知らねーよ! この映画はそーゆー映画なの! あり得ない奴ばかりが暴れる映画なんだよ!」っていうね! それでも、「こーゆー奴いる訳ないじゃん」と思わせない「映画の嘘」が抜群に上手いんですよ。
それもそのはず。まだ東映が破天荒すぎる「映画のウソ」で観客のハートをカツアゲしていた頃、数々の名作を世に送り出していたのが今作の監督=村川透監督なんです。もはやレジェンド的な存在の人なんです。
ボクが小学校の頃、家に帰ると松田優作のドラマ『探偵物語』の再放送をやってて、そのソフトでスタイリッシュなカッコ良さにシビれたもんですよ。その中でメイン監督の1人が村川透監督だったんですね! 村川透松田優作コラボに夢中だったボクは『最も危険な遊戯』『殺人遊戯』『処刑遊戯』の「遊戯シリーズ」や『蘇る金狼』、『野獣死すべし』を体中に浴びて生活してた訳ですよ。
「遊戯シリーズ」はプロフェッショナルな殺し屋が主人公。『蘇る金狼』の主人公なんて三億円事件の真犯人で、その金を元手に大手企業を上り詰めていくという話ですからね。もう村川透と言えば、観客をワクワクさせる為なら、どんな有り得ない事も巧みな「映画のウソ」で信じ込ませる天下一品の「映画のウソつき」ですよ!
で、それらの作品を東映の子会社である東映セントラルアーツで量産してたんですね。その頃のセントラルアーツのカラーは強烈で、その後の様々な作品、製作者たちに多大な影響を与えた訳ですよ。ちなみに、ドラマ版がヒットした後に映画版で続編を制作した先駆けも『あぶ刑事』が最初。
そのセントラルアーツが『あぶ刑事』シリーズも作っており、しかも、当時のプロデューサーである黒澤満さんが本作の製作総指揮も担当してるんです。
撮影も村川監督と組んでた仙元誠三カメラマン。この人も生ける伝説みたいな人で、特に手持ち撮影で有名。松田優作の動き回るアクティブなハード・アクションを手持ちカメラで追い掛け、余す所なくフィルムに収めてました。
今作でも柴田恭兵が敵のアジトへ踏み込んで行くアクション・シーンを手持ちで追い掛けてて、すっげー懐かしい気持ちになりましたよ。テンション上がる、上がる!!
昔からの顔触れにもう一人。脚本家の柏原寛司。この人も『探偵物語』のメイン・ライターの一人で、他にも『傷だらけの天使』や『大都会』から『名探偵コナン』や『ルパン三世』まで様々な伝説的作品に関わってる脚本家ですよ。
監督:村川透、脚本:柏原寛司、製作:黒澤満、撮影:仙元誠三という往年の超超ちょー豪華で濃ゆすぎるメンツがバシッと揃ったのが、本作なんです!
これは、言い過ぎでも何でもなく、このレジェンドたちが今までに生み出した作品群、日本映画界に与えた影響を考えると、彼らの新作を劇場で観れるって事は、日本映画の歴史を目撃するよーなモンですよ!! 事件なんですよ! 幸せ過ぎる。
「昔、流行ったドラマの続編でしょ?」と言って、プログラム・ピクチャーの邦画を観た事も無いエセな自称映画ファンにこそ観てもらいたい作品ですね。日本には、これだけ凄いレジェンド達がいるんだぞ!!
アクションに特化した作品作りをしてきたセントラルアーツらしい、ケレンに満ちた傑作でしたよ!
柴田恭兵が犯人を追いかけるシーンで「ミュージック・スタート!!」と叫ぶと音楽が流れ始め、定年とは思えない猛ダッシュするシーンには驚きましたね! これって『モテキ』じゃん! 『モテキ』でサブカルをパロディ化、『バクマン。』でサブカル文化自体を映画作品化し、もはや、自身がサブカルになった大根監督と同じセンスって、村川監督、どんだけ感性が若いんだよ!!
また、ハーレー手放しのりでショットガンを撃つノースタントの舘ひろしの現役感!!
ホントにこれで終われるのか『あぶ刑事』!?


『さらば あぶない刑事
★★★★★
5つ星

『残穢(ざんえ)―住んではいけない部屋―』感想

2016年3月4日、浦和ユナイテッド・シネマで『残穢(ざんえ)―住んではいけない部屋―』を観賞。

これは、面白い!! 今年の暫定1位ですね!(『サウルの息子』や『オデッセイ』を超えてね)
「怖いor怖くない」以前にお話や構成が面白いじゃないですか!
実話怪談あるあるな「不思議な出来事だが理由は解らず仕舞い」の後日談や過去の因縁を明らかにしていく物語なので、ホラー映画というよりもホラー演出のミステリー推理モノを観ているよう。と言うのも、読者が投稿してきた実話怪談話を短編として書き直す作家の主人公(松下奈緒)と投稿してきた体験者(橋本愛)により、「なぜ、そんな不可解な事が起きるのか?」という謎解きを理詰めなアプローチで黙々と調べていくんですね。だから、近所の人や大家さん、自治会などに話を聞いていくというドキュメンタリー要素もリアルに演出されてます。
その合間合間で新たな怪談エピソードが加算されていくんです。で、その怪談エピソードも精神病患者を入れてた座敷牢だったり、近所のゴミ屋敷、赤ちゃんに纏わる話だったりと一発一発のタブー度も高い!
物件情報を調べてるはずなのに、それと共に平気で実話怪談も収集していくんですよ! お前ら、柳田國男か!!
そもそも、モチーフが日本的というな土着性を感じます。それら別々に集めてたはずの怪談エピソードたちが、物語終盤で集約されていく展開は思わず、ゾッとしますよ!
これは、『本当にあった呪いのビデオ』シリーズの先輩監督であり、本作の監督でもある中村義洋によるパロディでもあるんですな! この手の作品を知り尽くしてる感が見事ッス!!
だってさー、引っ越し先の部屋や家を建てる土地が「曰く付きなんじゃー」なんて誰でも考えそうな事だし、そーでなくともパソコンを使った恐怖演出とか部屋の間取りを活用した恐怖演出など、身近感が恐怖に直結しますよ!
役者以上の存在感ありありな美術セット、小道具など細部へのこだわり、無音上等の研究熱心な恐怖シュチュエーション作り、次から次へ登場する変人キャラたちと全てがパーフェクト!!

