ユンギボの映画日記

ユンギボ(@yungibo)によるあらすじ紹介、ネタバレなしのレビュー、解説・考察をお届け‼

7/19ソフト未収録の日本未公開映像で"やり過ぎ監督"の秘密が明らかに!! 映画『リチャード・リンクレイター 職業:映画監督』

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新宿シネマカリテで行われる真夏の祭典【カリコレ2018/カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2018】!!
毎年、日本未公開になりそうなジャンル系作品の数々を世界中から厳選チョイス。日本のシネフィルにお届けする映画好き御用達の祭典【カリコレ】。

もう【カリコレ】での上映は終わってしまったのですが、素晴らしすぎるので、オススメしたい一本が、映画『リチャード・リンクレイター 職業:映画監督』。
毎度、やり過ぎなレベルで映画を作り続ける職業監督の破天荒すぎる舞台裏が明らかにされる本作。観てみると、驚きの証言まみれ!!


そもそもリチャード・リンクレイターとは?
1970年代の大学にタイムスリップしてドキュメンタリーを撮ったような『バッド・チューニング』(1993)。1組の男女がパリの街をさ迷いながら、思想や哲学について語り倒す映画なのにロマンチックは失わない『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離』(1995)。
両作品では、カメラが徹底的に登場人物たちを追い掛け、役者たちの軽妙な掛け合いを逃さない演出を確立。
もう、この頃から、"やり過ぎ監督"=リンクレイターが完成してたんですね!



メジャーとインディペンデントを行来する職人監督
さらにその後も、やり過ぎ度数は右肩上がり。
『ウェイキング・ライフ』(2001)では、実写で撮影した素材に色を塗り、アニメーション化。夢の中に浮遊する独特の映像世界を構築。『テープ』(2001)では、モーテルの一室から一歩も出ず、実時間で進行していく閉鎖的で緊張感のあるサスペンスを製作。
そんなインディペント作品を手掛けたと思ったら、ロックおじちゃん=ジャック・ブラックが音楽愛を語り倒し、吹奏楽部をロックナイズさせていく大作『スクール・オブ・ロック』(2003)をスマッシュヒットさせます!
人気シリーズのリブートで、スポーツ・ヒューマンドラマ『がんばれ!ベアーズ ニュー・シーズン』(2005)など、メジャー作品も手掛けるようになっていきます。
そのフットワークの自由さ&作風のやり過ぎ感こそ、リンクレイターの持ち味なんです!!


関係者が語る
リンクレイターの映画作りについて、本作の中でイーサン・ホークによって語られる「着想は誰でも思いつくものばかり。でもそれを映画にできたのはリンクレイターだけ」という言葉が代弁してます。
中でも、一人で映画製作を始めた20代のエピソードが強烈!! なんと、本当にカメラを三脚に立てて、ひとり旅を映画化してたんです!!
もう、この頃から、リンクレイター節のクセが強い!!
のちに、仲間を集め、本格的に映画製作へ。
家族や関係者、出演者、スタッフ、リンクレイター本人が1作品毎に振り返り、過去作品や日本未公開作品の映像をバンバン流していきます。ソフト未収録のメイキング映像もたっぷりです!
個人的には、去年の4月に亡くなってしまった『フィラデルフィア』や『羊たちの沈黙』など、リンクレイターと同じく、インディペンデント出身で職人肌なジョナサン・デミ監督の出演シーンにジーンときてしまいました。


一大プロジェクト
まさに、リンクレイター節、ここに極まりな作品が、『6歳のボクが、大人になるまで。』(2014)。本当に6歳の子役を毎年、12年間、少しずつ撮り続けた映画なんです。ね? 頭おかしいでしょ?
そんな『6歳の~』の裏話をプロデューサーが語り倒すシーンは会場爆笑!
「世界一、金を集めにくい映画だと思った」と赤裸々に当時を振り返ります。
一方のリンクレイターは、「どうにか違和感なく、一人の男の子の成長物語を描けないかと考えてたら、そうだ! 毎年、少しずつ撮っていけばいいんだ!」と最高すぎるノーテンキ発言。
ただ、映画完成後は絶賛の嵐で、ベルリン映画祭監督賞を受賞しています。やはり、ただ者ではない。


リンクレイターを知ってる人は勿論、知らない人も本作を入門書として観てもらうとリンクレイター作品を
楽しめる事、間違いありません!!

大量の半魚人が大暴れのサスペンス・ホラー映画『コールド・スキン』

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映画『コールド・スキン』

新宿シネマカリテで行われる真夏の祭典【カリコレ2018/カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2018】が、今年もやって参りました!! 毎年、日本未公開になりそうなジャンル系作品の数々を世界中から厳選チョイス。日本のシネフィルにお届けする映画好き御用達の祭典【カリコレ】。
同企画の中でも、モンスター好きにオススメなのが、現在公開中の映画『コールド・スキン』。今年のアカデミー賞を獲りまくった『シェイプ・オブ・ウォーター』で半魚人へメロメロになった方も多いと思います。ラブ・ファンタジーだった『シェイプ~』に対して、大量投入された半魚人が観れるのがサスペンス・ホラーの本作。

ストーリー・あらすじ(ネタバレなし)

絶望的な状況での運命の出会い

南極海の果ての小島へ転属になった気象観測員の主人公。作業は1人ぼっち。孤独と戦うつもりで島に来て1日目の夜。海から姿を見せる大量の人影。なんと戦う相手は孤独なんて甘っちょろいモンではなく、殺しても殺しても押し寄せてくる半魚人の群れだったと発覚!! なかなか全貌を見せない半魚人たちが恐怖をあおります!! 毎晩、夜になると陸へ上がり、主人公を襲撃してくる半魚たち。こいつはマズイ所へ来てしまったと、テンパる主人公。

唯一の頼れる男は飲んだくれ!!

島に居るのは、主人公と灯台守のヤサぐれオヤジの2人だけ。このオヤジが、また半魚人殺しに人生捧げてるようなオヤジで、信用度はゲキ薄!! 半魚人を殺す為なら、ヘッチャラで嘘つく、職場の先輩としてはパワハラですが、サスペンス映画のキーマンとしては合格なお方。次に船が来るのは、「後任者が決まってから」というアバウトな約束のみ。いつ終わるともしれない半魚人たちとの殺し合い。果たして、主人公は、生き残れるのか? そして、物語が進むにつれ、怪しい行動が目立ち過ぎる灯台守のオヤジと半魚人の、ある秘密が……。

評価・考察

怖いのは半魚人だけではない!!

