ユンギボの映画日記

ユンギボ(@yungibo)によるあらすじ紹介、ネタバレなしのレビュー、解説・考察をお届け‼

2017年5月28日『スプリット』

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『スプリット』を観賞。
 
まず監禁犯役のジェームズ・マカヴォイの多重人格芝居! 怖いです! 近づきたくない!
 
冒頭から早々に主人公の女子大生たちを拉致監禁。ひたすらマカヴォイの多重人格芝居。しかも、性別も年齢もバラバラ。しかも各人格を服装やメイクなどに頼らず演じ分けるんですよ。凄いですよねー。そんなアッパラパーな人格たちとの会話に出てくる謎のヤバそうな人格=「ビースト」。あくまでも人格なので姿こそ出さないものの、みんな怯えてるんですよ! どんだけヤバい奴なんだよと!
 
同時進行で監禁されたオネーちゃんたちが脱出を試みるサスペンス要素のオプション追加。もう先のストーリー展開が全く読めないんです。まぁ、ナナメ上に着地していくのですが。
 
ただ、あまりにも地下室での話が長いの、ちょっと飽きました。シャマランの次回作に期待です!
 
でも、お芝居好きな方はマカヴォイの芝居を観るだけでも楽しいと思いますね!
今作のシャマラン監督へのインタビューによると、「僕は脚本を戯曲のように扱いたいので、セリフを変えないように要求したんだ。」との事。それに対して「彼のセリフは脚本通りなんだけど、表情や体でアドリブを加えているんだ」そーな。
 
パンフは良くも悪くも普通でした。
 
★★☆☆☆

2017年5月28日『メッセージ』

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『メッセージ』を観賞。

 
宇宙人襲来映画です。と言っても、『インデペンデンス・デイ』みたいに戦闘機や銃で攻撃するでなく、『メン・イン・ブラック』みたいにコミカル描写もありません。故にウィル・スミスも出ません
 
普通、宇宙人襲来映画って軍隊の人が主人公で地球を守る為に戦ったりしますよね? 今作の凄いのは、主人公が言語学者の女性なんです。冒頭からUFOが世界各地に飛来というテンポの早さ。始まって早々に言語学者の主人公が宇宙人とのコミュニケーションを試行錯誤するんです。攻撃してこないから敵意は無いらしいと。文字を書いたり、ジェスチャーだったりで意思の疎通にチャレンジなんせ宇宙人との会話ですからね。相当なチャレンジですよ。つ一つが実験なんです。全く先が読めません。観てるコチラも心配になっちいます。応援したい気持ちになっちゃいます。感情移入ですね。上手いですねー。
 
そして、今作最大の謎である「宇宙人は地球へ何しに?」というメッセージを探って行く訳です。
 
さらに、宇宙人との対話チャレンジの最中、主人公が娘の生きていた頃を回想シーンで何回も思い出すんですね。色んなシーンで思い出すんです。その娘が赤ちゃんだったり、反抗期だったりで年齢がバラバラ。そんな主人公のバックボーンにも謎があるんです。超斬新なSF映画です。
 
UFOや宇宙人の造型がまた斬新。グレイタイプが主流のハリウッドで「こんな感じか!」っていう。知的な感じよりゾウとかダイオウイカのような巨大動物系。コミュニケーションも取れるのか微妙なビジュアル。
 
そんな宇宙人との対話はガラス(のような物)越しに行われるんです。ボクはあれ、スクリーンみたいだなーっと思ってました。画面ですよ。パソコンとかの。って事はパソコンの中身はネットですよ。宇宙人の文字が丸い円なんですけど、もはや記号ですよね。だから、あれ、ネットの世界のメタファーだと思うんですよね。意志が伝わるか分からない相手と記号で会話にチャレンジしてるんです。旧約聖書バベルの塔の逆版ですね。言葉の違う相手と頑張って会話するっていう。
そーゆー風に見えましたねー。
 
本作のパンフはビジュアル少なめ。一応、申し訳程度に監督や出演者のインタビューがチョロっと入ってました。あとは有識者の評論。でも、あまりピンときませんでした。本作を面白いと思った人だけ買いの1冊ですね。
 
 
『メッセージ』
★★★★☆

2017.5.27 『ろんぐ・ぐっどばい 探偵 古井栗之助』

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2017.5.27

『ろんぐ・ぐっどばい 探偵 古井栗之助』を観賞。

まず映画好きな人間がみんな、ロバート・アルトマン監督の1973年公開の『ロング・グッドバイ』って映画が好きなんですよ。で、本作はこの映画にオマージュを捧げたというか、インスパイアされた作品なんですね。

監督はピンク映画界の鬼才=いまおかしんじ監督です。いまおか監督と言えば、ピンク映画でも、ちょっとファンタジーな世界観の作品が多いですね。お洒落なんですよね。だから、女性も見やすいというか、女性ファンも多いですね。「私、ピンク映画も見るんですよー」とか言うサブカル女は大体、「いまおかしんじとかー」って言いますね。まぁ、それはいいんですけど。ピンク映画として作った映画が評判になって一般の劇場でも公開されたりしてますね。最近では一般映画も監督してたり、その他にも山下敦監督とかの脚本も書いてたりしますね。まさに鬼才ですね。

本作は、そんないまおか監督の一般映画。『ロング・グッドバイ』の世界観はそのままに日本へ置き換えたような映画なんですけど、基本的には林海象の世界観にソックリでした。『私立探偵 濱マイク』の世界観ですね。親が失踪していて施設育ちとかね、おねーちゃん達のいる店(恐らくデリヘルの事務所か何かですかね)に顔が効いたり。あと『傷だらけの天使』の岸田今日子みたいな人も出て来ますね。教会を運営していて、人探しとかの仕事を主人公に回したりしてるんですね。「うるせー、ババァ」とかって罵り合ったりしてね。最近はこーゆーハードボイルドものって無くなってきましたね。『探偵物語』とか。似ていて当たり前。全部、大元はアルトマンの『ロング・グッドバイ』なんですね。松田優作は『探偵物語』をやる時、かなり『ロング・グッドバイ』を意識してるんですよ。なにせ、映画を暗記して、1人で演じられたってくらいですからね。『鮫肌男と桃尻女』の浅野忠信とかも、もしかしたら影響を受けてるかもしれないですね。『ロング・グッドバイ』はNHKで日本に舞台を移したドラマ版を作っていて、その時の主人公を浅野忠信が演じてますね。