パンフレットにはスタッフ&キャストの怖く見せるこだわりから、登場した部屋の間取りを紹介しながら「予算を抑えて見せる美術」も垣間見えるページも! 面白かった!


残穢(ざんえ)―住んではいけない部屋―』
★★★★★
5つ星

『ライチ☆光クラブ』感想

2016年3月1日(火)、池袋で『ライチ☆光クラブ』を観賞して来ました。

原作は腐女子バイブル的マンガだけあって、劇場はサブカル女子だらけでしたねー。場所も池袋だし。原作マンガは読んでないんですが、映画本編を観てみて納得。BLあり、エロあり、グロあり。奴らの餌じゃないですか。「早く帰ってラノベ以外の本を読め」と思いましたけど。
面白いのが、これ、ボクの好きなB級映画のテイストって話ですよ。
工場跡地をアジトにして、6人くらいの中学生たちが自分たちのルールと言うか規律を守る「光クラブ」なる組織を作っており、「体の成長は罪じゃない。大人になるまで生きてるのが罪なのだ。」とか言ってるんですよね。
冒頭で、アジトに潜入して来た女教師を縛り上げ、「どーやって殺すか」ってのを相談してるんですよ。「いやいや、オレの考えた方法の方がエグいぜ!」みたいな。結局、腹をかっ捌いて殺したんですけど。
ボクは思いましたねー。「とんでもねー奴らだなー」って。
そいつらがロボットを作って、「女を捕まえて来い!」って外に放ったら、間違って酔っ払いとか連れて来ちゃう。そこら辺から「なんだ、この映画は?」と。笑って観てたんですけど、どー観てもシリアスな演出なんですよ。まぁ、だから笑えたんですけど。「これ、ロジャー・コーマン(B級映画の帝王)の映画かなー」と思ってたら、このロボット、ホントに激カワ女学生を連れ去って来るんですよ。そっからが話の本題。
とりまイスに縛りつけて「だれも、この女に触んじゃねーぞ!」となるんですよ。でも、当たり前田のクラッカーで、みんな興味津々で仲間の間に亀裂やら暗躍やらテンヤワンヤ。
アメリカにはエクスプロイテーション・フィルムってジャンルがありますけど、エクスプロイテーションって日本語で搾取(奪い取るとかの搾取ネ)って意味なんです。黒人を観客に見据えたブラックスプロイテーション。ポルノ映画はセックスプロイテーション。みたいな事です。観客を呼ぶ為だから芸術性や話の質はどーでも良いって作品なんです。だから、大抵の作品は見終わった後、何も残らないんですね。
そーゆー考えでいくと、本作はサブカル女子スプロイテーションですよ。
男同士のフェラ・シーンとか奴らしか喜ばねー。ユリ映画『キャロル』とか観てコーフンしてる女が楽しむ作品ですね。
まぁ、ノンケは楽しめないかと言うと、決して、そんな事はないですよ。
その後、少女と見張り役のデクノ坊のロボットとの交流が描かれていき、予想をフライングした反乱のクライマックへと流れ込んでいきます。「この先、どーなるの?」な興味がラストまで集中力を持続させた展開で、この架空のアングラな世界観へ引き込まれました。架空の話ながら、現代の日本では「無い!」と断言できないテーマの濃さ!
それにエクスプロイテーションって文化ですからね。サブカル女子がどーゆーのが好きかというのを観て、「なるほど」となるんですよ。アメリカのB級映画を「意味わかんなーい」「チープでダサ~い」「キモ~い」とか言ってるコミュ障たちが同じようなストーリーなのに、マンガ原作という事でこぞって劇場に足を伸ばしてるんですよ。良い事です。