なんと言っても、本作の魅力は暗闇で、しかも群れになって襲ってくる半魚人たち。ゾンビテイストなキモ系クリーチャーとして描写。夜にしか現れない半魚人に対して、昼間のうちに限られた資源で、どれだけ準備できるかが肝になってくるサバイバル展開。そして、主人公を襲うのは半魚人だけではないんです。舞台が南極という事もあり、とにかく寒い!! 昼は装備の準備。夜は眠らず、寒さに耐えながら、ひたすら半魚人たちからの襲撃に備える……という過酷すぎる気象観測員の職場を垣間見れます。

監督

このジャンルで頼れるタイプの監督

メガホンを取ったのは、フランス生まれのザビエ・ジャン監督。殺し屋残酷物語な『ヒットマン』やギャングVSゾンビの『ザ・ホード 死霊の大群』、ポスト『悪魔のいけにえ』を狙った『フロンティア』など、フランス発「午後ロード」行きなスプラッター寄りのサスペンス・スリラーを手掛けてきたブレない人。
その偏りのある職人技が本作でも遺憾なく発揮されています!! 半魚人好きだけでなく、『エイリアン』や『遊星からの物体X』などのモンスター&クリーチャー好きにもオススメな一本!!
その他のジャンル作品を一挙公開中の新宿シネマカリテの特集企画【カリコレ2018/カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2018】は8月24日まで上映中!!

82歳のウディ・アレン監督の新作は大人のラブストーリー映画『女と男の観覧車』

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Photo by Jessica Miglio (C)2017 GRAVIER PRODUCTIONS, INC.
チャレンジ精神を失わない巨匠=ウディ・アレン監督の最新作が、現在公開中の映画『女と男の観覧車』!! 試写会へ行けなかったので、ヒューマントラスト有楽町で観賞してきました!! このブログでレビュー書きます!!
本作の主演を演じるオスカー女優が凄い事になっています!! 82歳のウディ・アレン監督は、年1本ペースで毎年、映画を作り続け、今や監督作は50本超え!! しかも、どの作品もジャンルは様々。それなのに、どのジャンルも秀逸という!! 本作も新たなチャレンジが詰まってます!! 今回のロケ地はコニーアイランド!!

あらすじ・ストーリー(ネタバレなし)

舞台は1950年代。遊園地の中でウエイトレスとして働いている主人公。夫も同じく遊園地のメリーゴーランド・コーナーで働いています。2人の住まいは、なんと施設内の射的場の上!!
そんなファンタジー映画のような設定なのに、物語は凄くリアルかつソリッド!! ギャップにグッときます!! そして、何より恐ろしいのは、主人公に様々なストレスが襲いかかってくるカオス的シュチュエーション!! 
旦那の前妻との天然系ノーテンキ娘の登場。この子がなかなか空気の読めない行動&発言を連発!!  そこへ、劇作家志望である主人公の浮気相手が絡んできて、嫉妬の炎を焚き付けます。そんな中、主人公の連れ子は、絶賛、火遊びにハマり中。ボヤを起こしては、校長室への呼び出し&カウンセリング騒ぎ。ゴールは見えなく、問題は山積み!! ユーモラスな域のメロドラマ展開をドタバタ喜劇にしない所がミソ!!
そんな話を遊園地内で展開する設定にも驚かされます。当時の遊園地の再現度も高く、実際に舞台であるコニーアイランドの遊園地を飾りつけ(アレンの子供時代の思い出の場所でもあります)。背景に写る遊園地の風景は、隅々までチェックが行き届いてるのが伝わってきます。メロドラマ展開とリアルな芝居のギャップ萌え!! ラストの決断は衝撃の結末が!!

予告編動画


6月23日(土)公開映画『女と男の観覧車』日本版予告編
予告編で使われているファンシーな曲は、本作の主題歌「ユー・ビロング・トゥ・ミー」。ちなみに、本作にはサントラ(サウンドトラック)はなし!!

キャスト

オスカー女優の一世一代の熱演!!

主人公を演じるのは『タイタニック』のケイト・ウィンスレット。ポスターからも伝わってくる色気。オスカーを受賞した『愛を読むひと』で美人なだけじゃないを証明。本作では、怒りまみれの生活の中で、女優だった頃の過去を楽しそうに夢想し、旦那に感謝しつつ、愛人を愛し、静かな嫉妬が大爆発!! なんと複雑すぎる役どころ!! 一見して、オーバーになりそうな喜怒哀楽。次々と襲い掛かるメロドラマ展開。それを絶妙なバランス感覚でリアルに落とし込んでいるのが素晴らしいです!!

ケイト・ウィンスレットの衝撃的な下着姿!!

本作の主人公のキャスティングに対し、アレンは「最高峰の演技力を誇る女優でないと成立しない」とコメント。ウィンスレットも「最初はどうすればいいのかわからなかった」と素直に答えているんですね。観れば納得のそりゃあそーだよねな難役!!
そして、何よりも驚かされるのは、デップリとした、その体型!! だらしない腹回りは、まさに中年体型。『タイタニック』でヌードを披露し、少年たちのハートにホールインワンしてた頃の面影はゼロ!! なのに下着のシーンが多いという。見て良いものか、悪いのか。そんな気持ちにさせるのも生々しいです。

感想・評価・解説

映画を彩るカラフルな画面の裏には……

役者たちの熱演を長回しで抑えている本作。
ほとんどのシーンを1カットのみで構成。勢いで見せる演劇的な長回し!! 圧倒的技術力!!
カラフルでありながら、レトロな雰囲気を残す超絶技巧で画面作りをしたのは、『地獄の黙示録』や『ラスト・エンペラー』など3度のアカデミー賞受賞歴のあるベテラン撮影監督ヴィットリオ・ストラーロ。本作では、「レジナルド・マーシュやノーマン・ロックウェルを意識した」との事で、なるほどな画作りに溜め息が漏れます。
中でも、タイトルになってる観覧車は「同じ場所をグルグルと回り続けている」比喩表現になっている辺り、気が利いています。
新しいチャレンジの中で、しっかりと皮肉の効いたアレン節に思わずニヤリ。奇跡のメンツが集まった夢のコラボレーションは、是非、劇場でご確認を!!
映画『女と男の観覧車』は、東京・新宿ピカデリーほか全国公開中!! パンフレットもカラフルでオシャレ!! 上映館やムビチケは公式情報を!!