そもそも『ロング・グッドバイ』ってレイモンド・チャンドラーって作家の書いた「長いお別れ」が原作なんです。フィリップ・マーロウという探偵の登場するシリーズの一遍です。同じマーロウの作品でも「大いなる眠り」って小説がハンフリー・ボカート主演で映画化(映画のタイトルは『三つ数えろ』)されてます。あと有名な映画化作品はロバート・ミッチャムがマーロウを演じていた『さらば愛しき女よ』ですね。この時のミッチャムのぼやきが最高でした。大好きです。

原作は1920年代とかなんですけど、アルトマンの『ロング・グッドバイ』は製作された1970年代が舞台になってます。全体的にベトナム戦争中の暗い雰囲気。ヒッピーとかがワラワラ出てきます。上裸のおねーちゃん達が踊ってたりするんです。この時のマーロウ役はエリオット・グールド。同じアルトマン監督の1970年の『M★A★S★H マッシュ』では朝鮮戦争を舞台にヒッピーなアメリカ兵役でしたね。『ロング・グッドバイ』のナヨナヨしたしょぼくれた感じは原作ファンからは大不評でした。スーツとかもヨレヨレで。ただ映画ファンからは好評。コーエン兄弟とかウェス・アンダーソンとか好きですよね。原作の翻訳は村上春樹がやってますね。「影響を受けた」と言って。

本作も、そんな『ロング・グッドバイ』の好きな気持ちが画面に溢れ出ていましたよ。他作品と見比べながら観ると、色々と比較できて面白いですね。

『ろんぐ・ぐっどばい 探偵 古井栗之助』

★★☆☆☆

星2つ

2017.5.27 『美しい星』

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2017.5.27

 

『美しい星』を観賞。

監督は『クヒオ大佐』や『桐島、部活やめるってよ』の吉田大八監督。オフビートな笑いを無機質なタッチで描く作風の監督ですね。CMディレクター出身なので、無機質さの中にスタイリッシュさもありますね。ユーモラスな演出が印象的。そこで本作。原作は三島由紀夫なんですね。しかもSF。この組み合わせが違和感を感じるかもしれません。なんで吉田大八監督はこの作品を映画化したのでしょうか?

本作は東京郊外に住む家族が主人公なんです。

お父さんが、当たらない事で有名な天気予報士役のリリー・フランキー。もうこれだけで面白そうですね。本作の冒頭、夜中にリリーさんが車で帰る途中に意識を無くすんですね。運転中ですよ。突然。危ないですね。でも、朝、目を覚ますと畑の真ん中に車がハマってる。全然、違う場所ですよ。バカそうなADが「それ宇宙人の仕業ですよー」とか言い出すんです。そこから宇宙人について調べ出す。そーこーしているうちに「自分は火星人だ」と言い出すんです。

飛んでもない話ですねー。この映画、面白いのが、家族の揃うシーンが全然、出て来ないんです。

息子役は亀梨和也くん。自転車便のバイトしてるフリーターなんです。彼は惑星が迫って来るビジョンを見て「水星人だ」と言い出す。

娘役の橋本愛ちゃんは路上ミュージシャンの音楽を聴いて「金星人だ」と言い出す。

でもね、他の家族が何をしているのかとか、「○○星人だ」と言い出してる事とかは知らないんですねー。同時進行なんです。同じ家に住んでる家族なのに、あまり同じ場所にいるシーンがないんですねー。これが本当に宇宙人になっちゃったのか、或いはただの妄想や幻なのかハッキリしないままストーリーが続いて行く辺りはミステリー要素なんですよ。

もっと大変なのが、お母さん役を中嶋朋子が演じてるんですけど、お母さんだけは覚醒しないんですよ。その代わりと言ってはなんですが、ネズミ講にハマっていきます。普通なら家族が、お母さんがネズミ講にハマってたら大事件になる訳です。でも、他の家族が「自分は宇宙人だ」とか言ってますからね。

この映画、極端に説明がないんですよ。吉田監督は「何の理由も示されないまま家族が全員が宇宙人として覚醒して、そこから圧倒的に美しい言葉が精繊に組み上げられていき、最後にそれをまとめて叩き出すようなラストがある。入り口と出口の狂いかたと、その間の醒めた目線のギャップというかバランスが、滅茶苦茶かっこよかった。」と原作の魅力を語っています。また、脚本の執筆に関しては「三島が1962年に書いた小説の舞台を2010年代に置き換えるということは、『もし今、三島由紀夫が生きていたら、世界は彼の目にどう映るのだろう?』と想像することだったんですね」と答えています。

そして、もう1人の宇宙人役なのが、瞬きをしない佐々木蔵之介。メチャクチャ怖いです。

『美しい星』

★★☆☆☆

星2つ

2017.05.22 『カフェ・ソサエティ』

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2017.05.22

『カフェ・ソサエティ』を観賞して来ました。

コメディやロマンス、サスペンス、ラブストーリー……。様々なジャンルの映画を作ってきたけど、自作からロマンチストが滲み出ているウディ・アレン監督の最新作です。今回は、黄金期の1930年代のハリウッドを舞台にした大人のラブ・ロマンス映画。なぜ1930年代のハリウッドなのか? 今回のウディ・アレン監督の大人だけがグッとくるロマンチックな狙いは何なのか? ネタバレなしの範囲でお話しします。

そもそもタイトルの意味は、1930年代の都会のお洒落なレストランやクラブへ、毎夜、繰り出すライフスタイル、セレブリティの社交界の事。そーは言ってもウディが過去を描くのは初めてじゃないです。ドキュメンタリー風の偽アメリカ史コメディ『カメレオンマン』は20年代~30年代のニューヨーク。映画の中の人物が現実に出てきちゃう珍騒動ファンタジー『カイロの紫のバラ』は大恐慌時代のニュージャージー。自分の幼少期をスケッチした『ラジオ・デイズ』は第二次世界大戦の開戦間もなくだし、コミカルなサスペンス『ウディ・アレンの夜と霧』は1920年代のヨーロッパ。全部、暗いんですよね。お金のない人々の生活を描いていたんですよね。2011年のタイムスリップ・ファンタジー『ミッドナイト・イン・パリ』は1920年代のパリが多少、きらびやかでしたね。今回は超派手。

主人公はユダヤ系アメリカ人の青年なんです。主人公役は童貞を演じさせたら天下一品、『ソーシャル・ネットワーク』でザッカーバーグ役だったジェシー・アイゼンバーグ。ハリウッドで成功している叔父を頼って会いに行く。すると、プール付き大豪邸でパーティーやってる。様々なスター俳優や映画界の大物、政治家たちが来てるんです。今までのウディ作品ではピンポイントな場所しか描いてなかったですよね。本作では億万長者。貧乏な家庭。ギャング。もう様々な人々が出てきます。一つの時代を多面的に描いてますね。しかも、構成が上手い。上手いのに巧みだから上手さが伝わりにくい地味な上手さ。