★★★☆☆
星3つ

『尾崎支配人が泣いた夜 DOCUMENTARY of HKT48』感想

2016年3月1日(火)、池袋シネマ・ロサで『尾崎支配人が泣いた夜 DOCUMENTARY of HKT48』を観賞。

今作はAKB48の姉妹グループであるHKT48のドキュメンタリーです。
ボクはテレビも観ないし、アイドルにもビタ一文たりとて興味がないのですが、「絶対DVDで観なさそう」という事とタイトルに引かれて、観てきました。
『尾崎支配人の泣いた夜』!
誰だ、尾崎支配人って!?
泣いたって何があったんだ?!
そしたら、尾崎支配人、全然、出てこないんですよ!
HKT48の中心人物らしいけど、グループ内でどーゆーポジションなのか解らない指原莉乃が監督してて、グループの歴史を辿りながら、メンバーたちへインタビューしていく構成になんです。
んで、やっぱりアイドル・グループだけあって過去の映像素材が豊富なんですよ。結成当時からひたすら撮られ続けてたんでしょーね。逆に、こんなにカメラに囲まれて生きてたら恋愛してる時間を作れる事の方が凄いですよ!
って言ってますけど、グループの歴史を知らないから、事の重要度が訳ワカメ。
そんな事よりも、端から見てると宗教団体みたい。
これは森達也の『A3』か?!と思いながら観てましたよ。「彼女たちの思想=何が正しいか、何がどれだけ自分の比重を占めてるか」という事が、あまりにもボクの身近に無さすぎて、カルト教団と同じレベルに見えるんですよ。まぁ、どの世界でも、重要度のズレや振り幅ってありますからね。
トークの内容事態はバカな女の子たちの他愛ない会話なんですけど、やはり、ライブやらセンター争い、総選挙とプレッシャーの場数が多いだけあって、思想がプロなんですね。同じ歳の女の子たちに、彼女たち程の思想があるかと思うと人生観が変わるんだろーなぁ。と感心しました。
そんで、メンバー同士で複雑な感情が入り乱れてるんですね。当たり前なんですけど、仲の良いor悪いもあれば、嫉妬するメンバーも居るし、自分の事のよーに泣けるメンバーも居るんですね。
いつの間にやら、ボクも貰い泣きですよ。もう何が泣けるんだか解らないけど、複雑&不安定な精神状態の中で様々なアクシデント……というか大人が商売の為にあれこれ難題を押し付けてくる訳ですよ。
もう、可哀想で、可哀想で。大人たちに虐められてるよーにしか見えませんでしたよ。
最後らへんで加入したメンバーとか、もはや小学生だからね! 女子高生でもないんですよ! もう、虐待ですよ!(笑)
所々、指原莉乃監督が「う~ん」と悩んでるメイキング的な映像が挿入されて、作品構成の主旨と外れるから「このシーンはこーゆー理由で入れたんですよ」という言い訳にしか見えなかったですが、こんなんプロがやったら怒られますよ(笑) アイドルという素人が監督してるという商売だから成り立つ。映画として観れぱ観る程、不思議な映画でした。テレビ番組みたい。

そんな感じで観てたら、あの「尾崎支配人」が登場。ある事件について、みんなの前で話そうとしてたら涙が!!
室内だったから夜かは解らなかったけど。


『尾崎支配人が泣いた夜 DOCUMENTARY of HKT48
★★☆☆☆
星2つ

『サウルの息子』感想

2016年2月29日(月)、新宿シネマテリカで『サウルの息子』を観賞して来ました。

アカデミー賞外国映画賞&ゴールデングローブ賞外国映画賞受賞。カンヌ国際映画祭グランプリ受賞。
と快挙を成し遂げてるのが本作。

こらまた難儀な撮影方法が凝ってる映画です。
始まって早々、どーやら森の中なんですけど、1カット目からピントが合ってないんですね。「おやおや、どーしたー?」と思っていたら、男がフレーム・イン。彼が本作の主人公のサウルなんですが、彼にはしっかりとピントが合っています。カメラはサウルが歩いて行く方向に同行していくんですね。周りを流れていく大勢の人々を誘導している様子のサウル。その大勢の人達を「シャワー室」と呼ばれる部屋へ入れて行く時に、ここがユダヤ人の強制収容所で、「シャワー室」は「ガス室」だと初めて気づくのです。
今作は、ナチスの命令によりユダヤ人大量殺害の実行を指示されていた「ゾンダーコマンド」と呼ばれる人達の話です。ユダヤ人を殺しまくってたナチスの中でPTSDが流行り、なんとナチスガス室送りのユダヤ人の殺害を同じユダヤ人にやらせてたんですね。本作の主人公=サウルの仕事は移送されてきた同胞のユダヤ人をシャワー室だと騙してガス室で殺し、次の移送列車が到着する前に遺体を処理し、ガス室に残った血や糞尿を掃除する事。
もう、ただでさえゲンナリなんですけど、カメラが主人公を延々と追いかけ回してるので、観客も追体験させられる訳ですね。相変わらず主人公の表情と主人公が見てる物にしかピントが合わないので、ガス室へ入れられるユダヤ人たちや死体の山などはうっすらしか見えないんですよ。
ハウルは無表情で作業を淡々と進めるだけで、他の物にピントが合わないので、主人公が周りを見ないよーにしてる事が示唆されてる訳です。完全に心を閉ざしてるんですよ。でも、音がリアルで「ドアを叩く音」や「人々の叫び声」が状況を想像させるんですね。
なんだ、この体験映画は?!
今作は画面比率がスタンダード・サイズ(ほぼ正方形に近いブラウン管のテレビの画格)になっていて、横長の画面サイズに馴れた今、スタンダード・サイズで主人公の視点を意識させるのも効果的だと思いました。
ストーリー的には、そんなサウルが少年の死を目撃してから変な動きをし出すんですね。そんで、ある目的の為、ナチの目を盗み、収容所の中をあっちこっち動き回るんです。「サウル、どーした?」と思いながら見てると、収容所内のレジスタンスたちは、また別の動きを画策していて、そいつらと接触するサウルの行動を通して、ある歴史の事件へと発展していく展開なんですな。
ただ、凝った撮影方法が一貫され過ぎてて、画的な変化が少ないのが、ちょっと辛かった。