作品概要

監督/脚本:ウディ・アレン『カフェ・ソサエティ』『ミッドナイト・イン・パリ
出演: ケイト・ウィンスレット愛を読むひと』『タイタニック
ジャスティン・ティンバーレイクステイ・フレンズ』『TIME/タイム』
ジュノー・テンプル『リトル・バード164マイルの恋』『トランストリップ』
ジム・ベルーシ『K-9/友情に輝く星』『ゴーストライター
2017年/アメリカ/英語/カラー/101分/アメリカンビスタ/原題:WONDER WHEEL
英語タイトル:Wonder Wheel
Photo by Jessica Miglio  © 2017 GRAVIER PRODUCTIONS, INC.

本作観賞前にTSUTAYAYahoo!(ヤフー)で関連作品をレンタル!!

ブルージャスミン

ミッドナイト・イン・パリ

『教授のおかしな妄想殺人』(吹き替え版)

カリフォルニア州に実在するお化け屋敷がまさかの映画化『ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷』

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『ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷』
『家』や『たたり』を始め、『ホーンテッドマンション』、『クリムゾン・ピーク』『アザーズ』『回転』『悪魔の住む家』などなど、世の中にあまたあるお化け屋敷ムービーの数々。そんな中、現在公開中のホラー映画『ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷』。本作の元ネタは、カリフォルニア州に現存する幽霊屋敷が舞台になっています。今では観光地として見学もできたり、映画の撮影のロケも行われています。「ゴーストハント」やテレビ番組「仰天ニュース」「アンビリーバボー」でも取り扱われ、図面なども紹介されていました。知っている方もいるかもしれません。とは言え、本作はドキュメンタリー映画ではありません。口コミで観客が増えているという本作。どのように映画にしているのでしょうか?
試写会へ行けなかったので、劇場で観て来たレビューになります。

実在の呪われた屋敷=ウィンチェスターハウスとは?

実在するウィンチェスター・ハウスの説明

そもそも「ウィンチェスター」とは銃のメーカーの名前。連射可能という当時の最新型で、ウィンチェスターライフルは殺傷力バツグン!! アメリ南北戦争では活躍。多くの兵士の命を奪いました。
所がその後、創業者のウィンチェスターさんは病死。産まれて間もない娘までも、立て続けに亡くした持ち主のウィンチェスター夫人。これは何かヤバイと確信。霊媒師に相談。すると、「一族に起きた不幸は全てウィンチェスター銃で命を落とした亡霊たちの仕業。彼らを閉じ込める屋敷を拡大し続けよ!」とのハード過ぎるお告げを頂くんです。それを素直にしっかりと受け止めた夫人。巨額の財産をフル活用。ウィンチェスターハウスを建設したのです。内部の内装なども夫人によるデザイン。

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(C)2018 Winchester Film Holdings Pty Ltd, Eclipse Pictures, Inc., Screen Australia and Screen Queensland Pty Ltd. All Rights Reserved.

増築を繰り返していくウィンチェスター・ハウス

夫人が生きてる頃から……。つまり38年間、24時間体制で増築を繰り返しました。1906年のサンフランシスコ大地震により一部倒壊。ちょっと小さくなったものの、最盛期には7階建て、500部屋、東京ドーム14個分に拡大。そんなけデカい上に、狂った間取りなんで、これがまた怖いんです。
「どこにも行き着かない階段」、「床に向かって開く窓」、「迷路のようなホール」、「隠し部屋」、「秘密の通路」、「天井に届く階段」などなど。無計画な増築を繰り返した結果、常人には理解できない摩訶不思議な構造に。迷子は必至。夫人は残りの生涯を喪服で過ごし、霊の供養に努めました。が、屋敷での幽霊の目撃談や怪現象は後を断たず……。

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(C)2018 Winchester Film Holdings Pty Ltd, Eclipse Pictures, Inc., Screen Australia and Screen Queensland Pty Ltd. All Rights Reserved.

あらすじ・ストーリー(ネタバレなし)

どう考えても、どうかしている夫人ですが、そこが本作のキーとなります。
ウィンチェスター社の経営陣は夫人の精神不安定を理由に経営権を奪おうと計画。本作の主人公である精神科医の男へ精神鑑定を依頼。要は、主人公に「夫人は気がふれている」と診断書を出して欲しい訳です。そこで、半ばムリヤリ屋敷へ連れて来られる主人公。ただ、この主人公の精神科医にも問題が。奥さんを亡くした過去があり、現在は絶賛アヘン中毒。さらに、「幽霊なんて非化学的」とオカルトを全く信じていないお方。ゆえに、好奇心で「ダメ」と言われてる事を次々に実行!! 人としては、どうかしてるけど、ホラー映画の主人公としては合格な男だったんです。挙げ句、怪現象や幽霊が出ても「ヤバッ!! アヘンやり過ぎちゃった!!」と死亡フラグに気づかない始末。
こうして、ウィンチェスター夫人の精神鑑定ミッションに取り掛かりながら、うっかり様々な屋敷の秘密も見つけつつ、悪霊に殺されそうになる……というメチャクチャ忙しい最恐お化け屋敷ムービーが完成しました。一体、なぜ、怪現象が起きるのか?!

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無料配信動画・予告編動画


「ウィンチェスターハウス」予告編

評価・考察・感想

冒頭から、謎の屋敷へ強制訪問。信用度ゼロに近い夫人の登場。ミステリー要素満載で作品の世界観に引っ張られていきます。その上、アヘン中毒の主人公までも信用できないという人間不信設計。次から次へと起こる怪現象!! それらが怖がらせる仕掛けでありながら、謎のヒントを小出しにしている構成も上手いです!! 中盤は中だるみしている感があります。ここで集中力が切れたら、つまらない映画になってしまいそうですが、ラストは大スペクタルへ転じていくので、結末も含め、満足感は高めでした。怖い話も詰め込まれています。

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(C)2018 Winchester Film Holdings Pty Ltd, Eclipse Pictures, Inc., Screen Australia and Screen Queensland Pty Ltd. All Rights Reserved.

