ユンギボの映画日記

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2017.5.27 『美しい星』

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2017.5.27

 

『美しい星』を観賞。

監督は『クヒオ大佐』や『桐島、部活やめるってよ』の吉田大八監督。オフビートな笑いを無機質なタッチで描く作風の監督ですね。CMディレクター出身なので、無機質さの中にスタイリッシュさもありますね。ユーモラスな演出が印象的。そこで本作。原作は三島由紀夫なんですね。しかもSF。この組み合わせが違和感を感じるかもしれません。なんで吉田大八監督はこの作品を映画化したのでしょうか?

本作は東京郊外に住む家族が主人公なんです。

お父さんが、当たらない事で有名な天気予報士役のリリー・フランキー。もうこれだけで面白そうですね。本作の冒頭、夜中にリリーさんが車で帰る途中に意識を無くすんですね。運転中ですよ。突然。危ないですね。でも、朝、目を覚ますと畑の真ん中に車がハマってる。全然、違う場所ですよ。バカそうなADが「それ宇宙人の仕業ですよー」とか言い出すんです。そこから宇宙人について調べ出す。そーこーしているうちに「自分は火星人だ」と言い出すんです。

飛んでもない話ですねー。この映画、面白いのが、家族の揃うシーンが全然、出て来ないんです。

息子役は亀梨和也くん。自転車便のバイトしてるフリーターなんです。彼は惑星が迫って来るビジョンを見て「水星人だ」と言い出す。

娘役の橋本愛ちゃんは路上ミュージシャンの音楽を聴いて「金星人だ」と言い出す。

でもね、他の家族が何をしているのかとか、「○○星人だ」と言い出してる事とかは知らないんですねー。同時進行なんです。同じ家に住んでる家族なのに、あまり同じ場所にいるシーンがないんですねー。これが本当に宇宙人になっちゃったのか、或いはただの妄想や幻なのかハッキリしないままストーリーが続いて行く辺りはミステリー要素なんですよ。

もっと大変なのが、お母さん役を中嶋朋子が演じてるんですけど、お母さんだけは覚醒しないんですよ。その代わりと言ってはなんですが、ネズミ講にハマっていきます。普通なら家族が、お母さんがネズミ講にハマってたら大事件になる訳です。でも、他の家族が「自分は宇宙人だ」とか言ってますからね。

この映画、極端に説明がないんですよ。吉田監督は「何の理由も示されないまま家族が全員が宇宙人として覚醒して、そこから圧倒的に美しい言葉が精繊に組み上げられていき、最後にそれをまとめて叩き出すようなラストがある。入り口と出口の狂いかたと、その間の醒めた目線のギャップというかバランスが、滅茶苦茶かっこよかった。」と原作の魅力を語っています。また、脚本の執筆に関しては「三島が1962年に書いた小説の舞台を2010年代に置き換えるということは、『もし今、三島由紀夫が生きていたら、世界は彼の目にどう映るのだろう?』と想像することだったんですね」と答えています。

そして、もう1人の宇宙人役なのが、瞬きをしない佐々木蔵之介。メチャクチャ怖いです。

『美しい星』

★★☆☆☆

星2つ