ユンギボの映画日記

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隣同士の夫婦が不倫する香港ロマンス映画『花様年華』(#40)

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ボクがウォン・カーウァイの映画の中で一番、好きな映画です。久々の再観賞です。

舞台は1960年代の香港。同じ日に隣同士の部屋へ引っ越して来た二組の夫婦。やたら家を留守にする夫を持つ妻。帰りが遅い事の多い妻の夫。お互いの夫と妻の持ち物から、不倫している事を推測した主人公たち。
それから食事をするような仲に。そこから、まるでゲームみたいに、お互いの連合いの役で不倫の始まりを再現するように。そのまま2人の関係がどんどん変化していくんです。

まず、お互いの連合いの不倫再現ゲームってのがユーモラスなんだけど、切ないですよ。しかも、不必要にダメ出しなんかしたりして。どんどん熱が入っていくのが分かるんですよね。「どっちから誘ったんだろう?」とか。
まるで恋人同士のように仕事後の食事。一緒に小説を書き、その小説の描写を演じてみるんです。それでいて、ベッドは共にしないという関係。友達以上、不倫未満。
物語は、その後、何年も時間を経過していく事になり、2人はすれ違い続けていきます。切ない大人の恋が描かれているんです。

監督のウォン・カーウァイは、脚本もなく、場当たり的に進めいく撮影スタイル。さらに、主人公2人は劇中で芝居をする訳です。もう役者さんたちは、どこの何のシーンを撮影してるのかサッパリだったでしょうね。
主演のトニー・レオンは、ウォン・カーウァイ映画の常連。インタビューで「メチャクチャ神経を使うから、役者によってはグッタリしてるよ。ボクはもう馴れたから何も考えずに現場へ行く」みたいな事を言ってました。

タイトルになっている「花様年華」というのは、劇中に流れるラジオでリクエストされた曲なんです。ボクは詳しくないですが、恐らく、1960年代当時に流行った歌謡曲なんでしょうね。
それを証明するように、全編に渡って、ウォン・カーウァイ監督の古き良き香港への哀愁を感じます。ロケも古めかしい建物ばかり。
主人公たちの住むアパートでは、大家さん主催の麻雀大会を開催。住人たちは徹夜で麻雀をし、夕飯をシェアする関係性。所が、退去後、久々にアパートを訪れるシーンで、大家さんが「最近は住人とも付き合いがなくて。昔は良かったわねー。ご飯食べて行って」とのヤリトリがあります。
ボクはウォン・カーウァイ監督が「オレの子供の頃はこんな感じで良かったぜ」と言ってるような気がします。カーウァイ監督は1957年生まれで、5歳の頃、香港へ引っ越してきたそうです。

そんな監督の想いを受け止めたカメラマン=クリストファー・ドイルのスローモーション撮影がまた切なさをアップさせます。
テーマ曲として使われているのは、鈴木清順 監督による日本映画『夢二』のテーマ曲なんですが、メチャクチャ合ってます。本家より本作の方が合ってる気がします。人の映画の曲も使ってしまうカーウァイ監督。逆に気持ちが良いです。


星4つ
★★★★☆