監督・出演者

本作のメガホンを取ったのは、『ソウ』シリーズの新作『ジグソウ:ソウ・レガシー』や『プリデスティネーション』を監督した双子のマイケル&ピーター・スピエリッグ監督。サスペンスフルなSFアクションを作ってきた兄弟が、アクションを封印。怪現象を緊迫感たっぷりに描いています。
キャストも芸達者が揃っています。主人公の精神科医エリック役に『ターミネーター:新起動 ジェニシス』や『エベレスト 3D』のジェイソン・クラーク。ウィンチェスター夫人を演じるのは、『クイーン』でアカデミー賞を受賞したヘレン・ミレン。怪しいけどマトモなのかイカれてるのか解らない絶妙な芝居で好演してます。謎の男:ベン役には『チェインド』のエイモン・ファーレン。

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(C)2018 Winchester Film Holdings Pty Ltd, Eclipse Pictures, Inc., Screen Australia and Screen Queensland Pty Ltd. All Rights Reserved.

最後に

ちなみに本作、一部シーンでは本物のウィンチェスターハウスでロケ撮影。撮影中にも怪現象を幾人のスタッフが目撃。しかし、心霊スポットで心霊映画を撮るというのは、どんな気持ちなんでしょう?
特別暑いと言われる2018年の夏を本作で乗り切るのも逸興。6月29日より、上映劇場は東京だとTOHOシネマズシャンテ、ヒューマントラスト有楽町&日比谷、神奈川はブルク13、大阪ステーションシネマほか全国公開中となります。パンフレットやグッズも販売中。上映映画館や前売り券・ムビチケ、上映期間に関しては、公式ホームページか公式ツイッターをチェック!! 過去の幽霊屋敷ムービーのDVDをレンタルして観に行くのも良いかもしれませんね!!

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(C)2018 Winchester Film Holdings Pty Ltd, Eclipse Pictures, Inc., Screen Australia and Screen Queensland Pty Ltd. All Rights Reserved.

概要

【監督】マイケル・スピエリッグ&ピーター・スピエリッグ
【出演】ヘレン・ミレン/ジェイソン・クラーク/セーラ・スヌーク
【提供】ポニーキャニオン/REGENTS 【配給】REGENTS/ポニーキャニオン
【宣伝】REGENTS 【字幕翻訳】栗原とみ子
2018/オーストラリア、アメリカ/英語/99 分スコープ/5.1ch/原題:Winchester/G
© 2018 Winchester Film Holdings Pty Ltd, Eclipse Pictures, Inc.,
Screen Australia and Screen Queensland Pty Ltd. All Rights Reserved.

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おすすめお化け屋敷ムービー紹介

Amazon・hulu・ネットフリックスなどの配信、Yahoo!などの無料視聴にない作品もあるので、TSUTAYAやゲオで探すと良いかもしれません!!

『家』

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『たたり』

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アザーズ

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『回転』

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『悪魔の住む家』

『呪われた家』

6/15Voyantroupe第4回本公演「Paranoia Papers ~偏執狂短編集Ⅳ~」

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Voyantroupe第4回本公演「Paranoia Papers ~偏執狂短編集Ⅳ~」をサンモールスタジオで観劇して来ました。

シリアルキラーや殺人を題材にしたシリアス路線やブラック・ユーモア路線など偏った中で様々なバリエーションのオムニバスで見せていく「偏執狂短編集」シリーズの最新公演。

本公演は、【赩(きょく)の章】(上演時間:3時間15分)と【黈(とう)の章】(上演時間:2時間30分)の2つの章によるオムニバス形式。非常にボリューミーです。日によって2つの章のどちらかを上演してる訳ですが、ボクは「ぶっ通し」公演という2章立て公演を観てきました。上演時間が6時間近い、頭のおかしい興行になっております。



【黈(とう)の章】
・「毒妃クレオパトラとアルシノエ」
野心満々なクレオパトラを中心に、ピュアな妹、権力争い真っ只中の2人の男たちが繰り広げる陰謀劇。
オール日本人キャストにも関わらず、外人にしか見えないキャスティングで重厚な語り口。
物語と直接は絡んでこない蛇まみれのオネーちゃんたち、スモークたっぷりのステージ上や、アヘンにより性欲を爆発させる設定など、怪しい魅力がスパーク。
一発目から圧倒的世界観を見せつけられ、ただならぬ雰囲気。

・「レディ・ゴダイヴァとピーピングトム」
どこかの貧困にあえぐ国を舞台に、納税を自分のさじ加減で取りまくる領主。
領主の妻のドレスメイカーである女の助手の男を狂言回しにしつつ、彼の暗躍していくストーリー。その中で、納税の引き下げを求める村の代表者、世間知らずな領主の妻、挙げ句、覗きが趣味で追放された前領主など、キャラの濃い登場人物たちが右往左往するブラック・ユーモア満載な一本。
話が二転三転と転がっていく様も面白く、シェイクスピアのコメディ作品を彷彿とさせました。今公演で、1番、ボク好みな一本でした。

・「ウェストご夫妻の偏り尽くした愛情(風)」
隣人たちが、引っ越してきた夫婦のパーティーを開くものの、それが飛んでも展開に。ノーテンキなノリで殺人にまで発展するブラックすぎるコメディ。
実は以前の公演でも同じ演目を観ているのですが、今回はキャストが一新。年齢層が若くなった分、学芸会的ソフトなチープさが破天荒すぎるストーリーとマッチ。個人的には、以前の公演版よりも楽しめました。



【赩(きょく)の章】
・「俺はアンドレイ・チカチーロ」
稀代なシリアルキラーであるチカチーロの半生を舞台上で再現するという今回、1番、力を感じた作品。
青年期と成人期を別の役者が演じる事で、リアルタイムである演劇の時間的飛躍を表現。尚且つ、シリアルキラーへの覚醒まで演出している手腕に脱帽&興奮。
何が怖いって、全然、似てないと思っていたチカチーロ役の役者さんがクライマックスでソックリに見えた事。もう最後にはチカチーロにしか見えなくて唖然としました!!
ちなみに、『ロシア52人虐殺犯/チカチーロ』というテレビ映画もあるんですが、その中のチカチーロより似てました!!
ただ、犯行シーンは事前に撮影された映像を流す演出がされているんですが、その映像がチープ過ぎて!! 職業柄、この映像のチープさがハナにたついて、残念すぎました。これなら無い方が良かったレベル。

・「切り裂きジャックたるために」
チカチーロに続き、実際の連続殺人事件である切り裂きジャックを題材にした一本。なんですが、実録路線で見せたチカチーロと違い、自殺したジャックが登場……というキチガイ過ぎる設定!!
しかも、「切り裂きジャック事件は被害者は5人と言われているが、自分の犯行は4人だけ。5人目の犯人を探して、切り裂きジャックの後継者にする」という架空裁判テイスト。
並んだ被害者の売春婦たちと犯人候補生たちがジャックの前で犯行を再現していくという、これまたトンデモ展開に。
とにかく、先の読めないストーリーがスリリング&ドラマチック!!