パンフレットは歴史的な整合性の紹介や監督の想いや考え方の解るインタビュー等が掲載されてて、薄い割りに、なかなか濃い内容だったので買いだと思います。

サウルの息子
★★★☆☆

『ヤクザと憲法』感想

2016年2月26日、ポレポレ東中野で『ヤクザと憲法』を観賞。

現代ヤクザの事務所に密着して、何だか色々とヤバめの映像を撮影したドキュメンタリーです。
オープニング、本作を撮影する「約束ごと」が紹介されます。

1、取材謝礼金は支払わない
2、収録テープ等は事前に見せない
3、モザイクは原則かけない

スゴくない?!
また、さらにスゴいのは、冒頭、事務所を案内する組員に対して、「この袋なんですか? マシンガンとか入ってるんですか?」と、やたらダイレクト&デンジャラスな質問を炸裂させる本作スタッフさんでした。
事務所の中を案内してた組員も「ちゃいますよ! (組立式)テントが入ってるんですよ~。」と応戦。
所が、更に「銃とか無いんですか?!」「他の組が襲撃して来たら、どーするんですか?!」と怖いくらい突っ込んだ質問を続けるんですね。「なっ……無いんですよー。にっ……日本で銃を持ってたら銃刀法違反で捕まっちゃうじゃないですかぁ~」という大変、正しいけど明らかに動揺してるのがリアル過ぎる返答。もう笑うしかないんですよ。
まぁ、そんな本作はチャンバラ、ドンパチや仁義なき抗争なんて東映の実録映画なシーンは一切ありません。むしろ、逆にヤクザの事務所に密着して、何もない日常を淡々と捉え、その中からテレビでは見れないヤクザの生活、バックボーン、あるあるネタを浮き彫りにしていく作品なんです。
やれ、居酒屋の女将が「警察がなに守ってくれるぅー? 組長さんはちゃんと私らの事を守ってくれるでー」とカメラに向かって証言したり。
やれ、「ヤクザの子供は幼稚園にも入れへんねん。」と訴えてみたり。
やれ、選挙の報道が載る新聞を片手にボソッと「ワシ、選挙権ないねん。」と呟いてみたり。
つまり、本作はヤクザを捉える事により、「基本的人権の尊重」をうたっている日本国憲法の矛盾をも浮き彫りにしていく所がスゴいんですね。ヤクザはあくまでもメタファーなんですよ!
このドキュメンタリーを制作したのが東海テレビというテレビ局というのが、またスゴいです。しかも、テレビ局制作の作品に有りがちな説明過多になっないんです。むしろ、少ない!
バカなテレビマンがやりがちなナレーションも音楽もない。つまり、誤魔化しの手管を使ってないって事なんですね。
撮影の対象になっているヤクザたちも赤裸々にカメラを受け入れてるですね。むしろ、ガサ入れに入った警察の横柄な対応の方が浮いて見えます。
日本の片隅でボクらの知らない世界を見せてくれる。これぞ、あぁ、ドキュメンタリー……なのです。

『ヤクザと憲法
★★★★☆
星4つ

『オデッセイ』(4DX)感想

2016年2月15日(月)、ユナイテッド・シネマ豊洲で『オデッセイ』を4D・吹替え版で観賞して来ました。

1人ぼっち火星サバイバル映画ながら、意外に軽いノリで観れる映画でした。何故なら、火星に取り残される主人公が「陽気な天然キャラ」だから。
火星で調査を進めてるクルーが砂嵐に襲われ、「作業中止! 逃げろー!」って宇宙船に乗り込んでたら、主人公だけ飛んできたアンテナにぶつかり、砂嵐の中へ吹っ飛んでいくんです。そこまでが冒頭10分くらい。NASAは死んだと思って、壮大に葬式を上げるんです。火星作業クルーの隊長なんて罪悪感にさいなまれてて、部下に「悪くないですよ」とかって慰められたりしてる訳ですよ。そしたら、生きてたっていう。まさかの火星に1人、置いてけぼりですよ。そんな事あります?!
NASAの本部では「あいつは置いてかれたと思ってるに違いない。裏切られたと思ってるはずだ。どんな気持ちだろーな、1人で。いたたまれない。」と心配してるんですけど、次のカットでは火星に取り残された主人公がシャワーから出てきて陽気にディスコ・ソングを聴いてるんですね。このディスコ・ソングもクル...ーの隊長のパソコンから見つけた音楽で、映画中、終始「なんでディスコ・ソングしか入ってねーんだよ!」とキレてる始末。「じゃあ、聴くなよ」とも思うのですが。そんなんなんで、ミュージカルか?!ってくらい全編、次から次へ、ノリノリのディスコ・ソング全開!!
ただ、先日、亡くなったデビッド・ボウイの曲が丸々1曲、使われてるシーンはついついグッときましたね。
それでいて、宇宙で科学的に野菜を育てる方法や水を作り出す方法など、天然だけどバカではない主人公によるサイエンス手管の数々が丹念に描かれていきます。このように、なんてこったな危機的状況を陽気な精神と几帳面な段取りでサバイブしていくのが面白くて、思わず見いっちゃいますね。本作を3回くらい観ておけば、いつ火星に取り残されても大丈夫。ここら辺の科学的考証はパンフに結構ページを割いて掲載されているのですが、かなり信憑性があるらしーです。
主人公が火星での生活を動画で保存しているという設定で主人公によるナレーションで状況を分かりやすく(ユーモラスに)リードしてくれるので、とても観やすい。
それでいて、NASA本部のワタワタや地球へ帰還途中のクルーの重たい空気など……が同時進行で描かれる構成です。その中で垣間見えるリアリティーの説得力はシリアスで、ユーモアを忘れない主人公とのギャップが笑いを生みます。他の隊員の置いて行ったパソコンを漁って、「暇つぶしゲーム見つけたー」とかね。
主人公を演じるのはマット・デイモン。ピッタリです。ボクだけかもしれないですけど、マット・デイモンって天然キャラがハマると思うのですが。抜けてるキャラとか。思うに、若い頃からスコセッシやイーストウッド、ソダーバーグ、スピルバーグなどの大御所監督陣の作品に出てるのに、同年代のジョニデやブラピに比べると何か霞む……と言うか、華がない。そんなデイモンは、それだけで庶民派な好感度があり、天然キャラもナチュラルですね。それこそ、トム・クルーズとかがやったらハナにつきますよ。
火星クルーの女隊長役はジェシカ・チャステイン。『ゼロ・ダーク・サーティ』でビン・ラディンを追うCIA分析官を圧倒的な頑張り屋さんキャラで演じてた女優さんですね。
今作でもクルーの身を預かる気丈な態度ながら、実は罪悪感にさいなまれる繊細な心の持ち主を演じています。本作の監督=リドリー・スコットがお得意とする「強い女」の象徴キャラですね。今までも『エイリアン』のシガニー・ウィーバーや『G.I.ジェーン』のデミ・ムーア、『ハンニバル』のジュリアン・ムーアなど戦場で戦う強い女萌えのリドリー。
ゼロ・ダーク・サーティ』を観て「オレの方がもっと……」と思ったかどーかは知らないですが、そーに違いありません。
ちなみに4D的には良かったです。特に冒頭の砂嵐に襲われるシーンなんて、ずっとソファーが動きまくりのアトラクション感。臨場感ハンパなしです。ボクは吹替えで観たから良かったですが、字幕は追えないんじゃないでしょーか。あと、宇宙空間でのソファーがゆっくり動く浮遊感も絶妙でした。
ただ、リドリーの映画はいつもそーなんですが、長い。クライマックス近くの救出シーン辺りで集中力きれそうになりましたわ。