田舎者の主人公は叔父の秘書を紹介されるんですね。メチャクチャ美人。で、ロス観光とかに連れて行ってくれるんですね。案の定、主人公は惚れちゃうんですよ。当たり前ですよね。『パニック・ルーム』の子役、クリステン・スチュワートが演じてますね。ちょっと切れ長の目で美形の顔だち。スタイル抜群。本作のスチュワートのきらびやかな衣装のいくつかは本作の為にシャネルが作っているんです。手足長いから何でも着こなしてしまう。しかも、嫌味じゃない。でも、そんな彼女にはある秘密が……。ここからは運命のイタズラ。ロマンチストなウディ監督のタイミングのスレ違い。甘酸っぱいロマンスが全開。“もしも……„の先を描いてる辺りが大人には刺さります。

実は長いスパンの出来事を描いてて、物語の後半で主人公はナイトクラブを経営するんです。実際、当時のニューヨークは人種差別が厳しかったらしいです。所がバーニイ・ジョセフィンというユダヤ人が1938年に様々な人種を受け入れるナイトクラブを作ったっていう実話があります。恐らく、その話がモデルになっていると思われます。ウディはこーいったエピソードや時代背景を盛り込む事により、当時の雰囲気を映画の中で再現しようとしたのではないかと思います。

ウディのインタビューでも「ニューヨークの歴史においても最大級にエキサイティングだった時代で、とてつもなく素晴らしい劇場、カフェ、レストランが存在した。」「あの時代はずっと僕を魅了し続けている」と語っています。

その再現の為、当時の雰囲気のあるバーのレイアウトや階段の作りなど何年も探し回っていたらしいですね。

美術を担当したサント・ロカストはインタビューで「ウディは我々が正確さに固執しすぎて、彼の視覚に訴えかけない舞台装置を作ったりしないか、常に気に掛けていた」と語っています。

また、そんな作りこんだ世界観を美しく見せる本作の撮影監督はイタリア出身のヴィットリオ・ストラーロ。映画好きには有名な人です。『地獄の黙示録』とか『ラスト・エンペラー』なんかで3回アカデミー賞受賞してる人です。今回、初めてデジタルカメラで撮影してます。長年、デジタルカメラでの実験を重ねてきて、やっと満足いくレベルに達したから使ってみることにしたとの事。見てみるとフィルム撮影にしか見えない。むしろ、フィルムっぽさを意図的に演出してましたね。「満足いくレベル」とは、後処理の簡単なデジタルで撮影して「フィルムっぽさを出せるレベル」の事だったのでしょう。

まさに、いつものウディ作品のテイストを残しつつ、新たなことに挑戦しているのが本作なんです。

『カフェ・ソサエティ

★★★★★

星5つ

2017.05.06 『フリー・ファイヤー』

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2017.05.06

フリー・ファイヤー』を観賞して来ました。

 これは久々に頭の悪い映画でした! 全編銃撃戦! だけど密室劇! 訳わかんないですよね?

 1978年のボストンを舞台。チンピラ系ギャングと武器商人の組織が廃工場でライフルのお取引。そーなんです。この映画、全編、この廃工場から誰も出ません。映画が終わるまで出れません。回想シーンもありません。どーです? 潔いでしょ?

 で、もの凄いピリピリしてんですよ。大体、危ないお取引はピリピリしますよね? そもそも危ないんだから。でも、本作は最初っから、すぐ揉めそうになるんですよ。やれ「なんだ、お前のそのダサい服は?」ですよ。挨拶代わりですよ。「揉めるかな?」と思わせて、ギリギリで落ち着いたタイミングで次の火種が……。挙げ句、「M16を頼んだのに、これはAR70じゃねーか?!」ですよ。性能も弾も同じなんだから、どっちだっていーじゃん!! すぐ怒鳴り合い。

 「そこでか!!」という理由で全員強制参加の銃撃戦へ発展!! ブラジル帰還兵やブラックパンサー党員やらキャラの濃いメンツがひたすら銃撃戦!!

バカたちが子供のケンカのように撃ち合います。バカバカしいけど、バカしかいないから次の展開が読めない!!

ユーモラスな中で、最後まで誰が生き残るのか解らないサスペンス要素も追加。

 この映画、『ハイ・ランド』を撮ったベン・ウィートリー監督なんです。とても同じ人の作品とは思えませんね。インタビューで本作を作るキッカケは80年代にマイアミで起きた事件のCIAの報告書。そこには約40分間の銃撃戦の記載を見つけたそーな。

「ハリウッドで作られるアクション映画が、いかにリアリティーがないかってことを知ったんだ。40分も銃撃戦をやってれば弾が当たらないこともあるし、ミスって仲間を撃つこともある。」との事。

 確かにそんな映画でした。中味が銃撃戦しかない。ベン・ウィートリー監督の目指したのは『仁義なき戦い』のアクション・シーンらしいです。深作欣二、スゲー。

フリー・ファイヤー

★★☆☆☆

星2つ

2017.04.29 『バンコクナイツ』

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2017.04.29

バンコクナイツ』を観賞して来ました。

 3時間がとにかく長い!! そして、登場人物が多い!! でも、有名な役者が出てないから、誰が誰だか。話の脈略も無いから、話も追えない。辛かった!! 正直、ドラマとかで観たかった。

 でも、そんなの関係ないのが本作の魅力。ストーリーとかどーでもいー訳ですよ。

 タイトル通り、舞台はバンコクの日本人専門の歓楽街。タイ人娼婦とタイに暮らす日本人の恋愛というか腐れ縁のような関係をベースにタイの人々の日常や風習がシチュエーション的に描かれていくんです。そこにはタイに移り住んだ日本人たちの金や性への私利私欲が渦巻いてるんです。だけど、押し付けがましくは見せません。なんとなーくで、嫌ぁーな感じでチラ見せ。逆に重たいっていう。

 本作の富田克也監督は製作のキッカケを

「“タイ”をたぐりよせることによって得た、「アジアの中の日本」という視点から始まった」

と語っており、これはとても面白いですね!