・「ウェストご夫妻の偏り尽くした愛情(闇)」
上記の「風」編と同じストーリーながら、キャストと演出を一変。オフビートというよりゾンビのような演技と薄暗い照明でダークなトーンに。
ただ、演出の意図がさっぱり解らなかったです。要は、このバージョンを作った意味が解らなかったですね。
元の脚本が良かっただけに悪変させてる印象でした。ボクが「風」バージョンに引っ張られてるのか、「風」バージョンを観てないと楽しめないような気がしてしまいます。
今公演で1番、つまらなかったです。


以上の6本立てになりました。
舞台ならではの生々しさがダイレクトに伝わってくる公演ですので、舞台好きにも無条件にオススメできます。

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6/11『ゲティ家の誘拐』

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『ゲティ家の誘拐』を観賞。

巨匠=リドリー・スコット監督による実録誘拐事件をサスペンスフルに映像化。

1973年のローマ。美少年が男たちに誘拐される所から始まります。誘拐されたのは、”世界一の大富豪”と言われた石油王のジャン・ポール・ゲティの孫。身代金は1,700万ドル(当時のレートで約50億円)。……というタイトル通りなお話。

しかし、この事件でセンセーショナルだったのは、ゲティさんが「金は一銭も払わない」と発表した事。実はゲティさん、超ドケチだったんです。それでは困ると誘拐された少年の母親はゲティさんに「金を出せ!」と訴えるんですけど、取り合ってもらえません。
そこで、ゲティさんの依頼を受けた元CIAの男とお母さんが犯人グループと交渉にあたるエピソードと犯人グループの元で監禁されてる少年のエピソードが同時進行で展開。

本作の脚本を担当したデヴィッド・スカルパ
「最も難しかったのは全体のバランスで、スリラーとシェイクスピア的な家族ドラマの間を行ったり来たりする構造をめざした」
との事。おっしゃる通り、重厚な語り口の中で、ハラドキな緊張感あふれたサスペンスになっておりました!

さらに、本作には製作時のドタバタも話題になりましたね。2017年12月に全米公開が決まった状況で、10月にゲティさん役のケビン・スペイシーのセクハラ問題が発覚。急遽、10億円かけて、クリストファー・プラマーを代役にして再撮影。わずか9日間でゲティさん出演部分の追加撮影を行い、何とか公開に間に合った訳です。そんな事件があったにも関わらず、むしろ、プラマーは88歳でのアカデミー賞の演技部門ノミネート者で歴代最高齢記録を更新。

急な代役を頼まれたプラマーは
「撮影日数は限られていたが、ありがたいことに私は記憶力が良く、次から次へと撮影を進行してくれるので、連続して演技ができ、(中略)全体の流れがスムーズで助かった」
「リドリー(本作のリドリー・スコット監督)はビジョンがはっきりしており、頭の中ですでに編集をしているので何度もテイクを重ねる必要がなかった。」
と謙虚に語ってます。

お母さん役のミシェル・ウィリアムズ
「朝、撮影現場に着くと、『さあ仕事が始まるよ。カメラはこのアパートの至る所に隠されている。最初はここから始めてもらって、終わりはあそこかな。リハーサルもカメラを回しながらやろうか?』って具合に仕事を進めることが多かった。気に入ったカットが撮れると、『さあ、次はどこだっけ?』ってどんどん先へ進めて、1~2テイクで終わらせちゃうの!」
リドリー・スコット監督の現場を語ってます。

当のリドリー・スコット監督は
「映画会社がケビン・スペイシーをゲティ役に推してきた時は、うーんと思ったが、クリストファー・プラマーはイメージどおりだった。」
クリストファー・プラマーのおかげで全然違う映画になった。スペイシーのゲティはひたすら冷酷なだけだった。しかしプラマーには心の奥に隠した温かさ、寂しさ、人間味がある。ユーモアもね。おかげで、本当に哀れな男として深みが出た。」
と本当はプラマーが良かった発言をしてるんです。

ちなみに、元CIAのゲティさんお抱え調査員を演じるマーク・ウォールバーグにも一悶着あったんです。ウォールバーグは追加撮影に対して、通常のギャラである150万ドル受け取っていたんです。でも、お母さん役のウィリアムズのギャラは1000ドル以下。スコット監督はほぼノーギャラ。そんなギャラ格差事件が明らかになり、ウォールバーグはヤバいヤバいと、追加撮影分のギャラ=150万ドルをセクハラ撲滅運動「Time's Up」の基金に寄付。何とか収まりました……という。
そーゆーうるさ過ぎるバックボーンを知ってみると、やたらに感慨深い一本になっておりました。


『ゲティ家の誘拐』
★★★☆☆
星3つ

※写真は特殊メイクごてごてのケビン・スペイシー版と代役のクリストファー・プラマー版。
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6/10『ビューティフル・デイ』

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ビューティフル・デイ』を観賞。

極端な説明を排したハードボイルド調な作風とシリアスな展開。突然のブラックなユーモラス。ジャンルも観客の感情もゴッチャゴッチャにする孤独な男の戦い映画。

主人公は闇のお仕事請負人。上院議員から「娘を売春宿から救出してくれ」というシンプルな新規案件を引っ提げ、完璧な仕事を淡々とこなしていく主人公。
チンピラたちをハンマーで野蛮に殴り殺して、見事、上院議員の娘を救出……と思ったら、突然、行き先不明の逃走劇に発展!! 状況は混乱を極め、観る者を飽きさせません!