『オデッセイ』
★★★★☆
4つ星

『ボクソール★ライドショー』(4D2D)ネタバレなしレビュー

2016年2月1日、ユナイテッド・シネマ豊洲で『ボクソール★ライドショー 恐怖の廃校脱出!』(4DX)を観賞して来ました。

ドキュメンタリー風フィクション=POVの名手である白石晃士監督が4DXの世界へ降り立ちました。事件ですね!
内容は、アイドルみたいな女の子3人(誰も見たことない子だった。。。。)とカメラマンが廃墟の中へ入ったが最後、出られなくなるというタイトルに嘘偽りの無い作品でした。全編、手持ちカメラで中継映像を撮っているというテイで突っ込んで行きます。
あっちこっち場所を飛び越える演出やあっという間に昼間から夜へ演出、挙げ句に異次元迷子と白石監督の『コワすぎ!』シリーズの脅かし手練手管を25分に詰め込んだよーな作品でした。
ボクとしてはチョイ見せ幽霊が好みなので、本作のよーな怪物ドーンな描写にはワクワクしないのですが(ただ、登場人物たちを追い詰めていくピエロの造形にはグッときました)、お化け屋敷風味のアトラクション要素に特化した演出は楽しかったです!
で、そのアトラクション色と4DXの相性はバツグン!
背中に当たる衝撃、首もとへの風。足元を触る仕掛けにスクリーン前のスモーク。そして、小雨くらいの水の噴射。もう顔面ビチャビチャですよ! 中でも特に驚かされたのは手持ちカメラの角度に合わせてソファーが動く所。まるでカメラと目線が一体化したよーな錯覚!


ボクソール★ライドショー 恐怖の廃校脱出!』
★★★☆☆
星3つ

【演劇】NODA・MAP第20回公演『逆鱗』感想

2016年1月31日、東京芸術劇場NODA・MAP第20回公演『逆鱗』を観劇して来ました。

水族館を舞台に人魚ショー開催の為、人魚の捕獲を企てる人間たちと海の底で暮らす人魚たちの物語をスピィーディーに描写。いつも以上に飛び交う言葉遊びがギャグに直結。ゲラゲラと笑いながら観ていたのですが、ピンボケした断片的なストーリーが重たいテーマへと結実していくクライマックスは圧巻でした。
パンフレットのインタビューによると、着想について「確か、水族館から入りましたね。」との事。マジかよ。そこから、ここまで風呂敷を広げ、組み立ていったと考えると、スゴ過ぎて、逆にゾッとしますね。
人魚に関してもピュアでファンタジー色を押し出すのではなく、滅びかけた小さな村のように土着質な描写が薄気味悪い童話のよう。都会的な水族館との対比になって世界観へ引きずり込まれました。また、地上の話と海の底の話と、唐突に場面が飛び合い、その度に世界観がリセットされたような。微妙に設定やキャラクターが変わっていく事により、ラストのメタファーのヒントを小出しにしており、そのヒント回収も観劇中の楽しいミッションになっていく訳ですよ。
まぁ、とは言え、世界観という事で言えば、広げまくった大風呂敷は幾重にもバラバラになり、回収する事なくウヤムヤにされた感もあります。それでも情報量の多い比喩表現のメタファー設定はちょっとウカウカしていると置いてけぼり食らう勢いがありますから、「何を残し、何を放置したんだ?」という観賞後の楽しみにもなる訳です。
人魚役を松たか子がある時はピュアに、ある時は強かに。前半はでずっぱりという訳ではないのですが、存在感バツグンで、ちょっと近づけないオーラを放ってました。逆にもう一人の主人公を演じる瑛太は田舎の陽気なアンちゃんノリで問答無用に仲間入りできる好感度。映像作品ではバタ臭く見える井上真央も演劇のスケール感に馴染んでおり、飴とムチとムチみたいな役を魅力的に演じてました。そんな中、コメディーリリーフな役回りで観客から笑いをカツアゲしていく阿部サダヲ池田成志の安定感。それだけに、ラストの阿部サダヲの後ろ姿のギャップにはグッとくるものがありました。今回の野田秀樹大先生は助手任せの学者先生の役。よく見ますね、学者役。
で、今回は海がテーマなので、衣裳が面白いです。
デザインもですが、質感も「なるほど!」と膝を叩いてしまいます。それが、アンサンブルの動きで面白いように変化してて、見応えありました。プロジェクター映像を使ったネタも今までにない使い方で、もはや手品の域です。