日本人って隣の人が自分の事をどのように思っているかは気にするのに、隣の国の人がどう思っているかは気にしませんもんね! そーゆー意味でも『バンコクナイツ』は見る価値のある映画なんですね。

 さらに心に刺さるのは映像の美しさ。何気ない日常が美しい。夜の歓楽街。畑の続く道。場末感のあるバー。そんな風景が美しいんですね。

 本作は準備期間は4年。監督は脚本を書いてる段階から、ちょこちょこバンコクへ取材に行き、撮影に入る1年前にはもうバンコクに移り住んでいたというからトンデモない映画ですよ。そのお陰で土着の匂いがプンプン感じられます。それだけあって、本当にタイの色んな顔を映し出しているんですよ。

 しかも、劇中に登場するタイの人々は本当にそこで生活する人々(要は素人さん)にほぼ本人役みたいなキャラを演じさせているから、もはやドキュメンタリーのようでもあるんですね。さらに、音楽も現地のミュージシャンの曲や歌を使用。これは旅行にいった気分になれますね。

 さらに驚いたのは本作のパンフレット!! 「本編に出てきたっけ?」というようなタイの歴史や風習、習慣について細かく触れられているんです。「ちょっとした観光ガイド本かな?」ってくらいの充実の内容。写真も豊富で劇中の美しい場面のスチールも収録されています。これは久々に凄いパンフでした!!

バンコクナイツ』

★☆☆☆☆

星1つ

2017.04.16 『お嬢さん』

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ポスター

公開:2017年(韓国)

原題:Ah-ga-ssi

英題 : The Handmaiden

監督:パク・チャヌク

キャスト:キム・ミニ、キム・テリ、ハ・ジョンウ、チョ・ジヌン、キム・ヘスク、ムン・ソリ

上映時間:145分

作品概要:『オールド・ボーイ』、『シークレット・ガーデン』などの作品で知られるパク・チャヌク監督が、イギリスの人気ミステリー作家サラ・ウォーターズの小説「荊の城」を原案に、物語の舞台を日本統治下の朝鮮半島に置きかえて映画化した驚くべき傑作。

(C)2016 CJ E&M CORPORATION, MOHO FILM, YONG FILM ALL RIGHTS RESERVED

 

2017.04.16

『お嬢さん』を観賞して来ました。このブログでレビュー書きます。韓国発のエロ映画でした。エロい。とにかく、エロい。レズ映画です。ユリユリです。みんな好きなんでしょ?

ちなみに、1961年の三島由紀夫 原作・若尾文子 主演の同名映画とは別物です。

ミステリーとしても面白い映画でした! なんせ原作は「このミステリーがすごい!」で1位になった『荊の城』!

しかも、本作は『JSA』とか『オールド・ボーイ』のパク・チャヌクだからシリアス演出お手の物。ちなみに、原作の『荊の城』はBBCのドラマで映像化されてるんです。それを見たパク・チャヌン監督が「こんなん全然、つまんねー! 俺の方がもっと面白く作れるし!!」と映像化したのが本作なので、気合が違います。他の韓流映画とは全然、違います‼ どちらかと言うと中国映画のよう。

 

あらすじ・ストーリー・内容(ネタバレなし)

舞台は日本が占領していた頃の朝鮮。だから、韓国の俳優しか出てこないのに日本語のセリフばかり。日本人の役も韓国の役者さん。詐欺師の女が金持ちのお嬢さんの屋敷へメイドとして潜入。騙して金を奪うつもりが、感情移入してしまい、ユリ展開へ。バレちゃうんじゃないのというサスペンスとお嬢さんに惹かれていく人間ドラマ。所が、潜入ミッションのラストの結末、「えっ?! どーゆー事?!」ってシーンで唐突に場面が変わるんですよ。何だ?何だ?と思っていたら、本作は3部構成だったんですね。

 

動画予告編


映画『お嬢さん』予告

 

感想・評価・考察・解説

第1部は詐欺師の変装したメイドの目線。第2部では話をさかのぼり、お嬢さんの目線で同じ話をやり直すアナザーストーリー。ここで新たな新事実が発覚。第3部はすっかり2人に感情移入できちゃった状態で、「この後、2人はどーなっていくんだろう?」という、“その後”のお話。

もう目が離せなくなるドンデン返し展開の連続! 観てるコチラもヒヤヒヤ!! そして、エロい。とにかく、エロい!! ヒロインのお嬢さん役のキム・ミニがとにかくエロい!! 様々な衣装が登場しますが、全てエロい‼ 全身から溢れ出す清楚で儚げな雰囲気!! それでいて脱ぎっぷりの良さ!!
後半はかなり過激なレズプレイ満載でセックス・シーンだらけです。でも、エロ文芸テイストなのでエロの中に美しさありって感じのお洒落エロ!!

それだけではなく、お嬢さんは屋敷の地下室で行われている伯爵に朗読会へ強制参加させられているんです。卑猥な言葉がバンバン出てくるエロ小説を読ませて見世物にしてるんです。しかも日本語で。だから、日本のテレビではNGなワードがバンバン出てきます。ねっ? 伯爵、悪い奴でしょ?

あと、等身大の人形とお嬢さんを天井から吊るしてセックスを模してる風のシーンがあったんですけど、あれは全く解んなかった(笑)

 パンフは肝心なシーンの写真少なめ、解説あっさり路線だったので、本作を気に入った人だけが買えば良いと思います。

『お嬢さん』

★★★★☆

星4つ

 

 

2017.04.16 『哭声/コクソン』

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2017.04.16

『哭声/コクソン』を観賞して来ました。

 閉鎖的な村を舞台に偏見と噂話の溢れる中、自らの家族をぶち殺す事件が連発。挙げ句、死人がゾンビよろしく生き返ったり、悪魔祓いに祈祷対決と超オカルトな内容。土着質な作風は昔の角川映画を思い出させますね。韓国製の超スリラー・ホラー映画です。韓国で大ヒット。日本人俳優から國村隼が出演。しかも韓国で賞を獲りまくりですよ。凄いですね。『ブラック・レイン』でリドリー・スコットの作品に出て、『キル・ビル』でタランティーノ北野武の作品から黒沢清園子温三池崇史是枝裕和。『シン・ゴジラ』にも『寄生獣』にも『進撃の巨人』にも『ちはやふる』にも『相棒』にも出てくる。次回作には『ジョジョ』と『鋼の錬金術師』って、もう笑ってしまうわ。

 しかし、これは大変な作品でして。何が大変って意味が解らない。……というか、意味が解らないように作ってあるんですね。これはキューブリックの『シャイニング』と同じ作りですね。キューブリック監督はあえてオチを意味不明にする事で見終わった後にも恐怖を維持させようとしたんです。謎が残るから怖いってやつ。