さらに、主人公には軍人時代に見た陰惨な風景のトラウマや子供の頃に虐待を受けたトラウマもあり……というトラウマの総合総社のような人物。ゆえに、フラッシュバックする過去&妄想の中で己と戦っているんです。
とにかく、細かい説明は抜きだぜ!というドンブリ男飯のようなストーリー展開。とか言いつつ、本作のリン・ラムジー監督は女性。実はきめ細かい演出をさりげなく味付け。
老いた母親と二人暮らしという主人公のバックボーン。そんな描写の中には、ボケが始まっているらしい母親とのコミカルなヤリトリ。そこはかとない愛情を垣間見る事が出きます。

主人公を演じるのは、3度のオスカーにノミネートされた割りに、『インヒアレント・ヴァイス』ではヒッピー探偵、『教授のおかしな妄想殺人』で完全犯罪にとりつかれた大学教授と、もはや怪演という言葉がシックリくるホアキン・フェニックス。本作でも、だらしないながらも筋肉質な肉体に、自殺願望丸出しで、もはやサイコパスにしか見えない風貌。なのに、少女を救おうとする複雑が具現化したようなキャラで、彼の魅力が炎上しています。見事にカンヌ国際映画祭で主演男優賞を授賞!!

レディオヘッドジョニー・グリーンウッドによるホラー映画のような音楽。監督の元カレで監督いわく「阿吽の呼吸」と語るカメラマンのトーマス・トウネンドによるエッジの効いた映像。そして、リン・ラムジー監督のスピーディーな脚本……と様々な要素が良い方向へ転がり、独特な空気を醸し出す傑作です!!

パンフは、監督&ホアキンのインタビュー、コラム記事、さらに原作との変更点など、様々な角度から本作を紹介。本作のファンなら買いの一冊。


ビューティフル・デイ
★★★★★
満点5つ星

6/10『ファントム・スレッド』

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ファントム・スレッド』を観賞。

1950年代のロンドン。舞踏会に着ていくような豪華絢爛なドレスを作る鬼才のデザイナーを主人公に、男女のイビツな恋愛関係をサスペンスたっぷりに描いたのが本作。

主人公は、ドレス作りの鬼才のデザイナー……というか、もはや奇人レベルの変り者。単調で静寂な日常の中でドレス作りを淡々と進めていのが彼のやり方。
そんな男が、テーブルにぶつかるレベルで仕事の出来なさそうなウエイトレスの女と出会うんです。そこからは、電光石火の勢いで、我が家へ招き入れ、共同生活が始まります。ですが、この女が抜群に空気を読めない女だったんです。
皆が感じた事あるであろう、空気読めない奴の空気を読まない行動って、かなり恐怖ですよね! それをサスペンスとしてアクセルMAXで描いたのが朝食のシーン。

毎朝、静かな朝食の場でデザイン画を描き溜めるのが、デザイナーの習慣。そこで、カチャカチャ音を発てながら朝飯を食って、デザイナーの集中力を削ぎ、イラつかせます。
挙げ句、デザイナーの身の回りの世話をする妹に「あの人、神経質なのよ」と言い放つ有り様! ただ飯を食うだけのシーンで、こんなにヒヤヒヤするのか!!
※この映画、コメディじゃないですからね!

空気は読めないなりにも、私のことを愛して欲しい精神に従順な彼女は乱暴すぎる素直をスパークさせていきます。次々と「だから止めとけって!」と思う行動を繰り返していくんです。
「これじゃあ、デザイナーも愛想尽きるぜ」と思っていたら、後半、まさかの流れに!!
常気を逸した行動に、もう目が話せない展開に!

本作で神経質すぎるデザイナー役を演じるのは、やり過ぎ役作りで有名なダニエル・デイ=ルイス
実在の脳性麻痺の画家を演じた『マイ・レフトフット』では車イスで生活。モヒカン族を演じた『ラスト・オブ・モヒカン』では、6ヶ月間かけてサバイバル術を習得。『ボクサー』ではプロボクサーと週3回のスパーリングを3年続けた……という、仕事熱心なお方。本作でも、ニューヨーク・シティ・バレエ団の衣装監督に弟子入り。裁縫から立体裁断、寸法の仕方などを習得。最終的には、ブランドもののスーツを複製できる腕前に。
そんな安定の演技力で3度目のアカデミー賞主演男優賞を授賞。

前半の豪華絢爛ながらも、おっとりした展開は多少、退屈。ですが、そこを活かして、エッジを効かせた後半のサスペンスは見事。ヒッチコックの『レベッカ』を意識したという作風でアカデミー賞作品賞も授賞してます。

パンフはスタッフ&キャストのインタビュー記事は少なめではあるものの、映画が出来るまでを追って紹介しているので、バックボーンを知るには打ってつけの一冊でした。

ファントム・スレッド
★★★★☆
星4つ

6/9『万引き家族』

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万引き家族』を観賞。

万引きする家族のお話です。万引き、良くない! でも、万引きのシーンはそんな多くないんです。家族のシーンはいっぱいです。
そんな家族が、親に虐待を受けているとおぼしき女の子を連れて来ちゃう。万引きですよ! 要は、家族を万引きしてくるんですよ!

で、観てたら徐々に、家族のように生活している一家が、実は血の繋がりのない他人って事が解ってくるんですね。
キャストは疑似パパ役にリリー・フランキー。疑似バアちゃん役に樹木希林。疑似ママ役で安藤サクラ。近所の駄菓子屋のオヤジ役に柄本明。……と、オフビート芝居な芸達者揃いで、ドキュメンタリー畑の是枝監督のリアル思考を満足させる面子。ゆえに、社会派ヒューマンドラマの本作にコミカル&ユーモラスを与え、見易くしてくれてます。
そんな中、オーディションで選ばれた演技初挑戦の子役の2人がナチュラル芝居で主役を演じています。

リリーさん演じる疑似パパは、「お店にある物はまだ人の物になってないから盗んでOK」という俺ジナルな教育方針の持ち主。ジリ貧の家計を助ける為、子供たちに高等万引きテクを教えてるんです。
その教育方針を素直に信じてた主人公の少年でしたが、ある事をキッカケに万引きが犯罪だと自覚。罪悪感&戸惑いがスパークして、行き先不明のストーリー展開となって、後半、ゴロゴロ転がっていきます。そして、全くの他人と思っていた家族がどのように疑似家族化したのか? そこから彼らの関係が明らかになっていきます。