余裕があったら、あと1回、当日券で観劇したいです。そのくらいの情報量。
ちなみに、今回のパンフレット、表紙のデザインがgoodでした。中身はリリー・フランキーによる稽古場見学の記事から野田秀樹の製作現場を垣間見れたのがナイス!
どーしても演劇って、パンフを作ってる時期も作品がどーゆー感じで完成するか解らないから、難しいと思いますが、その中でも題材ネタの対談(今作では野田秀樹×さかなくん)やキャストたちの稽古の手応え、方向性についてのインタビューなど、大変、頑張ってると思います。いつもながら、あっぱれ。


『逆鱗』
★★★★☆
星4つ

『グリード チャンプを継ぐ男』感想

2016年1月29日(金)、ユナイテッド・シネマズ浦和で『クリード チャンプを継ぐ男』を観賞。

先月、劇場で予告編を観て号泣した『ロッキー』シリーズのスピンオフ作品です。
『ロッキー』シリーズを観てなくても楽しめる作品かと思ってたら、ガッツリ続編でちょっと引きました。シリーズ観てないと解らないお話です。
最近のスピンオフ映画とか続編映画って前作を観てるのが前提条件なんですね(『007』しかり『スター・ウォーズ』しかり)。
『ロッキー』1作目で主人公=ロッキーが挑むチャンピオンのアポロ・クリード。2作目で再戦。3作目では友情が芽生え、ロッキーはアポロに練習法を学び、闘いに挑むのです。
で、本作の主人公は、そのアポロの愛人の隠し子=ジョンソンなんですね。そんな彼がチャンピオンだった父と同じようにボクシングを始めて、登り詰めていく……という話なんですよ。そーなんです。つまんなそーなんですよ。
案の定、前半は、お約束のパターン展開で、ガッカリしました。アポロの奥さんってのが凄く良い人で、孤児だった主人公を引き取り、学校へ通わせ、今や主人公は立派な勤め人なんですよ。出世もして順風満帆そうなんですけど、冒頭で急に辞めちゃうんですよ。辞めて、ボクサーになると決意するんですね。なんで?
その理由は一貫して「父の、チャンピオンの血がそうさせる」とサイヤ人みたいな事を言うんですね。母親には「ボクシングをやるなら、この家から出ていって」と言われ、ちょっとウジウジしてるけど、あまり悩まない。そこまでしてやる事か感が拭えなかったですねー。
小さな部屋を借りて、ロッキーに弟子入り志願。コツコツ練習を積むも、隠していた「父親がチャンピオン」という事実が露呈。七光りレッテルを貼られ、暴行事件で対戦相手を探していた現役チャンピオンの噛ませ犬に抜擢されるんです。
「いやいや、大抵、予想通りの展開ですけど。」と思いながら観てました。
所が、本作では、さすがにチョイ役かと思っていたロッキーに重大事件が発生。急にのっぴきならない展開へ流れ込んでいくんですね。
登場するなり、もうおじいちゃんなロッキーは、もう何年もジムへは足を運んでないんですね。で、レストラン経営で生計を立てながら、亡くなった奥さんの墓に話しかけるのを楽しみな老人ですよ。しかも、ただ死ぬのを待つ老人で、人生の終わった人なんですね。ロッキーを演じるシルベスタ・スタローンもヨボヨボで「『エクスペンダブルズ』って10年くらい前の映画だっけ?」と思いましたよ。そんなロッキーが主人公に練習法を教え、特訓に付き合っている内に、生きる気力を見つけていくドラマも展開。主人公のエピソードとコラボ技に発展。涙のラストへ流れ込んでいく事になります。
主人公のアパートで、ご都合主義的な偶然で知り合う歌手の女の子とのラブ・ストーリー要素もプラス。
結構、練習シーンが少なく、彼女とケンカしたり、ロッキーと揉めたりと、練習そっちのけな印象なんですけど、その分、ドラマはてんこ盛りです。クライマックスの試合のシーンに結実。もう号泣です。
スター・ウォーズ』もそうでしたが、もう「『ロッキー』の新作を観に行くんだ!」というお祭りとして楽しむ映画だと思いますね。
あと、羽佐間道夫の吹き替え版で劇場公開してほしかったですね。そーなったら、主人公の声はタレント(EXILEとか)使うんでしょーけどね。クソですね!!