 とは言え、全く意味がないムチャクチャな作り方をしてるのかと言うとそんな事はないんですね。いや、ないらしいです。本作のナ・ホンジン監督いわく、キリスト教で身近な人が死んだ時に神の不条理みたいな事を考えまくって本作を作ったとインタビューで答えてます。だから、「イエス・キリストの復活を現代風に解釈した」とか「コクソン(村の名前)をイスラエルに見立てて作った」と話してました。実は色んな所にキリスト教のモチーフが混在しているんです。でも、絶対わかんねーよって話ばかりなので、そーゆー話は見終わった後にでも町山智浩さんの話とかキリスト教ウンチクの得意な人のブログでも読んで下さい。

 そーゆーバックボーンを抜きにして見ると、なかなか面白いB級映画。まず主人公がバカ!! 町の警官なんです。映画の冒頭、殺人事件が起きたと連絡が来るんです。所が、お母さんに「朝飯を食って行け」と言われておとなしく食べていく。そんで上司に「遅いぞ」と怒られてる。どうですか? 好感度高いボンクラですよね?

そんな主人公がエグい地獄絵図に出くわしてしまうんですけどね。

 そもそも、この映画に出てくるキャラクターって、善人だと思ってた人間が悪い奴っぽくなっったり、良い事だと思ってやった行動が悪い事に繋がったり、そんなんばっかり。これまた監督いわく「ある瞬間には「善」と思えた相手が、10分後には「悪」に変わってしまう。20分経つと隠された意外な一面が判明し、また違う表情が見えてくる。何度も何度も繰り返し「あなたはどう思う?」と問い続ける映画になっているんだ。」との事。実際、劇中でも「お前がそう思うならそうなんだろう」というセリフが頻繁に出てきます。宗教家の作る映画は説教臭い映画が多いですね。

 そんな事よりも、ボクが凄いなと思ったのは、こんなにも意味不明な映画が韓国で大ヒットしたって事ですよ。

パンフの小倉紀蔵京都大学教授)の解説によると、韓国ではシャーマニズムが一般的に社会の生活に溶け込んでいるとの話でした。劇中に登場する祈祷師とか家族の様子がおかしいとシャーマンに相談してみるという描写なんかがリアルなんでしょうね。撮影に6ヶ月も掛けた本作は、その祈祷のシーンで使う小道具とか美術も本物を集めており、実際の儀式で使われる物ばかり。雨や霧のシーンなんかは本当に天候が変わるのを待ったという頭おかしい体制で作られてます。それだけに細かい所まで見応え抜群。本物感が伝わってきます。そこら辺もヒットの要因なんでしょうね。

 パンフは上記の小倉先生の解説やプロダクションノート、監督や國村隼のインタビューが掲載されていますが、「映画秘宝」のインタビューより薄め。映画を観賞した人の疑問にも答えてくれない内容なので、ネットサーフィンで調べた方が納得のいく答えが見つかりやすいと思います。

『哭声/コクソン』

★★☆☆☆

星2つ

2017.03.11 『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』

f:id:stanley-chaplin-gibo:20170530124958j:plain2017.03.11

『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』を観賞。

アニメですけど知ってますか?
テレビ・シリーズ2期分を一気見。流れ込むよーに劇場へ。壮絶すぎたテレビ・シリーズからの続編という流れでの劇場版で、そのまま続きとして始まるストーリーと各キャラとの再会にまずテンション上がります。

テレビ・シリーズではヘルメットのような機械を頭に着けて、ゲームの世界に入るって設定だったんですよ。それで仮想現実(ゲームの世界)の中で友情を培ったり、恋愛したり、命懸けの戦いしたり……って「現実とどれだけ違いがあるんだ?!」って感じだったんです。
でも、本作では機械を着けて街を歩くと、機械越しに敵キャラが登場したり、生活している街並みがゲーム世界の風景に変わって見えたり……って設定なんです。今、流行りのVR(仮想現実)から更に進化したAR(拡張現実)の世界。VRが現実にあるだけにリアルな設定に感じました。そんなVRゲームで街を歩いてると敵キャラが出てきたりして……って、これポケモンGOじゃん!

さらに敵を倒すとマックやローソンで使えるポイントが貰える……っていう設定まで。協賛の会社が充実してます。怖いくらい現実に則したシチュエーションに思わずゾッとしましたね。

ゲーム内でレア・キャラとして登場する女の子は戦闘中、ボカロのように歌ってくれてて……って、これは初音ミク!?

そんな感じで、次々おこる謎の敵キャラの出現。新たなに仕組まれたゲーム世界の登場。それらのミステリー要素で引っ張りつつ、タイトル通りのソードバトルもてんこ盛り。確かに、ミステリー要素のオチとかはテレビ・シリーズに負けてはあるものの、バトル・アニメの皮を被りつつ、サブカルや次世代コンテンツを大量投入……という凄まじいアニメ作品なんです。


『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』
★★★☆☆
星3つ

2017.03.11 『ラ・ラ・ランド』

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2017.03.11

ラ・ラ・ランド』を観賞。

 アカデミー賞6部門受賞の大ヒット作品なので、もはやボクごときが(しかも今更)話す必要があるのかという……。

 ストーリーは、最悪の出会いをしたはずの男女が再会し、惹かれ合っていく切ない路線の恋愛模様を四季の中で描いていく……といった感じのロマンチックで歌と踊りとのカラフル・ミュージカル映画です。なもんで、見どころは主演のエマ・ストーンライアン・ゴズリングスの歌とダンスと演技。これが凄い!

 本作のライ・ゴズはジャズに拘りがあり過ぎて売れないピアニスト役。さすが演技派。その為に3か月かけてピアノを猛勉強。吹き替えなしの演奏を披露。エマの方も『キャバレー』でブロードウェイへのデビュー済。本作ではオーディションを受けまくる売れない女優役。そーなんです。本作のタイトル『ラ・ラ・ランド』とはロサンゼルス(主にハリウッド)の愛称。夢を追う者の都。夢(将来)と現実(恋愛)のドラマになっているんです。もう切ないですね。

 主役2人が踊るダンス・シーンの数々は本当に素敵なシーンばかりなんですが、実はそれらも過去のハリウッド製ミュージカル映画へのオマージュ。過去のグッとくるシーンの集大成的な構成なんです。これは強力ですね。普段、ミュージカル観ない人も思わずグッときてしまうのではないでしょうか?