本当の家族の元を離れたときに着てた服を小滝あげするシーンや、家族で花火を見上げるシーンなど、日本の土着文化感も交えつつ、絵空事っぽい画作りやマンションに囲まれたボロ家のロケ地など、寓話風味な仕上がりに。

そーゆー描写のせいかは知らないですけど、カンヌ映画祭で21年ぶりの日本人監督によるパルムドール(最高賞)を授賞した本作。

パンフはパルムドール授賞前に作られたせいか、その話には触れてないのですが、監督の着想や各スタッフ&キャストのインタビューにより、独特の現場での是枝演出が垣間見える内容。様々な読み解きのできる本作へのコラム記事も良かったので、オススメです。


万引き家族
★★★★☆

5/31『デッドプール2』

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デッドプール2』を観賞。

前作にも増して悪ノリ、アクション、ストーリーがボリュームアップした続編。まさか、ブラック・ジョーク満載のアクション・ヒーロー映画で泣いてしまうとは……。

前作では、運命の女性に出会った主人公のデップー。しかし、今回のデップーは次のステップ→家族作りに憧れるんです。しかし、ソッコーでその夢を絶たれたデップーは絶望。死ないのが彼の特殊能力なのに自殺にチャレンジする程(勿論、死ねません)。所が、たまたま出会ったポッチャリ系怒れるティーンなミュータントの少年と出会い、彼を更生させようと思い立つんです。しかし、そんなタイミングで未来からやってきた戦闘ソルジャー=ケーブルが登場……。

後半戦はケーブルの目的が明らかになり、捕まった少年の救出作戦と、さらなる強敵の登場、デップーが一緒に戦う仲間たち=Xフォースを結成……と目まぐるしいストーリー展開。

今回も様々なメタファーやパロディ満載。とりあえず、観客に話し掛けるメタ描写、「007」シリーズのパロディなオープニングが爆笑なんですが、1番はやはり敵キャラのケーブル。『アベンジャーズ』では最大の悪役サノス役のジョシュ・ブローリンが演じてるんですね。これは、サノス対デッドプールの夢のコラボです!!

その他、新キャラ続々にも関わらずのバランスの良さ。BGMの選曲センス。挙げ句に、デップー役のライアン・レイノルズの過去作やデップーの黒歴史まで茶目っ気たっぷりにイジり倒しています。そこまでして、1作目や「X-MEN」シリーズを観てない人も楽しめる親切設計。

パンフは、スタッフ&キャストのインタビューを元に各コンテンツを紹介する豪華仕様で、おふざけ無しの真面目な作りで、読み応えたっぷり!
裏話を知りたい方へオススメの1冊。


デッドプール2』
★★★★★
満天5つ星

『アメリカン・アサシン』

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『アメリカン・アサシン』を観賞。

冒頭からビーチで恋人にプロポーズ。満面の笑みの元、OKをもらい、死亡フラグが立った瞬間、機関銃をそこら中に撃ちまくるオジさんたちが出現。イスラム過激派の乱暴な無差別テロにより、フィアンセになりたてホヤホヤの恋人を失う主人公。
そこから、根暗野郎にトランスフォーム。電光石火の早さで、復讐の為、殺人スキルを猛特訓。それが転機となり、CIAにスカウトされるというサクセス・ストーリー。
ネイビーシールズ出身の鬼教官による地獄特訓を受け、晴れて仲間入り。鬼教官の指揮下の元、初ミッション参加。所が、プルトニウムを盗んで、核兵器の製造を目論む……という景気がいいにも程があるテロリスト集団に遭遇。さらにそのバックには、鬼教官の元弟子で、今は残忍テロリストへ華麗な転職を果たしたラスボスの存在がチラ見え。核のカウントダウンを止める為、主人公と鬼教官が奔走するヒヤヒヤ展開へ。

どーも過去のスパイ・アクション映画からの既視感ある設定だらけなんですが、原作は2011年のヴィンス・フリンさんの書いた人気シリーズのミッチ・ラップ シリーズ。テレビドラマ『24 -TWENTY FOUR-』のコンサルタントを務めたお方。その為、「スパイ」「CIA」「テロリスト」の単語が出てくる映画が好きな人には確実に楽しめる内容です。

主演は『メイズ・ランナー』シリーズの濃い割りにファニーな顔立ちが勇ましいディラン・オブライエンくん。とにかく、アクション・シーンがキレッキレ。
そんな若造に負けるかと鬼教官を演じる元バットマンマイケル・キートンも引き締まったボディで、現役バリバリ感なフェロモンを撒き散らしています。

上司の命令を無視するスタンドプレーが結果的に上手くいき、調子に乗りまくる主人公。中東のテンプレなテロリスト像。そういった、アメリカンに歯向かう者への報復には手段を選ばない大味な展開などを受け入れられるかで、作品の評価が変わってくると思います。良くも悪くもトランプ時代のスパイ映画。


『アメリカン・アサシン』
★★★☆☆
星3つ

【観劇】『虹のかけら ~もうひとりのジュディ』

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スパイラルホールにて、Keiko Toda 60years Anniversary『虹のかけら ~もうひとりのジュディ』を観劇。

本作は戸田恵子の60歳を祝い、盟友=三谷幸喜が構成・演出を手掛けた一人芝居。

本作は、映画『オズの魔法使』のドロシー役でアイドル的人気を博したミュージカルスター=ジュディ・ガーランドの生涯の実録エピソードで構成。それをジュディ・ガーランドではなく、ジュディの付き人&専属の代役として長年、寄り添った「もう一人のジュデイ」ことジュディ・シルバーマンの目線で描いてる所がミソ。

戸田恵子が、シルバーマンの日記を朗読。少女から大人の女性まで演じ分ける戸田恵子の朗読芝居もさすがなのですが、さらに、ジュディ・ガーランドが出演したミュージカル映画の楽曲まで熱唱。朗読と歌&ダンスが交互に展開していく様は、思いの外、スリリング!! しかも、ミュージカル好きじゃなくとも、聴いたことあるであろう名曲揃い。

栄光の影に隠されたジュディ・ガーランドの破天荒な私生活、没落していく人性。そして、シルバーマンのガーランドに対する愛情と憎しみの入り交じった感情が浮き彫りになっていく……というストーリーもグッときます。

それだけでも、豪華コラボなのですが、ピアノ&ベース&ドラムの生演奏つきの贅沢仕様。

『世界でいちばん長い写真』

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『世界でいちばん長い写真』を観賞。

消極的な少年がパノラマ写真機を通して、様々な人々と関わり、成長していく一夏の思い出=童貞映画!