クリード チャンプを継ぐ男
★★☆☆☆
星2つ

『イット・フォローズ』感想

2016年1月26日(火)、池袋シネマ・ロサで『イット・フォローズ』を観賞。

とんでも系ホラー映画でした。とりあえず、不安要素を煽る設定が3つあって、それらの相乗効果がバツグンに効いてます。


【不安要素1・ナニカを移すにはセックス】
本作のタイトルを直訳すると「それが、ついてくる」ですね。主人公の女の子が彼氏とデートして、セックスしたら、知らないオジさんが追い掛けてくるんですよ。「何を言ってるの?」と思いましたよね?
どーやらセックスして移されると、「ナニカ」が追い掛けてくるんですよ。「ナニカ」ってのは、裸のオジさんとかオバさんとか、その時々で姿が違うんですけど、脇目もふらずに主人公の所へ一直線に向かって来るから、すぐに解るんですね。そーとー怖いですよ!
絶妙に体型の崩れた人達ばかり!
ヘンに着ぐるみやCGの怪物より怖いです!
しかも、ドコから来るか解らない、急にヌッと現れる辺りして、ビタ一文たりとて気が抜けないです!
毎回、姿が違うから「あそこ歩いてるアイツ、こっちに向かってるよーに見えるけど、まさか!?」みたいなシーンばっかで観賞中、ずっとソワソワですよ。
しかも、捕まったら殺されちゃう。助かるには、また誰かとセックスして、他人に移さないといけないんですね。ただし、移した相手が殺されちゃうと、また1つ前の人に戻って来るんですよ。
リア充不幸の手紙みたいですね。
「なんだ、このムチャクチャな設定は!?」と思ってたんですけど、これがなかなか。
パンフのインタビューによると本作のデヴィッド・ロバート・ミッチェル監督は『パリ、テキサス』、『黒い罠』、あるいは、カーペンター監督の『ハロウィン』や50年版&60年版『ボディ・スナッチャー』、ホラー映画の名作『ローズマリーの赤ちゃん』、『シャイニング』などの作品に影響を受けたとの事。なるほど。言われてみれば、廃墟が多く人の少ない街並みや主人公たちが科学的にナニカを倒そうとする対決方法、ナニカから逃げるロードームービー的展開などは70年代の青春モノ+80年代のケレン味ホラーな印象を受けます。
ちなみに、舞台となるデトロイトは監督の出身地でもあります。


【不安要素2・仲間たち】
そんな主人公を助ける為、大学の同級生たちが助けてよーとしてくれるんですけど、このメンツも絶妙。
みんな割りと一生懸命、助けてくれるんですけど、その中のブスな女とかは裏で「あの子(主人公のこと)、可愛いから贔屓されるのよねー。不公平よ。」とか言ってたり。主人公の事が明らかに好きな男がいるんです。凄い良い奴なんですけど、童貞顔で絶妙にダサいんです。「お前は他人に移せないだろ?!」って奴なんです。そんで、イケメンの男が主人公を助けるのを遠くで見てたりとか。それをブスな女が不満気に見てたりとか。「お前ら、ホントに仲良いのか?!」と聞きたくなるくらい穏やかじゃないんですよ。
そんな中、ナニカを移す方法がセックスというのは、性に敏感な彼らにとって、波乱の幕開けへとなってしまうんですね。


【不安要素3・音楽】
で、この作品、全編にアナログ・シンセサイザーの不協和音めいた楽曲が各シーンとシンクロしていて怖さを引き立たせています。
音楽を担当したリチャード・ヴリーランドは初めての映画音楽作品だそーです。それでも、ホラー映画っぽい「いかにも」な曲ばかり。しかも、近づいて来てるであろうナニカの動きとリンクして、徐々に音が大きくなってきたり、唐突にダーン!!!!ってなったり、心臓に悪い。監督は音楽を盛り上げまくって、カットも細かく割り、緊張感をあおりながら実はいないよー演出も心得ているんです。
ダリオ・アルジェント監督のスラッシャー、ジャーロ映画も彷彿とさせます。


以上の3つの不安要素のコラボ技は劇場のスクリーンと音響により、割増されてたので、本作は劇場観賞をオススメします!
パンフは値段の割りに中身は薄め。でも、『007 スペクター』のパンフより売れてるらしーです。


『イット・フォローズ』
★★★★☆
星4つ

2015年【ベスト10】&【ワースト10】映画ランキング

去年、観た映画作品で【ベスト10】【ワースト10】を作りました。2015年日本公開作品のみです。『進撃の巨人』と『テッド2』を観れなかったのが悔やまれます。
あとベスト10がホラーやらアクション映画ばかりなのは、完全にボクの趣味です。でも、どれも面白かったですよ!
機会がありましたら、是非!




【2015年ベスト10】

第1位、『ホーンズ』
殺人容疑のかけられた主人公が自ら事件を調べるサスペンス! 角がはえて不思議な力を手に入れるファンタジー要素! それでいて演出はホラー!
ジャンルさえ飛び越える天才=アジャ監督の見事な総決算ですよ!
文句ナシの1位でしょー!?


第2位、『オキュラス 怨霊鏡』
殺人鏡を巡る姉弟の鏡ブッ壊し作戦と過去のトラウマの謎が同時進行で進んでいく脚本が上手いです。それでいて、とにかく怖い! 見心地がとにかく悪い!
ドコへ着地するのか全く先の読めない悪夢の傑作ホラーですよ!