 たとえば、2人が街を一望できる丘の上で踊るダンス。これは『バンド・ワゴン』のフレッド・アステアの振り付けにソックリ。踊りながら空へ飛んでいく幻想的な演出はウディ・アレンの『世界中がアイ・ラブ・ユー』のクライマックスだし、その他にも『雨に唄えば』や『巴里のアメリカ人』のジーン・ケリーを思わせるダンスも。そんな過去の名優たちを意識したライ・ゴズの細身なスーツも素敵。今、タイトルを出した『バンド・ワゴン』が1953年公開の作品。『雨に唄えば』は1952年。『巴里のアメリカ人』が1951年。そう、この映画は50年代のミュージカル映画の総集編的な作品なんです。

 今作は今や珍しくなったシネマスコープ(1:2.52のワイドスクリーンという横長の画面比率)での上映。1950年代のハリウッド製ミュージカル映画は、全体で行われているダンスを引き画でも迫力ある構図で見せる為にこのシネマスコープで上映されていたのです。テレビが台頭する以前の華やかなだったハリウッド全盛の上映を追体験できるのも劇場で今作を見る恍惚ポイント。

 そこまでしてミュージカル映画を徹底的に復活させたデイミア・チャゼル監督は、このジャンルを選んだ事を以下のように語っています。

「僕にとって個人的なテーマを扱っている。人生と芸術、現実と夢をどう釣り合わせるか。また、特に芸術との関係と人間関係とをどう調和させたらいいのか。本作では音楽と歌と踊りを使って、そんな物語を語りたかった。ミュージカルは、夢と現実との間の綱渡りを表現するのに適したジャンルだと思うよ。」

 監督の語る通り、歌とダンスで華やかに演出された前半から中盤に掛けての夢見る2人。それもクライマックスに近づくにつれて、静かなトーンと暗い画作りになっていき、現実を受け止めた2人には号泣必至の切ないラストが待っているんですね。その構成も上手しです。

 パンフはカラー写真多めで映画の内容を思い出すには持って来いですが、個人的にはもっと写真集ばりに写真が欲しかったです。イントロダクションやインタビューなど製作背景の記事は多め。作品解説は少なめな初心者対応な印象。濃くも薄くもない内容。

ラ・ラ・ランド

★★★☆☆

星3つ

2017.03.05 『ナイスガイズ!』

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2017.03.05

『ナイスガイズ!』を観賞。

 本作はコメディタッチのミステリーアクション映画なんですが、脚本がゴチャゴチャしてて、映画の質は大して高くないと思いました。しかし、注目ポイントや楽しめる要素は結構ある作品なんですねー。

 本作は70年代を舞台にしたノワールなテイストたっぷりのバディムービーなんです。ライアン・ゴズリング演じるクズとしか言えない探偵。ラッセル・クロウ演じる力任せの脅迫まがいな示談屋。そんな2人が失踪したポルノ女優を追う……というお話。

 まず、70年代を舞台にしているから、まるで当時のアメリカにタイムスリップしたかのような時間旅行感を楽しめます。そのくらい再現度が高いんですね。ヒッピーカルチャーと流行りの音楽。衣装やセット、小道具などにレインボーモチーフやサイケデリックカラー大量投入。当時の雰囲気がたっぷり再現されてる面白さ。当時のザ・アメ車といった(今からだと)クラシックカーばかり注目してるだけで楽しめます。さらに、バックで流れてる音楽はアース・ウィンド・アンド・ファイアービー・ジーズ、キッス、ザ・テンプターズなどなど誰もが聴き覚えあるヒット曲のオンパレード(アース・ウィンド・アンド・ファイアーのソックリさんたちまで出てくる悪ノリ)。

 本作の監督は『リーサル・ウエポン』や『ラスト・アクション・ヒーロー』の脚本を書いたシェーン・ブラック。懐かしいですね! 製作者は『リーサル・ウエポン』や『ダイ・ハード』、『マトリックス』、最近だと『シャーロック・ホームズ』(ロバート・ダウニー・Jr.版)など、シリーズ作品のプロデューサーを多く担当してるジョエル・シルヴァー。つまり、1980年代に『ダイ・ハード』や『リーサル・ウエポン』などのシリーズ・アクション映画を作ってた人達が「次は1970年代を舞台にノワールものを現代に復活させてやる!」という意気込み抜群なのが本作なんですね。しかも、主人公の探偵が『ダイ・ハード』のマクレーン刑事を思い出させる「ついてない男」という設定。さらに2人で1人的なダメ男たちの設定も『リーサル・ウエポン』にソックリなんですよ! 過去作品を自らパロディにしているという悪ノリ感をタンマリ感じる事が出来ます。

 思い出して下さい! 80年代のアクション映画を! ほぼ例外なく低偏差値映画ばかりですよ! ノーテンキでアッパラパー。ストーリーらしいストーリーは思い出せないけど、何だか笑ったなー……くらいの感想だけが残る作品ばかり。ボクなんか何度も観てるはずなのに『リーサル・ウエポン3』なんて全く覚えてないですよ!

 そんな愛すべきバカ映画たちを楽しめたアナタなら、間違いなく本作も楽しめます。勢いだけはありますから。主人公たちが現れると、兎に角、よく物が壊れる。そして、謎の組織に追われる。主人公たちもバカだけど、追ってくる連中もバカという抜群の愛嬌。

 まさに、復活の低偏差値ムービーは、ワイワイやって楽しんで、午後のロードショー行きなんです!!

『ナイスガイズ!』

★★☆☆☆

星2つ

2017.02.27『ルパン三世 カリオストロの城』4DX版

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2017.02.27

誰もが認める名作『ルパン三世 カリオストロの城』が4DXで上映と聞いて、喜びいさんで観賞して来ました。

ご存じ『ルパン三世』劇場版第2作目にして、宮崎駿監督作品1作目。怪盗というより義賊化した善人=ルパン三世クラリス姫を守る為、王家に伝わる財宝を巡って戦う冒険活劇アニメ。(←我ながら上手く纏めた!)

そんな不朽の名作を4DX化! だから、座席が動くし、煙も出る。これは、宮崎駿によってドタバタ冒険活劇ナイズされた本作にはピッタンコカンカンな仕様ではないか!! ……っと思っていたら、そんな事なかった。やっぱり、制作時にそーゆーつもりで作ってないもんだから、不必要なタイミングでガンガン座席が動いて集中できない残念仕様。

確かに、最初こそ、飛んだり跳ねたりと動き回るキャラクターたちの動きに連動したアトラクションの数々はワクワクを盛り上げるのだけど、「アトラクションを楽しみたい気持ち」より「作品をじっくりみたい気持ち」の方が圧勝! 4DXにするには作品のクオリティーが高すぎたんですな。


でもですね、やっぱり、この名作をシネコンの大スクリーンで見れるのは格別で、スピーカーから流れる山田康雄や納谷悟郎、石田太郎など稀代の豪華声優陣の声は興奮しまくりです。みんな故人ですからね。そーでなくても小林清志井上真樹夫の若い張りのある声にはトキメキを隠せません!!