この映画、主人公の従姉の結婚式のシーンから始まるんです。主人公と従姉の会話から回想シーンになって、結婚のキッカケが語られていく。それは、主人公が高校生の頃の一夏の話なんです。
ボンクラ高校生の主人公が、従姉の働く古道具屋で古めかしいカメラを発見。調べてみると、改造パノラマ写真機と解るんです。そこで、色々と撮ってみたり、研究したりしている内にハマってくんです。
それが周りの同級生たちの知る所となり、話がどんどん膨らんで、「学園祭の全校生徒の集合写真を、このパノラマ写真機で撮ろう」となっちゃう。
これは、主人公にとっては一大事なんですよ。なぜなら、主人公は消極的を通り越してコミュ障レベル。なのに、リーダーに祭り上げられるという。
そんな中で、今まで関わる事のなかったキャラの濃い同級生たちと実行委員をやって、甘くて苦い青春を経験していくんですね。

1つ言っておくと、実行委員の中に科学部の男の子が出てくるんですけど、爆笑です。「こーゆー変なしゃべり方する奴、いたよね!」っていう抜群に愛嬌のある童貞キャラなんですよ! 無表情で、ちょっと強がってる風に話す感じがツボです。

というか、ドキュメンタリーかなって思っちゃうくらい、出演者の皆さん、みんな芝居が上手いんですよ。すごい自然で。それに合わせて、前半は手持ちカメラを多様してて、やり過ぎてて、ちょっと気持ち悪くなるんですけど。

特に、写真部のツンケンした部長役の松本穂香ちゃんがすごく良い!! 学園モノに有りがちな「成績も良いしっかり者キャラ」なんです。いつも主人公を叱ってる優等生。で、なんなら主人公に思いを寄せてたりする訳なんですが。
そんなテンプレ・ヒロインが、クライマックスであんなに泣ける行動に出るとは思いませんでしたわ! いざ、集合写真を撮るってタイミングで走り出したときは、鳥肌が立ちました。もう大号泣ですよ!!


『世界でいちばん長い写真』
★★★★☆
星4つ

『馬の骨』

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『馬の骨』を観賞。

夢破れ自分を見失ったおっさんと地下アイドルからシンガー・ソングライターを目指す女の子のロッキー系ヒューマン・ドラマ。

そもそも、元祖オーディション番組「イカ天」で審査員特別賞をもらったロックバンドの名前が「馬の骨」なんです。主人公のおっさんは、「馬の骨」のボーカルだったんですけど、今や金ナシ夢ナシな日雇い警備員。この主人公が抜群にボンクラで、同僚の若いアンちゃんにバカにされ、仕事放棄。走って逃げたと思ったら、ワンカップ片手に道端で寝ちゃってるシーンなんかもう泣けてきます。

また、もう一人の主人公は、地下アイドルからシンガー・ソングライターを目指すヒロイン。絶妙に歌が下手で、発作的にアイドルグループを辞める展開は絶望的でしたが、クライマックスのライヴ・シーンではまるで別人。演じる小島藤子は半年間ギターの特訓を受け、本番に挑んだとの事。透明感のある歌声を披露。

そんなヒロインに出会った事で、主人公はバンドの再結成というミッションにチャレンジ。ヒロインは、歌&ギターの特訓を重ね、ライヴ成功にチャレンジ。2人のチャレンジが同時進行で交差する中、主人公を恨む元同僚やヒロインに近づこうとするアイドルオタクなど、スムーズには行かないスポ根展開。

血を流しながらライヴ・ハウスへ向かう主人公に感涙!! 本作の監督&脚本&主題歌の作詞作曲&出演を兼ねる桐生コウジは自伝的な物語を見事、エンタメ映画として昇華。そう、今作は『ロッキー』であり、『ライムライト』でもあるんです!!


『馬の骨』
★★★☆☆
星3つ

『ニンジャバットマン』

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『ニンジャバットマン』を観賞。

ワーナー・ブラザースによるDCフランチャイズにより、クールジャパンとバットマンが奇跡のコラボ。

集められたメンツが凄いんです。アニメ版『ジョジ』のポップなOPを手がけた制作会社「神風動画」の水崎淳平が監督。『アフロサムライ』の原作者である岡崎能士がキャラデザイン。チャンバラ活劇が見せ場である劇団新感線の座付き脚本家である中島かずきが参加。この豪華すぎる日本クリエイターたちが圧倒的技術力と悪ノリをスパークさせたのが本作なんです。

バットマンが殺さずの誓いの元、過去の悪党たちが収監されたアーカム精神病院。その中の悪党が開発した転移装置により、バットマンと悪党たちは戦国時代の日本へタイムスリップ! 戦国日本でカルチャーショックを受けるシーンは爆笑。さらに、バットマンより2年も先にタイムスリップしていた各悪役キャラたちは、各地の戦国大名たちと入れ替り、打倒バットマンなクレイジー過ぎる兵器を用意しているんです。その後も大風呂敷は広がる一方。あと出しに次ぐあと出しで、ハチャメチャにも程があるクレイジーな展開はやり過ぎレベル。

そして、アメコミ・ファンでも頭がパンクしそうな登場キャラの多さも圧巻! 今まで、映像化では省略されてきた原作ファンには感涙のサブキャラたちが一挙登場という派手なサプライズ付き。ジョーカー、ハーレイ・クイン、ポイズン・アイビー、トゥー・フェイス、ベイン、ペンギン……という実写映画登場キャラは勿論、デス・ストロークゴリラ・グロッドまで登場。バットマンサイドもロビン、レッドロビン、ナイトウィングなどが登場。もうキャラの洪水ではあるんですが、各キャラの説明はなし。雰囲気で善玉or悪玉を見分けてねという茶目っ気の元、キャラ以上に盛り沢山なストーリーへ注力。常識を逸脱した唖然のクライマックスへひた走ります。



『ニンジャバットマン

★★★☆☆

星3つ