第3位、『悪魔のいけにえ(日本公開40周年記念 “4Kリマス ター版”)』
4Kで鮮明に蘇った傑作ホラーは今の時代でも全く色褪せる事なく、むしろ、更に斬新でしたよ!
こんなアグレッシブ過ぎる作品をスクリーンで観るという、まさに映画体験! 後半の全く説明ナシな怒涛の展開が凄まじいですね! やはり話の通じない人は最狂に怖い!


第4位、『22ジャンプストリート』
前作を超える爆笑の連続! もはや、前作さえもパロディにしてしまう痛快ユーモア・センスの絶品さ!
どーしよーもない程のアホでおバカなサイコー・コメディ!
それでいて、主役2人の友情もしっかり描く青春モノとしも完成度高し……というのが恐ろしいです!


第5位、『シェフ 5つ星フードトラック始めました』
人生の再起を計る料理バカなオッサンが子供との絆を再構築しながら、料理の旅へ出るゴキゲンなロードムービーの秀作!
陽気な音楽と画面を彩る料理の数々、そして、グッとくるラスト!
1位~4位と違って(?!)、誰にでも薦められる映画です!


第6位、『007 スペクター』
前作で過去を失った主人公=ジェームズ・ボンドがチームという家族を築きながら、幼少のトラウマが具現化した敵に立ち向かいますよ! この構成だけで、スゲー興奮しますね!
めちゃんこ濃いシリーズ最新作は、天才=サム・メンデスが作り出した新しい『007』のフォーマット!


第7位、『コードネーム U.N.C.L.E.
ロシアとアメリカのスパイがケンカしながら活躍するスパイの2倍乗せ!
一見して古くさい印象の冷戦時代を背景にしながら、超スタイリッシュに世界観をミックス! 信憑性とかオリジナル作品とか関係ねぇーっていう力業が爽快! カルチャーショックなバディものの傑作が!


第8位、『インサイドヘッド』
こーゆー設定や世界観って、どーやって思いつくんだろーね? 人間の心の中という複雑な要素を見事にシステム化した世界観が素晴らしいですよね!
人間の心の中の世界をこんなにもエキサイティングに映像化するとは!
それでいてピクサーの原点回帰な作風にもワクワクしました。



第9位『ヴィンセントが教えてくれたこと』
思わず、「ビル・マーレー最高!!」と叫びたくなるのが本作。
酒、女、ギャンブル……な毎日の初老ビル・マーレー。そんな彼が子供と絆を深めるヒューマンドラマ。もう、それだけで観る価値あり。終わる頃には、みんなビル・マーレーのファン!


第10位『銭ゲバ
1970年の映画ですけど、未ソフト化作品で、やっと今年、プログラム上映で観れました(新文芸坐ありがとう!)。そしたら、傑作サスペンスでした!
ソフト化できない理由が垣間見える倫理観と新宿ゲリラ撮影が素晴らしく、若き日の唐十郎の怪しさバクハツで超カルト!


以下、11位以降……
『パロアルト・ストーリー』
バクマン。
『マッドマックス 怒りのデス・レース
『戦ばぬ止み』
『駆け込み女と駆け出し男』
『私の少女』
ジョン・ウィック
『チャッピー』
『はじまりのうた』
アメリカン・スナイパー
『リベンジ・オブ・ザ・グリーン・ドラゴン』
『sexエド/チェリー先生の白熱性教育
『スサミ・ストリート全員集合 ~または"パペット・フィクション"ともいう~』(スゴ技講義吹替版)
『セッション』
『ウォーリアー』
スターウォーズ フォースの覚醒』
『丑刻ニ参ル』
『ストレイト・アウタ・ コンプトン』
ミュータント・タートルズ
『ブルー・リベンジ』
ターミネーター:新起動/ジェニシス』
バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)
『龍三と七人の子分たち』
『フランク』
キングスマン
プリデスティネーション
『クラウン』
海街diary
スペシャルID 特殊身分』
グリーン・インフェルノ
『戦慄怪奇ファイル コワすぎ! 最終章』
マジック・イン・ムーンライト
『チャイルド44』
『フォックス・キャッチャー』
インヒアレント・ヴァイス
『ブラック・ハット』
『あん』
『ゼロの未来』
『戦慄怪奇ファイル 超コワすぎ! FILE-01 恐怖降臨! コックリさん』
『モンスター 変身する美女』
テラスハウス クロージング・ドア』
アナベル
ジョーカー・ゲーム
『ヴィジット』
アナーキー





【ワースト10】

第1位『アンフェア』
こんなの映画でもないし、ドラマとしても劣悪。

第2位『劇場霊
怖くない以前に面白くないです。

第3位『チャーリー・モルデカイ 華麗なる絵画の秘密』
ジョニデの悪ふざけ、ここに極まり。

第4位『ジュシックワールド』
恐竜がワーワーするシーン以外は全然つまらない。

第5位『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン
単品の映画はそこそこ楽しいのに、束になると、まとまりが無くて、つまらなくなる。

第6位『ベイマックス』
盛り沢山すぎて収拾できてない印象。

第7位『ダークウォッチ 戦慄の館』
頑張ったけど、ご都合主義とキャラブレが酷すぎた。

第8位『ホビット 決戦のゆくえ』
これで、ホントに終われる?

第9位『ジャッジ 裁かれる判事
長いし、纏まりがない。

第10位『ビッグアイズ』
ティム・バートン以外が監督すれば良かったのに。



2016年も皆で映画を観漁ろう!!