ラストの銭形の「いや、奴は飛んでもないものを盗んで行きました。……あなたの心です」というグッとくる名セリフが有名ですが、ボクはそこよりも、その前のルパンのセリフをグッときます。ルパンに着いていこうとするクラリスに対して
「バカな事を言うんじゃないよ。また闇ん中へ戻りたいのか? やっとお日様の下に出られたんじゃないか。なっ? お前さんの人生はこれから始まるんだぜ? オレのように薄汚れちゃいけないんだよ。 ……あっ、そうだ! 困った事があったらね、いつでも言いな! おじさんが地球の裏側からだって、すーぐに飛んできてやるからなぁ~!」
このアウトローなおじさん感! 要はベテラン感ですよ!

宮崎駿のキャラクターがよく動きまくる作画やシンプルな冒険活劇的なワクワク感。やはり、映画館で観るのと、テレビで観るのは全然、違いますね!!

カリオストロの城

(作品には)★★★★☆星4つ

(4DXには)★★☆☆☆星2つ

【2016年ベスト&ワースト映画ランキング】

もう4月なんですけど、去年、観た映画でランキング作りました。例の如く、2016年日本で公開された映画で作ってます。

【ベスト・ランキング】
1位:『残穢
ホラーでありながらミステリーとしても良く出来ている近年稀に見る傑作な脚本!! 監督の過去作『呪いのビデオ』シリーズや実在の人物をモデルにしたメタフィクションの世界観が現実と虚像を翻弄させる!!

2位:『ヘイトフル・エイト
タランティーノの悪ノリ映画、ここに極まり!! 映画の方程式さえ崩壊させる力業があっぱれ……と言うか唖然のレベル!! サスペンスであり、ミステリーであり、人間ドラマでもあり、キャラ映画でありつつ、西部劇でもある!!

3位:『帰ってきたヒトラー
現代ドイツにヒトラー復活というブラックコメディは毒が効きすぎる破天荒な傑作!!

4位:『団地』
主演はなんと岸部一徳!! 内容はユーモラスでオフビートな団地コメディ。笑える上に懐かしさもある破天荒な傑作!! 岸部一徳がこんなに可愛いなんて!!

5位:『ブリッジ・オブ・スパイ
さすがのスピルバーグ!! シンプルな撮影テクニックをこれでもかとブチ込んで、冷戦時のスパイ攻防戦をシリアスにストーリーテリング!!

6位:『二度殺された妻』
韓国映画の新機軸!! タイムパラドックスを巧みに使い、過去と現在の殺人事件をドッキング!! 全く気の抜けない怒濤の展開へスピーディーに誘う!!

7位:『ピンクとグレー』
作中劇と回想シーン、現在進行形のエピソードとを怪奇な構成でまとめ上げたオンリーワンな作品!! 2人の若者の成功と挫折を語り倒す抜群のセンス!!

8位:『ゾンビ・スクール』
ゾンビ映画は飽きた」「ゾンビ苦手」そんな人にもオススメできるブラックコメディ満載のゾンビ映画!! ちびっこゾンビたちとバカな大人たちのユーモラスな戦いは抱腹絶倒!!

9位:『フェイク』
ドコまでが真実でドコからがヤラセなの? なんて疑問も下らなく思えてくるドキュメンタリーで見せる人間の面白さ!!

10位:『青春100キロ』
AV女優とハメ撮りしたいという夢を叶える為、戦うボンクラ男にまさかの涙する。悪ノリする監督。純粋すぎるボンクラ。待ち構える女神はAV女優。こんなドキュメンタリー観たことない!!

ちなみにの11位以降:『ヒメアノール』『この世界の片隅に』『ヤクザと憲法』『シン・ゴジラ』『イット・フォローズ』『ドロメ 男子篇』&『女子篇』『極秘捜査』『さらば あぶない刑事』『クリーピー』『神様メール』


【ワースト・ランキング】
1位:『スーサイド・スクワット』
2位:『黒崎くんの言いなりになんてならない
3位:『僕だけがいない街
4位:『ミケランジェロ・プロジェクト』
5位:『ライチ☆光クラブ
6位:『女が眠る時』
7位:『少女椿
8位:『キャロル』
9位:『ダーティ・コップ』
10位:『バイバイ、おっぱい』

ちなみに他の観賞作品:
『解夢―ゲム―』
『エヴォリューション』
ヒッチコック/トリュフォー
ローグ・ワン
ドント・ブリーズ
『ミュージアム』
『ソーセージ・パーティー』
『エブリバディ・ウォンツ・サム!!』
ホドロフスキーの虹泥棒』
『スクープ』
『平成ジレンマ』
『ケンとカズ』
『無垢の祈り』
ザ・ビートルズ〜EIGHT DAYS A WEEK』
『君の名は』
「大畑創監督映画祭」
『ブリーダー』
『貞子vs伽椰子』
『A2完全版』
『教授のおかしな妄想殺人』
デッドプール
キャプテン・アメリカ/シビル・ウォー』
『SHARING (ロングバージョン)』
『SHARING (アナザーバージョン)』
『怪談 せむし男』
『マジカル・ガール』
バットマンVSスーパーマン
『マッドマックス(4DX版)』
『尾崎支配人が泣いた夜』
サウルの息子
『オデッセイ』
ボクソール★ライドショー恐怖の廃校脱出!』
『グリード』
エクス・マキナ
『日本で一番悪い奴ら』
『華魂 幻影』
『レヴェナント』
『64 -ロクヨン- 前編』
『64 -ロクヨン- 後編』
『鬼はさまよう』
『コップ・カー』
『香港、華麗なるオフィス・ライフ』
『ヤング・アダルト・ニューヨーク』
『ライト/オフ』
ズートピア
『マン・アップ』
ジャングル・ブック
エスコバル
『「僕の戦争」を探して』
『アイ・アム・ヒーロー』
『10クローバーフィールド・レーン』
『ボーダーライン』
『ミュータント・ニンジャ・タートルズ:影 ―シャドウズ―』
『秘密』
マネーモンスター
『ペット』
『壊れ始めてる、ヘイヘイヘイ』
『罪とバス』
『父の結婚』
『はなくじらちち』
『樹海』
『下衆の愛』
『風に濡れた女』
ジムノペティに乱れる』
『リップヴァンウインクルの花嫁』
『白鯨との闘い』
『独裁者と小さな孫』
『ディーン 君がいた瞬間』
『少女は悪魔を待ちわびて』
『グッドナイト・マミー』
『ファンハウス』
アサイラム 監禁病棟と顔のない患者たち』
アイヒマン・ショー』
ヘイル、シーザー!
『ノック ノック』
『ロック・ザ・カスバ』
『ディア ダニー 君へのうた』
『ズーランダーNo.2』
『殺されたミンジュ』
『マネー・ショート 華麗なる大逆転』
『ファング一家の奇想天外な秘密』
『素敵なウソの恋まじない』
『禁断のケミストリー』
『ヴィジット 消された過去』
コンフェッション ある振付師の過ち』
『ウーマン・イン・ブラック2 死の天使』
『脱脱脱脱17』
『孤高の遠吠』
Dream Theater
『数多の波に埋もれる声』
『美女捨山』
『狂犬』
『親切ですね』
『いろんなにおいのワカモノだ』
『Dance!Dance!Dance!』
『金の鍵』
『MAX THE MOVIE』
『恐怖!セミ男』
『お墓参り』
『怪獣の日』
『お母さん、ありがとう』
アルビノの木』
キリマンジャロは遠く』
『彦とベガ』
次男と次女の物語』
『いいにおいのする映画』
『THORN』
『ACTOR』
『フールジャパン 鉄ドンへの道』
『ひつじものがたり』
『若者よ』
『雲の屑』
『ゴーストフラワーズ』
ちはやふる(上・下)』
『レジェンド』
『日本で一番悪い奴ら』
シェル・コレクター
『Mr.ホームズ』
『スパイ』
『スポットライト 世紀のスクープ』

『ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK』

ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK』を10月1日、MOVEXさいたまで観賞して来ました。

本作はビートルズのツアー時代を描いたドキュメンタリー映画になります。でもね、ただのドキュメンタリーではないんですよ。本作はビートルズの46年ぶりの公式映画。この「46年ぶり」というのがどーゆー事なのか? そもそも「ツアー時代」という言い方が不思議じゃないですか?
実は、ビートルズは13年間の活動期間の中の1963年~1966年までの3年間しかライブ活動をしてないんです。この3年間の間に世界中を回ってるんですけど66年には完全にライブを止めちゃうんです。それは何故なのか? メンバーたちにとって、ライブとは何だったのか? ……って所に焦点を当てた作品になっております。

過去のライブ映像の素材とインタビュー映像を組み合わせた構成で、勿論、ポールとリンゴへのインタビューは新緑。ジョンやジョージなど故人は過去素材を流用してるんですが、これはほとんど『ザ・ビートルズ アンソロジー』の流用。『アンソロジー』というのはビートルズ解散後の1995年から発売された8巻構成でメンバーの誕生から解散までを丁寧に追った総尺7時間以上のドキュメンタリー! もっと言えば、細かいインタビューで一会場づつ振り返る『アンソロジー』の方がツアー時代を振り返るにしても、内容的にも構成的にも濃いですよ!
そいじゃあ、本作はツアー時代を短く纏めただけの『アンソロジー』ショート版なのか? 新緑インタ以外、『アンソロジー』を見た人間には見る価値なしなのか?
勿論、そんな事はありません!

そんな事ないポイント①
本作制作の為、ネットで世界中の人々に「ビートルズのライブ映像あったら教えて」と呼びかけ、過去最大のアーカイブ映像を収集。要は当時、観客が隠し撮りしていた映像までも掻き集めたという事です。それにより、テープが擦り切れるほど見ていたライブ映像でも、別アングル(しかも客席からの)が追加されているんです!

そんな事ないポイント②
最新の技術で映像と音をクリーンアップ!
映像は当たり前だの4K化! さらに今作の為、新たに整音技術を開発。素人が当時のカメラで撮影した映像を元に、新たに音を加える事なく演奏や歌声が聞こえるようにしたそうです!  ビートルズのプロデューサーであるジョージ・マーティンの息子=ジャイルズ・マーティンいわく「正直に言ってしまうと、当時のライブ会場にいて聴くよりも、この映画で聴いた方がちゃんと聞こえるというレベル」だそうです。スゴ技過ぎて理屈が解りませんが、凄い! つまり、ビートルズのライブを疑似体験できるんですよ! 凄くない?!

そんな事ないポイント③
様々な人たちへの追加インタビュー!
エルヴィス・コステロビートルズ映画(『ビートルズがやって来る! ヤァ!ヤァ!ヤァ!』『ヘルプ! 4人はアイドル』)のリチャード・レスター監督。伝説の日本武道館コンサートの際、ビートルズに密着したカメラマン=浅井慎平のインタビュー(日本公開版のみ日本公演のシーンが長めに収録されているサービス仕様だそうです)!
挙句にライブ会場で泣き叫ぶ映像が発見されたシガニー・ウィーヴャーが当時を振り返ったり、ウーピー・ゴールドバーグが母と行ったライブの貧困時代の泣けるエピソードを披露したりとメンツが豪華!

そんな事ないポイント④
ビートルズVSアメリカという構図!
アメリカに憧れてやってきた若いビートルズと真実のアメリカの姿。中でも、座席が人種ごとに別けられた南部の会場でのメンバーによるコンサート拒否事件が衝撃的。
さらに、ジョンの「ビートルズはキリストよりに有名になった」発言やブッチャー・カヴァー騒動など、ビートルズがツアーに嫌気がさすまでの当時の彼らの心境とケネディ大統領、キング牧師暗殺やベトナム戦争といったアメリカの時代背景がミックスして描かれているんですね。

そんな事ないポイント(おまけ)
本編終了後、1966年のシェイ・スタジオ公演が30分以上のノーカット版で特別上映!
しかも、本編同様、4Kで音もクリーンアップされて。正直、本編よりも興奮しました!
もはや、何年も前の映像なのに、ライブビューイング状態でしたよ!

確かに、『アンソロジー』ほど濃くないし、グッとくるポイントも低めですが、綺麗すぎる上に今まで見た事ないライブ映像を大スクリーンで観れる機会は超レア!! まさに、ビートルズ・ライブへタイム・スリップしたかのような映像体験。 劇場観賞必見作品!!

パンフは厚みも内容も薄かったですけど、寄稿メンツのナイス解説は読みごたえあります。あと、レコードサイズなのがカッコイイです。

ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK』
★★★☆☆
星3つ

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